NVIDIA、GPU管理基盤「Run:ai(ランエーアイ)」の全体をオープンソース化KAI Scheduler・GPU Fractioning Operatorなど4部品と、Crusoe・Nebiusなど8社の提供
NVIDIAは2026年10月13日、Kubernetes上でGPUを割り当てる基盤「NVIDIA Run:ai」の全体をオープンソースにしたと発表した。KAI Scheduler、GPU Fractioning Operator、KAI Resource Management、Workload Mapの4部品は単体でも使え、Crusoe、Nebiusなど8社が自社サービスに組み込む。

NVIDIA(エヌビディア)は2026年10月13日(現地)、AIの学習や推論に使うGPUをKubernetes上で割り当て・管理する基盤「NVIDIA Run:ai(ランエーアイ)」の全体を、オープンソースソフトウェアとして公開したと発表しました。公式のテクニカルブログの公開時刻は協定世界時14時19分で、日本時間では10月13日23時19分です。同社はこれを「NVIDIA DSX AI Factory Platform」の拡張と位置づけ、Crusoe、Mirantis、Nebiusなど8社が自社サービスに組み込むとしています。
3行まとめ
- NVIDIAがRun:ai基盤の全体をオープンソース化。GitHubのリポジトリはApache License 2.0、NGCの「Community Product」は有料契約不要・NVIDIAのエンタープライズサポートなし
- KAI Scheduler、GPU Fractioning Operator、KAI Resource Management、Workload Mapの4部品は単体でも採用可能
- Crusoe、Mirantis、Nebius、OpenNebula Systems、Rafay、Saturn Cloud、Spectro Cloud、vClusterの8社が提供・統合。NVIDIAの有償版も継続
本記事の内容は、日本時間10月13日23時台に公式ページで確認したものです。
何が公開されたのか
NVIDIAの発表によると、公開されたのは「完全なNVIDIA Run:ai基盤」と、単体でも使える4つの部品です。
| 部品 | NVIDIAの説明 |
|---|---|
| KAI Scheduler | Kubernetes向けのスケジューラー。ギャングスケジューリング、公平配分(fair-share)とクォータ、トポロジー認識、GPU共有、DRA(Dynamic Resource Allocation)に対応 |
| GPU Fractioning Operator | CUDAのGPU分割機能をKubernetesで使うためのオペレーター。Pod単位の使用状況を出すメトリクス出力付き |
| KAI Resource Management | プロジェクトと部門、組織階層でのクォータ、ノードプールを扱う層 |
| Workload Map | PyTorchJobやRayClusterなど多様なワークロードを共通の形で記述する「契約」。Goライブラリとして提供 |
ブログは、これらに追加のプラットフォームコードを足したものが統合版のRun:aiだと説明しています。使い方は、統合版を丸ごと採用する、自社製品の土台にする、必要な部品だけ組み込む、の3通りです。
GitHubの dsx-ai-factory/run-ai リポジトリのREADMEは、中身を次のように書いています。
- コントロールプレーン(ワークロードやポリシー、組織構造を管理するAPIとサービス)
- クラスターに入れるコントローラーとadmission webhook
- インストーラー(CLI)
- MCPサーバー(Run:aiの操作をAIアシスタント向けのツールとして公開するもの)
- ドキュメント、API用クライアント、負荷試験の一式
READMEは、Run:aiを「Kubernetesの上に載るスケジューリングとオーケストレーションの層」で、Kubernetes自体やコンテナランタイム、CI/CDの代わりにはならないと位置づけています。対象はKubernetesかOpenShiftで、接続環境でもエアギャップ環境でも導入できるとしています。
誰がどう使えるのか
入手の道は2つあります。
1. 直接使う。 ソースコードは、NVIDIA DSX AI FactoryのGitHub組織にあります。READMEのライセンス欄はApache License 2.0です。ブログによると、完全版はNVIDIA NGCに「Community Product」としても置かれ、統合スタック用のHelmチャートが付きます。注意書きは次のとおりです。
- NGCからのダウンロードには、NVIDIA Software License Agreementと、NVIDIA AI製品向けの製品別規約への同意が必要
- 有料のRun:ai契約もNVIDIAのサポート権利も不要
- NVIDIAのエンタープライズサポートは含まれない
2. パートナー経由で使う。 ブログが挙げた8社の取り組みは次のとおりです。
| パートナー | 発表された内容 |
|---|---|
| Crusoe | Crusoe Managed KubernetesにRun:aiを統合 |
| Mirantis | k0rdent AIにRun:aiを加え、ハードウェアからモデルまでをライフサイクル管理するAIファクトリー向けスタックを提供(インフラのプロビジョニングを自動化) |
| Nebius | Nebius AI Cloudでワンクリックのアプリケーションとして提供(Nebius Managed Service for Kubernetes上) |
| OpenNebula Systems | OneKS経由でOpenNebula AI Cloud Platformに統合 |
