2026年8月14日 金曜日
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AI動画がスローモーションになる原因──倍速指定ではなく尺と移動量の比を直す

生成した動画がぬるっと遅くなるとき、プロンプトに「2倍速」「4倍速」と書き足しても直らないという報告が日本語圏に複数ある。OpenAI公式のSora 2 Prompting Guideは動作を「4歩で窓へ、止まり、最後の1秒でカーテンを引く」のように歩数と秒で書けと指示し、速度倍率を指定するパラメータはガイドに記載がない(2026-08-14確認)。当サイトは逆方向の失敗——16秒で通りの奥から手前まで歩かせて花魁の外八文字が早歩きに化けた回——から、見かけの速度が「尺あたりの移動量」で決まることを確認した前後差データを持つ。

AI動画がスローモーションになる原因──倍速指定ではなく尺と移動量の比を直す
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生成した動画が全体的にぬるっと遅くなるとき、プロンプトに「2倍速」「4倍速」と書き足しても直らない。理由は、動画生成AIのプロンプトに再生速度という制御項目が存在せず、尺(クリップの秒数)のほうが先に固定値として決まっているからである。見かけの速度を決めているのは速度の指定語ではなく、その尺の中で被写体をどれだけ移動させると書いたかだ。当サイトはこの関係を、遅い方向ではなく逆方向の失敗——16秒の尺で花魁を通りの奥から手前まで歩かせ、指定したはずのゆっくりした歩き方が早歩きに化けた回——から確認した。以下、公式ドキュメントで裏が取れる部分、当サイトの制作ログで確認した部分、まだ確認できていない部分を分けて書く。

  • OpenAI公式「Sora 2: Prompting Guide」のAPIパラメータでは、クリップ長 seconds の指定可能値は "4" / "8" / "12" / "16" / "20" の離散値で既定は "4"。速度倍率にあたるパラメータは記載がない(2026-08-14確認)
  • 同ガイドは動作を Actor takes four steps to the window, pauses, and pulls the curtain in the final second(4歩で窓へ、止まり、最後の1秒でカーテンを引く)のように歩数と秒で書けと指示する。Google公式のVeo 3.1ドキュメントも尺は "4" / "6" / "8" 秒で、速度やスローモーションへの言及はない(2026-08-14確認)
  • 当サイトの前後差データは「速すぎた」側の1件(16秒で通りの奥から手前まで→数歩に縮めて解消)であり、遅い側を同じ手で直した実例はまだ持っていない【実証済み・ただし検証方向は逆】

倍速指定がプロンプトで効かない構造的な理由

Yahoo!知恵袋には「動画生成AIで動画を生成するとスローな感じになるのはなぜなのでしょうか?2倍速や4倍速でプロンプトを指定しても遅い感じになるのですがなぜなのでしょう?」という質問が投稿されている(q14313677309)。別の質問(q11308713251)では、Kling AIとHailuo AIで「歩く」と指定したのに6秒の動画で2歩しか進まない、という具体的な症状が報告されている。

この2件が示しているのは、速度の指定語がプロンプト上の有効な制御になっていないという点である。実際、生成側のインターフェースを見ると、尺は連続量ではなく離散的な選択肢として先に決まっている。

モデル 指定できる尺(秒) 既定値 出典
Sora 2 / Sora 2 Pro "4" / "8" / "12" / "16" / "20" "4" Sora 2: Prompting Guide(2026-08-14確認)
Veo 3.1 / 3.1 Fast / 3.1 Lite "4" / "6" / "8" 記載なし Gemini APIドキュメント(2026-08-14確認)

Veo 3.1のドキュメントには「Must be "8" when using extension, reference images or with 1080p and 4k resolutions」(動画の延長・参照画像・1080p/4K解像度を使う場合は "8" でなければならない)という条件も記載されている。1080pで出そうとした時点で尺が8秒に固定される、という設計である。

つまり生成の側は「何秒のクリップを作るか」を先に受け取り、その中に指示された出来事を収める。速度はユーザーが渡すパラメータではなく、尺と記述内容から結果的に決まる従属変数になっている。ここに「2倍速で」と書き足しても、モデルが参照できる速度の制御項目が存在しない以上、映像の見た目としての「速そうな雰囲気」に翻訳されるだけで、実際の移動量は変わらない。

見かけの速度は「尺あたりの移動量」で決まる

尺が固定なら、画面上の見かけの速度は次の比で決まることになる。

見かけの速度 ≒ プロンプトに書かれた空間的な変化量 ÷ 尺

分子は「何歩進むか」「どこからどこまで動くか」「何回振り向くか」といった、位置と姿勢の変化の総量である。この分子を書かないまま尺だけが長いと、モデルには埋めるべき変化量の目標がない。結果として、破綻を出さずに済む最小限の動きだけを置く——6秒で2歩しか進まない、という前掲の症状はこれに一致する【推測】。

