AI動画で頼んでいないのにキャラが喋る──生成側で音を止めるプロンプトの書き方
音声ネイティブの動画生成モデルは、音の指定を空欄にすると勝手に台詞を埋める。OpenAIのSora 2 Prompting Guideは台詞をDialogueブロックに分離せよと書き、Google CloudのVeo公式ドキュメントはプロンプトリライターが「sound effects」を自動追加し、Veo 3・3.1では無効化できないと明記している。当サイトの制作ログで「歓声」とだけ書いた回に全キャラが意味不明な言語を喋り出し、禁止句の明示で解消した前後差もあわせて記録した(2026年8月14日確認)。

目次
音声ネイティブの動画生成モデルで「キャラが頼んでいないのに喋る」「意味不明な言語を話す」が起きるのは、プロンプトの音の欄が空だからである。OpenAIのSora 2 Prompting Guide(2026年3月12日付・2026年8月14日確認)は「Unless you describe these details, Sora will make them up.(これらの詳細を書かない限り、Soraはそれを勝手に作る)」と書く。音は「指定しなければ出ない」ものではなく「指定しなければモデルが埋める」ものとして扱われている。ナレーションを編集で別に載せる前提なら、音の欄を空けずに無音を明示する必要がある。
- OpenAI公式のSora 2 Prompting Guideは、台詞を散文の下の
Dialogue:ブロックに分離せよと指定し、無音ショットでも「one small sound」でテンポだけ示唆する書き方を推奨している(2026-08-14確認)- Google Cloud公式によると、Veoのプロンプトリライターは「video description, camera motions, transcription, and sound effects」を自動追加し、Veo 3および3.1では無効化できない(同)
- 当サイトの制作ログでは「歓声」とだけ書いた回に全キャラが意味不明な言語を喋り出し、
No music, no dialogue, no spoken words, no singingの明示で解消した(1事例・音の最終判定は人間の耳)
なぜ「何も書かない」と喋り出すのか
日本語で「AI動画 勝手に喋る」と検索して出てくるのは、ほぼ「動画に音を足すツール」の広告である。生成側で音を抑える話は見つけにくいが、公式ドキュメントには原因が書かれている。
Sora 2 Prompting Guideは、短いプロンプトの例を挙げてこう続ける。「Unless you describe these details, Sora will make them up.」。ここでいうdetailsは時間帯・天候・衣装・トーン・カメラアングルなどを指す。同ガイドは「Shorter prompts give the model more creative freedom. Expect surprising results.(短いプロンプトはモデルにより多くの創作の自由を与える。驚くような結果を予期せよ)」とも書いている。音を書かないことは、音を消す指示ではなく、音をモデルに委任する指示になる。
Veo側はさらに構造的である。Google Cloud公式の「Turn the prompt rewriter off」ページによると、Veoには「an LLM-based prompt enhancement tool, also known as a prompt rewriter(プロンプトリライターとも呼ばれるLLMベースのプロンプト強化ツール)」があり、その働きは「rewrite your prompts to add video description, camera motions, transcription, and sound effects to your prompt(動画の描写、カメラの動き、書き起こし、効果音をプロンプトに追加する)」と説明されている。追加される要素に sound effects(効果音)が明示的に含まれている。
同ページはさらに「Important: You can't disable the prompt rewriter when using Veo 3 and 3.1 models.(重要:Veo 3および3.1モデルではプロンプトリライターを無効化できない)」と書く。無効化のフラグがあるのはveo-2.0-generate-001のみで、そちらは「This feature is enabled by default(デフォルトで有効)」。加えて「A rewritten prompt is delivered by API response only if the original prompt is fewer than 30 words long.(書き換え後のプロンプトがAPIレスポンスで返るのは、元のプロンプトが30語未満のときだけ)」とあり、長いプロンプトでは書き換え結果を確認する手段すら返ってこない。
Veo 3・3.1で音が勝手に付く現象は、間にリライターが挟まる仕様の帰結として説明できる。
公式ドキュメントが指定する音の書き方
Sora 2とVeoでは、公式が指定する台詞の書式がはっきり違う。混ぜて書くと片方で崩れる。
| 項目 | Sora 2(OpenAI Cookbook) | Veo(Google Cloud公式) |
|---|---|---|
| 台詞の置き場所 | 散文の下に独立したDialogue:ブロックを置く |
本文中に「話者 says:」で書く |
| 引用符 | 例では- Detective: "You're lying."と引用符付き |
「avoid using quotation marks」(動画内に文字として描画されるため) |
