「Forward Deployed Engineer」という職種──PFN・ソフトバンクが2026年に相次いで定義した仕事の中身
Preferred Networksが2026年6月、ソフトバンク(SB OAI Japan)が同年5月に、それぞれ「Forward Deployed Engineer(FDE)」の求人を公開した。顧客先に常駐率50〜80%で入り込み、生成AIを実業務に実装する仕事の条件を、実際の求人票から読む。

目次
3行まとめ
- Preferred Networksが2026年6月18日、ソフトバンク(SB OAI Japan合同会社への出向枠)が同年5月18日、それぞれ「Forward Deployed Engineer(FDE)」の求人を公開した
- PFNの求人票が定義するFDEの仕事は「顧客先に常駐率50〜80%で入り込み、業務理解から実装・本番運用・継続改善までを一気通貫で担う」もの
- Findyが2026年3月時点でまとめた特集には、この2社を含まない12社のFDE求人がすでに並んでいた──「新職種」はもう複数社で同時並行して立ち上がっている
「Forward Deployed Engineer(FDE)」という肩書の求人が、2026年に入って日本語の採用ページに増えている。訳せば「前線に配備されたエンジニア」。もともとは米国のPalantir Technologiesが早くから使ってきた呼称だが、2026年は日本の生成AI企業・大手事業会社が相次いでこの肩書を自社の求人票に明示した年になった。本記事では実際の求人票を読み、何が「新しい」のかを確認する。
PFNが求人票で書いた「これまで暗黙にやってきたこと」
Preferred Networks(PFN)が2026年6月18日付で公開した求人票は、なぜ今この職種を作ったのかを次のように説明している(求人票原文より)。
これまで PFN のエンジニアが暗黙的に担ってきた「顧客の最前線で生成AIを実装する役割」を、Forward Deployed Engineer(FDE)として明示的に定義し、組織として強化することにしました。PFNは「純国産LLMを自ら開発しているプロダクトカンパニーのFDE」という、ユニークな立ち位置からこの役割を担います。
つまりFDEという肩書自体は新しいが、「顧客先に入り込んで実装する」という働き方自体はPFNが創業以来やってきたスタイルだと明記している。変わったのは、それを独立した採用ポジションとして切り出したという点だ。求人票は背景として、材料探索のシミュレーション、保険のアンダーライティング、製造業の研究開発、公共の窓口業務など「PoCで終わらず業務の中核にAIエージェントを組み込むプロジェクトが急増している」ことを挙げている。
具体的に何をする仕事なのか
求人票が挙げる主な業務は5つ。
- 顧客業務へのディープダイブ — 顧客先に常駐・往訪し、現場担当者から経営層まで直接対話しながら業務プロセス・商習慣・規制・暗黙知を構造的に理解する
- 解くべき課題の定義 — Business Development担当と協働し、生成AIで本当に価値を出せる業務を見極め、要件・成功指標・運用設計まで落とし込む
- AIエージェント/生成AIアプリケーションの設計・実装 — モデル選定(自社LLM「PLaMo」を含む)、RAG、ポストトレーニング、エージェントオーケストレーション、評価基盤の技術選定を行い、自ら実装する
- 本番導入と継続改善 — オンプレミス/クラウド問わずセキュリティ・可用性要件を満たすシステムとして導入し、利用率・精度・データドリフト等を見ながら改善する
- プロダクト/モデル開発チームへのアセット還流 — 現場で得た知見・データセット・評価セットを抽象化し、社内のモデル開発・製品にフィードバックする
必須条件として明記されているのは、ソフトウェア開発の上流〜下流を一貫して経験した年数3年以上、機械学習/LLM/RAG/AIエージェントを用いたシステム開発またはエンタープライズ技術プロジェクトのテクニカルリード経験、そして「顧客先での常駐経験または高頻度往訪経験(プロジェクトに応じて稼働の50〜80%程度を顧客現場で過ごす想定)」。求められるのは技術力だけでなく、顧客現場に長時間張り付く働き方そのものへの適性だ。
ソフトバンクも同時期に募集──OpenAIとの合弁会社への出向枠
同じ2026年、ソフトバンクも動いた。同社が5月18日付で公開した求人「Forward Deployed Engineer (FDE)/SB OAI Japan合同会社 出向」は、ソフトバンクに在籍したままOpenAIとの合弁会社「SB OAI Japan合同会社」に出向する枠だ。求人票の勤務地欄には次の一文がある。
勤務地:WeWork竹芝(東京都港区海岸)または都内事業所 顧客訪問・出張あり(主に国内) OpenAI本社、アメリカ・サンフランシスコ出張可能性あり
職務の要約は「日本を代表する企業と共に、最先端のAIモデルを実ビジネスに実装し、AIネイティブな業務変革を実現する」。求人票にはミッション・主な業務・具体的な業務・応募資格(必須/歓迎)まで記載されており、PFNの求人票と共通するのは「特定の企業の中に入り込んで実装する」という構図そのものだ。
Findyの特集にはこの2社が入っていない──もっと広がっている
ここまでPFNとソフトバンクの2社を見てきたが、これは氷山の一角にすぎない。転職サイトFindyが2026年3月4日付で公開した「Forward Deployed Engineer(FDE)求人特集」には、この2社を含まない以下の12社の求人が並んでいる(掲載順)。
