2026年9月、AIで歴史上の暗号が次々に読まれたエニグマ4通、ナポレオン軍の手紙、孫文あての電報まで
2026年9月、GPT-6 AstraやClaudeを使った個人が、未解読とされてきた歴史上の暗号を次々に解いたと発表した。1941年のエニグマの通信4通は暗号研究家Frode Weierud氏が確かめ、1918年のADFGVXは公刊済みの鍵を試したものだった。ナポレオン軍の暗号の手紙(1809年)は第三者の検証がまだで、当サイトが解答一式で確かめた結果も書く。日本の逓信省が写したまま読めなかった孫文あての電報も、Claude Fable 5.1で読まれた。

目次
2026年10月1日時点の情報です。2026年9月、OpenAIのGPT-6 AstraやAnthropicのClaudeを使った個人が、未解読とされてきた歴史上の暗号を次々に解いたと発表した。1941年にナチス・ドイツの部隊が送ったエニグマの無線、1918年の第一次世界大戦の無線、1809年のナポレオン軍の暗号の手紙、コペンハーゲンの軍事博物館で肖像画の裏から見つかった紙、1916年に孫文の仲間がやりとりした電報などだ。どれもAI企業の発表ではなく、個人が試して公開したものだった。この記事は、専門家が確かめた件、確認がまだの件、解いてみたら答えが本に載っていた件を分けて整理する。
動画版も公開しています: https://youtu.be/ms3ZuHkwZfs
3行まとめ
- 1941年のエニグマの通信は、9月にMVUEH(GPT-6 Astra)、FMNGI(Claude Opus 5)、AWTZKとZNLZT(Claude)の4通が解かれ、通信を公開している暗号研究家Frode Weierud氏が確かめた。残りの未解読のエニグマは7通になった。
- 1918年のADFGVXの無線は、研究書に載っていた鍵を、その鍵の使用開始より前の日付とされていた通信に試して読めたものだった。1809年のナポレオン軍の手紙は、雑誌の図版1枚からGPT-6 Astraで読まれたが、10月1日時点で第三者の検証は見つかっていない。
- 暗号研究家のKlaus Schmeh氏は「2026年9月は暗号解読の歴史に残る」と書く一方で、「届く解答の多くは間違いだ」とも書いた。解いてみたら1842年や1858年の本に答えが載っていた例も複数出た。
9月に解かれた主な暗号
| 発表 | 暗号 | 年代 | 使われたAI | 解いた人 | 確かめた人・状態 |
|---|---|---|---|---|---|
| 9月6日 | 北軍ミルロイ将軍あての電報2通 | 1862年 | Claude Opus 5 | Richard Bean氏 | 友清理士氏のブログで紹介 |
| 9月15日 | エニグマ MVUEH | 1941年 | GPT-6 Astra | Carter Leffen氏 | Frode Weierud氏が確認 |
| 9月15日 | バチカンの手紙(Farnese) | 1542年 | GPT-6 Astra(読み直しに使用) | Simon Klee氏 | 出題サイトMysteryTwisterが受理 |
| 9月17日 | ADFGVXの無線 | 1918年 | GPT-6 Astra | prinz氏 | 公刊済みの鍵。第三者の検証は見当たらない |
| 9月18日 | マルモン将軍あての手紙 | 1809年 | GPT-6 Astra | Carter Church氏 | 10月1日時点で第三者の検証なし |
| 9月21日 | エニグマ FMNGI | 1941年 | Claude Opus 5 | Jack Willis氏 | Frode Weierud氏が確認 |
| 9月26日 | エニグマ AWTZK・ZNLZT | 1941年 | Claude | John Woodhouse氏 | Frode Weierud氏が確認 |
| 9月27日 | コペンハーゲンの暗号 | 不明(隠されていた肖像画は1835年) | 「AIの助け」(モデル名なし) | Ólafur Waage氏 | Klaus Schmeh氏が紹介 |
| 9月14日〜 | 283件に挑戦(孫文あての電報ほか) | 1399〜1916年ほか | Claude Fable 5.1 | Daniel Bourdeau氏 | 本人の台帳で公開 |
