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Ai2、気候エミュレーター「HiRO-ACEv2(ヒロ・エース v2)」を公開全球3km解像度の気象データをX-SHiELDの約1/300のコストで生成できると発表、モデルは Apache 2.0

執筆:約13分で読めます

Ai2は2026年10月14日、気候エミュレーター「HiRO-ACEv2」を公開した。全球3km解像度の雨・風・気圧のデータを、高解像度大気モデルX-SHiELDの約1/300のコストで生成できると説明している。モデルはHugging Faceで Apache 2.0 で配布され、論文とデモも付く。

Ai2、気候エミュレーター「HiRO-ACEv2(ヒロ・エース v2)」を公開──全球3km解像度の気象データをX-SHiELDの約1/300のコストで生成できると発表、モデルは Apache 2.0
目次

Ai2は2026年10月14日(Hugging Face上の公開日表示。ページの公開時刻は協定世界時16:12=日本時間15日1時台)、気候エミュレーター「HiRO-ACEv2(ヒロ・エース v2)」を公開した。Ai2の発表によると、雨・風・気圧の全球3km解像度のデータを、高解像度の全球大気モデルX-SHiELDの約1/300のコストで生成できる。モデルは Hugging Face で Apache 2.0 ライセンスで配布され、論文・チュートリアルノートブック・Webデモも付く。

3行まとめ

  1. Ai2が2026年10月14日にHiRO-ACEv2を公開。全球3kmの気候データを生成するコストはX-SHiELDの約1/300(Ai2発表)
  2. 新しいダウンスケーリングモデルHiROv2は、雨だけでなく10m風と海面気圧も同時に出力。粗くしたX-SHiELDを入力した場合、極端な事象でも統計が3%以内で一致する(同社の主張)
  3. モデルは Apache 2.0 で公開。ただしX-SHiELDで学習したため、観測データ(ERA5)や将来の暖かい気候の高解像度データはまだ作れない

本記事の内容は、日本時間10月15日1時台(1時13分〜14分)に公式ページで確認したものです。

HiRO-ACEv2は何をするモデルか

HiRO-ACE(High Resolution Output Ai2 Climate Emulator)は、2つの部品を組み合わせた仕組みだとAi2は説明している。

  • ACE:100km解像度で気候を進めるAIモデル。
  • HiRO:ACEの粗い出力を3km解像度の細かいデータに変換するモデル(拡散モデル)。

Ai2は、v2でいちばん大きく変わったのは新しいダウンスケーリングモデル「HiROv2」だと書いている。変更点は2つだ。

  1. 雨だけでなく、複数の高解像度の項目を同時に予測できる
  2. 極端な事象を予測する能力が上がった

モデルカードによると、HiROv2のチェックポイントが出力するのは、6時間平均の地表降水率、東向き・北向きの10m風、海面気圧(風と気圧は6時間ごとの瞬時値)で、いずれも3km解像度。ACE側には、このシステム向けに「ACE2S-X-SHiELD」というチェックポイントが同梱されている。

X-SHiELDについて、Ai2は「嵐などの小さな規模の気象を直接シミュレーションする高解像度の全球大気モデル」と説明している。Ai2の1月の記事によれば、これは米海洋大気庁(NOAA)の地球物理流体力学研究所(GFDL)の3km全球モデルだ。同じ記事は、3km解像度で嵐まで解像する全球モデル一般について、10年分のシミュレーションに数か月かかり、米国の平均的な家庭の約21年分の電力を使うと書いている(X-SHiELD単体の数字としては示されていない)。

前のバージョンと何が違うのか

Ai2は2026年1月21日の公式ブログで、最初のHiRO-ACEを紹介している。今回の発表と、その1月の記事を並べると次のようになる。

項目 初版(2026年1月21日の記事) HiRO-ACEv2(今回)
出力する項目 降水(3km)。風も入力として使う 降水・10m風・海面気圧を3kmで出力
再現できる範囲の説明 降水の確率を99.99パーセンタイルまで再現 モデルカードは99.9999パーセンタイルまで再現と記載
極端な事象の統計 記事に3%という数字はない 粗くしたX-SHiELDを入力すると、100万データ点に1回の事象でも3%以内(Ai2の主張)
公開物 モデル・論文・コード モデル・論文・チュートリアルノートブック・Webデモ

