2026年8月14日 金曜日
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活用· 約22

モデルが知らない造形は原典を渡して出す──PD参照画像の探し方と公開区分の確認手順

架空生物や古典の妖怪など、モデルの事前分布に無い造形は語彙をどれだけ変えても出ない。突破口はパブリックドメインの原典を参照画像として役割を限定して渡すことだが、その前に権利の確認が要る。国立国会図書館デジタルコレクションでは『画図百鬼夜行』の検索結果704件のうち館内限定が511件、ログインなしで閲覧可能は37件だった(2026-08-14確認)。原典の探し方、公開区分5種の見分け方、IIIFマニフェストで機械的に判定する方法を、実際に叩いたAPIの結果とともにまとめる。

モデルが知らない造形は原典を渡して出す──PD参照画像の探し方と公開区分の確認手順
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目次

架空生物、古典の妖怪、実在しない表情——モデルの学習データに存在しない造形は、プロンプトの語彙をどれだけ入れ替えても出てこない。当サイトの制作では、パブリックドメイン(以下PD)になった原典の図版を参照画像として添付し、その参照画像が担う役割を「構造の型」に限定すると出た。ただしこの手法は、渡す原典が本当にPDかどうかを自分で確認できて初めて使える。この記事は、原典をどこで探し、公開区分をどう確かめ、どう役割を限定して渡すかの手順をまとめたものだ。以下の数字とAPIの挙動は、すべて2026年8月14日に実際に叩いて確認した結果である。

3行まとめ

  1. 国立国会図書館デジタルコレクションで「画図百鬼夜行」を検索すると704件、うち「国立国会図書館内限定」511件・「送信サービスで閲覧可能」156件・「ログインなしで閲覧可能」37件だった(2026-08-14確認)。同じ書名でも自宅から使えるものは一部しかない
  2. 公開範囲が「インターネット公開(保護期間満了)」の資料だけがIIIF APIに対応しているとNDLが明記しており、実測でも manifest.json はPD資料3件で200、館内限定資料2件で404({"checkResult":"NG"})を返した
  3. NDLは「資料の公開範囲が『インターネット公開(保護期間満了)』とあっても個々の画像の公開範囲にそれ以外のものが含まれる場合がある」と明記している。資料単位の判定で止めてはいけない

なぜ「知らない造形」は語彙では出ないのか

写実系の生成モデルにとって、「猫が笑う」という事象は学習データの中に実在しない。wide grin と書けば書くほど、モデルは実在するものの中で最も近いもの——威嚇で歯を剥く猫——に解決してしまう。当サイトの制作では『不思議の国のアリス』のチェシャ猫で4回連続してこれが起き、語彙を変えても結果は変わらなかった。5回目にジョン・テニエルの挿絵を参照画像として添付し、役割を「口の幾何だけ」に限定した回で初めて狙った画が出た。この失敗と突破の詳細な記録は、別記の抽象形容詞が画を動かさない理由とチェシャ猫の4連敗にある。

ここから先は、その手法を他の題材に横展開するときに必ずぶつかる「原典の入手と権利確認」の側だけを扱う。

手順1 原典がある題材かを見極める

参照画像として渡せる原典が存在するのは、次のような場合だ。

  • 図像として確立した古典がある(妖怪画、神話の挿絵、動植物図譜、解剖図、意匠図案)
  • その図像の作者が十分に昔の人物で、保護期間が満了している
  • 誰かがそれを高解像度でデジタル化し、公開している

3つ目が抜けやすい。「江戸時代の版本だから自由に使える」は著作権の話であって、あなたの手元に使える画像ファイルがあるかどうかは別問題だ。所蔵館がデジタル化していなければ、そもそも渡す画像が無い。