Schmeh氏は9月27日のブログにこう書いた。
“September 2026 will definitely go down in the history of codebreaking. Never before have so many unsolved cryptograms been deciphered in such a short period of time. The culprit, of course, is AI.” (2026年9月は、暗号解読の歴史に確実に残る。これほど短い期間に、これほど多くの未解読暗号が解かれたことはない。原因はもちろんAIだ)
同じ記事には「届く解答の多くは間違いだと分かる。しかも、ぱっと見では分からない」とも書かれている。歴史暗号の目録「Cryptiana」を運営する友清理士氏も、9月に一覧のページへ「最近たくさんの解答が届いていて、ここへの記録が追いついていない」というお知らせを出した。
エニグマ MVUEH──「2日で人間の数週間から数か月」
MVUEHは、1941年7月10日にSS髑髏師団の補給担当の部署が受けた82文字のエニグマの無線だ。Frode Weierud氏は、この師団の無線を1000通近く集めてサイト「Crypto Cellar Research」で公開している。ほとんどは読めているが、MVUEHは2005年から解けていなかった。
9月15日、Bloombergで働くCarter Leffen氏から「解けた」という連絡が来た。Weierud氏は「正しい鍵と平文を見つけたことはすぐに分かった」と書いている。出てきた文は次のとおり(機械の出力のまま)。
BTTE UM ANGABE DES MARSQWEGES X BEFINDE MIQ IN X ROSENOW ROSENOW X SOFORT FUNKANTWORT X WASCHBBSCH (行軍の経路を指示されたし。現在ローゼノウ、ローゼノウにいる。無線で至急返答を)
手がかりは、2017年に解かれた同じ日の通信SIPVXにも入っていた「ROSENOW ROSENOW」の14文字だった。Leffen氏の事例ページによると、調べた組み合わせは約42億9000万通り。Weierud氏は、Astraがドイツ連邦公文書館の資料番号までたどっていたことに触れ、「人間の研究者なら数週間から数か月かかることを、2日でやった」と書いた。
AIがどこまで自分でやったかは、書く人で分かれる。Weierud氏は「GPT-6 Astraが完全に自分だけでやった」と書いた。一方、Leffen氏本人の事例ページは「研究者が主導した調査で、目標を決めて進めたのは研究者」とし、地名の手がかりについても「解かれていたSIPVXの文がヒントになった。何もないところから当てたわけではない」と書いている。かかった時間は、The DecoderによるとLeffen氏の話で約10時間。事例ページは「人とモデルの合計時間は記録からは出せない」としている。
6日後にClaudeでも──FMNGIは「人の強い導き」
9月21日には、Jack Willis氏がClaude Opus 5で1941年7月31日の通信FMNGIを解いたとWeierud氏に連絡した。Weierud氏は「MVUEHはAIが狙う通信の選定から道具作りまで全部やった。FMNGIはもっと狙いが絞られていて、人の強い導きに頼った」と比べている。
Willis氏は、Go言語で書いた解析の作業台と史料をClaudeに渡した。Claudeはスキャンされた手書きの用紙を自分で書き起こし、読みにくい文字は候補のまま残した。手がかりは、将校ハルトイェンシュタインがいつも書く署名「XHARTJENSTEINX」の14文字。最後の鍵探しはApple M2のマシンで13分28秒だった。平文は「軍団補給所からの輸送隊、帰還。ハルトイェンシュタイン」。
Weierud氏は7月末にこの通信の平文が入った資料を見つけていたが、「全部の平文を使うのはズルみたいなもの。WillisさんとClaudeのやり方で解かれてよかった」と書いている。