| 話者の区別 | 「label speakers consistently and use alternating turns」 | キャラ説明と声質を毎シーン丸ごとコピペし、同じseedを使う |
| 環境音 | Background Sound:という別項目を立てる |
「use separate sentences in your prompt to describe the audio」 |
| 音の分類 | Dialogue/Background Sound/(詳細版では)Sound | Sound effects/Ambient noise/Dialogue |
| 台詞の分量目安 | 4秒で1〜2往復、8秒で「a few more」 | 明示なし |
Veoの「Best practices」ページは非推奨がA woman says: "My name is Clara."、推奨がA woman says: My name is Clara.である。理由は「To prevent the model from rendering text in the video(モデルが動画内に文字を描画するのを防ぐため)」で、音声のオン・オフの話ではない。一方Sora 2は例示プロンプトで引用符を使う。同じ「台詞の書き方」でも公式の指示が逆を向いており、検証なしで流用しないほうがよい。
無音を作るには「空欄」でなく「無音」と書く
Sora 2 Prompting Guideには、無音ショットの扱いが1行ある。「If your shot is silent, you can still suggest pacing with one small sound, such as "distant traffic hiss" or "a crisp snap." Think of it as a rhythm cue rather than a full soundtrack.(ショットが無音なら、小さい音ひとつでテンポを示唆できる。サウンドトラックではなくリズムの合図と考えること)」
完全な無音を指示する専用パラメータの記述は同ガイドに見当たらない。参考になるのは例示プロンプトの音の欄である。詳細版テンプレートのSound欄は「Diegetic only: faint rail screech, train brakes hiss, distant announcement muffled (-20 LUFS), low ambient hum. Footsteps and paper rustle; no score or added foley.(ダイエジェティック音のみ。……スコアや追加フォーリーなし)」、別の例のBackground Sound欄は「Natural ambience only: faint wind, fabric flutter, street noise, muffled music. No added score.(自然な環境音のみ。……追加のスコアなし)」。いずれも欄を空にせず、「何を入れて何を入れないか」を欄の中に書き切っている。
当サイトの制作ログでの前後差
当サイトが動画生成AIで作品を作りながら記録している技法台帳に、この症状の実測が1件ある。音の欄に「歓声」とだけ書いた回で、全キャラクターが意味不明な言語で喋り出した。モデルが「声を出す」を「言語的な発話」に拡大解釈したと見られる。解消したのはNo music, no dialogue, no spoken words, no singing(音楽なし、台詞なし、発話なし、歌唱なし)という4語の並列禁止だった。
以下は1行目が当サイトの実測、2〜4行目は公式ドキュメントの記述から導いた書き換えである。
| 症状 | 書いていた指示 | 書き換えた指示 |
|---|---|---|
| 全キャラが意味不明な言語で喋る | 音の欄に「歓声」とだけ | No music, no dialogue, no spoken words, no singing |
| 頼んでいないBGMが乗る | 音の欄が空欄 | 環境音だけを名指しし、no score を併記する(Sora 2公式例示の書き方) |
| 台詞が画面に文字として出る | says: "..." と引用符付き |
Veo公式はsays: ...と引用符なしを推奨 |
| 台詞が尺に収まらず途切れる | 長い台詞を1クリップに詰める | Sora 2公式の目安は4秒で1〜2往復 |
no dialogueだけでは足りず、music・dialogue・spoken words・singingを並べて初めて止まった。「発話」に該当する言い方が複数あり、1つを塞いでも別の経路から出てくる挙動として観測している。ただし1事例の前後差で、モデル横断の法則として提示できる段階ではない。
なおこの書き方は、Veo公式のネガティブプロンプト指針と食い違う。Veoのプロンプトガイドは「Not recommended: using instructive language or words such as "no" or "don't".("no"や"don't"のような指示的な語の使用は非推奨)」と書き、代わりに「Recommended: Describe what you don't want to see. For example, "wall, frame"」と名詞を並べる形を推奨する。当サイトの実測はVeoに対するものではないので正面衝突ではないが、Veoを使うならNo music, no dialogueをそのまま貼らず、music, dialogue, speech, singingと名詞で並べるほうが公式の指針には沿う。
ナレーションを別に載せる前提での実務手順
ナレーションを編集で別に載せる前提なら、順序を決めておくと事故が減る。
- 音の欄を空欄にしない。環境音だけを名指しし、発話系を明示的に排除する
- 台詞の欄そのものを作らない。Sora 2のテンプレートは
