動画生成AIで出ない画は、書き方のせいか──限界の地図と、諦めどきの判断基準
何度書き直しても出ない画には、書き方で直るものと直らないものが混ざっている。OpenAIの「Sora 2 Prompting Guide」は「using the same prompt multiple times will lead to different results」と明記し、Google AI for DevelopersのVeoページはプロンプト構成要素7つのうち4つに[Optional]を付け、生成された動画はサーバ上に2日で削除されると書いている(いずれも2026年8月14日確認)。当サイトの制作ログにある「同じ方法で4回連続して出なかった造形」「参照画像17枚では複製が出ず12枚では出た」という一次記録と公式仕様を突き合わせ、限界を5つの層に分類して、どこで書き直しをやめるかの基準を整理する。

目次
「何度書き直しても、その画だけ出ない」という状態には、書き方を変えれば抜けられるものと、書き方をいくら変えても抜けられないものが混ざっている。この記事は個別の技法ではなく、いま自分がどの層で詰まっているのかを見分けるための地図を置く。先に結論を書くと、出ない画は(1)語彙、(2)構造、(3)モデルの事前分布、(4)確率のゆらぎ、(5)仕様とポリシーの5層に分かれ、プロンプトの書き直しで直るのは上の2層だけである。3層目から下は、書き直しの回数を増やしても収束しない。だから「あと何回書き直すか」より先に、「いま何層目にいるか」を判定したほうが早い。
- OpenAIの「Sora 2 Prompting Guide」は「Like with ChatGPT, using the same prompt multiple times will lead to different results」と明記している(2026年8月14日確認)。同じ入力で同じ出力にならないことは、公式が想定している挙動である
- Google AI for DevelopersのVeoページは、プロンプト構成要素7項目のうち Camera positioning and motion / Composition / Focus and lens effects / Ambiance の4つに [Optional] を付けている(2026年8月14日確認)。全項目を埋めることは公式の前提ではない
- 当サイトの制作ログでは、同じ方法で4回連続して出なかった造形が、方法を参照画像に切り替えた5回目で出た。参照画像は17枚では複製が出ず、12枚では出た(2026年8月12日時点の一次記録)
出ない画を5つの層に分ける
日本語圏の解説は「できること」の紹介か、破綻した映像を集めた失敗集のどちらかに寄っている。実制作で困るのはその中間で、目の前の失敗が直せる失敗なのか、直せない失敗なのかが分からない点にある。まずは分類から置く。
| 層 | 症状の見え方 | 書き直しで直るか | 対処の方向 |
|---|---|---|---|
| 1. 語彙 | 指示は通っているが平均的な絵になる/特定の単語を入れると弾かれる | 直る | 抽象形容詞を物の名前と数に置き換える。弾かれる語を言い換える |
| 2. 構造 | 複数人物が全員静止する/時系列が飛ぶ/歩き方が全員同じになる | 直る | 1区間に事件を1つだけ置く。秒数と移動距離で書く |
| 3. 事前分布 | 語彙を変えても同じ方向に外れ続ける。外れ先が「実在するもの」に寄る | 言葉では直らない | 原典の図版を参照画像として渡し、役割を限定する |
| 4. 確率のゆらぎ | 同じ指定で決まる回とぎこちない回がある | 直らない | 本数で吸収する。尺を短くしてゆらぎの幅を減らす |
| 5. 仕様・ポリシー | 何を書いても同じ長さで切れる/ジョブ自体が通らない | 直らない | 公式ドキュメントで上限と禁止事項を読む |
この表の分類は、当サイト運営者が動画生成AIで作品を制作しながら取った一次記録(2026年8月12日時点)と、OpenAI・Googleの公式ドキュメント(2026年8月14日確認)を突き合わせて作ったものだ。層1と層2は既に個別記事にしてあるため、この記事では層3以降を厚く扱う。
層1・層2──書き直しで直る範囲の見分け方
層1は語彙の問題だ。cinematic elaborate flamboyant のような抽象形容詞は、訓練データ上あらゆる映像に付いていた語なので、足しても出力は平均的な絵に均される。当サイトの制作ログでは、花魁の打掛に「精巧で華やか」と書いた回は「衣装をつけただけ」の画にしかならず、白粉・襟足の塗り残し・簪20点・帯を前結び、と物の名前と数で書き直した回だけが狙い通りになった。この書き換えの手順は「cinematic」と書いても画は変わらない──物の名前と数で書き直すに分けてある。
