2026年8月13日 木曜日
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動画生成AIのプロンプト、何が効いて何が効かなかったか──実制作の技法台帳

当サイト運営者が実際に動画生成AIで作品を作りながら測った、プロンプト技法の一次データです。「elaborate and flamboyant」のような抽象形容詞は「衣装をつけただけ」の画にしかならず、白粉や簪20点など物の名前で書き直すと狙い通りになりました。参照画像は7枚でキャラ全員保持、17枚で複製なし、30枚では生成失敗した回もあるなど、実測値と未解決点もあわせて記録しています。

動画生成AIのプロンプト、何が効いて何が効かなかったか──実制作の技法台帳
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動画生成AIのプロンプトで実際に効いたこと・効かなかったことを、この記事はウェブ上の一般論としてではなく、当サイト運営者が実際に動画生成AIで作品を作りながら測った一次データとして記録します。花魁(おいらん)の動画、鳥山石燕『画図百鬼夜行』を下敷きにした妖怪の動画、物語のキャラクターが同時に動くアニメーション動画などを制作する過程で、狙い通りになった指示と、何度書き直しても外れ続けた指示を並べた台帳です。ここまでの実感を先に言うと、言葉(形容詞や語彙の選び方)で押し切れる範囲は狭く、構造(ビートの分け方・数値・配置)と参照画像でカバーできる範囲のほうが広いというものです。

  • 抽象形容詞(elaborate / whimsical 等)は分布が拡散した「平均的な絵」にしかならず、物の名前で書き直すと狙い通りになった【実証済み】
  • 1ビートに複数キャラの動作を詰めると全員が静止する。参照画像は7枚→主要キャラ保持、17枚→複製なし、30枚→失敗回ありという実測差があった【実証済み/実測値】
  • モデルの訓練データに存在しない画(笑うチェシャ猫など)は言葉だけでは出ず、原典の図版を参照画像として渡し「構造の型」として役割を限定することで突破できた【実証済み】

言葉が効かない領域

抽象形容詞は実行不可能な指示【実証済み】

cinematic、beautiful、whimsical、elaborate、flamboyant といった形容詞は、訓練データ上あらゆる映像に付いていた語です。特定の対象を指していないぶん分布が拡散し、モデルは平均的な「整った絵」に均してしまいます。

花魁の打掛(うちかけ、和服の上に羽織る衣装)に "elaborate and flamboyant" と書いた回は、単に衣装をつけただけの画になりました。同じ対象を、白粉(おしろい)/襟足に二本の塗り残し/下唇だけ小さく紅/簪(かんざし)20点/帯を前結び、というように物の名前で書き直した回は狙い通りの絵になりました。

代替の書き方としては、光は「overcast soft daylight」「single warm side light」のように強い1語で指定し、質感は「real silk」「weathered wood」のように物の名前で指定するのが有効でした。抽象語を物に置き換える具体的な手順は抽象語を物で書く技法の詳細記事にまとめています。

モデルの事前分布に存在しない画は言葉では出せない【実証済み・最重要】

写実系のモデルにとって「猫が笑う」は訓練データ上ほぼ実在しません。"wide grin" と書けば書くほど、実在する最も近い画——威嚇で歯をむく猫——に解決されてしまいます。

チェシャ猫を4回連続で失敗しました。毎回「ただの猫」か「唸る猫」にしかならず、語彙を変えても結果は変わりませんでした。突破できたのは5回目です。原典(テニエルの挿絵)の図版を参照画像として添付し、「この図の口の幾何だけを構造の型として維持し、質感は写実で」と役割を限定して指定したところ、耳から耳まで届く閉じた歯列の笑いが出ました。

同じやり方は他の題材にも展開しています。テニエル挿絵からチェシャ猫、鳥山石燕『画図百鬼夜行』から妖怪15体——いずれも形状を推測せず原典から転写しました。パブリックドメインの原典がある題材では、これが最初に試す選択肢になっています。

構造で書く

1ビート1事件【実証済み】

1区間(ビート)に事件を詰めすぎると、中間の動作が丸ごと飛びます。6キャラ分の動作を1ビートに詰めた回は、全員が静止して「不気味な集合写真」のような画になりました。ビートを分けたところ解消しました。

常時レイヤーとビートを分離【実証済み】

プロンプトの前半に「クリップ全編で止まらない、各キャラ固有の癖」を独立した段落で書き、ビート側にはスポットライトの当たる事件を1つだけ置く構造です。この構造にしたところ、三月ウサギは皿を投げ続ける、双子は取っ組み合いを続ける、ヤマネは寝返りだけを繰り返す、という3つの動きが同時進行しました。あわせて書くと効果があった指示が every character moving differently and never in unison です。

ビートの設計の詳細はビート構造の詳細記事にまとめています。

禁止は数値と物理で書く【実証済み】

「〜しない」とだけ書いても検証可能な指示になりません。the girl is never seated before 20 seconds(20秒より前には着席しない)や the cheshire cat never touches a chair(椅子に触れない)のように、数値や物理条件に落とし込みます。「目覚めたら既に着席していた」という時系列の破綻は、each moment continues from the previous state, no teleporting に秒数指定を加えたことで解消しました。

