Ai2、衛星画像の埋め込みモデル「OlmoEarth v1.3」を公開10m解像度の全球年次データと、登録不要をうたう探索ツールも
日刊AIニュース10月22日(木)号:前日のAIのニュース26本を短くまとめました(約13分)›
Ai2は2026年10月22日、衛星画像の埋め込みモデルOlmoEarth v1.3を重み・事前学習データ・コードごと公開した。10m解像度・128次元の全球年次埋め込みと、ブラウザの探索ツールも同時に出し、AlphaEarth Foundations・Tessera v2との27評価のうち20で首位と同社は説明している。

目次
Ai2(Allen Institute for AI)は2026年10月22日(現地)、衛星画像の埋め込み(エンベディング)モデル「OlmoEarth(オルモアース)v1.3」を公開しました。あわせて、地球全体の10m解像度・年次の事前計算済み埋め込み(128次元と64次元)と、ブラウザで地図を探索・加工できる「OlmoEarth Embeddings Explorer」も出しています。Hugging Faceのブログ投稿は世界時の22日16:11で、日本時間では23日1時台にあたります。Ai2は、モデルの重み・事前学習データ・事前学習コードをすべて公開したと書いています。
3行まとめ
- Ai2が衛星データの埋め込みモデル OlmoEarth v1.3 を公開。10m四方の画素ごとに128次元のベクトル(先頭64次元だけでも使用可)を、全球の年次データとして配布
- Ai2の評価では、AlphaEarth Foundations・Tessera v2との27評価のうち、128次元版が20、64次元版が18で最高
- 探索ツール Embeddings Explorer は、アカウント不要でブラウザから類似地点の検索や年ごとの変化の比較ができるとAi2は説明
本記事の内容は、日本時間10月23日1時台に公式ページで確認したものです。評価結果は、特に断りがない限りAi2の自社発表です。
何が公開されたのか
Ai2のブログによると、今回の公開物は次の4つです。
| 公開物 | 内容(Ai2の説明) |
|---|---|
| OlmoEarth v1.3 Base | 衛星画像向けの基盤モデル。ViT-Base(1.28億パラメータ)にPerceiver(1,430万)と、768次元を128次元に落とす線形層(約10万)が付く(Hugging Faceのモデルページ) |
| 全球の年次埋め込み | 10m解像度、128次元と64次元。Source Cooperativeで配布 |
| OlmoEarth Embeddings Explorer | ブラウザで使う探索ツール |
| 技術報告書 | 評価結果と手法 |
埋め込みとは、モデルが画像から学んだ内容を少数の数字(今回は128個か64個)に圧縮したものです。Ai2は、従来のOlmoEarthの使い方は「OlmoEarth Studioでタスクごとにファインチューニングし、衛星画像に走らせて地図を作る」ことだったと説明しています。これにはGPUと画像のダウンロード・保存が必要でした。埋め込みを先に全球分計算して配れば、作物地図や土地被覆図、変化の分析は「小さな分類器を埋め込みの上で学習してローカルで動かす」軽い作業になる、というのが今回の狙いです。
仕組みはブログによると、Sentinel-1(レーダー)とSentinel-2・Landsat(多波長)の1年分の時系列をビジョントランスフォーマーが読み、Attention Poolerで土地の区画ごとに1つのベクトルにまとめ、線形層で128個の数字にします。先頭64次元だけでも単独の埋め込みとして使えるとブログは書いており、Source Cooperativeのページによると、これはモデルをMatryoshka(入れ子)方式で学習したためです。同ページには、64次元は専用のチャンクに保存されているので、読み込むデータ量が半分で済むと書かれています。
性能はどのくらいか──Ai2の27評価
Ai2はAlphaEarth Foundations(AEF)とTessera v2を相手に、6大陸にまたがる27の評価を行ったとしています。
| 版 | 最高点だった評価数(27中) |
|---|---|
| OlmoEarth v1.3(128次元) | 20 |
| OlmoEarth v1.3(64次元) | 18 |
Ai2は128次元版が「総合でも最上位」とも書いています。この評価の一部として、熱帯の農業向けの作物種別ベンチマーク「PLANTEUR」も新しく出し、分類器がまだ見ていない場所への汎化では今回の埋め込みが最も良かったと説明しています。PLANTEURの技術報告書は別にあるとのことです。
使い道としてブログが挙げているのは、ケニアの小規模農家の作物の分類、ダッカ西方のレンガ窯の検出、インドネシアの火災被害の評価、ペルー・アマゾンの金採掘の追跡です。
これらはすべてAi2が自社ブログで示した結果で、今回確認した公式ページの範囲では、第三者による再現は確認していません。「27評価」の中身と各点数は技術報告書に載るとのことですが、報告書のPDFは今回、文字として読み取れませんでした。個々の点数は本記事では確認していません。
学習コストとモデルの位置づけ
Ai2は、v1.3が「これまででいちばん安く学習できたOlmoEarth」だとしています。
- 学習の計算時間は、前バージョン(v1.2)の53%、最初のバージョン(v1)の18%
- 炭素排出量は、v1.2の50%、v1の22%
