AI時短ラボ
検索
業界

NVIDIA、T-Mobileの商用網で「世界初のAI-RAN通話」と発表BT・Deutsche Telekom・Elisaも試験へ、基地局にGPUサーバーを置く構想

執筆:約14分で読めます

日刊AIニュース10月21日(水)号:前日のAIのニュース18本を短くまとめました(約11分)›

NVIDIAは2026年10月21日(現地)、GTC Berlinで通信事業者向けの発表を行った。T-Mobileが米ワシントン州ベルビューの商用網でNokiaとNVIDIAのAI-RAN通話を完了し、BT・Deutsche Telekom・Elisaが試験を進めると説明。新構成のARC MGX 2U/4Uと、欧州・中東・アフリカ9事業者のインフラ構築・拡張も示した。

NVIDIA、T-Mobileの商用網で「世界初のAI-RAN通話」と発表──BT・Deutsche Telekom・Elisaも試験へ、基地局にGPUサーバーを置く構想
目次

NVIDIAは現地時間2026年10月21日、GTC Berlinで、通信事業者のネットワークを「分散型のインテリジェンス基盤」にする取り組みを発表した。NVIDIA公式ニュースルームによると、T-Mobileが米ワシントン州ベルビューの商用網で、NokiaとNVIDIAとともに「世界初のAI-RAN通話」を完了した。BT、Deutsche Telekom(ドイツテレコム)、ElisaもNokiaのソフトとNVIDIA Aerial RAN Computer(ARC)によるAI-RANの試験を発表している。AI-RAN(エーアイラン)は、携帯電話の基地局側の無線ネットワークで、通信処理とAI処理を同じ計算基盤に載せる考え方だ。

3行まとめ

  1. T-Mobileが米ベルビューの商用網でAI-RAN通話を完了したとNVIDIAが発表。BTは2027年にバーミンガムで、Deutsche Telekomは2027年に実地試験へ進む計画
  2. NVIDIAはRTX PRO 6000 Blackwell搭載のARC新構成「MGX 2U/4U」を発表し、欧州・中東・アフリカの9事業者がNVIDIAベースのインフラを新設・拡張
  3. NokiaとCiscoは自律ネットワーク運用ソフトにNVIDIA Nemotronを組み込み、BT・TCS・NTT DATAもエージェント開発に採用

本記事の内容は、日本時間10月21日19時台に公式ページで確認したものです。

何が発表されたのか

NVIDIAの発表は4本の柱で構成されている。いずれも発表元はNVIDIA自身で、各社の成果は同社ページの記述に基づく。

  • AI-RAN: T-Mobileの通話に加え、BT・Deutsche Telekom・Elisa・Orangeが試験や検証を進める
  • 新しいサーバー構成: ARCの「MGX 2U」と「MGX 4U」
  • 欧州・中東・アフリカ(EMEA)の9事業者: NVIDIAベースのインフラを新設または拡張
  • 自律ネットワーク運用: NokiaやCiscoなどがNemotron(ネモトロン)のオープンモデルを自社ソフトに統合

Jensen Huang(ジェンスン・フアン)CEOは「通信網は世界の会話を運ぶために作られた。これからは世界のインテリジェンスも運ぶ」と述べたと、発表に引用されている。

AI-RANの試験は各社どこまで進んでいるのか

NVIDIAの発表が各社について書いている進捗を並べると、次のとおり。

事業者 進捗(NVIDIA発表より) 次の予定
T-Mobile ベルビューの商用網でAI-RAN通話を完了 記載なし
BT 英国で実網試験を準備中 2027年にバーミンガムで実施予定
Deutsche Telekom ボンとオウルの検証ラボでNokia・NVIDIAの商用AI-RANプラットフォームを検証。上り回線のチャネル推定をAIで改善する機能も含む 2027年に実地試験へ
Elisa 音声・モバイルデータ・映像分析を1つの基盤で同時に動かし、欧州初と説明 2027年の分散展開と商用AI-RANサービスへの道が開けたと説明
Orange NokiaのRANソフトをARC上で試験中。周波数利用効率の改善とエッジサービスの支援が焦点 記載なし

