IBM、チャット・判定・音声認識を1つのエンドポイントで扱う「Granite Switch 4.1(グラナイト スイッチ)」を公開8Bと30B、VRAMは基本モデルとほぼ同じと説明
IBMは2026年10月15日(米国時間)、Hugging Faceのブログで「Granite Switch 4.1」の8Bと30Bを公開した。判定用のDecision aLoRA、安全判定のGuardian aLoRA、音声文字起こしのGranite-Speech-5.0-Turbo-CTCを1つのモデルにまとめ、VRAMは基本モデルとほぼ同じとIBMは説明している。

目次
IBMは2026年10月15日(米国時間)、Hugging Faceのブログで「Granite Switch 4.1(グラナイト スイッチ)」の8Bと30Bを公開しました。チャットの応答、判定(Decision・Guardian)、音声の文字起こしを、1つのモデル・1つのホスト型エンドポイントで切り替えて扱えるモデルです。ブログの公開は日本時間10月16日5時台で、モデルカードのリリース日は10月14日と書かれています。ライセンスはApache 2.0です。
3行まとめ
- IBMが「Granite Switch 4.1」の8Bと30Bを公開。Decision aLoRA、Guardian aLoRA、Granite-Speech-5.0-Turbo-CTC(470M・英語)を1つのモデルに内蔵した(IBM発表)
- 4つの機能を1つにまとめても、使うVRAMは基本モデルとほぼ同じとIBMは説明。判定はチャットで作ったKVキャッシュを再利用する
- 内蔵の音声認識は英語のみで、音声エンコーダーとLLMはまだ一緒に学習されていない。他社との比較はIBM自身の説明で、Guardianのモデルカードの表ではRAGの幻覚検出で他社3モデルを下回る項目もある
本記事の内容は、日本時間10月16日5時台に公式ページで確認したものです。
Granite Switch 4.1で何ができるのか
IBMのブログによると、Granite Switchは「モジュール式にモデルを作る」プロジェクトで、「last spring」に始まったとされています(年はブログに明記なし)。今回の4.1の8Bと30Bには、次の3つが入っています。
| 部品 | IBMの説明 |
|---|---|
| Decision aLoRA | 汎用の判定用。モデルカードでは、状態と選択肢付きの質問を渡すと、1回の計算で選択肢ごとの確率(softmax)を返す |
| Guardian aLoRA | 安全に関する判定用。モデルカードでは、有害性・脱獄(jailbreak)・暴言・暴力・性的内容・社会的偏見・非倫理的行為を検出する |
| Granite-Speech-5.0-Turbo-CTC | 音声の文字起こし用。IBMはOpenASR Leaderboardで最速のASRモデルと説明 |
ブログは、この3つに基本モデルを加えた全部を「1つのモデルに合成」しており、GPU上のVRAM使用量は基本モデル単体とほぼ同じ、つまり「より少ないGPUでより多くの機能」と書いています。
仕組みの核は「Activated LoRA(aLoRA)」です。GitHubのREADMEによると、通常のLoRAはアダプターごとに学習したKVの分布が違うため、切り替えるたびにKVキャッシュを捨てて計算し直す必要があります。aLoRAは共通の正規化したKVキャッシュに対して学習されているので、1つのチェックポイントに同居でき、制御トークンを入力に置くと、その位置から該当アダプターが働きます。ブログは、チャットの生成で作ったKVキャッシュをその後のアダプターによる判定に再利用できるとも書いています。
使い方の例として、モデルカードには音声入力の呼び出しがあります。OpenAI互換のクライアントから、input_audioを含むメッセージを送ると、内蔵の音声モデルが文字起こしし、その文章が音声部分の代わりにチャットの文脈に差し込まれます。判定は、リクエストのchat_template_kwargsにadapter_nameを指定して切り替えます。
誰がいつから使えるのか・日本では
モデルはHugging Faceで公開されており、バックエンドはHugging Face TransformersとvLLMと書かれています。8Bのモデルカードのリリース日は2026年10月14日です。8Bと30Bはどちらも、基本モデル(Granite 4.1の8Bと30B、コンテキストは128K)にDecision・Guardian・音声認識を載せた同じ構成で、30Bの基本モデルにも同じ128Kの表記があります。
「全アダプター入り・音声なし」の版として、-preview付きの3B・8B・30Bも別に公開されています。GitHubのREADMEのクイックスタートは、今回確認した時点ではこの-previewのモデル名を使った例でした。