| Rafay | Run:aiの統合を拡張し、フルマネージドサービスとして提供する方針 |
| Saturn Cloud | Token Factoryプラットフォームに統合し、ホワイトラベルの推論サービス運営を支援 |
| Spectro Cloud | PaletteAIに統合し、PaletteAI Studioから展開 |
| vCluster | テナントごとに環境を立てる事前検証済みのデプロイテンプレートを提供 |
NVIDIA Enterprise AI Factoryの導入では、Run:aiは引き続きNVIDIAが支える商用提供でも使えるとされています。単体製品のほか、NVIDIA Mission ControlとNVIDIA AI Enterprise、一部のクラウドマーケットプレイスが挙がっています。ブログは、提供条件・ライセンス・サポート条件は提供形態ごとに異なると書いています。
前と何が変わったのか
ブログが書く変化は大きく2点です。
全体のコードが公開された。 公式の製品ページ(私が読んだ時点)が「オープンソースのソリューション」として挙げているのは、KAI Scheduler、Grove、Model Streamerでした。KAI Schedulerは、NVIDIAがApache 2.0ライセンスで公開してCNCFのSandboxプロジェクトに寄贈済みとブログにあります。今回は、スケジューラーだけでなくコントロールプレーンやインストーラーを含む全体が対象になりました。
GPU分割の実装が入れ替わった。 ブログによると、Run:aiは1枚のGPUを複数のワークロードで分け合う機能(メモリを厳密に分離する分割)を以前から持ち、独自実装で先行していました。今回、その独自実装は廃止され、CUDA 13.4が備えるネイティブ機能に置き換わりました。CUDAドライバーがワークロードごとにGPUメモリの上限を強制し、各ワークロードには割り当てた分のGPUメモリしか見えません。Kubernetesでそれを使うための層が、GPU Fractioning Operatorです。スケジューラーに依存しない設計で、KAI Schedulerとは連携し、他のスケジューラーとも併用できるとされています。
この部品を入れる条件は、GitHubのリポジトリ(kai-scheduler/gpu-fractioning)の前提条件欄に書かれていました。
- Kubernetes 1.28以降
- containerd 2.0以降(NRI有効)、またはNRI対応のCRI-O
- NVIDIA GPU Operator v26.7.0以降
- NVIDIAドライバー r615以降(CUDA 13.4)。READMEはこれをGPU Operatorの既定のドライバーではないと明記し、導入時に明示指定が必要としている
READMEによると、r615は「短命なブランチ」であり、GPU Operator v26.7.1は既定ではこれを入れません。ブログの「ネイティブ機能で置き換え」という説明は、手元のクラスターでドライバーを入れ替える作業と引き換えになる、という読み方ができます。
関連するオープンソース2件
ブログは、Run:aiと組み合わせて使える関連プロジェクトとして、Model StreamerとGroveも紹介しています。
- Model Streamer: 推論の起動時に、モデルの重みをストレージからGPUメモリへ並列に読み込んで流し込む仕組み。vLLMとSGLangには、
--load-format runai_streamerで有効にできる形で組み込まれているとブログは書いています。ブログに載った数字は、Microsoft Azureの公開ベンチマーク(原文は「eight NVIDIA H100 VMs」)で既定ローダー比3〜6倍の速さ、WEKAがGPUメモリへの読み込み3.5秒(ローカルNVMe比で約40%速い)、VAST Dataが1.7秒(同60%改善)、DDNがQwen3-32B(65.5GB)を8GPUに4秒未満、というものです。いずれもNVIDIAや各社が公表した数字で、条件は各社で異なります。 - Grove: エージェント型パイプラインや、prefillとdecodeを分離した推論のように複数の部品が連動して動くワークロードを、Kubernetes上で扱うAPI。NVIDIA Dynamoの部品として単独でも使えるとされています。
公式ページを読んで気づいたこと
日本時間23時24分台に、ブログ本体、GitHub、NVIDIAの製品ページ、NGCのページを順に取得しました。確認できた点を、読んだ順に書きます。
- 本体リポジトリ
dsx-ai-factory/run-aiは、取得時点で1,283コミット、スター49、フォーク4でした。ブログ公開(23時19分)の約5分後の数字です。 - ブログ本文のリンクのうち、
kai-scheduler/kai-gpu-fractioningはkai-scheduler/gpu-fractioningに、dsx-ai-factory/kartaはdsx-ai-factory/workload-mapにそれぞれ転送されました。Workload MapのREADMEには、2026年9月10日にrun-ai組織からdsx-ai-factory/kartaへ移り、9月15日に「DSX OSの命名規則に合わせて」KartaからWorkload-Mapへ改名したと書かれています。 - ブログが「NVIDIA NGC」としてリンクしていたページ(
run-ai-self-hosted)は、取得時点で「NVIDIA Run:ai SaaS」「NVIDIA Run:ai Self-Hosted」の購読を求める表示(Subscribe to get access)が出ており、「Community Product」という語は見当たりませんでした。ブログが書く無償のCommunity Productがこのページから入手できるのかは、今回は確かめられていません。 - NVIDIAの製品ページは、同じ時刻の時点で「The enterprise platform for AI workloads and GPU orchestration」という説明で、全体のオープンソース化への言及は、今回取得した範囲では見つかりませんでした(オープンソースの項目はKAI Scheduler、Grove、Model Streamerのみ)。
