AI動画の参照画像は「失敗」も「複製」も運ぶ──実測ログ
動画生成AIに参照画像を渡すと、直したいはずの失敗がそのまま再現されたり、同じ顔の人物が2人から6〜7人に増殖したりすることがある。当サイト運営者が実制作で記録した一次データでは、参照画像17枚では複製が出ず12枚では出た一方、単独参照の人物が2体に増えた反証も記録した。原因を断定せず、実際に効いた書き換え方と、まだ分かっていないことを整理する。

目次
参照画像は「見た目を揃えるための道具」だと思われがちだが、実際に動画生成AIで作品を作りながら記録を取ると、参照画像は見た目だけでなく失敗も複製もそのまま運ぶことが分かってきた。修正のつもりで渡した失敗版の画像が同じ失敗を再生産し、複数人物が写った画像が人数の増殖を引き起こす——という現象を、当サイト運営者が実制作の中で観測した。以下は一次データであり、確信度は【実証済み】【推測】【実測値】のラベルで区別して書く。
3行まとめ
- 【実証済み】失敗版を参照画像にすると同じ失敗が再生産される。否定形の指示(「軒に座るな」)は効かず、人物が写っていない元画像から作り直して解決した
- 【推測】同じ顔の人物が複数写った参照画像を渡すと人数が増殖する現象を観測したが、単独参照でも別のキャラクターが複製された反証があり、原因を参照画像の構図だけに断定できていない
- 【実測値】参照画像17枚では複製が出なかったが12枚では出た。30枚では生成が失敗した回があるが原因は未特定
失敗を参照画像にすると、失敗ごと再生産される【実証済み】
参照画像を使ったプロンプト運用でまず分かったのは、参照画像は「直したい失敗」もそのまま次の生成に持ち込んでしまうということだ。
二階建ての建物を舞台にしたカットで、本来は室内に座っているはずの遊女が、室内でなく軒(屋根の外側)に座ってしまう問題が発生した。この失敗版の画像を「修正の参照」として次の生成に渡し、「軒に座るな」と否定形で指示を出したが、直らなかった。
解決したのは、失敗版を参照するのをやめて、人物が写っていない元の建物画像から作り直したときだった。参照画像を「正しい状態の土台」に戻したことで、同じ失敗が起きなくなった。
つまり、参照画像は構図やスタイルだけでなく、その画像に写り込んだ「間違った状態」ごと次の生成に伝わる。修正したいはずの失敗を参照画像に含めたままにすると、修正の指示文をどれだけ書き足しても、画像側の情報が指示を上書きしてくる、というのがここでの観測だ。
動画生成AIプロンプト全体の技法整理は動画生成AIプロンプト技法の全体整理にまとめているので、参照画像以外の要素(構図・カメラワーク・尺の作り方など)はそちらを参照してほしい。
否定形の指示はなぜ通らないのか
上の失敗から分かった系として、否定形の指示は弱いという点がある。「軒に座るな」という指示は、何をしてはいけないかを伝えているだけで、代わりに何を達成すべきかを具体的に示していない。
これに対して、達成された状態を肯定形で書き直した指示——「窓枠が四方に見える屋内に座る」——は通った。否定形は「してはいけないこと」の集合を提示するだけだが、肯定形は「完成させたい状態」そのものを一意に指定できる。
| 意図 | 否定形(通らなかった指示) | 肯定形(実際に効いた指示) |
|---|---|---|
| 人物を屋内に座らせたい | 軒に座るな | 窓枠が四方に見える屋内に座る |
この事例は1件のみの記録であり、否定形が常に効かないと一般化できるわけではない。ただし、この制作の中では「何をするな」より「何が実現された状態か」を書いた方が指示が通った、という結果になっている。
同じ顔の人物が増殖する「クローン」現象【推測】
もう一つ観測されたのが、同じ顔の人物が画面内で複製される現象だ。「同じ顔が2人並んだ双子」の絵を参照画像として渡した回で、画面内の少年が6〜7人に増殖した。
このとき、次の対処をすべて試したが、どれも効かなかった。
- プロンプトで人数を明示する
- 全員の座席を個別に指名する