手順2 どこで原典画像を手に入れるか

実際に検索して中身を確認できた提供元を、確認した実例つきで並べる。

提供元 確認できた実例 表示されていた利用条件 確認日
国立国会図書館デジタルコレクション 『百鬼徒然袋 3巻 [1]』鳥山石燕豐房 画/長野屋勘吉/文化2[1805](永続的識別子 info:ndljp/pid/2551542、全14コマ、請求記号 わ-38) 公開範囲「ログインなしで閲覧可能/インターネット公開(保護期間満了)」。NDL公式は「著作権保護期間が満了していますので、自由にご利用いただけます」「当館への申請は不要です」 2026-08-14
The Met Open Access 『百鬼拾遺』鳥山石燕、1781年(objectID 78693)。APIの isPublicDomaintrue 公開データセットはCreative Commons Zero(CC0)。The Metは470,000点超の作品情報を「unrestricted commercial and noncommercial use」で提供とREADMEに明記。画像はデータセットに含まれず、コレクションページのCC0アイコンで識別する 2026-08-14
Wikimedia Commons Category:Gazu Hyakki Yagyō に56ファイル(サブカテゴリ0、ページ0) ファイル単位でライセンスが付く。検証した File:SekienAkaname.jpgLicenseShortName: Public domain 2026-08-14
Project Gutenberg eBook #11『Alice's Adventures in Wonderland』(1865年刊、John Tenniel挿絵)。直近30日で108,546ダウンロード ページ上の表記は「Public domain in the USA.」——米国内でのPDのみを述べている 2026-08-14

Wikimedia Commonsは便利だが、検索結果が一様にPDだと思ってはいけない。実際に Tenniel Cheshire Cat でファイル検索した上位5件のうち、4件はテニエルの1865〜1866年の挿絵で Public domain、残り1件は2008年に撮影された砂岩彫刻の写真で CC BY-SA 3.0(撮影者 Mary Anne Pierson)だった。同じ検索語の結果に、PDの原典と、現代の撮影者の著作物が並ぶ。1件ずつライセンス欄を見るしかない。

手順3 国立国会図書館デジタルコレクションで公開区分を確認する

NDLデジタルコレクションは、公開範囲によって利用条件が変わる。NDL公式の「国立国会図書館ウェブサイトからのコンテンツの転載」に載っている表を、そのまま転記する(2026-08-14確認)。

個々の画像の「共有」エリアの公開範囲の記載 利用条件
ログインなしで閲覧可能/インターネット公開(保護期間満了) 「著作権保護期間が満了していますので、自由にご利用いただけます」。当館への申請は不要
ログインなしで閲覧可能/インターネット公開(裁定) 「利用に当たっては原則として著作権者の許諾が必要となります」
ログインなしで閲覧可能/インターネット公開(許諾) 同上
送信サービスで閲覧可能/国立国会図書館内・図書館・個人送信限定 同上
国立国会図書館内限定 同上

ここで押さえるべきは、「ログインなしで閲覧可能」=自由に使える、ではないという点だ。同じ「ログインなしで閲覧可能」の中に、保護期間満了・裁定・許諾の3種類が混在している。裁定と許諾は、NDLが手続きを経て公開しているだけで、あなたが参照画像に使ってよいという意味ではない。

資料単位で判定してはいけない

NDLは公開範囲の確認手順を4段階で示している。要点は次の2つだ。

  1. 転載したい画像を画面上部に表示してから「共有」エリアの公開範囲を見る。「資料の公開範囲が『インターネット公開(保護期間満了)』とあっても個々の画像の公開範囲にそれ以外のものが含まれる場合がある」(NDL原文)
  2. 複数の巻号がある場合、「タイトル全体の公開範囲と、各巻号の公開範囲は異なる場合があります」(NDL原文)ので、巻号を個別に選ぶ

参照画像は1コマ単位で切り出して使うものだから、この注意はそのまま効いてくる。「この本はPDだった」ではなく「このコマがPDだった」まで降りる必要がある。

同じ書名でも版によって区分が違う

「画図百鬼夜行」で検索した704件の内訳は次のとおりだった(2026-08-14確認)。

区分 件数
国立国会図書館内限定 511
送信サービスで閲覧可能 156
ログインなしで閲覧可能 37
うち古典籍資料(貴重書等) 2

そして個別に開いて確認した結果は次のようになった。

  • 『画図百鬼夜行』鳥山石燕 著/渡辺書店/1967(pid 2517422)→ 国立国会図書館内限定
  • 『画図百鬼夜行』鳥山石燕 [画]/国書刊行会/1992.12(pid 13633184)→ 国立国会図書館内限定
  • 『百鬼徒然袋 3巻』鳥山石燕豐房 画/長野屋勘吉/文化2[1805](pid 2551542〜2551544)→ ログインなしで閲覧可能/インターネット公開(保護期間満了)

