NVIDIA、Vera Rubin(ベラ・ルービン)のラック設計をOCPに提供MGX 1.2は最大250kW、MetaはSpectrum-6の102.4Tb/sスイッチを採用
NVIDIAは2026年10月12日、OCP Global SummitでVera Rubinのラックと計算トレイの設計をオープンなMGXアーキテクチャ経由でOCPに提供したと発表した。MGX 1.2は最大250kWのラックに対応するとし、Metaは102.4Tb/sのSpectrum-6スイッチを採用、GoogleのFalconはConnectX-10に対応する計画という。

目次
NVIDIAは2026年10月12日(米国時間)、サンノゼで開かれた OCP Global Summit で、Vera Rubin(ベラ・ルービン)のラックと計算トレイの設計を、オープンな MGX アーキテクチャを通じて Open Compute Project(OCP)に提供したと公式ブログで発表した。ブログの公開は協定世界時で10月12日15時、日本時間では10月13日0時にあたる。同じ発表には、DSX AI Factory のオープンソース部品、Meta の Spectrum-6 採用、Google の Falcon と ConnectX-10 の対応計画などが並んでいる。
3行まとめ
- NVIDIAは Vera Rubin のラック・計算トレイ設計を MGX 経由で OCP に提供。更新版の MGX 1.2 は液冷の5,000Aバスバーを備え、最大250kWのラック展開に対応するとNVIDIAは説明
- Meta は102.4Tb/s の Spectrum-6 スイッチ(Meta製「N-IceCube」)を採用。Google の Falcon は将来の ConnectX-10 と BlueField に対応する計画
- Google・Meta・Microsoft・NVIDIA が電力網の乱れに備えるグリッド耐性仕様を公開。「2秒未満でほぼ全負荷に戻す」とNVIDIAは記載
本記事の内容は、日本時間10月13日0時台に公式ページで確認したものです。
NVIDIA と Cisco の光モジュール規格 USFP は別の記事で扱いました。→ NVIDIAとCisco、1レーン400Gb/sの光モジュール規格「USFP」を発表。本記事は、それ以外の発表を中心に整理します。
何が発表されたのか
NVIDIA の公式ブログは、OCP での発表を次の6項目で示しています(ブログの記載どおり)。
| 項目 | ブログの説明 |
|---|---|
| オープン標準 | NVIDIA とハイパースケーラーが、AIファクトリーの設計標準とグリッド耐性の標準を公開 |
| DSX AI Factory | 新しいオープンソースのソフトウェア部品を公開 |
| Meta | Spectrum-X Ethernet SuperNIC と Spectrum-6 でオープンなAIネットワークを前進 |
| Visionbay | Vera Rubin 時代向けの800V直流(DC)のAIファクトリー設計を発表 |
| Cisco | USFP 規格を発表(400Gb/s ベースのネットワーク向けでは「業界初のモジュール」とNVIDIAは表現) |
| 将来の ConnectX-10 SuperNIC と BlueField DPU で Falcon Transport に対応 |
ここでいう「AIファクトリー」は、NVIDIA が AI の処理のために専用に設計されたデータセンターを指して使う言葉です(DSX の製品ページの説明)。ブログはメガワット級からギガワット級に育つ設備を作るには「計算だけでなくオープンな標準が要る」という立場で書かれています。
Vera Rubinのラック設計は何が「オープン」になったのか
ブログによると、NVIDIA は Vera Rubin のラックと計算トレイの主要な設計を、オープンな MGX アーキテクチャを通じて OCP に提供しました。システムを作るメーカーに共通の土台を渡す、という説明です。MGX は第3世代で、OCP の Open DC Initiative を通じた提供だと書かれています。
更新版の MGX 1.2 について、ブログは次の内容を挙げています。
- ラック規模のブラインドメイト式(差し込むだけでつながる)液冷
- 相互運用できるラック規模の接続インフラ
- 高出力のAIシステム向けの、液冷式の5,000Aバスバー
- 19インチ機器への標準対応と、より高密度なラック設計
- 構成を変えられるI/Oベイ、ファンなしの液冷計算トレイ、電源と冷却の標準化インターフェース
- 組み立て・試験・保守の時間の短縮
- 最大250kWのラック展開に対応
ここは「NVIDIA が書いた仕様の説明」であり、第三者の測定や、他社がこの設計で作った製品の実績は今回のページには出ていません。
Vera CPU ラックの設計仕様も出ています。ブログによると、Vera Rubin NVL72 が大規模な学習と推論の土台になるのに対し、Vera CPU ラックはツール呼び出し、オーケストレーション、サンドボックス実行を受け持つ設計です。AIエージェントがアプリケーションやデータ、サービスとやり取りする場面を想定していると説明されています。MGX の製品ページも、Vera を「エージェント型AIとAIファクトリーのCPU中心の仕事」向けと書いています。
MGX のページは、MGX を「OEM・ODM・エコシステムのパートナーが加速システムを速く作るためのオープンなモジュール型リファレンス」と説明し、100通り以上のモジュール設計の組み合わせがあるとしています。OCP のイベントページには、200社以上のエコシステムパートナーが MGX の設計をすでに採用しているとの記載もあります。この数字はどちらもNVIDIA自身の説明です。
DSX AI Factoryに加わったオープンソースの部品