- 「重複禁止」を明文化する
言葉での指示がすべて無効だったことから、複製の原因は指示文ではなく参照画像側にある可能性が高いと考えている。ただしこれは状況証拠に基づく【推測】であり、確定した原因ではない。
状況証拠にあたるのが、別の制作(江戸の街並み)との対比だ。この制作では参照画像がすべて単独の別人(1枚に1人だけが写った画像)で構成されていた。参照画像を17枚使っても複製は出ず、完成映像を見て「同じ人がぱっと見いない」ことを制作者本人が確認している。「双子の参照画像→複製が出た」「単独の別人参照×17枚→複製が出なかった」という2つの結果を並べると、参照画像に複数の同一人物が写っているかどうかが複製の分かれ目に見える。
ただし、これで説明が完結するわけではない。同じ制作の中で、単独で参照した「魚の従僕」が2体に増えた例がある。これは参照画像の構図(複数人物が写っているかどうか)だけでは説明がつかない反証で、複製の真因が参照画像の構図だけにあるとは言い切れないことを示している。単独参照でも複製が起きたという事実を、この記事では隠さずに書いておく。
系列カットは1枚の参照画像から派生させる【実証済み】
参照画像の使い方として、複製やクローンとは別に効果が確認できたのが「系列を1枚から派生させる」方法だ。
同じ場所の別バリエーション(昼・夜・深夜など時間帯違い)を作る際、最初の1枚を参照画像にして次の画像を生成すると、建物の形と消失点が一致する。実際に、昼の通りの画像1枚から夜・深夜・青い灯りの3種を派生させたところ、3本の動画をまたいでロケーションの同一性が担保できた。
同じロケーションを複数カットで使う場面の尺や構成の組み方については、ビート構成の記事も参照してほしい。
これは前の2節(失敗の再生産・クローンの増殖)と矛盾しない。参照画像はスタイルや構図だけでなく、写り込んだ状態を丸ごと次に伝える性質がある——その性質を、系列カットでは「建物の形と消失点を固定する」という狙った方向に使えた、ということになる。
参照画像の枚数と結果【実測値】
参照画像・動画・音声を組み合わせて使う生成では、仕様上の上限が画像30枚・動画10本・音声10本(合計50)に設定されている。この上限内で枚数を変えながら実制作を重ねた結果が以下だ。
| 参照画像枚数 | 結果 |
|---|---|
| 7枚 | 主要キャラクターは全員保持された |
| 12枚 | 全員が画面に出たが、複製は防げなかった |
| 17枚 | 複製が出なかった |
| 30枚 | 生成が失敗した回がある(原因は未特定) |
枚数を増やすほど複製が減るという単純な傾向には見えない。12枚で複製が出て17枚で出なかった一方、30枚では生成そのものが失敗する回があった。30枚の失敗については、サーバー側の一時的な障害だった可能性もあり、枚数そのものが原因だとは断定できていない。
まだ分かっていないこと
この記事で書いた内容には、実制作の中でまだ解けていない点が2つ残っている。
クローン(複製)の真因: 双子の参照画像と江戸の街並み(単独参照×17枚)の対比からは、参照画像に同一人物が複数写っているかどうかが複製の分かれ目に見える。しかし「魚の従僕」は単独参照でも2体に増えており、この仮説だけでは説明がつかない。人数明示・座席指名・重複禁止の明文化もすべて効かなかったことを踏まえると、複製の真因は参照画像の構図以外の要素(モデル側の生成傾向、プロンプトの別の部分、シード値など)にある可能性も残っている。現時点では【推測】の域を出ない。
30枚での生成失敗の原因: 上限に近い30枚を使った回で生成が失敗したが、これが枚数由来の制約なのか、その時点でのサーバー側の一時的な障害だったのかを切り分けられていない。再現性のある検証をしていないため、原因未特定のまま記録している。
いずれも、今後の制作で追加のデータが取れ次第、この記事側で更新する。
出典・参照資料
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