9月26日にはJohn Woodhouse氏がAWTZKとZNLZTの2通を解いた。報告には「Claude(Anthropic)が著者と一緒に解いた」とあり、使ったのはRTX 3080が1枚、決め手になった探索は44分だった。AWTZKの中身は「Ib(補給担当)はどこだ?まだ着いていない」。同じ2通を狙っていたSean Harrington氏は「ちょうどその2通をやっていたから、少しつらい」と答えている。Weierud氏によると、1000通近い通信のうち、まだ解けていないエニグマは7通になった。
ADFGVX──鍵は研究書に載っていた
9月17日、prinz氏がGPT-6 Astraで1918年11月27日のドイツ軍の無線を解いたと発表した。ADFGVXは文字をA・D・F・G・V・Xの組み合わせに置き換え、さらに鍵語で列を並べ替える方式で、Schmeh氏の「未解読暗号トップ50」に入っていた。平文は「イギリスの巡洋艦がセヴァストポリに入港。連合国の艦隊が26日に続く」。Astraは、巡洋艦カンタベリーが11月24日にセヴァストポリに着いた航海日誌まで確かめたという。
ただし鍵語「TRUPPENVERSCHIEBUNG」は、J. Rives Childsの研究書(pp.214–215)に載っていたものだ。prinz氏の記事によると、この鍵は12月9日から使われたとされていたため、11月27日の通信には試されていなかった。日付が食い違う理由は、Schmeh氏も「誰も分からない」と書いている。Hacker Newsでは「公開されていた鍵を試しただけ」という声と、「熱心な人間ならできた。でも誰もやらなかった」という声の両方が出た。
ナポレオン軍の暗号の手紙──解答一式を取り寄せて確かめた
9月18日、セキュリティ企業でAIを開発しているCarter Church氏が、1809年にマルモン将軍へ送られた暗号の手紙を読んだと発表した。本人によると暗号を解くのは初めてで、使ったのはGPT-6 Astra、モデルの実行時間は約6時間。残っていたのは1969年のフランス陸軍の雑誌に載った図版1枚だけで、Astraは手書きの記号を読み取るところから始めた。記号は155種類、暗号の部分は1300個、単語を表す記号が29個あった。
読まれた手紙は、ナポレオンの義理の息子ウジェーヌからマルモンへの戦況の知らせで、味方の軍の配置が並んでいる。この並びは、ナポレオンが3月16日にウジェーヌへ出した命令(『ナポレオン1世書簡集』第18巻)と、順番も人数も同じだ。命令には「暗号の手紙で、賢い士官に持たせて、マルモン将軍に知らせよ」とある。書簡集の命令の途中には点々の空白(「ひと握りの……に足止めされるな」)があり、解読された手紙ではその部分が「少しの兵や、烏合の衆に怯むな」になっていた。Church氏自身は、言い換えて伝えた文なのでナポレオンの言葉そのものの証明ではないと書いている。
当サイトは、配布されている解答一式(zip)を取り寄せて確かめた。
- 配布ファイルのSHA-256は記事の記載と一致し、付属の検証スクリプトは全4項目が通った。ただし、このスクリプトが確かめるのは配布物の作りの一貫性までで、解読の正しさではないと、スクリプト自身が書いている
- 手紙の1行目にある「8日、14日、20日の私の手紙」は、3通とも『マルモン元帥回想録』第3巻に普通の文で載っていた。3月20日の手紙の「あなたの便りを今も待っている(J’attends toujours de vos nouvelles)」は、解読された手紙の「あなたの便りを今も待ちわびている(… avec impatience)」とほぼ同じだった
- 記事は「表を順に当てれば、直しなしでこのフランス語になる」と書いているが、配布された機械の出力には「PONIATOVVSKI」のような崩れがあり、29か所を直して今の文になっていた
- 最初から読めた33文字分の表(Daniel Tant氏・ARCSI)は、表題が「ウジェーヌとグラモン将軍の間の暗号」だった。配布物にはそう書かれているが、記事には書かれていない
- 記事は図版の大きさを1,202×1,836ピクセルとしているが、Perséeが配信している暗号の図版は1,051×1,246ピクセルだった(1,202×1,836はページ全体の画像の大きさ)
Cryptianaの一覧には「Church氏から9月20日に解答の連絡があった」と載っている。10月1日時点で、第三者の専門家がこの解読を確かめた記録は見つかっていない。
肖像画の裏の別れの手紙──コペンハーゲンの暗号