逆に、分子が尺に対して大きすぎると、同じ比が反対側に振れる。当サイトが持っているのはこちら側の実データである。

逆方向の失敗から取った前後差データ【実証済み】

江戸の花魁道中を生成した回で、外八文字(足を外側に大きく回す、独特のゆっくりした歩き方)を指定したにもかかわらず、出力は早歩きになった。原因はプロンプトの歩き方の記述ではなく、同時に書いていた「16秒で通りの奥から手前まで」という距離指定だった。指定された距離を16秒で踏破することと、外八文字のゆっくりした歩幅を両立させる解が物理的に存在せず、モデルは距離のほうを優先した。

解消したのは、行列を最初から手前寄りに配置し、数歩だけ進ませる設計に変えたときである。歩き方の記述、速度に関する語彙、尺——いずれも変えていない。変えたのは分子にあたる移動量だけで、これで外八文字が保たれた。

この1件から取り出せるのは、「歩き方の語彙は、移動量の記述に負ける」という順序関係である。速度に関する指示(速い/遅い/独特の歩き方)と、空間的な移動量の指示が矛盾したとき、優先されたのは移動量のほうだった。

この関係を遅い側に裏返すと、「尺に対して移動量を書いていない/小さすぎる」ときにスローに見える、という予測になる。ただしこれは当サイトが直接検証した方向ではない。以降で「遅い側」に触れる箇所には【推測】と明記する。

公式ガイドは速度ではなく「歩数と秒」で書けと指示している

OpenAIのSora 2 Prompting Guideは、動きの記述について次のように述べている(2026-08-14確認)。

  • Movement is often the hardest part to get right, so keep it simple. Each shot should have one clear camera move and one clear subject action.(動きは最も制御が難しい部分なので、単純に保つこと。各ショットには明確なカメラの動きを1つ、明確な被写体の動作を1つだけ置く)
  • Actions work best when described in beats or counts – small steps, gestures, or pauses – so they feel grounded in time.(動作はビートまたはカウント——小さなステップ、身振り、間——で記述したときに最もうまく機能し、時間の中に定着する)
  • "Actor walks across the room" doesn't give much to work with. A line like "Actor takes four steps to the window, pauses, and pulls the curtain in the final second" makes the timing precise and achievable.(「役者が部屋を横切る」では手がかりが乏しい。「役者は4歩で窓際まで歩き、止まり、最後の1秒でカーテンを引く」のような一文がタイミングを正確かつ実行可能にする)

Google公式のVeo 3.1ドキュメントも、動作については「Specify what the subject is doing (e.g., walking, running, or turning their head).」(被写体が何をしているかを指定する。例:歩く、走る、頭を回す)と書き、カメラワークについてはPOV・空撮・トラッキングドローンといった語を挙げている。速度やスローモーションを制御する記述は見当たらない。

両社の公式ガイドが共通して指示しているのは、速度の形容ではなく動作を「何歩」「どこまで」「最後の1秒で」という単位に割り付けることである。これは前節の式でいえば、分子を明示的に書け、という指示にあたる。

遅く見える書き方 → 尺の中で動く書き方

遅く見える書き方 書き換え 根拠
2x speed / 4x speed / fast motion と速度倍率を書く 速度の記述を消し、同じ動作を短い尺(Sora 2なら "4")に入れる 公式ガイドに速度倍率のパラメータ・記法の記載がない【公式】
a woman walks down the street(移動量の記述なし) she takes six steps toward the camera and stops beside the lantern のように歩数と到達点で書く Actor takes four steps to the window... の例示【公式】
slowly in slow motion を無自覚に混ぜる 意図してスローにする場面以外では削除する 同ガイドはslow motionを演出の指定語として使用【公式】
1ショットに「歩く・振り向く・座る」を詰める 1ショット=カメラの動き1つ+被写体の動作1つに分ける one clear camera move and one clear subject action【公式】
長い尺を取ってから動作を考える 動作の量を決めてから、それが収まる最短の尺を選ぶ 尺は離散値で先に決まる【公式】+当サイト実測(速すぎた側)【実証済み】
移動量を書かずに尺だけ伸ばす 尺を縮めるか、動作を尺の全域に割り付ける 尺あたりの移動量が下がるため【推測・逆方向からの外挿】

尺を伸ばすほど1秒あたりの密度は下がる

Sora 2 Prompting Guideは、尺別に収まる情報量の目安も示している(2026-08-14確認)。

公式ガイドが示す目安
4秒 a 4-second shot will usually accommodate one or two short exchanges(短い掛け合いを1つか2つ収められるのが普通)
8秒 an 8-second clip can support a few more(4秒よりもう少し多く収められる)
全般 The model generally follows instructions more reliably in shorter clips. For best results, aim for concise shots.(モデルは短いクリップのほうが指示に忠実に従う傾向がある。簡潔なショットを狙うこと)