- ファインチューニング用としては、研究用・パートナー用ラベルでv1.2と同等の性能
再現したい場合の目安として、Base版の最終事前学習の費用は、H100のレンタルで約2,720ドルとも書かれています。ブログの書き方は「最終実行(final run)分」で、それ以前の実験にかかった費用はこの金額に含まれていません。
どの範囲の埋め込みが使えるのか
データ本体はSource Cooperativeにあります。ページには次の仕様が書かれています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 解像度 | 10m |
| 次元 | 1画素・1暦年あたり128次元(先頭64次元が単独の埋め込み) |
| 形式 | Zarr v3(UTMゾーンごとに1グループ)、int8に量子化、-128が欠測値 |
| 年 | 2017〜2025年 |
| 範囲 | 南緯59.5度〜北緯83.6度。南極は含まない |
| 来歴情報 | 埋め込みの元になった衛星シーンを記録したGeoParquetの表を、年ごとに付属 |
| アクセス | 公開・匿名。アカウント、APIキー、署名は不要 |
Ai2のブログは、1年分で約150TBと書いています。ブログは、20km四方のタイルと年ごとに、Sentinel-1、Sentinel-2、Landsatのどのシーンを読んだかの来歴表が公開されているので、画素を元の画像までたどれると説明しています。
年ごとの対応状況は、2つのページで表現が違う
ブログは「公開時点で2025・2024・2023年が全球、2017〜2022年は一部の国。対象は今後増える」と書いています。一方、Source Cooperativeのページの注記は次のとおりです。
As of the initial release on October 22, 2026, 2024 and 2025 are global and 2023 is near-global, with the remaining regions being filled now. 2017 through 2022 cover selected countries and are being backfilled over the same extent in the coming weeks.
(2026年10月22日の初回公開時点で、2024年と2025年は全球、2023年は準全球で、残りの地域は今まさに埋めている。2017〜2022年は選ばれた国をカバーし、同じ範囲で今後数週間かけて埋め戻される)
2023年を「全球」とするか「準全球」とするかが違います。データを使う場合は、Source Cooperative側の注記を基準にするほうが安全です。
使うときの注意点(Source Cooperativeの記載)
- 量子化は非線形なので、距離の計算の前に必ずfloatに戻す。ページには、符号付き平方根方式の
(|v| / 127.5) ** 2 * sign(v)が例示されている - ベクトルはL2正規化されていない。大きさに情報があり、コサイン類似度を内積で計算するなら先に正規化する
- 64次元と128次元のベクトルを混ぜて比較しない
- 欠測値の-128は「陸地ではない」という意味ではない。対象範囲外か、その年のSentinel-2の30日モザイクに画像がなかった画素
- アンチメリディアン(経度180度)付近の細い帯には埋め込みがない
探索ツール Embeddings Explorer でできること
Ai2のブログは、このツールを「埋め込みそのものから作った、地球の疑似カラー地図」と説明しています。操作は、地図の移動、年の切り替え、元のSentinel-2画像との照合のほか、次のとおりです。
- 地点をクリックして、似た場所を探す
- ラベル付きの点をいくつか置き、その場で小さな分類器を学習させ、結果をGeoTIFFで書き出す
- 2つの年をスワイプで比べ、変化を見る
Ai2は、これまでOlmoEarthで試すにはファインチューニングで数時間かかることがあったが、Explorerなら最初の1回は数秒で、GPUも不要だと書いています。
ペルーの金採掘で見る9年間
ブログの具体例が、ペルー・マドレ・デ・ディオス地方のラ・パンパです。Ai2が引用するAmazon ConservationのMAAPによると、違法な金採掘は2017〜2018年にピークを迎え、タンボパタ国立保護区の緩衝地帯で1,200ヘクタール超の森林を切り開きました。ブログによると、2019年2月にペルーの「メルクリオ作戦(Operation Mercurio)」で大半が止まりました。
Ai2は、各画素のベクトルを年の間で比べるだけで(モデルの学習なしで)、2017〜2020年の組み合わせでは南東への採掘拡大が、2020〜2025年の組み合わせでは取り締まり後の変化の移動が見えると説明しています。さらに、2つ目の地図は暗くはないとも書いています。ブログが引くMAAPによると北西の一部では採掘が続き、旧採掘区域は土地の回復とともに変化し続けており、埋め込みにもそれが現れているという説明です。2026年8月にはAP通信の報道として、検察が採掘のタンボパタ保護区内への拡大を確認したのを受け、ペルーが保護区に海軍の巡視を戻したと引用しています。この引用部分は、Ai2のブログが外部の報道に帰属させている記述です。
日本から使うには、何がわかったか