Schmeh氏が9月27日に紹介したのは、1950年代の終わりごろ、コペンハーゲンの軍事博物館で1835年の将軍の肖像画の裏から見つかった紙だ。博物館もアメリカの暗号愛好家の団体(ACA)も解けず、Schmeh氏の「未解読暗号トップ50」に入っていた。
解いたのは、アイスランド出身でノルウェーに住む開発者のÓlafur Waage氏で、Schmeh氏によると「AIの助けを借りて」解いた。モデル名は書かれていない。記号を1文字ずつ置き換えるだけの単純な暗号で、中身は古いデンマーク語だった。
min inderlig elskede sophie / her bringer ieg dig et siste levvel / gud velsigne og ledsage dig intil vi ses igien / ? e blucher (心から愛するソフィーへ。最後の別れを告げに来た。また会う日まで、神のご加護がありますように)
Waage氏は、Fredrik von Blücher(1760〜1806)からSophia of Mecklenburg-Schwerin(1758〜1794)にあてた言葉かもしれないと見ている。一方、Claude Fable 5.1で数百件に挑んでいたDaniel Bourdeau氏は、9月15日にこの暗号を「試した10の言語の、どの単純な置き換え暗号でもない」と記録していた。
日本の逓信省が写して読めなかった孫文の電報──Claude Fable 5.1
Cryptianaの友清氏が「一番多く解答を寄せた人」と名前を挙げたのがBourdeau氏だ。9月14日からClaude Fable 5.1で未解読暗号に挑み、本人いわく「最先端のAIの非公式なベンチマークで、趣味でもあり測定でもある」。9月30日時点で対象は283件、そのうち77件は暗号を解析して鍵そのものを取り戻した。友清氏のブログ(9月19日)によると、本人は「26件を解いた。1件あたり平均1、2時間」と話していた。
その中に日本に関係するものがある。Bourdeau氏によると、1916年、当時の日本の逓信省は孫文の仲間がやりとりした電報をすべて写し取っていた。写しはアジア歴史資料センターで公開されている外務省の記録に残っているが、解読の記録は1枚もなく、かなの鉛筆書きの分析メモは当て推量で終わっていた。
Bourdeau氏とFable 5.1は、そのうち汕頭からの電報について5万7600通りの表をすべて試し、中国語の文になる1通りを見つけた。中身は、莫擎宇が潮州で独立を宣言し、孫文派の者は汕頭の司令部から退去せよ、という1916年4月3日の知らせ。同じ年の3〜5月の電報56通も同じ系統の鍵で読め、孫文の同志の陳其美が殺されたという知らせも含まれていた。外務省自身の「青島には行かないように」という助言を孫文側が伝えた電報も、写されたまま読まれていなかったという。
ただし、Bourdeau氏のサイトにある「終わらせた沈黙は4万9582年分」という数字は、既知の鍵で読んだもの、前から解かれていたものも足した合計だ。
そのほかの解読
- 南北戦争の電報: 友清氏のブログ(9月6日)によると、Richard Bean氏がClaude Opus 5に、北軍ミルロイ将軍あての未解読の電報2通を解かせた。友清氏は「一般に手に入る汎用のAIが、本物の歴史の暗号を解いたのを見たのは、これが初めて」と書いている
- バチカンの手紙(1542年): Simon Klee氏は、ローマからスペインのカール5世の宮廷へ送られた手紙の鍵と平文を、9月15日に出題サイトMysteryTwisterへ送って受理された。読み取った文の確認にGPT-6 Astraを2回、別々に走らせた
- 16世紀の暗号: Andrew Aymeloglu氏は、Claude CodeとCodexのエージェントで、イングランドやスコットランドの暗号を次々に読んだ。始めたきっかけは「Vals AIがClaude Fable 5.1でアーカートの暗号を読んだと報じたこと」だという
アーカートの暗号のその後──友清氏「検証された」
8月31日にVals AIが「Claude Fable 5.1が44分で解いた」と発表した、1653年の本の巻末の数字64個の暗号(前回の記事)は、9月後半に評価が割れた。