つまり、原典の絵師が同じでも、近代に出た復刻版は自宅から見ることすらできず、江戸期の版本のほうが自由に使えるという並びになっている。理由は画面上に表示されないため、ここでは確認できた事実だけを書く。原典を探すときは「有名な書名」ではなく「江戸期に刷られた版そのもの」を狙ったほうが早い。

なお、自宅から見られない資料が消えるわけではない。NDLの図書館向けデジタル化資料送信サービス(著作権法第31条第7項に基づく)では、令和8年4月22日時点で約226万点が全国の参加図書館の館内で利用できる。内訳は図書 約128万点、古典籍 約2万点、雑誌 約1.3万タイトル(約84万点)、博士論文 約15万点、脚本 約3千点だ。ただしこれは閲覧の話であって、参照画像として持ち出してよいという話ではない

IIIFマニフェストのHTTPステータスで機械的に判定する

区分を1件ずつ画面で見るのは、候補が数十件あるとつらい。NDLはIIIFヘルプに、API対応の条件を明記している。

国立国会図書館デジタルコレクションでは、以下の条件にあてはまるデジタル化資料について、IIIF API に対応しています。 書誌情報の「公開範囲」が「インターネット公開(保護期間満了)」である。

裏を返すと、IIIFマニフェストが返ってくるかどうかで公開区分を判定できる。実際に叩いた結果は次のとおり(2026-08-14実測)。

永続的識別子 資料 manifest.json のHTTP 返り値
2551542 百鬼徒然袋 3巻 [1](1805) 200 マニフェスト(9,362バイト、canvases 14)
2551543 百鬼徒然袋 3巻 [2](1805) 200 マニフェスト(9,362バイト)
2551544 百鬼徒然袋 3巻 [3](1805) 200 マニフェスト(8,216バイト)
2517422 画図百鬼夜行(渡辺書店・1967) 404 {"itemId": "info:ndljp/pid/2517422", "checkResult": "NG"}
13633184 画図百鬼夜行(国書刊行会・1992) 404 {"itemId": "info:ndljp/pid/13633184", "checkResult": "NG"}

叩くURLは https://dl.ndl.go.jp/api/iiif/<永続的識別子の数字部分>/manifest.json の形式だ。200が返れば「インターネット公開(保護期間満了)」、404で checkResult: NG が返れば対象外、という切り分けが5件すべてで一致した。候補を機械的にふるいにかける用途には使える。

さらにNDLは、IIIF対応資料の利用についてこう書いている。

IIIFに対応したデジタル化資料は著作権保護期間が満了していますので、転載依頼フォームによる国立国会図書館へのお申込みは不要です。

マニフェストの attribution フィールドには「国立国会図書館 National Diet Library, JAPAN」が入っている。NDLは §3「ご注意とお願い」で、転載時に「利用した画面が国立国会図書館ウェブサイトから転載したものであることを明示するよう、ご協力をお願いいたします」としているので、この文字列をそのまま出典表記に使える。

手順4 保護期間を自分で計算する

NDLの表示に頼れない提供元(海外のアーカイブや個人スキャン)から拾う場合は、自分で判断することになる。著作権法(e-Gov法令検索、2026-08-14確認)の該当条文は次のとおりだ。

  • 第51条第2項:著作権は「著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後)七十年を経過するまでの間、存続する」
  • 第53条第1項:法人その他の団体が著作の名義を有する著作物は「その著作物の公表後七十年(その著作物がその創作後七十年以内に公表されなかつたときは、その創作後七十年)」
  • 第57条:終期は「著作者が死亡した日又は著作物が公表され若しくは創作された日のそれぞれ属する年の翌年から起算する」

第57条の「翌年から起算」は実務でよく落ちる。死亡年そのものから70年を数えるのではなく、翌年1月1日を起点として70年後の12月31日までが保護期間になる。

江戸期の版本(今回の例では『百鬼徒然袋 3巻』の文化2年=1805年求板)については、絵師が18世紀の人物であることが書誌情報から確認できるため、この計算をするまでもなく満了している。判断が要るのは近代以降の挿絵や写真のほうだ。なお第30条の4は「著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」の利用を定めた規定で、学習段階の話であり、参照画像として1枚の図版を添付する行為をカバーするものではない。この線引きの整理はAI画像生成と日本の著作権法の現在地にまとめてある。