Dialogue:を任意項目として扱うので、無音ショットでは項目ごと落とす - 口の動きを別途潰す。音を止めてもキャラクターが口を動かす画は残りうる
- 生成後に人間の耳で確認する。ここは自動化できない
3は音声トラックとは別の問題である。本記事の禁止句は音声トラックに効くもので、口の動きを止めるものではない。動作側の指定はAI動画で複数人物が同時に動かない理由にまとめた構造の話と地続きになる。
正直な但し書き
当サイトの実測は1事例である。 禁止句で解消した記録は制作ログの1回の前後差で、何回中何回で再現したかのデータは持っていない。判定は人間の耳で行っており、波形やラウドネスの数値で検証したものではない。また前後差を取ったときのモデル名を制作ログに残していないため、本記事では「ネイティブ音声生成を持つモデル」とだけ書いた。Sora 2やVeoで同じ挙動が出るかは検証していない。
Sora 2の公式仕様に「完全無音」の記述がない。 Sora 2 Prompting Guideには無音ショットへの言及(「one small sound」でテンポを示唆する)はあるが、音声トラックを完全にオフにするパラメータやプロンプト句は2026年8月14日時点で確認できなかった。存在しないと断定しているのではなく、当該ガイドに記載がないという意味である。
Veoの音声対応の表記が限定的である。 Google Cloudの動画生成プロンプトガイド(最終更新2026年8月13日UTC・2026年8月14日確認)のAudio節は「Audio is supported by veo-3.0-generate-001 in Preview.」とあり、対応モデルがveo-3.0-generate-001のプレビュー扱いという表記になっている。Veo 3.1系の音声対応は同ページの記述だけでは判断できない。
Sora 2はAPIの終了が予告されている。 OpenAIのDeprecationsページ(2026年8月14日確認)によると、Videos API、sora-2、sora-2-proおよび各スナップショットは2026年9月24日にシャットダウン予定で、2026年3月24日に開発者へ通知済みと記載されている。推奨移行先はいずれも「---」で、置き換えモデルは示されていない。料金や代替はSoraの料金・使い方・代替サービスをまとめた記事に分けてある。
プロンプトリライターの中身は見えない。 Veo 3・3.1ではリライターを無効化できず、元のプロンプトが30語以上だと書き換え後も返らないため、「どんな音の指示が足されたか」を確認する手段が実務上ほぼない。本記事の「リライターが原因で音が付く」という説明は公式の仕様記述に基づく推論であり、個別の生成でリライターが何を足したかを突き止めた検証ではない。
出典
- Sora 2 Prompting Guide | OpenAI Cookbook(2026年3月12日付、2026年8月14日確認): https://developers.openai.com/cookbook/examples/sora/sora2_prompting_guide
- Video generation prompt guide | Gemini Enterprise Agent Platform | Google Cloud Documentation(最終更新2026年8月13日UTC、2026年8月14日確認): https://docs.cloud.google.com/vertex-ai/generative-ai/docs/video/video-gen-prompt-guide
- Turn the prompt rewriter off | Gemini Enterprise Agent Platform | Google Cloud Documentation(2026年8月14日確認): https://docs.cloud.google.com/gemini-enterprise-agent-platform/models/video/turn-the-prompt-rewriter-off
- Best practices for Veo | Gemini Enterprise Agent Platform | Google Cloud Documentation(2026年8月14日確認): https://docs.cloud.google.com/gemini-enterprise-agent-platform/models/video/best-practice
- Deprecations | OpenAI Platform(2026年8月14日確認): https://platform.openai.com/docs/deprecations
- AI時短ラボ 制作ログ(動画生成AIプロンプト技法台帳・2026年8月12日時点)
出典・参照資料
- 一次資料Sora 2 Prompting Guide | OpenAI Cookbook ↗
- 一次資料Video generation prompt guide | Gemini Enterprise Agent Platform | Google Cloud Documentation ↗
- 一次資料Turn the prompt rewriter off | Gemini Enterprise Agent Platform | Google Cloud Documentation ↗
- 一次資料Best practices for Veo | Gemini Enterprise Agent Platform | Google Cloud Documentation ↗
- 一次資料Deprecations | OpenAI Platform ↗
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