ソフトバンクとWiseVine、自治体職員の担い手不足の課題解決へ戦略的提携最大100自治体に経営管理システムの利用料を5年無償
日刊AIニュース10月25日(日)号:前日のAIのニュース2本を短くまとめました(約4分)›
ソフトバンク株式会社と株式会社WiseVineは2026年9月15日、自治体職員の担い手不足の課題解決に向けた戦略的提携に合意したと発表した。2027年度末までに経営管理システムなどの導入について公示した最大100自治体を対象に、WiseVineの自治体向け経営管理システム「Build & Scrap」のサービス利用料を5年間無償提供する。導入費用・サーバー利用料・運用保守費用は自治体負担と注記されている。将来的には蓄積したノウハウをもとに、行政分野に特化したAIの構築を目指すとしている。

目次
3行まとめ
- ソフトバンクとWiseVineは2026年9月15日、自治体職員の担い手不足の課題解決に向けた戦略的提携に合意したと発表。2027年度末までに経営管理システムなどの導入について公示した最大100自治体を対象に、WiseVineの経営管理システム「Build & Scrap」のサービス利用料を5年間無償提供する
- 無償なのは「サービス利用料」のみで、導入費用・サーバー利用料・運用保守費用は自治体側の負担。5年間の起算点は提携発表日ではなく、データ取り込み作業が終わりシステム利用が始まった時点(プレスリリース注釈)
- 背景に挙げられた「2045年には職員の充足率が78%程度まで低下する」という推計は日本総合研究所の試算で、2018年時点の職員数を過不足なしと仮定した市町村全体の値。両社は将来的に行政分野特化型AIの構築を目指すとしているが、開発時期は明記されていない
ソフトバンク株式会社と、自治体向け経営管理システムを手がける株式会社WiseVine(ワイズバイン)は2026年9月15日、自治体職員の担い手不足の課題解決に向けた戦略的提携に合意したと発表した。2027年度末までに経営管理システムなどの導入について公示した最大100自治体を対象に、WiseVineが提供する自治体向け経営管理システム「Build & Scrap(ビルドアンドスクラップ)」のサービス利用料を5年間無償で提供する。両社は将来的に、Build & Scrapの運用を通じて蓄積する自治体職員の業務ノウハウを生かし、行政分野に特化したAIの構築に取り組むとしている。本記事はソフトバンクの公式プレスリリース(2026年9月15日付)と、リリースが脚注で引用した日本総合研究所のレポートを一次ソースとして、2026年9月25日(日本時間)時点で照合して整理した。
プレスリリースに書かれた条件の一覧
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年9月15日 |
| 発表主体 | ソフトバンク株式会社・株式会社WiseVine |
| 対象自治体数 | 最大100自治体(2027年度末までに経営管理システムなどの導入について「公示」した自治体が対象) |
| 無償提供の内容 | 「Build & Scrap」のサービス利用料を5年間無償提供 |
| 自治体側の負担 | 導入費用・サーバー利用料・運用保守費用は自治体負担 |
| 無償期間の起算点 | データ取り込み作業終了後、「Build & Scrap」の利用開始から5年間 |
| ソフトバンクの自治体連携実績 | 187自治体と連携協定締結(2026年9月15日時点) |
| 将来計画 | Build & Scrap運用で蓄積したノウハウをもとに行政特化型AIの構築を目指す(時期未定) |
出典:ソフトバンク・WiseVine連名のプレスリリース(2026年9月15日)
提携の背景に引かれた「充足率78%程度」は、どんな前提の数字か
プレスリリースは提携の背景として、自治体職員の担い手不足の深刻化を挙げている。
自治体では職員の担い手不足が深刻化しており、2045年には職員の充足率が78%程度まで低下するという推計があります
この推計の出典として、プレスリリースは脚注で「日本総合研究所 経済・政策レポート『地方公務員不足で重要度が増す行政サービスの共同・広域化-求められる自治体の役割分担と権限・財源の再構築-』」を挙げている。当サイトがこの脚注をたどって元のレポート(日本総研 Research Focus No.2025-054、2026年1月15日、蜂屋勝弘氏)を開くと、要旨はこの数字を次のように書いていた。
仮に、生産年齢人口に占める地方公務員の割合が変わらないとの前提で、現在と同程度の行政サービスを維持しようとすると、市町村全体で必要な公務員数(需要)に対して確保できる公務員数(供給)は、2030 年の約 92%(充足率)から 2045 年には 78%程度まで低下し、さらに、小規模自治体ほど地方公務員不足が深刻になると予想される。
レポート本文(PDF)の注記によると、この試算は2018年時点の地方公務員数を過不足なし(充足率100%)と仮定し、その時点の行政サービスの提供体制と業務効率が続くことを前提に計算したもので、対象は市町村の普通会計(特別区と福島県の市町村を除く)。自治体の規模別では、2045年の充足率は政令市・中核市・特例市が83.0%、町村が64.6%と推計されている。プレスリリースは前提の部分を省いて「推計があります」とだけ書いているので、78%は「2018年を基準にした、市町村全体での試算」として読むのが原文に近い。
この課題認識のもと、ソフトバンクはこれまで187の自治体(2026年9月15日時点)と連携協定を結び、DXやAI活用の提案、各種ソリューションの提供、コンサルティングなどを通して自治体の課題解決や行政サービス向上を支援してきたとしている。一方のWiseVineは、自治体の予算編成・経営管理を支えるGovTech(Government「行政」とTechnology「技術」を組み合わせた造語、プレスリリースの説明による)企業として、データとテクノロジーで行政運営の可視化と最適化を進めてきた企業だと紹介されている。設立年や既存の導入自治体数といったWiseVineの会社概要は、このプレスリリース以外では確認していない。
