NVIDIA、DSXで欧州のAIファクトリーの冷却水をほぼゼロにできる設計同じトークン数を最大30%少ない電力で出すMaxLPS(マックスエルピーエス)などをGTC Berlinで発表
日刊AIニュース10月21日(水)号:前日のAIのニュース18本を短くまとめました(約11分)›
NVIDIAは2026年10月21日、GTC Berlinで、AIファクトリー基盤DSXの欧州での採用を発表した。冷却水をほぼゼロにする設計、同じトークン数を最大30%少ない電力で出すMaxLPS、DSX OSの新部品3つが柱で、Nscaleは推論スループット49%増を示した。数字は同社と提携先の発表による。

目次
NVIDIAは現地時間2026年10月21日、ドイツのGTC Berlinで、AIファクトリーの参照設計「NVIDIA DSX」を欧州のクラウド事業者や設備メーカーが採用していると発表した。NVIDIAの発表によると、ドライクーラーを使う設計で施設の冷却水消費をほぼゼロにでき、電力管理ソフトの「DSX MaxLPS(マックスエルピーエス)」は同じトークン数を最大30%少ない電力で出せるという。オープンソースの運用ソフト「DSX OS」には新部品3つが加わり、シミュレーション用のデジタルモデルを集める「SimReady Central」もHugging Face(ハギングフェイス)で始まったと同社は発表している。
3行まとめ
- NVIDIAはGTC Berlin(2026年10月21日)で、DSXの冷却を液冷+ドライクーラーにすれば冷却水はほぼゼロ、2ギガワット規模なら1日5,400万リットル(18万世帯分)を節約できると発表した
- DSX MaxLPSは同じトークン数を最大30%少ない電力で出せると説明。Nscaleのアイスランドでの評価では推論スループット49%増・管理できるGPU容量37%増(264kWの電力枠内)
- DSX OSにConfig Manager・Rack Management Service・Cluster Readiness Engineの3部品がデベロッパープレビューで加わり、CoreWeave・Lambda・Nebiusなど15社が試している
本記事の内容は、日本時間10月21日18時台に公式ページで確認したものです。
何が発表されたのか
NVIDIAによると、DSXは計算、ネットワーク、ストレージ、ソフトウェア、電力、冷却をひとつのシステムとして設計した、AIファクトリーの参照アーキテクチャ。今回のプレスリリースは、その構成要素のうち次の部分を取り上げている。
| 部品 | 役割(NVIDIAの説明) |
|---|---|
| DSX MaxLPS | 電力枠の中で電力を動的に配分する |
| DSX Flex | 計算の電力消費を電力網の状況に合わせる |
| DSX Reference Design | 検証済みのインフラ構成 |
| DSX Sim | シミュレーション |
| DSX OS | インフラ管理 |
| DSX Exchange | 計算設備と施設設備をつなぐ |
本記事では発表の中身を5つに分けて見る。冷却水の削減、MaxLPSとFlexによる電力の効率化、DSX SimとSimReady Centralによる設計、DSX OSの新部品、そして欧州の設計・電力・冷却パートナーの動きだ。
冷却水は本当にほぼゼロになるのか
NVIDIAは従来の冷却塔を、水を蒸発させて熱を捨てるため補給水が要る方式と説明している。DSXの参照設計では、冷却液が計算機の熱を吸って閉じた回路を循環し、屋外のドライクーラーが水を蒸発させずに熱を空気中へ放つ。
- Vera Rubinの基盤は、最大45℃の冷却液での100%液冷に対応する
- ドライクーラー方式と組み合わせると、施設の冷却水消費をほぼゼロにできる
- 2ギガワット規模では、冷却塔方式に比べて1日5,400万リットル、18万世帯の1日の水使用量に相当する節約になりうる
ここで押さえたいのは「ほぼゼロ」「最大100%」が、NVIDIAの設計上の可能性として書かれている点だ。同社自身が「最も暑い時期に補助の機械式冷却が要るかは現地の気候で決まる」と書いており、どの施設でも常にゼロになるという話ではない。また5,400万リットルは2ギガワットという大規模の仮定での数字で、個別の施設の実測ではない。
同じ出力で電力を減らす──MaxLPSとFlex
MaxLPS
NVIDIAによると、MaxLPSは電力が供給できる量が、事業者が立ち上げられる容量を左右するという問題に答えるソフトだ。電力枠の中で配分を動的に変え、同じトークン数を最大30%少ない電力で出せる。余った分を、同じ電力枠でGPUを増やしたり処理量を上げたりするのに使うこともできる。
製品ページ(DSX MaxLPS)は、MaxLPSを「チップ、冷却、システム、ソフトの技術のまとまり」と書き、45℃冷却、動的な電力ソフト、電力あたり性能を上げる技術を組み合わせるとしている。同じページには「同じ電力枠で最大40%多くの計算」という別の表現もある。プレスリリースの「最大30%少ない電力」とは言い方も数字も違い、基準の置き方は今回のページからは読み取れなかった。
実測として発表に出ているのは次の2件。
| 事業者 | 構成 | 結果(各社の評価) |
|---|---|---|
| Lambda | HGX B200システムでの概念実証 | クラスタのトークン処理量24%増、GPU容量19%増(電力枠は固定) |