- 日本語のページは、今回取得した範囲では確認していません。
確認できなかったこと、読むときの注意
- これはNVIDIAの発表です。 性能の数字(GPU利用率など)や「本番品質」という表現は、今回確認した範囲ではNVIDIA側の記述で、第三者による検証は取得していません。製品ページには「GPUの可用性10倍、実行ワークロード20倍、GPU利用率5倍」という数字が並んでいますが、比較の基準は同ページに示されていませんでした。
- 料金。 Community Productに有料契約が不要であることは書かれていますが、パートナー各社のサービス料金は今回のNVIDIAの発表には載っていません。
- 日本での提供。 今回取得したNVIDIAの発表ページには、日本向けの案内は見当たりませんでした。8社の提供地域も、発表では示されていません。
- 想定する利用規模。 NGCの
run-ai-self-hostedのページは、Run:aiを「通常は16 GPU以上の企業規模」で使うものとし、小規模・単一ノード・概念実証(POC)規模には勧めないと書いています。Kubernetesの知識があるチーム向けで、導入には基盤の計画が要るとの注記もあります。 - 筆者は試していません。 ソースのビルドも、NGCからの導入も、パートナーのサービスも使っていません。本記事は公開ページの内容を整理したものです。
- 関連記事: NVIDIAのデータセンター向けの発表として、Vera Rubinのラック設計をMGX 1.2として公開した発表も出しています。
今回取得した6ページ
- NVIDIA Run:ai Is Now Open Source as Part of NVIDIA DSX AI Factory Platform(NVIDIA Technical Blog、2026年10月13日)(日本時間23時24分取得)
- dsx-ai-factory/run-ai(GitHub)(同23時24分取得)
- NVIDIA Run:ai(NVIDIA公式製品ページ)(同23時24分取得)
- run-ai-self-hosted(NVIDIA NGC)(同23時24分取得。NGCのページの更新日は2026年9月23日(UTC)と表示)
- kai-scheduler/gpu-fractioning(GitHub)(同23時24分取得)
- dsx-ai-factory/workload-map(GitHub)(同23時24分取得)
本記事は続報があり次第更新します。
この記事でよく聞かれること
- NVIDIA Run:aiのオープンソース化とは何が公開されたのですか?
- NVIDIAは2026年10月13日(現地)、GPUの割り当てとAIワークロードの管理を行うNVIDIA Run:ai基盤の全体をオープンソースとして公開したと発表しました。ソースコードはNVIDIA DSX AI FactoryのGitHub組織にあり、リポジトリにはコントロールプレーン、クラスター側のコントローラー、インストーラー、CLI、MCPサーバー、ドキュメントなどが入っています。ライセンスはApache License 2.0と記載されています。
- Run:aiのオープンソース版は無料で使えますか?
- NVIDIAの発表によると、NGCで配布する完全版は「Community Product」として提供され、有料のRun:ai契約やNVIDIAのサポート権利は不要です。ただしNGCからのダウンロードにはNVIDIA Software License Agreementなどへの同意が必要で、NVIDIAのエンタープライズサポートは含まれません。なお、ブログがリンクしていたNGCのページは取得時点で購読を求める表示になっており、Community Productの入手経路は本記事では確かめられていません。
- Run:aiの4つの部品は単体で使えますか?
- 使えます。NVIDIAの発表では、KAI Scheduler、GPU Fractioning Operator、KAI Resource Management、Workload Mapの4つは独立して採用できるとしています。たとえばKAI Schedulerは、Run:ai全体を入れなくても既存クラスターに追加できると説明されています。
- 日本での提供について発表に記載はありますか?
- 今回取得したNVIDIAの発表ページには、日本での提供や日本語の案内についての記載は見当たりませんでした。オープンソースのコードはGitHubで公開されているため地域を問わず入手できる形ですが、パートナー各社のサービスの提供地域は発表では示されていません。
出典・参照資料
- 一次資料NVIDIA Run:ai Is Now Open Source as Part of NVIDIA DSX AI Factory Platform — NVIDIA Technical Blog 公式 ↗
- 一次資料dsx-ai-factory/run-ai — GitHub(NVIDIA公式組織) ↗
- 一次資料NVIDIA Run:ai — NVIDIA公式製品ページ ↗
- 一次資料run-ai-self-hosted — NVIDIA NGC Catalog 公式 ↗
- 一次資料kai-scheduler/gpu-fractioning — GitHub ↗
- 一次資料dsx-ai-factory/workload-map — GitHub(NVIDIA公式組織) ↗
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