同じ層に、安全フィルタで弾かれるケースも入る。ログに残っているのは、史実に沿った服装でも「褌(loincloth)」「裸の脚(bare legs)」を含む4体がnsfw判定になった回で、「短い半纏+股引(fitted momohiki work trousers)」「腰に巻いた布」に言い換えたところ4体とも通過した。題材が禁止されているのではなく語彙で弾かれている場合があり、これは書き直しで抜けられる。層5のポリシー(実在人物や著作物)とは別物なので、混同しないほうがいい。
層2は構造の問題だ。6キャラクター分の動作を1つの区間に詰めた回は、全員が静止した「不気味な集合写真」になった。これは語彙をどう磨いても直らず、区間の分け方を変えると解消した。詳細はAI動画で複数人物が同時に動かない理由──プロンプトは語彙でなく構造で直すに置いた。
この2層にいるかどうかの判定サインは単純で、語や区切りを1か所だけ変えたときに画が目に見えて動くかどうかである。動くならまだ書き直しの効く範囲にいる。何を変えても同じ方向に外れるなら、下の層に落ちている。
層3──言葉では届かない造形がある
いちばん時間を溶かすのがこの層だ。写実寄りのモデルにとって「猫が笑う」は実在しない事象で、wide grin と書き足すほど、実在する最近傍——威嚇して歯を剥く猫——に解決されていく。当サイトの制作ログでは、この造形は同じ方法で4回連続して失敗した。出てきたのは毎回「ただの猫」か「唸る猫」で、語彙を入れ替えても結果は動かなかった。
抜けたのは5回目で、方法を変えたときだ。原典の挿絵を参照画像として添付し、「この図の口の幾何だけを構造の型として維持する。質感は写実」と参照の役割を限定して指定したところ、耳から耳まで届く閉じた歯列の笑いが出た。同じやり方は他の題材でも成立していて、江戸期の絵入り資料を参照にした妖怪15体は、推測をほとんど挟まずに造形を転写できている。パブリックドメインの原典がある題材では、これが第一選択になる。
この層の判定サインは2つある。外れ方が毎回同じ方向であることと、外れ先が「実在するもの」に寄っていることだ。笑う猫が唸る猫になるのは、モデルが指示を無視しているのではなく、指示に最も近い実在の像に着地しているからだと考えると説明がつく(この因果は当サイトの推測であり、モデル内部を確認したものではない)。ここに来たら、語彙を練り直す時間を参照画像を探す時間に振り替えたほうが早い。
層4──同じ入力でも同じ結果にならない
「昨日は出たのに今日は出ない」は、書き手の腕の問題ではない可能性が高い。OpenAIの「Sora 2 Prompting Guide」は2026年8月14日の確認時点で「Like with ChatGPT, using the same prompt multiple times will lead to different results」と書いている。さらに人物を出す場合について「When introducing characters, expect some unpredictability—small changes in phrasing can alter identity, pose, or the focus of the scene itself.」(言い回しの小さな違いが、同一性やポーズ、シーンの焦点そのものを変えうる)とも明記している。再現しないことは不具合ではなく、公式が想定している挙動だ。
当サイトの制作ログ側でも同じことが起きている。花魁のウィンクは、同系統の指定で「決まった回」と「ぎこちない回」があり、表情の微細な動作は分解して書いても安定しなかった。ここは書き直しで詰めきれる領域ではない。
この層に効く手当ては、書き方ではなく設計側にある。同ガイドは「The model generally follows instructions more reliably in shorter clips.」(短いクリップのほうが指示に忠実になりやすい)とも書いており、尺を削ることはゆらぎの幅を減らす方向に働く。台詞についても「Long, complex speeches are unlikely to sync well and may break pacing.」とあり、長く複雑な台詞は同期しにくいとされている。安定しない要素を減らし、必要な本数を最初から見込んで予算を組むのが現実的な対処になる。実際に何回投げて何本使えたかの内訳はAI動画は1本何回で仕上がるのか──完成5本・参照画像109枚を数え直したにまとめてある。