初版の記事は、ACE2Sが100kmで動き、HiROがその粗い降水と風のデータから3kmの降水を作る、と説明している。v2では、HiROが出す項目の側に風と気圧が加わった、という整理になる。

精度はどこまで確かめられたのか

Ai2が今回のブログで挙げている結果は次のとおり。

  • HiROv2単体:粗くしたX-SHiELDのデータを与えると、元の高解像度シミュレーションの統計と3%以内で一致する。100万データ点に1回しか起きない事象でも同様だとしている。
  • 熱帯低気圧:学習で見ていない嵐も含めて、全エネルギーを正確に見積もれる。目と雨帯のある現実的なハリケーンを作る。ただし目の周りの風と気圧は、X-SHiELDより「やや偏っている(lopsided)」とAi2自身が書いている。
  • 山の斜面を下る強風:現実的に生成できるとしている。
  • 更新したACE:10年間のシミュレーションで、ハリケーン・平均的な気候パターン・雨と風と気圧の分布がX-SHiELDとよく一致する。
  • 全システム(ACE+HiROv2):全球3kmのデータを丸1年分生成し、その統計はX-SHiELDに近い。HiROが入力として使ったのは、実際のX-SHiELDのデータでなく、ACEが単独で走らせたシミュレーションだという。10年の実行でも、ハリケーンのエネルギーはX-SHiELDの同じ期間と同程度とされる。

「3%以内」はHiROv2単体に実際のX-SHiELD由来の粗いデータを与えた条件での数字で、ACEの出力と組み合わせた全システムについては「統計が近い」という書き方に留まる。この区別は、本記事を読む際の大事な点だ。

コストは約1/300、地域限定ならさらに安い

Ai2は、全球の高解像度データをHiRO-ACEv2で作るコストはX-SHiELDを動かす場合の約300分の1だと説明している。1つの地域だけが必要なら、地域の広さによっては節約幅が100倍以上さらに大きくなる、とも書いている。HiROv2を簡素化した版も開発中で、完成すればさらに10倍以上速くなる可能性があるという。この簡素化版は「取り組んでいる」段階で、今回のページから公開されたものではない。

参考までに、1月の記事には速度の目安がある。NVIDIA H100 GPU 1枚で、ACE2Sは1日に約1,500年分を進め、HiROは1つの地域の1年分のダウンスケーリングを約45分で作る。これは初版についての記述で、v2の数字として公式ページに載っているわけではない。

なお、利用者が実際に払う計算費用(円やドル)の金額は、今回取得したHiRO-ACEv2のブログとモデルカードを検索した範囲では見つからなかった。「約1/300」は、あくまでX-SHiELD比の相対値だ。

使えるのは誰か──配布形態と手順

項目 内容(出典:モデルカード・ブログ)
配布場所 Hugging Face の allenai/HiRO-ACEv2
ライセンス Apache 2.0(Ai2の責任ある利用ガイドラインに沿った研究・教育用途を想定)
対応する範囲 北緯70度〜南緯66度で学習・検証。南北88度より外では動かせない
導入 pip install fme、設定ファイルのパスを書き換えて run-hiro-ace.sh を実行
見るだけなら Webデモ(ブログ内の Demo リンク、ace.allen.ai)で、HiROv1・HiROv2・X-SHiELDの降水・風・海面気圧を並べて見られ、自分の関心地域を拡大して確かめられる
論文 arXiv 2610.17693「Extreme events and statistics in an AI emulator of a global storm-resolving model」

ノートブックは公式の入口として、Ai2のワークショップ用ページ(ブログにリンクがある)に「HiRO-ACE」の項目がある。このページは2026年5月14〜15日のワークショップの資料で、Google Colab の無料 T4 GPU で動くよう調整されているとある。ただしこのページ自体はv2とは書いていないため、v2のノートブックかどうかは、今回確認した範囲では分からなかった。