同ガイドはさらに If your project allows, you may see better results by stitching together two 4 second clips in editing instead of generating a single 8 second clip.(プロジェクトが許すなら、8秒を1本生成するより、4秒を2本作って編集で繋いだほうが良い結果になることがある)と書いている。

長い尺を選んでも、そこに入れる出来事の数を増やさなければ、1秒あたりの変化量は自動的に下がる。8秒のクリップに4秒分の出来事しか書かなければ、残りは間延びとして描かれる——これが「全体的にぬるっと遅い」の見え方に一致する【推測】。ただし公式ガイドは尺と情報量の目安を述べているだけで、「情報量が足りないとスローになる」とは書いていない。ここは当サイトによる解釈である。

なお、1つの区間に出来事を詰めすぎた場合に何が起きるかは、当サイトが別に検証している。6キャラクター分の動作を1区間に詰めた回で全員が静止した実例と、その解決構造は「AI動画で複数人物が同時に動かない理由」に分けて書いた。本記事は「遅い」という入口に限定し、ビート設計そのものはそちらに預ける。

直らないときの切り分け順

  1. プロンプトから速度に関する語を全部消す。 slowly gently graceful in slow motion を検索して削除する。Sora 2のガイドでは The bulb tumbles in slow motion; it catches it just in time. のようにslow motionを演出の指定語として使っており、モデルはこの語に反応する。意図せず入れれば、意図どおり遅くなる
  2. 移動量を歩数と到達点で書く。 「歩く」ではなく「4歩で窓際まで」に置き換える
  3. 1ショットの動作を1つに減らす。 公式ガイドの one clear camera move and one clear subject action に合わせる
  4. 尺を短い側に振る。 Sora 2なら8秒を4秒2本に、Veo 3.1なら8秒を4秒または6秒に。ただしVeo 3.1は1080p・4K・参照画像・延長を使うと8秒に固定される
  5. それでも残るぶんは編集で処理する。 知恵袋の回答者も、再生速度は編集ソフトやプレイヤー側で調整できると指摘している。ただし低フレームレート素材を倍速にすればコマ送り感が出る。当サイトはこのトレードオフを数値で計測していない

この順序は、当サイトが「速すぎた側」の1件で確認した優先順位(移動量の記述が速度の語彙に勝つ)と、両社の公式ガイドの記述から組んだものである。遅い側でこの順に試して直った、という前後差データは持っていない。

実際に通ったプロンプトの全文は効かなかった版・通った版の全文公開にある。

正直な但し書き

  • 当サイトの前後差データは方向が逆である。 実際に取れているのは「16秒で通りの奥から手前まで」を数歩に縮めて早歩きが解消した1件であり、遅い動画を移動量の記述で普通の速度に戻した実例は持っていない。本記事の遅い側の説明は、この1件を反転させた外挿である
  • 上記の実例は案件制作で使用したモデルでの結果であり、Sora 2およびVeo 3.1で同じ挙動になるかは検証していない。公式ガイドの引用部分は仕様と推奨の記述であって、当サイトが再現を確認したものではない
  • 引用した知恵袋の「回答」は、人間の回答者ではなくYahoo側の自動生成回答である。 該当2件はいずれも「AIからのお助け回答」「みんなの知恵袋」で、ページ自体に「この回答は生成AIで作成したものであり、最新性や正確性等を保証するものではありません」というYahooの注記が付いている。そこで挙げられている原因説明(フレームレートの設定が影響している可能性/フレーム間の変化を小さく抑える必要がある、といった趣旨)は公式ドキュメントで裏が取れなかった。当サイトはこれを採用も否定もしない
  • 引用した投稿は古い。 q11308713251は2024年12月30日、q14313677309は2025年4月13日の投稿で、本記事の執筆時点(2026年8月)から16〜20か月前にあたる。Sora 2もVeo 3.1も存在しない時期の症状報告である点に注意してほしい
  • 尺の指定可能値・既定値・解像度との条件は、モデルとバージョンで変わる。本記事の値はいずれも2026-08-14に各公式ページで確認した時点のものである
  • 「8秒を1本作るより4秒を2本繋ぐほうが良い結果になることがある」はOpenAIのガイドの記述であり、当サイトで比較実験をしていない
  • 本記事の書き換えを適用しても、生成のたびに結果が揺れる範囲は残る。速度が毎回そろうことを保証するものではない

動画生成AIのプロンプトについて当サイトが実測した項目は「動画生成AIプロンプト技法の台帳」に集約し、新しい実データが出るたびに追記している。

出典

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