Anthropic(アンスロピック)、米国の成人と自社社員でAIの将来予想を比べた調査を公開2030年までにノーベル賞級の発見ができると考える人は39%と91%
日刊AIニュース10月17日(土)号:前日のAIのニュース17本を短くまとめました(約8分)›
Anthropicは2026年10月16日、米国の成人10,980人と自社社員1,334人にAIの将来を尋ねた調査「The AI expectations gap」を公開した。自分の現在の仕事のうち2030年までにAIが担えると予想した割合は、社員の平均が75%、米国の働く人の平均が28%だった。

目次
Anthropic(アンスロピック)は現地時間2026年10月16日、AIの将来についての予想が米国の一般の成人と自社の社員でどれほど違うかを調べた調査報告「The AI expectations gap」を公開した。ページのメタデータ上の公開時刻は協定世界時16時45分(日本時間17日1時45分)。2026年8月に米国の成人10,980人とAnthropic社員1,334人へ尋ね、2030年までにノーベル賞級の発見をAIができると答えた人は成人で39%、社員で91%だった。
3行まとめ
- Anthropicが2026年8月に米国の成人10,980人と自社社員1,334人へ調査。ノーベル賞級の発見を2030年までにAIができるとの予想は成人39%、社員91%
- 自分の現在の仕事時間のうち2030年までにAIが担える割合は、社員が平均75%、米国の働く人が平均28%。ただしAIが仕事を担うと考える人ほど失業率を高く予想する傾向は両グループで共通
- 回答をAnthropic自作の経済モデルに通すと、2030年のGDP成長率は米国の成人の中央値で5.4%、社員の中央値で17.1%。社員側は内部アンケートで、採用や開発の見通しの回答は会社の計画や見解ではないと同社が明記
本記事の内容は、日本時間10月17日5時台に公式ページで確認したものです。
何を調べた調査なのか
Anthropicの発表によると、論点は「AIの未来をめぐる意見の食い違いの核心は、能力の伸びの速さの見方にあるのか、それとも能力が実社会の普及にどう結びつくかの見方にあるのか」だ。著者はSzymon Sacher、Tess Cotter、Charles I. Jones、Anton Korinek、Peter McCroryの5人。
| 項目 | 米国の成人 | Anthropic社員 |
|---|---|---|
| 回答者数 | 10,980人 | 1,334人 |
| 実施時期 | 2026年8月11〜23日 | 2026年8月9〜12日 |
| 実施方法 | Morning Consultがオンラインで実施。人口構成に合わせて重み付け | 社内アンケート。重み付けなし |
| 将来の質問 | 半数に2027年、残り半数に2030年を質問 | 全員に2030年を質問 |
報告は、成人の調査がオンラインの回答者パネルを使っているため、ネットに接続できない成人が含まれず、重み付けで補正しきれない差が残りうるとも書いている。以下の成人側の数字は、特に断りがなければ2030年について尋ねた半数の回答だ。
何の予想が違い、何は同じだったのか
現在できることの見方は近く、将来の速度が違う
報告によると、2つのグループは「いまAIに何ができるか」についてはおおむね一致し、8つの作業(日常のメールの作成からノーベル賞級の発見まで)を難しい順に並べると、ほぼ同じ順番になった。差が出たのは将来だ。
- 2030年までにノーベル賞級の発見ができる: 成人39%、社員91%
- 科学研究を設計・実施・公表する作業は、いま既にできると答えたのが成人と社員のどちらも約4分の1。1年後(2027年)までにできるとの予想は、社員で10人中9人、一般の成人で38%
- 作業によっては成人の19〜40%が「AIには決してできない」と答えた。社員で同じ答えは多くても2%
- AIを仕事で定期的に使う人(回答者の約5分の1)の56%が、8作業のうち7つ以上を2030年までにできると予想した。成人全体は41%、AIを使ったことがない人は28%、社員は96%
普及と、人が関わる度合い
AIができる仕事のうち2030年までに実際にAIで行われる割合は、成人の予想が42%、社員の予想が65%だった。