日本の読者にとって大事なのは言語です。8Bのモデルカードの基本モデルの対応言語には、英語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、日本語、ポルトガル語、アラビア語、チェコ語、イタリア語、韓国語、オランダ語、中国語が並びます。一方、内蔵の音声認識(470Mパラメータ)は英語のみです。音声認識モデル単体のモデルカードにも「Supported Languages: English」とあります。日本語の音声を文字にする用途には、今回の発表の範囲では使えません。
料金は、モデルがApache 2.0の公開重みなので、自分のGPU環境で動かす前提です。本記事が確認したページに、IBMが提供する有料のホスト型サービスの料金は載っていませんでした。
前と何が違うのか
ブログは、判定モデル(decision model)自体は新しくないとしています。IBMは以前の「Granite Libraries」で、判定やその他のタスク向けアダプターを公開済みで、ブログの説明に沿うと、今回はそれを組み合わせる「Switch」に、新しい汎用のDecision aLoRAと音声認識を足した形です。
比較についてのIBMの主張は次のとおりです。
- Guardian aLoRAは、安全関連の判定タスクで平均すると、Jev 1.13、Microsoft-Decision-1、GPT-Luna-Decisions、Clef-Flashを上回る(IBMのブログ)
- Granite-Switch-4.1-30B(基本のGraniteを凍結し、特化型aLoRAを4つ)と、Jev-27B(Qwen系の基本モデルを凍結し、汎用の判定LoRAを1つ)で、実世界の5ステップのRAGワークフローを競わせたところ、前者のほうがかなり速く完了した(IBMのブログ)
- 3BのカスタムGranite Switchでゲーム「Doom」を操作させたところ、毎秒60〜100回の判断ができた。IBMはJevの報告値として毎秒10回を挙げ、このモデルは遊びながら状況を実況し、質問にも答えられるとしている(IBMのブログ)
判定性能の数字は、モデルカードにも載っています。Decision aLoRAを、公開のDecision Index(高速サブセット1,068行、edition-v0.3)で評価した結果です。
| モデル | Overall | Knowledge | Language | Retrieval | Tools | Arts |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Granite Switch 4.1 8B | 42.9 | 29.1 | 48.9 | 49.8 | 59.8 | 18.0 |
| Granite Switch 4.1 30B | 50.1 | 32.4 | 58.6 | 49.8 | 76.5 | 26.4 |
どちらも0〜100のスコアです。このDecision Indexの表には、他社モデルの数字は並んでいません。
他社モデルとの数字の比較は、Guardian側のモデルカード(granitelib-guardian-r1.0のguardian-core)にあります。「最良の学習済みアダプター」とブログが挙げた4モデルを並べた表で、IBMの測定です。
| 指標 | 最良の学習済みアダプター | Jev 1.13 | Microsoft-Decision-1 | gpt-6-luna-decisions | Clef-Flash |
|---|---|---|---|---|---|
| OOD Safety(F1) | 0.810 | 0.779 | 0.787 | 0.769 | 0.761 |
| RAGの幻覚検出 LM-AggreFact(BAcc) | 0.757 | 0.783 | 0.778 | 0.764 | 0.672 |
| 関数呼び出しの幻覚検出 FC Reward Bench(BAcc) | 0.790 | 0.689 | 0.741 | 0.731 | 0.542 |
安全性と関数呼び出しでは上回っていますが、RAGの幻覚検出ではJev 1.13、Microsoft-Decision-1、gpt-6-luna-decisionsを下回っています。ブログの「平均すると上回る」は、こうした項目ごとの差を含んだ説明です。なお、ブログでは「GPT-Luna-Decisions」、このモデルカードでは「gpt-6-luna-decisions」と表記されています。
公開直後の8Bはダウンロード28件、READMEはまだ3B-previewのまま
日本時間10月16日5時36〜37分に、ブログと関連ページを順に取得しました。そのときの8Bのモデルカードには、ダウンロード数28、いいね0と表示されていました。公開直後のページです。また、GitHubのREADMEの紹介文とクイックスタートは、先に触れたとおり-previewの3Bのモデル名のままで、今回の8B・30Bの非プレビュー版を前面に出した書き方にはまだなっていませんでした。実際にモデルを動かして試したわけではないので、速度や精度は確認していません。
音声は英語だけ、速さの比較はIBMの説明だけ
- 音声は英語のみで、結合も途上: モデルカードによると、音声エンコーダーとLLMはまだ一緒に学習されておらず、両者をつなぐ学習済みの射影もありません。制約として、英語のみ、出力は小文字・句読点なし、デコード時の制御なしと書かれています