| Nscale | アイスランドの施設、GB300 NVL72の4ラック、電力枠264kW | 推論スループット49%増、管理できるGPU容量37%増 |
MaxLPSを使う予定(プレスリリース冒頭では「planning to use」、本文では「exploring」)として名前が挙がったのは、CoreWeave、Firmus、Google Cloud、IREN、Lambda、Nebius、Nscale、Sharon AIの8社。
Flex
DSX Flexは、電力網の需給調整の要請や電力価格に合わせて、AIの計算の電力消費を調整するソフトだ。NVIDIAの発表では、系統からの電力、敷地内の再生可能エネルギー、蓄電池をまとめて扱い、「柔軟な負荷」として電力網の安定と早い系統接続につなげるという。
初期の試験として、Emerald AI、EPRI、Nebius、英国のNational Grid、NVIDIAが、Blackwell Ultra GPUのクラスタで、模擬の電力網イベントに応じて消費電力を最大40%減らしつつ、重要な処理を続けられたと発表している。実際の電力網での運用ではなく、模擬イベントでの試験だ。
製品ページ(DSX Flex)には、優先度の高い推論サービスを守るために緊急でないバッチ処理を止める、といった運用方針が書かれている。
設計とシミュレーション──SimReady Central
NVIDIAは、Vertivなどのパートナーが提供する検証済みの電力・冷却設備のデジタル部品を集めた「SimReady Central Library」を始めると発表した。DSX Simと組み合わせ、設備を据える前に電力や冷却の構成を仮想的に評価するためのものだ。プレスリリースは、PTCがCAD(コンピューター支援設計)を使ってこうした資産づくりに加わっていると書いている。
Nscaleは、ポルトガルとアイスランドの施設でDSX Simによるデジタルツインを作り、導入前に電力・冷却・インフラの構成を評価しているという。
DSX OSの新部品3つ
DSX OSはオープンソースでモジュール式のソフト群。今回追加されたのは、いずれもデベロッパープレビューの3つ。
- NVIDIA Config Manager:AIファクトリーのネットワーク設定を自動化する
- NVIDIA Rack Management Service:ラック単位の電力、在庫、ファームウェア、スイッチを管理する
- NVIDIA Cluster Readiness Engine:分散ワークロードを走らせてGPUクラスタを本番前に検証し、故障を特定のノードに切り分ける
既存のNVIDIA Infrastructure Controller、AI Cluster Runtime、NVSentinelと合わせて、インフラの運用自動化と健全性検証を支えるという。名前が挙がったクラウド事業者は、Aleria、Cassava、CoreWeave、Crusoe、Firmus、Firebird、G42、GMI Cloud、IREN、Lambda、Nebius、Nscale、Radiant、Sharon AI、Voltaの15社で、最新部品を「試している(exploring)」と書かれている。
DSX OSの製品ページは、段階的に採用できる設計だと説明している。必要な部分だけ選び、既存の環境と組み合わせ、あとから広げる使い方だ。なお同ページの構成一覧には、KAI Scheduler、Run:ai(ランエーアイ)、Dynamoなどのプラットフォーム部品も並んでいる(Run:aiについては別記事Run:aiのオープンソース化を参照)。同じ日に発表されたDSX PODとは別の発表だ。
欧州のパートナーは何をしているのか
プレスリリースは、設計・電力・冷却の各社の動きを並べている。
| 会社 | 発表された内容 |
|---|---|
| Schneider Electric | Vera Rubin向けの電力・冷却の参照設計を開発。AVEVAとデジタルツインに取り組む |
| Procore | 建設管理のプラットフォームをDSX Simと連携 |
| Siemens | DSX Simで電力、冷却、騒音をシミュレーション |
| Dassault Systèmes、Vertiv | VertivのOneCoreインフラのデジタルツインモデルを開発 |
| ABB | DSX SimでSimReady資産を開発。新ポートフォリオInfinitus Direct Currentで800VDCの開発を進める |
| Trane Technologies、Eaton | Vera Rubin DSXの参照設計向けに統合設計。Traneは7つの熱管理の参照設計(うち3つは250MW級のDSXベース)を公開 |
| GE Vernova、Hitachi Energy、Siemens Energy | 電力インフラとデジタルツインで協業。Hitachi EnergyはエネルギーマネジメントシステムとDSX Flexの連携を開発 |
DSX Readyの認定
「DSX Ready」は、特定の製品がカテゴリー別の認定を終えたことを示すNVIDIAのプログラム。プレスリリースによると、Trane TechnologiesのLiquidStack GigaModularとVertivの2.3MWのCoolChip(どちらも冷却液分配装置)がそれぞれ該当する区分の認定を受け、Hitachi Energyの蓄電システムはDSX Ready BESSの認定を受けた。