手順5 参照画像の役割を限定して書く

原典が用意できたら、次はプロンプト側だ。当サイトの制作で効いたのは、参照画像を「お手本」として丸ごと渡すのではなく、何を借りて何を借りないかを明示する書き方だった。

参照画像に与える役割 プロンプトでの書き方 起きること
役割を指定しない 「この画像を参考に」 何を借りるかが決まらない
スタイル参照として渡す 「この画像の画風で」 版画の線や彩色ごと出力に乗る。写実の映像に混ぜると浮く
構造の型として限定する【実証済み】 「この図の口の幾何だけを構造の型として維持し、質感は写実にする」 造形の骨格だけが転写され、質感はモデル側の写実分布に残る。チェシャ猫で5回目に成功した書き方

限定の対象として実際に検証したのは「口の幾何」だけだ。輪郭のシルエット、手足の関節の数と配置、顔の器官の位置関係なども同じ枠組みで指定できるはずだが、これらは個別に検証していない【未検証】。

この方式は鳥山石燕の妖怪画から妖怪15体を起こす作業にも横展開できた。原典の図版があるおかげで、造形を推測で埋める工程がまるごと消える——これが、PD原典を使う最大の実利だと考えている。

画像は原寸で渡さなくていい

参照画像を用意するとき、原寸のスキャンをそのまま添付する必要はない。IIIF Image APIはサイズを指定して取得できる。同じコマ(pid 2551542、コンテンツ番号 R0000001)で比較すると次のようになった(2026-08-14実測)。

リクエスト 返ってきた画像 ファイルサイズ
/full/full/0/default.jpg 6015 × 4873 px 4,044,771バイト(約3.9MB)
/full/1024,/0/default.jpg 1024 × 830 px 236,985バイト(約231KB)

NDLのヘルプには矩形切り出しの例も載っている。/894,660,916,1700/pct:25/0/default.jpg のように書けば、「左から894px・上から660pxの点を始点に横916px・縦1700pxを切り出し、その25%サイズで返す」という指定になる。原典の1ページ全体ではなく、造形の型として使いたい部分だけを切り出して渡すほうが、参照画像の役割を限定する意図とも噛み合う。

正直な但し書き

  • 『画図百鬼夜行』の江戸期版本そのものは、NDLデジタルコレクションでインターネット公開されていることを確認できなかった。 検索でログインなしに閲覧できたのは同じ絵師による『百鬼徒然袋 3巻』(文化2年)で、『画図百鬼夜行』の名を持つ資料はいずれも国立国会図書館内限定だった。書名で狙い撃つと空振りする。
  • IIIFマニフェストによる判定は5件でしか試していない。 NDL公式の記述と一致しているが、例外の有無は確認していない。実運用では最終確認を画面の「共有」エリアで行うことを勧める。NDL自身が資料単位ではなく画像単位での確認を求めている。
  • NDLヘルプは画像APIの出力上限を5000ピクセルと記載しているが、実測では6015 × 4873 pxが返ってきた。 ヘルプの記述と実際の挙動が一致しない。理由は特定できていない。大きさが要件になる場合は必ず実測すること。
  • Project Gutenbergの表記は「Public domain in the USA.」であり、日本国内での保護期間について何かを述べているわけではない。 海外アーカイブのPD表示は、その国の法における判断であることが多い。
  • 戦時加算については本記事で一次ソースを確認していないため扱っていない。 第二次大戦期に関係する著作物を扱う場合は、別途確認が必要になる可能性がある。
  • 保護期間が満了していても、無制限に使えるわけではない。 NDLは「著作権保護期間が満了したコンテンツにつきましても、著作者の人格的利益や、プライバシーその他の人権等にご配慮のうえご利用ください」「第三者との間に問題が生じた場合は、利用する方がその責任を負うこととなります」と明記している。また同館は「著作権の確認や許諾手続に関する代行は行っていません」としている。
  • 本記事は法的助言ではない。 個別の案件で判断に迷う場合は、専門家に確認してほしい。当サイトが確認したのは、上記の各ページに2026年8月14日時点で表示されていた内容と、実際にAPIを叩いて得られた応答だけである。
  • 参照画像を渡しても出ないことはある。 何回目で成功するかは題材依存で、チェシャ猫の5回はあくまで1事例だ。

出典

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