NVIDIAは、世界でNokiaのanyRANソフトとNVIDIA ARCを使ったAI-RANの協業を公に発表した通信事業者が「ほぼ20社」にのぼるとも書いている。

T-Mobileの通話の構成は具体的に書かれている。商用のARCサーバー、NokiaのNVIDIA CUDA対応RANソフト、Massive MIMO(大規模アンテナ)無線機を使い、既存の5G Standaloneコアと市販スマートフォンにつないだ。NVIDIAはこの通話を「recently(最近)」行ったと書いており、実施日は明記していない。「世界初」はNVIDIAの表現で、何をもって初とするかの基準や第三者による確認は、今回取得したページには含まれない。

Elisaの発表では何が書かれているか

Elisaはフィンランド・ヘルシンキで同日、自社のプレスリリースを出した。Elisaの発表によると、同社は5G Advancedネットワーク上で、音声・モバイルデータ・映像分析を同じAI-RANプラットフォームで同時に動かした。試験にはNokiaのAI-RANソリューションと、NVIDIA RTX PRO 4500 Blackwell Server Edition GPUを載せたARCを使い、VoNR(5G音声通話)とデータ通信の上で、AIによる無線アルゴリズムの改善(AI-in-RAN)と、映像分析のエッジAI(AI-on-RAN)を実演したという。

あわせてElisaは、NVIDIA RTX PRO 6000 BSE GPU搭載のDell PowerEdgeサーバーを、ARC構成に基づいてフィンランド国内の複数拠点に導入を進めていると説明している。

NVIDIAとElisaの記述は、表現が少し異なる。NVIDIAは「欧州初のAI-RANのフィールド試験」、Elisa側の引用では「欧州初のCloud AI-RAN通話」という言い方だ。また、Elisaの見出しは2027年に「商用網で効果を検証する準備」としており、「商用サービス開始」とは書いていない。本文には「商用AI-RANサービスへの道を開く」とある。

新しいサーバー構成ARC MGX 2U・4Uは何が違うのか

NVIDIAは、ARCの新構成としてMGX 2UとMGX 4Uの2つを発表した。公式ページの説明は次のとおり。

  • 高密度・大容量のインテリジェンス処理と無線処理向けで、主に集約型のRANサイトでの利用を想定
  • GPUはNVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition
  • CPUはx86とNVIDIA Vera CPUの選択肢
  • Dell Technologies、Quanta Cloud Technology、Supermicroが「ARC対応サーバー」を提供する

今回取得した2つのページ(NVIDIA、Elisa)で、価格と具体的な出荷日は確認できなかった。「提供する」という表現が続いており、発売済みとは書かれていない。

欧州・中東・アフリカの9事業者は何をするのか

NVIDIAの発表では、EMEAの9事業者がNVIDIAベースのインフラを構築または拡張している。

区分 事業者(地域)
新規 CRA(チェコ)、etisalat(UAE)、Silknet(ジョージア)、TIM(イタリア)
拡張 Cassava(アフリカ)、Deutsche Telekom(ドイツ)、Fastweb + Vodafone(イタリア)、Kazakhtelecom(中央アジア)、Orion Telecom(セルビア)

個別の事例としては、次のものが挙がっている。

  • Deutsche Telekom: NVIDIAベースの「Industrial AI Cloud」を拡張する計画。NemotronやSoofiなどのオープンモデルを載せ、ロボット企業のAgile Robotsなどに提供する。GTC Berlinでは、ロボット本体、分散エッジ、中央の3層で処理を分けるデモを見せるという
  • Orange: 自社のAI基盤「Live Intelligence」の上でNemotronなどをマネージドサービスとして提供。ARCにはNemotron Speechを使い、緊急対応や現場チームが複数言語を低遅延で翻訳する用途を示した
  • Elisa: 分散拠点にARCを置き、企業向けアシスタントとなる音声アプリを動かしている