DSX OS は、NVIDIA の AI ファクトリー用プラットフォーム DSX の「運用の層」にあたります。OCP では、その上に4つのオープンソース部品が加わったとブログは書いています。
| 部品 | ブログの説明 |
|---|---|
| NVIDIA Config Manager | スイッチ設定を大規模に自動化し、ネットワークの構成を一貫させる |
| NVIDIA Cluster Readiness Engine | 学習開始前に実ワークロードに近い負荷でGPUクラスターを試験し、ジョブの異常終了を減らす |
| NVIDIA Rack Management Service | ラックを一つの単位として扱い、ファームウェア管理などを行う |
| Cluster API Provider for NVIDIA Infrastructure Controller | ベアメタルの展開とテナントの受け入れを速め、「数日ではなく数時間で」本番用クラスターにすると説明 |
ブログによると、これらは NVIDIA の DGX Cloud の運用経験から作られたもので、クラウド事業者やソフトウェアパートナーが複数利用者向けの基盤に組み込むためのものです。開発者向けには「DSX AI Factory の GitHub ページ」で新旧の部品を見られると案内されています。
MetaはSpectrum-6で何をするのか
ブログによると、Meta は NVIDIA の Spectrum-6(102.4Tb/s のイーサネットスイッチ)を採用し、オープンなネットワークで、より大きく高性能な Vera Rubin AIファクトリーを作ります。Spectrum-6 は Spectrum-4 の2倍のスイッチ容量とレーンあたり帯域を持ち、200G/レーンのロスレスなイーサネットのAI向けファブリックを提供する、と NVIDIA は書いています。
Meta の Spectrum-6 ベースのスイッチは「N-IceCube」という名前で、Meta の液冷ラック「IcePack」に入ります。動作させるのは、Meta がOCPに寄贈したオープンソースのネットワークOS「FBOSS」です。FBOSS は、NVIDIA も開発に加わった OCP 標準の Switch Abstraction Interface の上に作られています。
中核技術として挙げられているのが Spectrum-X Multiplane です。ブログの説明では、GPUの通信を最大8本の独立したネットワーク面(プレーン)に、ハードウェアで振り分けます。部品が故障しても残りの面に通信が移るので、帯域は減ってもGPUは動き続けます。層の数を減らしながら10万基を超えるGPUへ広げられる、というのが NVIDIA の説明です。
Meta のネットワーク担当シニアディレクター Omar Baldonado 氏のコメントも載っています。
“Extending FBOSS to Spectrum ASICs means we can run that same software stack across our fabrics, and Meta’s new Spectrum-based switch, N-IceCube, brings that into Icepack – our liquid-cooled 102.4T network rack for scale-out that connects upcoming generations of accelerators in our fleet.” (FBOSS を Spectrum の ASIC に広げることで、同じソフトウェアスタックを自社のファブリック全体で動かせる。Meta の新しい Spectrum ベースのスイッチ N-IceCube は、それを、将来世代のアクセラレーターをつなぐ液冷の102.4Tスケールアウト用ネットワークラック IcePack に持ち込む──引用の一部)
なお、Meta がこの構成をいつ、どの規模で稼働させるかは、今回確認したページには書かれていません。
GoogleのFalconはConnectX-10に対応する計画
ブログによると、NVIDIA と Google は、将来の ConnectX-10 SuperNIC と BlueField DPU が Falcon Transport に対応すると発表しました。Falcon は、混雑でパケットが落ちうるイーサネット上でデータを確実に届けるための転送プロトコルで、複数経路での負荷分散、プログラムできる輻輳制御、ハードウェアでの損失回復、接続ごとのセキュリティに対応するとされています。
NVIDIA のハードウェアアクセラレーションと DOCA ソフトウェアで Falcon を実装し、「NVIDIA と Google のNICが共通の転送方式で通信でき、アプリケーションは標準の RDMA プログラミングインターフェースを保てる」という説明です。「future(将来の)」製品への対応なので、現時点で使える機能ではありません。
電力網とAIファクトリーの標準
ブログは標準の話を2つ並べています。
- Open Data Center Specification v0.7: NVIDIA が AMD、Google、Meta とともに公開。電力の構成、冷却インフラ、物理的な配置まで、次世代AIファクトリーの設備設計の共通の設計図と説明されています
- OCP Grid Resilience Specification: Google、Meta、Microsoft、NVIDIA が公開。大規模AIインフラが電力網の乱れの間にどう振る舞うべきかを定め、接続を保つこと、自動で応答すること、「2秒未満でほぼ全負荷に戻す」ことを挙げています
ブログは、これらが NVIDIA DSX の参照設計と互換であり、検証された実装になると述べています。標準が公開されたことで、設備メーカーやコロケーション事業者は「個々の顧客の独自仕様を待たずに」設計に入れる、というのが NVIDIA の主張です。