成人には、2030年に職場でAIが使われる妨げとなりそうなものを9項目から最大3つ選んでもらっている。最も多く選ばれたのは「顧客が人間を相手にすることを好む」で、次が「データのプライバシーとセキュリティへの懸念」「AIの信頼性が足りない」「法律・規制・責任」だった。報告は、一般の人は技術上の制約より人々の好みやルールが普及を遅らせると見ている、と読んでいる。なおこの質問は社員には聞いていない。
報告によると、社員の大多数は2030年までにAIが作業を単独で、または人が確認する形で終えると答えた。一方、成人の10人中4人は「人が大半を自分で、またはAIの助けを借りて行う」と予想した。
時間短縮の見方
AIが得意な作業を、確認・修正の時間を含めてAIで行うと、使わない場合と比べてどれだけ時間がかかるかを尋ねている。
| 回答 | 米国でAIを仕事に使う成人 | Anthropic社員 |
|---|---|---|
| 4分の1以下の時間で終わる | 26% | 59% |
| 半分以下の時間 | (典型的な答えが「半分」) | 85% |
| 同じか、かえって長くかかる | 29% | 5% |
報告は、仕事にAIを使わない成人でも「4分の1以下」は21%だったとしている。また社員の答えは職場での経験を反映している可能性があるとして、別報告「How Employment is Changing at Anthropic」の結果を引いている。同報告によると、コーディングエージェントの導入後1か月でエンジニアが追加したコード行数が3倍になったという。この調査は別記事で取り上げている。
自分の仕事と失業率はどう結びついたのか
自分の現在の仕事時間のうち、2030年までにAIが担えると思う割合は次のとおりだった。
| グループ | 平均 |
|---|---|
| Anthropic社員 | 75% |
| 米国の働く人(回答者のうち仕事がある人) | 28% |
80%以上と答えた人は、社員では過半数、米国の働く人では20人に1人(5%)だ。米国の働く人を職種で見ると、手作業・生産・運輸の職種で25%、コンピューター・工学・科学の職種で33%。後者のうちAIを定期的に使う人は40%で、社員の75%より米国の働く人全体の平均に近いと報告は書いている。
次に、現在の失業率は約4.2%と伝えたうえで2030年の失業率を予想してもらった。
- 自分の仕事の半分未満をAIが担うと考える米国の働く人は、失業率を7〜8%と予想
- 80%以上をAIが担うと考える人は、平均12.2%と予想。報告は「世界金融危機のピークを上回る」水準と説明している
- 米国の働く人全体では、自分の仕事のうちAIが担う割合が10ポイント増えるごとに、失業率の予想が0.4ポイント高くなる関係がある
報告はこの関係を、AIへの全般的な楽観では説明できないとしている。自分の仕事への影響を固定すると、8作業のうちAIがこなせると考える数と失業率の予想は無関係だったという。社員にも同じ傾向があり、自分の仕事への影響の水準が同じなら、両グループの失業率の予想はほぼ同じだった。報告の読みは、2つのグループは理論が違うのではなく、AIの能力についての経験が違うために予想が違う、というものだ。
社員の採用予想と再就職の見方
社員の95%が今後12か月でAnthropicの人員が増えると予想し、中央値の増加率は66%、27%は少なくとも2倍になると答えた。報告は、これは社内アンケートでの社員個人の予想で、同社の計画や見解ではないと明記している。
AIに仕事を奪われて別の職種へ移る人が新しい職を見つけるまでの期間は、社員の中央値が12か月、米国の成人の中央値が7〜12か月の範囲で、社員のほうがやや悲観的だった。
回答を経済モデルに通すとどうなるか
Anthropicは、別に公開した経済シナリオのモデル(技術報告書「Economic Scenarios for Transformative AI」)に回答を入力し、各人の答えが示す2030年のGDP成長率を計算している。対象は、必要な質問すべてに答えた3,259人の成人と1,093人の社員だ。
| グループ | 2030年のGDP成長率(中央値) |
|---|---|
| 米国の成人 | 5.4% |
| 公式ページの経済シナリオ体験に答えた訪問者 | 12.5% |
| Anthropic社員 | 17.1% |
報告は社員の予想について、2030年にGDPが約4年半で2倍になるペースで、歴史上例のない変化にあたると説明している。成人の中央値についても、米国経済が通常の2倍超の速さで成長する場合にあたるとしている。分布は両グループで広く重なる。