Schmeh氏は9月25日、「一見説得力があったが、詳しく見ると不整合がいくつもあった。もっともらしいが間違った結果を出したようだ」と書いた。どこが不整合かの説明はなく、1834年版への言及もない。一方、友清氏は9月30日に「AI's Solution of Urquhart's Cyphral Distich Verified」という記事を出した。
“Actually, the ciphertext is found at least in an 1834 edition and using its text (different from that of the 1653 edition) reproduces the decryption.” (暗号は少なくとも1834年版に載っていて、その版の文を使えば解読を再現できる)
友清氏はこれを指摘していた例として、Jozef Krajčovič氏(9月5日)、Bruce Schneier氏のブログのコメント欄のkjfriedo氏(9月9日)とあわせて、1834年版で64文字すべてを数え直した当サイトの記事(9月17日)を挙げている。友清氏は、2023年にスコットランド女王メアリーの暗号の手紙50通以上を見つけて解読した3人の研究者の1人だ。
アーカートのもう1つの暗号(数字285個)は、Bourdeau氏が9月16日に、Vals AIの答えを使わずに10文字を除いて読んだ。ただしBourdeau氏は、64個の方について「規則を当てても64中34、偶然の範囲」と記録している(どの版で数えたかは書かれていない)。
解いたら、答えはもう本に載っていた
9月の解読には、「未解読」の一覧に載っていたのに、実は答えが既に印刷されていた例がいくつも出た。
| 暗号 | 9月にAIで読んだ人 | 答えが載っていた所 |
|---|---|---|
| リシュリューの手紙(1629年) | Daniel Bourdeau氏 | 1858年に印刷された解読と1語1語一致(目録が見落としていた) |
| ボウズの手紙(1583年) | Ryan Turner氏 | 1842年の本に平文。友清氏も「調べたのに見落としていた」 |
| フォースターの手紙(1644年) | Robert Pitt氏ほか | George Lasry氏とNorbert Biermann氏が先に解読 |
| カール5世の手紙2通(16世紀) | Benjamin Breen氏(Opus 5.5) | 1通は1530年代、もう1通は1916年に解読済み |
友清氏は一覧の注意書きに「ここに載っている文書が、一度も解読されていないとは限らない」と書き足した。歴史家のBreen氏は、AstraとOpus 5.5に第一次・第二次大戦の未解読の暗号を探させたが「手の届く果実はもう摘まれていたようで、何も見つからなかった」と書いている。
当サイトが10月1日時点で調べた範囲では、ヴォイニッチ手稿、クリプトスのK4、ゾディアックの暗号について、9月に信頼できる解読の発表は見つからなかった。Bourdeau氏はヴォイニッチ手稿もFable 5.1で調べ、「試せたヨーロッパの言語の単純な暗号では読めない。数字は意味のない文の方に傾く」としている。
なぜ9月に集中したのか(ここからは考察)
マルモンの暗号を解いたChurch氏は、「材料は全部そろっていた。根気のある専門家なら1970年に解けた。でも専門家が何週間もかける価値がなかった」と書いている。ADFGVXのHacker Newsのコメント「熱心な人間ならできた。でも誰もやらなかった」も同じ方向だ。
ここからは当サイトの考察になる。今回の件を並べると、AIの暗号を解く力そのものより、人が時間を割かなかった問題に何時間でも付き合えることが、9月の件数につながったように見える。Astraは史料を探し、エニグマを再現するプログラムを書いて40億通りを超える組み合わせを試した。Claudeは手書きの用紙の書き起こしから鍵探しまでをこなし、Bourdeau氏は1件あたり平均1、2時間で解いていった。
その分、次に手が足りなくなるのは確かめる側だ。エニグマの4通はWeierud氏がすぐに確かめたが、マルモンの手紙には10月1日時点で第三者の確認がない。友清氏は記録が追いつかないと書き、Schmeh氏のところには「解けた」というメールが毎日のように届いている。Weierud氏は残り7通のエニグマについて、こう書いている。