筆者は日本時間10月23日1時12分台に、ブログ、Hugging Faceのモデルページ、Source Cooperativeのページ、Explorerのページの4つ(と技術報告書のPDF)を取得して読みました。Explorerのトップには「Find similar places」「Classify your area」「Compare years」の3つのタスクと、4つの例(ラ・パルマ島の火山噴火、クラマス川のダム撤去、タンザニア・ルフィジ川デルタのマングローブ、マレーシア・キナバタンガンのアブラヤシ)が表示されていました。ただし、地図の操作そのものは試していません。
取得した範囲で気づいた点は3つあります。
- ブログは「サインイン不要」と書いていますが、取得したExplorerのページのヘッダーには「Sign in」と「Request access」の表示がありました。これが機能利用に必要なのか、別機能(OlmoEarth Studioなど)向けの入り口なのかは、ページの文字からは判断できていません
- Hugging Faceのモデルページは、取得時点で「Downloads last month 91」で、どの推論プロバイダーにも載っていません。ブログ記事の表示は「1 minute ago」でした。公開直後の画面です
- Source Cooperativeのページには、作成日が2026年9月24日、最終更新が10月22日、直近28日間のダウンロードが10,630回、配信量22.1GBと表示されていました。集計期間は9月25日〜10月22日の28日間で、その大半はブログでの告知より前の期間です。告知後の利用状況を示す数字としては読めません
日本語の説明は、今回確認した4ページには見当たりませんでした。日本の地域に特化した評価や、日本の利用者向けの案内は、今回確認した範囲には書かれていません。
未確認のこと・読むときの注意
- 評価はAi2自身のものです。27評価の内訳(どのタスクでどの点数か)と、AEF・Tessera v2側の条件は、技術報告書のPDFを読み取れなかったため確認できていません
- ライセンスは「OlmoEarth Artifact License」で、Hugging Faceの表示は「License: other」です。ブログは「v1・v1.2と同じオープンライセンス」と書いていますが、商用利用や再配布の条件はライセンス本文を取得していないため、本記事では判断していません。ブログが「fully open」と書いているのは、モデルの重み・事前学習データ・事前学習コードを公開したという意味です
- ブログの比較対象はAlphaEarth FoundationsとTessera v2です。これ以外のモデルとの比較は、今回確認した範囲では見つかりませんでした
- 2017〜2022年の埋め戻しは、Source Cooperativeによると「今後数週間」の予定です。範囲や時期は変わる可能性があります
- 関連する既存記事として、同じAi2の気候エミュレーターを扱った Ai2、気候エミュレーター「HiRO-ACEv2」を公開 があります
出典と確認時刻
すべて日本時間2026年10月23日1時12分台に取得しました。
- OlmoEarth v1.3: State-of-the-art embeddings for the whole planet(Hugging Face Blog、Ai2)
- allenai/OlmoEarth-v1_3-Base(Hugging Face)
- OlmoEarth v1.3 Embeddings(Source Cooperative)
- OlmoEarth Embeddings Explorer(Ai2)
技術報告書(allenai.org/papers/olmoearth-v1-3)は取得できましたが、PDFの本文を読み取れなかったため、数値の引用には使っていません。本記事は続報があり次第更新します。
この記事でよく聞かれること
- OlmoEarth v1.3とは何ですか?
- Ai2が2026年10月22日に公開した衛星画像の埋め込みモデルです。Sentinel-1のレーダー、Sentinel-2とLandsatの多波長画像の1年分の時系列を読み、地球上の10m四方の画素ごとに128次元のベクトルを1つ出します。先頭64次元だけでも単独の埋め込みとして使えるとAi2は説明しています。
- OlmoEarth v1.3の埋め込みデータは誰でも使えますか?
- Source Cooperativeのページによると、公開・匿名で、アカウントもAPIキーも署名も不要です。ただしライセンスは、Ai2が示す「OlmoEarth Artifact License」です。Hugging Faceのモデルページの表示は「License: other」でした。利用前にライセンス本文を確認してください。
- どの年が全球で使えますか?
- Ai2のブログは、公開時点で2025年・2024年・2023年が全球、2017〜2022年は一部の国と書いています。一方、Source Cooperativeのページは、2024年と2025年が全球、2023年は準全球で残りの地域を埋めている最中、2017〜2022年は数週間かけて埋めると書いています。2023年の扱いは2つのページで表現が違います。
- 「27評価中20で首位」は第三者の検証ですか?
- いいえ。AlphaEarth Foundations・Tessera v2との比較は、Ai2が自社ブログで示した評価です。128次元版は27評価中20で最高、64次元版は18で最高とされています。今回確認した公式ページの範囲では、第三者による再現は確認していません。
出典・参照資料
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