なお、参照画像を渡している場合はもう1つ疑うべき原因がある。当サイトの実測では、参照画像7枚で主要キャラクターが全員保持され、12枚では同じ顔の人物が増殖し、17枚では複製が出ず、30枚を渡した回は生成そのものが失敗した(この失敗の原因は未特定で、サーバ側の一時障害の可能性も残る)。個数の明示や重複禁止の明文化はどれも効かなかった一方、単独の人物を写した参照でも2体化した反証例があり、原因を参照画像の構図だけに断定できていない。詳細と反証はAI動画の参照画像は「失敗」も「複製」も運ぶ──実測ログに置いた。
層5──公式が数字で公開している壁
ここは推測が要らない層で、読めば書いてある。2026年8月14日に確認した公式ページの記述を並べる。
| 項目 | OpenAI(Video generation - OpenAI API) | Google(Generate videos with Veo 3.1 in Gemini API) |
|---|---|---|
| 1回の生成尺 | 「16- and 20-second generations」に対応と記載 | 「8-second videos」と記載 |
| 解像度 | 1080p(1920x1080 / 1080x1920)の書き出しには sora-2-pro を使うよう記載 | 720p / 1080p / 4k。1080pと4kは8秒のみ対応と記載 |
| 生成待ち時間 | 「a single render may take several minutes」。長尺・1080pはさらに時間がかかると記載 | 「Min: 11 seconds; Max: 6 minutes (during peak hours)」 |
| 生成物の保存 | 該当する記述を本文中に確認できず | 「Generated videos are stored on the server for 2 days, after which they are removed」 |
| 透かし | 該当する記述を本文中に確認できず | 「Videos created by Veo are watermarked using SynthID」 |
| 実在人物 | 実在の人物(公共の人物を含む)の生成を防ぐと記載。人物の顔を含む入力画像は現状拒否されると記載 | 地域によって person generation が制限され、EU・英国・スイス・MENAでは allow_adult のみと記載 |
| 著作物 | 著作権のあるキャラクターと楽曲をブロックすると記載 | 該当する記述を本文中に確認できず |
| 内容の水準 | 「Only content suitable for audiences under 18」と記載。将来この制限を回避する設定が提供される予定とも記載 | 「Veo applies safety filters across Gemini」と記載 |
| 延長 | 1本につき最大6回、合計120秒まで延長できると記載 | 音声側の処理や安全フィルタで生成がブロックされることがあると記載 |
この層の判定サインは、プロンプトの内容に関係なく同じ壁に当たることだ。何を書いても同じ長さで切れる、特定の人物だけ必ず別人になる、そもそもジョブが通らない——このどれかなら、書き直しではなく仕様表を読む場面である。
ただし尺については注意がいる。同じOpenAIでも、APIリファレンス・プロンプトガイド・生成ガイドで対応秒数の記載が食い違っていることを当サイトの別記事で確認している(本記事で今回読んだのは Video generation ガイドの「16- and 20-second generations」の記述である)。数字を1か所だけ見て設計しないほうがいい。突き合わせの詳細はAI動画の尺は予算である──Sora 2の4秒・8秒・12秒に何を入れられるかにある。
「これは限界だ」と判定するまでの4ステップ
層の見分けは、次の順で1つずつ潰すのが速い。上から順に、変更したときに画が動くかどうかだけを見る。
| 手順 | やること | 動いた場合 | 動かない場合 |
|---|---|---|---|
| 1 | 抽象形容詞を1つだけ物の名前に置き換えて2回投げる | 層1(語彙)。書き直しを続ける | 次へ |
| 2 | 区間を分け、1区間に事件を1つだけ置いて投げる | 層2(構造)。分割を続ける | 次へ |
| 3 | 参照画像を全部外して1回投げる | 参照が原因(複製・失敗の再生産)。参照を作り直す | 次へ |
| 4 | 同じ設定のまま3回投げ、外れ方を見る | 外れ方がばらつく=層4(確率)。本数で吸収 | 外れ方が毎回同じ=層3か層5。参照画像か公式ドキュメントへ |