このほか、Visionbay は「K-1」というAIファクトリー基盤を、800V直流の構成で、Vera Rubin の導入を見据えて設計すると発表しました。NVIDIA の800VDC参照設計と Vertiv の電源・熱の技術を組み合わせ、一度に全面移行せず、効果の大きい部分から段階的に800VDCを入れる設計と説明されています。
発表ページを見比べて気づいたこと
日本時間10月13日0時14分台に、ブログとイベントページ、MGX ページ、DSX ページを続けて取得して見比べました。気づいた点が3つあります。
- 見出しは「Opens Vera Rubin Architecture」ですが、本文で具体的に書かれている提供物は、ラックと計算トレイの設計、そして MGX 1.2 と Vera CPU ラックの仕様です。NVIDIA のイベントページの該当リンクは「Opens Vera Rubin Platform」と言い換えており、チップ(GPUやCPU)の設計そのものを公開したと読める記述は、今回取得した範囲では見つかりませんでした。
- 記事の説明文は「Cisco, Google, Meta, Microsoft and Visionbay」の名前を挙げていますが、本文で Microsoft が登場するのは、グリッド耐性仕様の公開者としてです。
- イベントページによると、Ian Buck 氏の基調講演は10月12日午後5時45分から(会場はサンノゼ。米太平洋夏時間とすれば日本時間10月13日9時45分)です。ブログの公開は太平洋夏時間で12日午前8時にあたり、講演の約10時間前です。それでもブログは講演を「Before a packed audience(満員の聴衆の前で)」と過去形で書いています。取得した時点では、イベントページが講演を「Join us」と案内しているほうが時刻に合っています。
確認できていないこと・読むときの注意
- 仕様書本文は未確認: グリッド耐性仕様にあたるとみられるOCPの文書(電力網の乱れの際の事業者と電力網のインターフェース仕様、PDF)を取得しましたが、中身が文字として読めない形式で、内容も、ブログのいう仕様と同じ文書かどうかも確かめられませんでした。「2秒未満」などの数字は、NVIDIA ブログの記述として書いています。
- 出荷時期・価格・日本: 今回確認した公式ページには、MGX 1.2 や新しい DSX OS 部品の出荷時期、価格、日本での提供についての記載は見当たりませんでした。(DSX の製品ページには GTC Berlin 2026 が10月20〜22日に開かれるとの案内があり、続報の場になる可能性があります)
- 数字は発表者の主張: 250kW、10万基超のGPU、数日が数時間になる、といった数字は、すべて NVIDIA 側の説明です。独立した検証は、今回の取得ページには含まれていません。
- Visionbay K-1 は「計画」: ブログは「unveiled plans(計画を発表)」と書いており、稼働中の設備ではありません。
出典と確認時刻
- OCP Global Summit: Amid Ecosystem Adoption, NVIDIA Opens Vera Rubin Architecture to Help Scale AI Factories Worldwide(NVIDIA公式ブログ)
- Join NVIDIA at OCP Global Summit 2026, October 12–15(NVIDIA公式)
- NVIDIA MGX Platform(NVIDIA公式)
- NVIDIA DSX AI Factory Platform(NVIDIA公式)
確認時刻は日本時間2026年10月13日0時14分〜0時15分です。本記事は続報があり次第更新します。
この記事でよく聞かれること
- NVIDIAがOCP Global Summitで発表したVera Rubin関連の中身は?
- NVIDIAの公式ブログによると、2026年10月12日(米国時間)、Vera Rubinのラックと計算トレイの設計をオープンなMGXアーキテクチャ経由でOCPに提供した。更新版のMGX 1.2は、ブラインドメイト式の液冷、液冷の5,000Aバスバー、最大250kWのラック展開などに対応するとしている。同じ発表でDSX AI Factoryのオープンソース部品、MetaのSpectrum-6採用、GoogleのFalcon対応なども示された。
- MetaはNVIDIAのSpectrum-6をどう使うのか?
- NVIDIAの公式ブログによると、Metaは102.4Tb/sのSpectrum-6イーサネットスイッチを採用し、Vera Rubin AIファクトリーをオープンなネットワークで大きくする。Metaのスイッチ「N-IceCube」は同社の液冷ラック「IcePack」に収まり、Metaのオープンソースのネットワーク用OS「FBOSS」で動くと説明されている。
- OCPのグリッド耐性仕様とは?
- NVIDIAの公式ブログによると、Google、Meta、Microsoft、NVIDIAが公開した仕様で、大規模AI設備が電力網の乱れの間にどう振る舞うべきかを定める。接続を保つこと、自動で応答すること、2秒未満でほぼ全負荷に戻すことが挙げられている。今回取得できたのは公式ブログの記述までで、仕様書本文の確認はできていない。
- 日本の事業者や個人はこれらをすぐ使えるのか?
- 今回確認した公式ページには、MGX 1.2や新しいDSX OSの部品の出荷時期、価格、日本での提供についての記載は見当たらなかった。DSX OSのオープンソース部品はGitHubのページで公開されるとブログは案内している。ラックなどの設計は、システムを作るメーカー向けの共通の土台だとNVIDIAは説明している。
出典・参照資料
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