“Who is next to send me a message about a new break with or without the help of AI?” (次に、AIの助けを借りて、あるいは借りずに、解読の知らせをくれるのは誰だろう)
この記事で確かめられなかったこと
- コペンハーゲンの暗号でWaage氏が使ったAIの名前(Schmeh氏の記事に記載がない)
- Richard Bean氏がClaude Opus 5を使ったという点は、友清氏のブログの記述による。Bean氏本人の資料は見つからなかった
- MVUEHの約10時間は、The DecoderがLeffen氏の話として伝えたもの
- ADFGVXの解読について、第三者の専門家による検証
- ナポレオン軍の手紙で、書簡集の空白部分が現代の校訂版(Fondation Napoléonの書簡集)で埋まっているかどうか。オンラインの翻刻2つは「(mots manquants)」のままだった
- 有名な暗号についての「信頼できる解読の発表は見つからなかった」は、10月1日時点の当サイトの調査の範囲での話
マルモンの手紙やADFGVXに第三者の検証が出たら、この記事に追記する。
出典・参照資料
- 一次資料The MVUEH Break — Crypto Cellar Research(Frode Weierud) ↗
- 一次資料The FMNGI Break — Crypto Cellar Research ↗
- 一次資料The AWTZK and ZNLZT Breaks — Crypto Cellar Research ↗
- 一次資料MVUEH 事例ページ(Carter Leffen) ↗
- 一次資料GPT-6 Astra Solves a WWI German Radio Cipher — prinz(2026-09-17) ↗
- 一次資料Breaking the Marmont Cipher, 1809 — Carter Church(2026-09-18) ↗
- 一次資料Correspondance de Napoléon Ier 第18巻(1865)— archive.org ↗
- 一次資料Mémoires du maréchal Marmont 第3巻 — Project Gutenberg ↗
- 一次資料cyphersolver — Daniel Bourdeau ↗
- 一次資料Cryptiana 未解読暗号一覧(友清理士) ↗
- 一次資料AI's Solution of Urquhart's Cyphral Distich Verified — Cryptiana(2026-09-30) ↗
- 一次資料Route Transposition Ciphers during the US Civil War Solved by using AI — Cryptiana(2026-09-06) ↗
- 二次資料Copenhagen cryptogram: Another top 50 crypto mystery solved — Klaus Schmeh(2026-09-27) ↗
- 二次資料WWII Enigma message solved with AI — Klaus Schmeh(2026-09-25) ↗
- 二次資料ADFGVX: Top 50 cipher mystery solved by AI — Klaus Schmeh(2026-09-21) ↗
- 一次資料The Farnese letter — Simon Klee(2026-09-16) ↗
- 一次資料unsolved-ciphers — Andrew Aymeloglu(GitHub) ↗
- 二次資料AI labs need to start funding historical research — Res Obscura(Benjamin Breen・2026-09-24) ↗
- 二次資料OpenAI's GPT-6 Astra decrypts a Nazi radio message in ten hours — The Decoder(2026-09-17) ↗
この記事の解説動画
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