モデルページの表示:推論サービスでの提供はまだ無い

日本時間10月15日1時13分にブログ、1時13分59秒にモデルページを取得して読んだ。モデルページには、このモデルを「Inference Provider(推論サービス)で提供しているところはない」という表示があり、Like は1、論文は「公開から1日」と書かれていた。ホスティング先の推論サービス経由では試せず、手元で走らせるにはダウンロードして設定ファイルを書き換える手順が要る、というのが公式ページから読み取れる範囲だ。モデルページの「このモデルに触れた記事」の欄では、今回のブログが「1分前」と表示されていた。

筆者は、このモデルを自分の環境で動かしてはいない。本記事の数字や挙動はすべてAi2の説明であり、独立した検証ではない。

「他の気候」には使えない──Ai2自身が書く限界

Ai2はブログの末尾に、これからの課題を書いている。

  • HiROはX-SHiELDから学習したため、X-SHiELDに合わせて調整したACEとしか動かない。他の気候、たとえば「より暖かい将来」や、ERA5のような過去の観測を基にしたデータセットの高解像度データは、まだ作れない。
  • 今後は、4℃暖かい世界を再現した新しいX-SHiELDのデータセットなどで学習し、異なる気候に対応する計画。近地表気温や雪・氷の出力も加える計画で、積雪量の予測などに使えるようにしたいとしている。

モデルカードの「既知の弱点」にも、次のような項目がある。

  • ACE2S-X-SHiELDは、X-SHiELDの9年分(2014〜2022年)で学習。学習時の強制条件(過去・将来の海面水温、CO2など)の外には一般化できると期待されない。9年を大きく超えて走らせると、元のモデルの統計的に独立で代表的な標本にならない可能性がある。
  • 天気予報には向かない(再解析データでなく気候モデルの出力で学習しているため)。ACE2-ERA5ほど厳密には試験していない。
  • HiROv2が作るのはX-SHiELDを代表する降水・風・気圧であって、観測ではない。
  • 学習に使った16×16の1度パッチより大きな領域をダウンスケーリングすると、パッチの重なりが0なら不連続が、0より大きければ平均化による平滑化の跡が出る。

学習に使ったデータ自体が、X-SHiELDというモデルの出力だという点も押さえておきたい。HiRO-ACEv2が「合う」のは現実の天気でなく、X-SHiELDの統計だ。精度の数字はすべて「X-SHiELDとの一致」であって、観測との一致ではない。

読んだ4つのページと取得時刻

確認時刻は、ブログが日本時間2026年10月15日1時13分、モデルページが同1時13分、1月の記事とノートブックのページが同1時14分。論文(arXiv 2610.17693)とWebデモ(ace.allen.ai)は、本文からのリンクとして挙げただけで、中身は取得していない。本記事は続報があり次第更新します。

この記事でよく聞かれること

HiRO-ACEv2とは何ですか?
Ai2の気候エミュレーター「HiRO-ACE」の更新版です。100km解像度で動くAIモデルACEと、その粗い出力を3km解像度に細かくするHiROの2部構成で、v2では下流側のHiROv2が雨だけでなく風と気圧も同時に出せるようになったとAi2は説明しています。Ai2は、全球3kmの気候データをX-SHiELDの約1/300のコストで生成できるとしています。
HiRO-ACEv2は無料で使えますか?ライセンスは?
モデルはHugging Faceの allenai/HiRO-ACEv2 でダウンロードでき、ライセンスは Apache 2.0 です。モデルカードは、Ai2の責任ある利用ガイドラインに沿った研究・教育用途を想定していると書いています。利用者が自分の環境で払う計算費用の金額は、今回確認したページには書かれていません。
「誤差3%以内」とは何の誤差ですか?
Ai2によると、粗くしたX-SHiELDのデータをHiROv2に与えた場合に、元のX-SHiELDの高解像度の統計と3%以内で一致するという意味です。100万データ点に1回しか起きないような極端な事象でも、という条件が付いています。ACEの出力から作った全システムでの結果は「統計が近い」と書かれていますが、同じ3%という数字は示されていません。
実際の観測や将来の温暖化シナリオにも使えますか?
現時点では使えないとAi2は書いています。HiROはX-SHiELDで学習したため、X-SHiELDに合わせたACEとの組み合わせでしか動かず、ERA5のような過去の観測データセットや、より暖かい将来の気候の高解像度データはまだ作れません。4℃暖かい世界のデータセットでの学習は今後の計画です。
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出典・参照資料

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