- 性能の主張はIBM自身の比較: 他社の判定モデルとの比較や、RAGワークフローの速度、Doomの毎秒の判断数は、ブログ上のIBMの説明です。Doomの比較相手の数字は、IBMがJevの報告値として引用したものです。詳細なデータはIBMが「今後数週間で公開する」と書いており、本記事の時点では第三者による検証は確認していません
- Decisionは一部の機能が未整備: モデルカードによると、decisionはGranite Librariesに入ったものの、Mellea(GitHubのREADMEによると、LLMの出力を型で制約するPythonのライブラリ)の対応するintrinsicはまだなく、低レベルの呼び出しを使う必要があります。独自アダプターを学習するためのAdapter SDKも「公開予定」の段階です
- 日本での提供: 今回確認したページに提供地域の制限は書かれていませんが、日本語の音声認識は含まれません。日本語の運用例は、今回確認したページにはありませんでした
IBMのGraniteについては、今回の基本モデル(4.1)より後に出た「Granite 4.2」の作り方を整理した記事があります。→ IBM「Granite 4.2」の作り方
突き合わせたIBMとHugging Faceの6ページ
確認時刻は、いずれも日本時間2026年10月16日5時36〜37分です。
- Granite Switch 4.1: Chat, Decisions, and Speech from One Endpoint(Hugging Faceブログ・IBM Granite)
- ibm-granite/granite-switch-4.1-8b
- ibm-granite/granite-switch-4.1-30b
- ibm-granite/granite-speech-5.0-470m-turboctc
- generative-computing/granite-switch(GitHub)
- ibm-granite/granitelib-guardian-r1.0 の guardian-core(Hugging Face)
本記事は続報があり次第更新します。
この記事でよく聞かれること
- Granite Switch 4.1とは何ですか?
- IBMがHugging Faceで公開した、チャット・判定(Decision)・安全判定(Guardian)・音声文字起こしを1つのモデルにまとめた「Granite Switch」の4.1版です。サイズは8Bと30Bの2つで、IBMのブログによると1つのホスト型エンドポイントから自然言語の応答、判定、音声からの文字起こしを切り替えて使えます。ライセンスはApache 2.0です。
- Granite Switch 4.1の音声認識は日本語に対応していますか?
- 音声認識は英語のみです。モデルカードによると、組み込まれているGranite-Speech-5.0-470M-TurboCTCは英語のモデルで、Granite Switchの音声入力には英語のみ・出力は小文字で句読点なしという制約も書かれています。一方、基本モデルのGranite 4.1の対応言語には日本語が含まれると8Bのモデルカードにあります。
- Granite Switch 4.1はどうやって使えますか?
- モデルはHugging Faceで公開されており、モデルカードによるとHugging Face TransformersとvLLMで動かせます。GitHubのgranite-switchリポジトリのコードはApache-2.0で、pipでインストールしてvLLMのOpenAI互換サーバーとして起動する手順が書かれています。
- VRAMは増えないのですか?
- IBMのブログは、基本モデル・Decision・Guardian・音声認識の4つを1つのモデルにまとめても、GPU上のVRAM使用量は基本モデル単体とほぼ同じと説明しています。これはIBMの説明で、本記事では測定していません。
出典・参照資料
- 一次資料Granite Switch 4.1: Chat, Decisions, and Speech from One Endpoint — IBM Granite(Hugging Face公式ブログ) ↗
- 一次資料ibm-granite/granite-switch-4.1-8b — IBM Granite公式モデルカード ↗
- 一次資料ibm-granite/granite-switch-4.1-30b — IBM Granite公式モデルカード ↗
- 一次資料ibm-granite/granite-speech-5.0-470m-turboctc — IBM Granite公式モデルカード ↗
- 一次資料generative-computing/granite-switch — GitHubリポジトリ ↗
- 一次資料ibm-granite/granitelib-guardian-r1.0 guardian-core README — IBM Granite公式モデルカード ↗
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