自律ネットワーク運用にNemotronはどう使われるのか

NVIDIAによると、Nemotronのオープンモデルと同社のAgent Toolkitは、パートナーの商用ソフトに統合済みだ。

企業 発表されている使い方
Nokia Autonomous Networks SuiteにNemotronを統合。固定・無線・コア・トランスポートの運用を担うエージェントを構築
Cisco Nemotronを微調整してCrosswork AIに組み込み、IPと光の伝送網を管理する共通のエージェント層に
TCS 通信事業者と協力し、無線サイトの構築検証や障害の検知・診断・自動修復、多言語音声のエージェントを開発
BT 現場設置の写真を点検して問題を見つけ、再訪問を減らすエージェントにNemotronを採用
NTT DATA NextGenOSSプラットフォームを拡張し、ネットワーク劣化の兆候、原因候補、次の対応を示すエージェントを開発

Nemotronを使ったこれらの成果について、今回取得したページには定量的な効果の数字は載っていない。

日本の読者に関係するのはどこか

今回取得したNVIDIAとElisaのページには、日本の通信事業者の名前は出てこない。日本企業として確認できたのはNTT DATAのみで、ネットワーク運用のエージェント開発という文脈だ。日本での提供や試験の予定は、今回の2ページには書かれていない。

NVIDIAは「通信事業者は電力・光ファイバー・周波数を持つ基地局やデータセンターをすでに持つ」という立場から、これらの拠点にGPUを置いてAIモデルを提供する構想を打ち出している。日本の事業者の動きについては、各社の発表を別途確認する必要がある。

公式ページを確認して気づいたこと

日本時間10月21日19時26分に、NVIDIAニュースルームの本文を取得した。同時に、このニュースの関連ページとして挙がっていたNokiaのニュースルーム、NVIDIAのARCファミリーのページ、BTの技術紹介ページも取りに行ったが、3つとも取得時点ではHTTP 404(ページが見つからない)が返った。そのため、Nokia側とBT側の説明は、本記事ではNVIDIAの発表本文の記述に頼っている。Elisaのプレスリリースは取得できた(19時26分)。

もう1点、Elisaのページには掲載日時として「21.10.2026 klo 20.30」と表示されていた(タイムゾーンの記載は無い)。フィンランド時間(夏時間・UTC+3)と読むと日本時間22日午前2時30分にあたり、筆者の取得時刻(日本時間21日19時26分)より後になる。ページ内の時刻表記の扱いは今回確認できていないので、本記事では掲載時刻を根拠にしていない。

404で読めなかったページと、載っていない数字

  • Nokia・BT・NVIDIA ARCファミリーの個別ページ: 取得時点で404のため未確認。各社の独自の数値や条件が別にある可能性は否定できない
  • 効果の数字: AI-RANによる周波数効率や上りスループットの改善幅は、今回取得したページでは数字として確認できなかった。Deutsche Telekomの「上りのユーザースループットを改善」も、改善の程度は書かれていない
  • 「世界初」「欧州初」: いずれも発表元の表現
  • 将来の予定: BT・Deutsche Telekom・Elisaの2027年の計画は見込みの記述。NVIDIAは発表末尾の注意書きで、提携先との試験・展開とその時期を含む記述は将来の見通しで、結果が大きく異なりうるとしている
  • ARC MGX 2U/4Uの価格・出荷日: 今回の2ページには記載なし

この記事が依拠した2つの発表

同じGTC Berlinの発表として、OpenShellリファレンスアーキテクチャ、Agent Knowledge Foundation、DSX PODの記事もある。

本記事は続報があり次第更新します。

この記事でよく聞かれること

AI-RAN(エーアイラン)とは何ですか?
Elisaの発表によると、無線アクセスネットワーク(RAN)の機能とAIの処理を同じ高速計算基盤で動かす仕組みです。携帯網を動かすコンピューターでAIも動かせるようにし、計算をデータの生まれる場所の近くに置く、と説明されています。
T-Mobileの「世界初のAI-RAN通話」とは何ですか?
NVIDIAの発表によると、T-Mobileが米ワシントン州ベルビューの商用網で、商用のARCサーバー、NokiaのCUDA対応RANソフト、Massive MIMO無線機を使い、既存の5G Standaloneコアと市販スマートフォンにつないで完了した通話です。NVIDIAはこれを「商用網での世界初のAI-RAN通話」としています。
新しいARC構成MGX 2U・4Uの提供時期は?
NVIDIAの発表は、RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition GPUを載せ、x86とNVIDIA Vera CPUの選択肢を用意する構成と説明し、Dell Technologies、Quanta Cloud Technology、Supermicroが対応サーバーを提供するとしています。今回取得した公式ページには、価格と具体的な出荷日の記載はありませんでした。
日本の通信事業者は今回の発表に入っていますか?
今回取得したNVIDIAとElisaのページに、日本の通信事業者の名前はありませんでした。日本企業として確認できたのは、自律ネットワーク運用でNemotronを使う事例に挙がったNTT DATAです。
シェア: ポスト はてブ

出典・参照資料

AI時短ラボ

大きいニュースはYouTubeでも解説しています。Xでは新着記事をお知らせしています。

コメント

まだコメントはありません。最初のコメントを書いてみませんか?