JDSC、Gen-AX(ソフトバンク100%子会社)、Sansan、エクサウィザーズ、ログラス、Almondo、ストックマーク、ACES、アップグレード、Algoage、DeNA、LayerX
Findyの記事は「Forward Deployed Engineer(以下、FDE)とは、AIの社会実装が本格化した昨年から話題となっている新しいエンジニアのポジション」「日本国内の企業でもFDEの募集が増えてきた」と説明している。さらにSakana AI(Nihon AI企業)も自社キャリアページでFDEの募集ページを公開しており(求人詳細は外部ATSにリダイレクトされるため本記事では未確認)、この肩書が特定業界や特定企業に閉じたものでないことがわかる。
なお興味深いのは、Findyの特集に並ぶJDSCが2025年10月にソフトバンク株式会社とAIエージェント開発における資本・業務提携を締結した企業である点だ(Gen-AXはこれとは別に、ソフトバンク株式会社が100%出資する子会社であり、JDSCのグループ会社ではない)。ソフトバンク自身がFDEを募集する一方、その資本提携先・出資先の企業もFDEを募集している──同じ生態系の中で同じ肩書の求人が並行して立ち上がっている構図が見える。
求人票の日付・条件を並べる
ここまで確認した企業・求人票を、公開日と主な条件で並べると次のようになる。
| 企業/募集 | 求人票の公開日(記載ベース) | 雇用形態・所属 | 主な条件・特徴 | 求人票本文の確認状況 |
|---|---|---|---|---|
| Preferred Networks | 2026年6月18日付 | PFN AI Products&Solutions事業本部 | 顧客先常駐率50〜80%、経験年数3年以上、自社LLM「PLaMo」を含む技術選定 | 本文をcurlで取得・確認済み |
| ソフトバンク(SB OAI Japan出向) | 2026年5月18日付 | ソフトバンク在籍のままSB OAI Japan合同会社(OpenAIとの合弁)へ出向 | 勤務地はWeWork竹芝または都内事業所、OpenAI本社(サンフランシスコ)への出張可能性ありと明記。月給523,750〜999,000円・想定理論年収812.3万〜2,034.6万円 | 本文をcurlで取得・確認済み |
| Sakana AI | 記載なし(公開日不明) | 不明(求人詳細は外部ATSへリダイレクト) | 募集ページの存在自体は確認できたが、詳細条件は非公開 | リダイレクト先(Workable)はCloudflare/Turnstileの検証画面が返り、募集要項の本文は確認できず |
| Findy特集掲載12社(JDSC・Gen-AX・Sansan・エクサウィザーズ・ログラス・Almondo・ストックマーク・ACES・アップグレード・Algoage・DeNA・LayerX) | 特集記事は2026年3月4日付 | 各社まちまち(個別求人票は本記事では未確認) | Findyの特集記事本文で企業名の列挙のみ確認 | Findyの特集記事本文はcurlで確認済み。12社個別の求人票までは未確認 |
(表はいずれも本文中で引用した一次情報の日付・条件を並べ替えたもの。Sakana AIとFindy掲載12社の個別求人票の本文までは、この記事の調査範囲では未確認であることを表内にも明記した。)
なぜ2026年に集中したのか(推測を含む)
ここからは求人票に書かれていない、記事側の整理だ。生成AIのPoC(概念実証)フェーズが一巡し、企業側の関心が「本番導入」に移ったタイミングと、この肩書の登場時期は重なる。PFNの求人票も「PoCで終わらず業務の中核にAIエージェントを組み込むプロジェクトが急増している」と明記しており、モデルの性能そのものより「顧客の業務に合わせて実装しきる人材」が不足しているという認識が背景にあるとみられる。ただしこれは各社の求人票から読み取れる範囲の推測であり、業界横断の統計で裏付けたものではない。
年収を出しているのはソフトバンクだけ、PFNは非公開
- パソナがFDEという肩書で求人を出しているかどうかは、検索と直接確認では見つけられなかった。人材派遣・紹介業として「FDE案件」を扱っている可能性はあるが、パソナ自身の採用ページでの確認はできていない
- Sakana AIの求人詳細ページは外部ATS(Workable)にリダイレクトされ、Cloudflareの検証画面のみが返ってきたため、募集要項の本文までは確認できなかった。「同社もFDEを募集している」という事実(URLの存在)までが確認範囲
- 「PoCフェーズが一巡し本番導入に企業の関心が移った」という因果関係は、PFNの求人票の記述を踏まえた記事側の解釈であり、業界統計による検証は行っていない
- 年収・給与レンジは求人票によって扱いが分かれる。ソフトバンク(SB OAI Japan出向)の求人票には「月給:523,750円~999,000円」「想定理論年収:8,123,000円~20,346,200円」と明記されている(2026年9月4日に本文を再取得して確認。同ページの注記では月給=基本給+時間外手当、想定理論年収=月給+賞与+特別加算賞与)。一方PFNの求人票には給与の記載が無かった。Sakana AIは求人本文自体に到達できていない
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