歩き方は移動距離とセットで指定【実証済み】

花魁の外八文字(おいらん独特の歩き方)が早歩きになってしまったのは、「16秒で通りの奥から手前まで」と移動距離を指定したためです。物理的に速く歩くしかない状況を自分で作っていました。行列を最初から近くに配置し、数歩だけ進ませる設計に変えたところ解消しました。あわせて、「歩き方を指定したキャラ以外は普通に歩く」と対比で明示しないと、全員が同じ歩き方になってしまう点にも注意が必要です。

音は明示的に禁止しないと勝手に喋る【実証済み】

ネイティブ音声生成を持つモデルは、黙らせないと台詞を捏造します。「歓声」とだけ書いた回は、全キャラが意味不明な言語をしゃべりました。No music, no dialogue, no spoken words, no singing と明示したことで解消しました。

stagingで因果を作る【推測・ただし成立を確認】

台詞や説明ではなく、配置だけで理由を成立させる技法です。例えば「町人が全員平伏する中で、カメラの高さだけ変わらない」と書くと、それだけで「自分だけが立っている」=「だから大名に見咎められる」という因果が、台詞ゼロで成立しました。ただし他の技法ほど繰り返し検証していないため、確信度は推測にとどめています。

参照画像

参照画像は失敗も教える【実証済み】

修正のために失敗版を参照画像として使うと、同じ失敗が再生産されます。二階の遊女が軒(のき)に座ってしまう問題は、失敗版を参照にして「軒に座るな」と否定形で指示しても直らず、人物のいない元画像から作り直してようやく解決しました。否定形の指示は弱く、「窓枠が四方に見える屋内に座る」と肯定形で書いた回のほうが狙い通りになりました。

参照画像の渡し方の詳細は参照画像編にまとめています。

クローン(複製)の原因は参照画像側の可能性が高い【推測・強い状況証拠】

「同じ顔が2人並んだ双子」の参照画像を渡した回で、少年が6〜7人に増殖しました。個数を明示しても、全員を指名しても、重複禁止を明文化しても、どれも効果がありませんでした。対照的に、参照画像がすべて単独の別人だった制作では、参照17枚でも複製は出ませんでした。ただし単独参照だった魚の従僕が2体化した例もあり、これだけでは説明しきれません。

系列は1枚から派生させる【実証済み】

同じ場所の別バリエーション(昼・夜・深夜・青灯)を作るときは、元画像を参照にして生成すると建物や消失点が一致します。昼の通りの1枚から夜・深夜・青灯の3本を派生させ、3本の動画でロケーションの同一性を担保できました。

参照数の実測【実測値】

仕様上の上限は画像30・動画10・音声10(合計50)です。実測では、7個で主要キャラが全員保持され、12個では全員が画面に出るものの複製は防げず、17個で複製が出なくなり、30個では生成が失敗した回がありました(原因未特定・サーバー側の障害の可能性もあります)。

指示していない部分

良かった箇所の多くは指定していない【観察】

魚を担いだ物売りのコミカルな平伏(プロンプトは "set down their loads and kneel too" のみで、むしろ no cartoonish expressions を入れていました)、ウサギが穴に飛び込む水飛沫、お茶会でのピント送り——いずれも明示していない箇所です。動作の骨格だけを書いて、間や物理の細部はモデルに任せる余地を残すほうが、良い結果につながることがあります。

再現性はガチャの領域が残る【実証済み】

花魁のウィンクは、同系統の指定をしても「決まった回」と「ぎこちない回」があります。表情の微細な動きは、どれだけ分解して書いても安定しませんでした。

抽象語→物で書く言い換え表

抽象語 効かなかった書き方 物で書いた代替
elaborate / flamboyant(豪華な・派手な) 花魁の打掛にそのまま指定→「衣装をつけただけ」の画になった 白粉/襟足に二本の塗り残し/下唇だけ小さく紅/簪20点/帯を前結び
cinematic(映画的な光) 光の質を形容詞だけで指定→平均的な絵に均された overcast soft daylight/single warm side light のように強い1語で指定
beautiful / whimsical(質感全般) 質感を形容詞だけで指定→平均的な絵に均された real silk/weathered wood のように物の名前で指定

参照画像枚数と結果の実測表

参照数 結果
7個 主要キャラが全員保持された
12個 全員が画面に出るが、複製は防げなかった
17個 複製なし
30個 生成が失敗した回があった(原因未特定)

※仕様上の上限は画像30・動画10・音声10(合計50)。

運用メモ

技法そのものではなく、実践している運用ルールも記録しておきます。1つの設計につき生成は1発とし、変種や保険のための水増しはしません。並列で投げる(27体を一度に発射して時間を短縮した実績があります)。量産はCLI、本番の仕上げはWebの画面、という使い分けをしています。これは効果を検証した技法ではなく、現時点で採用している運用方針です。

ツール自体の選び方は別記事で扱っています。AI動画生成ツールの選び方を参照してください。

まだ分かっていないこと

  • クローンの原因: 参照画像側が原因である可能性が高いという状況証拠はあるものの、単独参照でも複製が起きた例(魚の従僕が2体化)があり、まだ説明しきれていません。
  • 表情の微細な動きの再現性: ウィンクなど微細な表情は、指定を分解して書いても安定しない回があります。
  • 参照30枚で生成が失敗した回の原因: サーバー側の要因なのか、参照数そのものの限界なのか未特定です。

この記事は実データが増えるたびに追記します(初版公開: 2026-08-14)。

更新履歴

  • 2026-08-14: 初版公開
シェア: ポスト はてブ

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