回数の目安についても、当サイトに残っているのは1例だけだ。同じ方法で4回連続して失敗し、5回目に方法そのものを変えたら出た。この1例から「4回で切り上げよ」と一般化はできないが、少なくとも「同じ方法で5回目を投げる前に、方法を変える選択肢を検討する」判断材料にはなる。ここで言う「方法を変える」は語彙の入れ替えではなく、参照画像を用意する・尺を削る・カットを分けるといった設計側の変更を指す。
埋める層と、空けておく層を分ける
限界の話をすると「だから細部まで全部書くべきだ」という結論に飛びがちだが、公式の記述はその逆も同時に書いている。前掲の「Sora 2 Prompting Guide」は「Giving the model more creative freedom can lead to surprising variations and unexpected, beautiful interpretations.」「Shorter prompts give the model more creative freedom. Expect surprising results.」とし、要素を open-ended にしておくと創造性が上がると書く一方で、同じ文書に「Unless you describe these details, Sora will make them up.」(書かなければモデルが勝手に作る)とも書いている。GoogleのVeoページが構成要素7つのうち4つに [Optional] を付けているのも同じ構えだ。
これは矛盾ではなく、空けると良い方向に埋まる層と、空けると捏造されて事故になる層が別だという話だと読める。当サイトの制作ログでも、視聴して良かった箇所——物売りの平伏の間合い、水しぶき、ピント送り——はいずれも指定していない箇所だった。逆に、音を明示的に禁止しなかった回では全キャラクターが意味不明な言語を喋りだしている。同ガイドが「This is not a one-size-fits-all recipe for success」と断っているとおり、どこを空けるかに万能の型はない。
正直な但し書き
- 競合調査を実施していない。「日本語圏に限界の体系的な整理が少ない」という前提は、当サイト運営者が制作の過程で日本語・英語の情報を探した範囲の実感であり、網羅的な調査で確認したものではない
- 自社データはn=1に近い。 4回連続失敗・17枚で複製なし・12枚で複製あり・30枚で生成失敗といった数字は、いずれも当サイト運営者が特定の1サービス上で行った少数の制作から出たもので、モデルやバージョンを跨いで一般化できない。同じ数字が他の環境で再現するかは未検証
- 複製の原因を断定していない。 参照画像の構図が原因だと考えられる状況証拠はあるが、単独の人物を写した参照でも2体化した反証例がある。30枚で生成が失敗した件も原因未特定で、サーバ側の一時障害の可能性が残る
- 層の分類そのものは当サイトの整理であり、公式の分類ではない。 各層に対応する公式の記述は引用したが、「5層に分かれる」という枠組みは制作記録から作った仮説である
- Google Cloud側のプロンプトガイドとベストプラクティスのページは、今回の取得ではページ本文を読めなかった。 そのため本記事のGoogle側の記述は Google AI for Developers のVeoページで確認できた範囲に限っている
- 公式仕様は更新される。 本記事の公式側の数値・記述はすべて2026年8月14日時点の確認であり、制作ログ側は2026年8月12日時点の記録である。実際に使う前に各公式ページを確認してほしい
- 本記事は特定の手順で結果が良くなることを保証しない。効果には環境差・モデル差・偶然の幅がある
出典
- Sora 2 Prompting Guide(OpenAI Cookbook): https://developers.openai.com/cookbook/examples/sora/sora2_prompting_guide (2026年8月14日確認)
- Video generation - OpenAI API: https://developers.openai.com/api/docs/guides/video-generation (2026年8月14日確認)
- Generate videos with Veo 3.1 in Gemini API(Google AI for Developers): https://ai.google.dev/gemini-api/docs/veo (2026年8月14日確認)
- AI時短ラボ 制作ログ(動画生成AIプロンプト技法台帳・2026年8月12日時点の一次記録): https://www.ai-jitan-hub.com/guides
出典・参照資料
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