AIについて聞きたいことはありますか?

質問箱で無料で受け付けています。回答は公開され、他の方の参考にもなります。

質問箱を見る →

関連記事

Google Cloud、Vera Rubin(ベラ・ルービン)NVL72搭載の「A5X」を来月一般提供へ──欧州への拡大と最大96万基のRubin GPUを計画とNVIDIA発表の記事画像

Google Cloud、Vera Rubin(ベラ・ルービン)NVL72搭載の「A5X」を来月一般提供へ 欧州への拡大と最大96万基のRubin GPUを計画とNVIDIA発表

業界
NVIDIA、DSXで欧州のAIファクトリーの冷却水をほぼゼロにできる設計──同じトークン数を最大30%少ない電力で出すMaxLPS(マックスエルピーエス)などをGTC Berlinで発表の記事画像

NVIDIA、DSXで欧州のAIファクトリーの冷却水をほぼゼロにできる設計 同じトークン数を最大30%少ない電力で出すMaxLPS(マックスエルピーエス)などをGTC Berlinで発表

業界
NVIDIA、Confidential Computing(コンフィデンシャル・コンピューティング)に「Confidential Bare Metal」を追加──Grace Blackwell NVL72とHGX/DGX Rubin NVL8に対応、Cohere・Google Cloudが採用を表明の記事画像

NVIDIA、Confidential Computing(コンフィデンシャル・コンピューティング)に「Confidential Bare Metal」を追加 Grace Blackwell NVL72とHGX/DGX Rubin NVL8に対応、Cohere・Google Cloudが採用を表明

プロダクト
NVIDIA、Vera Rubin(ベラ・ルービン)のAIファクトリーを工場組み立てのコンテナで届ける「DSX POD」を発表──現地の導入は6か月から最短14日、提供は2027年初めの予定の記事画像

NVIDIA、Vera Rubin(ベラ・ルービン)のAIファクトリーを工場組み立てのコンテナで届ける「DSX POD」を発表 現地の導入は6か月から最短14日、提供は2027年初めの予定

プロダクト
NVIDIA、GPU管理基盤「Run:ai(ランエーアイ)」の全体をオープンソース化──KAI Scheduler・GPU Fractioning Operatorなど4部品と、Crusoe・Nebiusなど8社の提供の記事画像

NVIDIA、GPU管理基盤「Run:ai(ランエーアイ)」の全体をオープンソース化 KAI Scheduler・GPU Fractioning Operatorなど4部品と、Crusoe・Nebiusなど8社の提供

検証
NVIDIA、供給網パートナー6社と生産能力の拡大計画を発表──基板は3年で2.5倍、Amkorの先端パッケージは300%超、KYECの米国テスト拠点に11億ドルの記事画像

NVIDIA、供給網パートナー6社と生産能力の拡大計画を発表 基板は3年で2.5倍、Amkorの先端パッケージは300%超、KYECの米国テスト拠点に11億ドル

業界
NVIDIA、ドイツ連邦政府とフィジカルAI向けモデルの共同意向表明に署名──Agile Robotsなど独スタートアップ4社への投資も発表の記事画像

NVIDIA、ドイツ連邦政府とフィジカルAI向けモデルの共同意向表明に署名 Agile Robotsなど独スタートアップ4社への投資も発表

業界
Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)とNVIDIA、自動運転の提携を拡大──Hyperion・Alpamayo Stack・Halosを組み合わせ、将来のレベル4まで視野にの記事画像

Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)とNVIDIA、自動運転の提携を拡大 Hyperion・Alpamayo Stack・Halosを組み合わせ、将来のレベル4まで視野に

業界