「Build & Scrap」とは何をするシステムか
プレスリリースによる機能説明は次の通り。
「Build & Scrap」は、自治体の予算編成などにおける計画立案や査定、執行、評価をはじめとする一連の意思決定の過程を管理できるシステムです。予算要求書などの膨大な量の書類をペーパーレス化して煩雑な業務を効率化できることに加え、各事業について誰がどのような検討や判断を行ったかをシステム上に履歴として残すことができ、業務のノウハウを円滑に引き継ぐことが可能です。また、政策ごとに関連する事業やその成果を可視化して、政策目標の早期実現を支援します。
説明を分けると、(1)予算編成の意思決定プロセス管理、(2)書類のペーパーレス化、(3)判断履歴の記録によるノウハウ継承、(4)政策と事業の紐付け可視化、の4点になる。利用件数や既存導入自治体での削減時間・コストなど、効果を示す数字はこのプレスリリースには記載がない。
「無償」の範囲はどこまでか
プレスリリースは見出しでも本文でも「サービス利用料を5年間無償で提供」と書いており、無償の対象は最初から「サービス利用料」に限られている。そのうえで注釈(※4)が、利用料以外の費用と5年間の数え方を次のように補足している。
導入費用およびサーバー利用料、運用・保守費用は自治体負担。導入に当たって必要なデータの取り込み作業などを行い、その作業終了後、「Build & Scrap」の利用開始から5年間のサービス利用料を無償で提供。
導入費用・サーバー利用料・運用保守費用は自治体の負担として残る。また5年間の起点は提携発表日ではなく、自治体ごとのデータ取り込み作業が終わり、システムの利用が始まった時点になる。「5年間無償」とだけ切り出すと自治体の持ち出しがゼロに聞こえるので、この注釈とセットで読む必要がある。それぞれの費用が実際にいくらになるかについて、プレスリリースに金額の記載はない。
対象の「最大100自治体」はどう決まるのか
対象範囲についてもプレスリリースの文言は限定的だ。
まずは、2027年度末までに経営管理システムなどの導入について公示した最大100自治体を対象に
文面から読み取れる条件は、①2027年度末までに、②経営管理システムなどの導入について「公示」した自治体、の2つで、そのうち最大100自治体が対象になる。ここでいう「公示」が入札やプロポーザルの公告を指すのか、それ以外の告知も含むのか、プレスリリースは定義していない。文は「まずは」で始まっているが、100自治体の先に対象を広げるかどうかは書かれていない。条件を満たす自治体が100を超えた場合の選び方や、公示から無償提供開始までの具体的な手続きについても、このプレスリリースには記載がない。
この提携の先に何があるのか──「行政特化型AI」の構築
プレスリリースは提携の将来像を次のように説明している。
ソフトバンクとWiseVineは、「Build & Scrap」の提供を通して自治体職員の業務に関するノウハウを蓄積し、将来的にはそのノウハウを生かして、行政分野に特化したAIの構築に取り組みます。業務の支援や効率化だけではなく、自治体の業務を自律的に遂行するAIを構築することで、自治体の運営を強力に支援することを目指します。
「自治体の業務を自律的に遂行するAI」という記述はあるが、開発時期や対象業務、具体的な技術構成についての記載はない。現時点ではBuild & Scrapの提供が先行し、AI構築はその先のノウハウ蓄積を前提とした将来計画という位置づけだと読める。
自治体のAI活用については、本サイトで扱った市区町村レベルのAI・生成AI導入状況(総務省「令和7年度」調査、その他の市区町村でAI導入済み62%・生成AI導入済み46%)や、「最高AI責任者」を置く自治体の動きとも接続するテーマだ。これらが個別の自治体によるチャットボット導入や役職の設置だったのに対し、今回は通信大手とGovTech企業が「全国の自治体の運営に貢献することを目指」すとして(プレスリリース)、予算編成・経営管理という自治体運営の中心にある業務のシステムを入口にしている点が違う。
「最大100自治体」の条件と、確認できなかった数字
- 対象自治体は「2027年度末までに経営管理システムなどの導入について公示した」自治体に限られる。単純に「希望すれば最大100自治体が無償になる」制度ではない
- 無償化されるのは「サービス利用料」のみ。導入費用・サーバー利用料・運用保守費用は自治体負担で、それぞれの金額はプレスリリースに記載がない
- 提携全体の契約金額や、ソフトバンク・WiseVine双方の事業・収益への影響についての記載はない
- 「2045年には職員の充足率が78%程度まで低下する」という推計は、日本総合研究所が2018年時点の職員数を過不足なしと仮定して計算した市町村全体の試算。本記事はレポートの要旨と本文の注記を確認したが、推計方法の元になった同研究所の2021年の論文までは確認していない
- 行政特化型AIの構築について、開発時期・対象業務・技術構成の記載はない
- WiseVineの設立年や既存の導入実績など、会社概要はこのプレスリリース以外では確認していない
- 「Build & Scrap」を現在利用している自治体名や導入件数は、今回のプレスリリースには記載がない
- 本記事はプレスリリースと日本総合研究所のレポートを一次ソースとして整理したものであり、両社への取材によるものではない
照合したプレスリリースと日本総研レポート
- ソフトバンクとWiseVine、自治体職員の担い手不足の課題解決に向けた戦略的提携に合意(ソフトバンク株式会社、2026年9月15日)
- 地方公務員不足で重要度が増す行政サービスの共同・広域化-求められる自治体の役割分担と権限・財源の再構築-(日本総研 Research Focus No.2025-054、2026年1月15日)
本記事の数字と引用は、2026年9月25日(日本時間)時点でプレスリリース本文・日本総研レポートの要旨と一字一句照合した。金額の記載がない項目について本記事が推計や試算を加えたものではない。
出典・参照資料
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