DSX Readyの公式ページによると、認定は会社全体ではなく個別の製品や解決策に対するもので、現在の認定区分はBESS(蓄電システム)、CDU(冷却液分配装置)、冷却液の3つだけ。ほかの区分は順次広げるとしている。
日本時間18時台に公式ページを見て気づいたこと
日本時間10月21日18時48分から49分にかけて、プレスリリースと4つの製品ページを順に取得した。気づいたのは3点ある。
- MaxLPSの数字がページによって違う。プレスリリースは「同じトークン数を最大30%少ない電力で」、製品ページは「同じ電力枠で最大40%多くの計算」と書いている。どちらもNVIDIAの数字だが、同じ測り方なのかは今回確認できなかった。
- 検知元のフィードの時刻は協定世界時9時35分(日本時間18時35分)で、プレスリリース本文には時刻の記載がなく日付だけだった。
- DSX OSの製品ページには、今回の新部品3つのうちConfig Managerが「NVIDIA Switch Infrastructure - Config Manager」の名で、Rack Management Serviceとともにインフラ系ソフトの一覧に、Cluster Readiness Engineが健全性・回復の区分に載っている。プレスリリースの「デベロッパープレビュー」という記載はこのページには見当たらなかった。
まだ確認できていないこと
- 日本での提供:今回取得した公式ページに、日本での提供や日本の事業者の採用についての記載は見当たらなかった。発表は欧州の事業者と欧州の電力・冷却事情を軸にしている。
- 料金・提供時期:MaxLPSとFlexについて、料金や一般提供の時期は、今回確認した4つの公式ページ(プレスリリース、MaxLPS、Flex、DSX OS)には載っていなかった。プレスリリースの末尾には、記載の製品や機能は「提供可能になった時点で提供される」段階のものがあり、約束ではないという注意書きがある。
- 数字の出どころ:30%、49%、40%などはすべてNVIDIAまたは参加企業の発表で、第三者による検証は今回の発表には書かれていない。Nscaleの結果は「評価の実行(evaluation run)」で、GB300 NVL72の4ラックでの数字だ。2ギガワット規模の水の節約は仮定の規模での試算だ。
- SimReady Central:公式発表では「Hugging Faceで始まった」とあるが、解説ブログ(huggingface.co/blog/nvidia/simready-central-assets-robotics-ai-factories)は取得時にHTTP 401が返り、内容を読めなかった。資産の数や使い方は未確認で、本記事の説明はプレスリリースの記述に限る。
- 製品は未試用:本記事は公式ページの内容をまとめたもので、MaxLPSやDSX OSを筆者が動かして確かめたものではない。
出典と確認時刻
- European Ecosystem Builds World’s Most Efficient AI Factories With NVIDIA DSX(NVIDIA Newsroom)(日本時間2026年10月21日18時48分に確認)
- NVIDIA DSX MaxLPS(18時49分に確認)
- NVIDIA DSX Flex(18時49分に確認)
- NVIDIA DSX OS(18時49分に確認)
- NVIDIA DSX Ready(18時49分に確認)
本記事は続報があり次第更新します。
この記事でよく聞かれること
- NVIDIA DSXの冷却は何が従来と違うのですか?
- NVIDIAの発表によると、冷却塔は水を蒸発させて熱を捨てるため補給水が要ります。DSXの参照設計は液冷の計算機と、水を蒸発させず熱を空気中に放つドライクーラー(大きな放熱器のようなもの)を組み合わせ、冷却液は閉じた回路で循環します。Vera Rubinの基盤は最大45℃の冷却液での100%液冷に対応し、ドライクーラー方式なら施設の冷却水消費をほぼゼロにできるとしています。最も暑い時期には補助の機械式冷却が要るかどうかは現地の気候しだいと、同社は書いています。
- MaxLPSで電力が最大30%減るというのは本当ですか?
- 「最大30%」はNVIDIAの発表の数字です。同社はDSX MaxLPSが、AIファクトリーに割り当てられた電力枠の中で電力を動的に配分し、同じ数のトークンを最大30%少ない電力で出せると説明しています。実測として、LambdaはHGX B200の概念実証でクラスタのトークン処理量24%増・GPU容量19%増、Nscaleはアイスランドの施設でGB300 NVL72の4ラックで推論スループット49%増・管理できるGPU容量37%増を示したと発表しています。いずれも各社の評価で、第三者の検証は今回の発表には書かれていません。
- DSX OSの新しい部品はもう使えますか?
- NVIDIAの発表では、Config Manager、Rack Management Service、Cluster Readiness Engineの3つを、オープンソースのDSX OSに加え、いずれもデベロッパープレビューとしています。Aleria、CoreWeave、Crusoe、Lambda、Nebius、Nscaleなど15社が最新部品を「試している(exploring)」段階だと書かれています。一般提供の時期は、今回確認した公式ページには見当たりませんでした。
出典・参照資料
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