訪問者は、9月9日に公開された経済シナリオ体験ページ(Scenarios for our Economic Future)で短縮版の質問に答えた人だ。公開から48時間で23,075人が完了し、140か国超から参加した。報告は、自分でページを訪れて回答した人なので、一般よりAIへの関心が高いはずだと注記している。
開発現場の見方
社員には、2026年初頭の最先端モデルを作る仕事のうちAIが担う割合も尋ねている。中央値は現在51%、2027年末に80%、2030年末に95%。研究チームの社員は現在を平均60%、それ以外の回答者は53%と見た。報告は、これは社員個人の見積もりで、Anthropicの測定でも会社の予想でもないと断っている。
筆者が公式ページで確認したこと
日本時間10月17日5時47〜48分にこの2つの公式ページを取得したところ、報告本文の脚注に、9月17〜24日の再調査(米国の成人7,613人)が入っていた。主な結果はほぼ変わらず、成人の中央値が示すGDP成長率は5.6%、失業率は4.7%。最も大きく動いたのは、ノーベル賞級の発見を2030年までにAIができると考える成人の割合で、39%から44%に上がった。報告は本文全体で8月の結果を使っているため、見出しの数字は39%のままだ。9月分の方が新しい数字であることを、読むときは頭に置いておきたい。
読むときに押さえたい限界
- 社員側は内部アンケート: 報告自身が、社員の回答は重み付けなしの社内アンケートで、全社の各部門から1,334人が答えたものと説明している。AIを作る会社の社員の見方であり、他社や他業界の働く人の代表ではない。報告も、AIが最先端の研究所と同じ程度に仕事を担うようになるかで、一般の見方がどこまで動くかが決まる、と書いている
- 調査は米国が対象: 今回取得した2つの公式ページに、日本の回答者や日本の結果の記載はなかった(「Japan」「Japanese」の語で確認)。日本の働く人にそのまま当てはまるかは、この発表からは分からない
- 指標の違いに注意: 本文の「Substantial(相当)」シナリオはGDP成長率5.4%、体験ページでは同じシナリオを2030年のGDP水準で+8.3%と示しており、別の指標だ。体験ページには、典型的な回答者の答えが「2030年のGDPがAIの無い場合より10%高く、失業率は約5%」の水準に近いとも書かれていて、成長率の中央値5.4%とは測り方が違う
- モデル側の限界: 体験ページは、このモデルは政策の対応や景気循環などを含まず、実際の結果は大きく異なりうる、と明記している。外部の経済学者から、最も極端なシナリオは予測というより思考実験に近い、といった未解決の批判も出ている、と書いている
- 発表はAnthropic自身のもの: 成人の調査を実施したのはMorning Consultだが、報告の分析と解釈はAnthropic側の著者によるもの。体験ページによると、経済モデルの技術報告書は外部の経済学者が草稿にコメントしたが、結論の支持は求めていないという。同社の経済学チームが公開した資料なので、結論を読む際は同社の発表として扱うのが妥当だ
出典と確認時刻
- The AI expectations gap — Anthropic(日本時間2026年10月17日5時47分に取得)
- Scenarios for our Economic Future — Anthropic(同5時48分に取得)
関連記事: Anthropic、自社の雇用変化の調査を公開
本記事は続報があり次第更新します。
この記事でよく聞かれること
- Anthropicの「The AI expectations gap」とはどんな調査ですか?
- Anthropicが2026年10月16日に公開した調査報告です。2026年8月に、Morning Consultを通じた米国の成人10,980人と、Anthropicの社員1,334人にAIの能力・普及・時間短縮・自分の仕事への影響・失業率の見方を尋ね、2つのグループの差を比べています。
- ノーベル賞級の発見をAIができるようになると答えた人はどれくらいですか?
- Anthropicの報告によると、2030年までにAIがノーベル賞級の発見をできると予想した人は、米国の成人で39%、Anthropicの社員で91%でした。9月に米国の成人へ再調査したところ、成人側は44%に上がったと報告は書いています。
- 自分の仕事のどれくらいをAIが担うと予想していますか?
- 報告によると、2030年までに自分の現在の仕事時間の何割をAIが担えるかは、Anthropicの社員が平均75%、米国の働く人が平均28%です。80%以上と答えたのは、社員の半数超に対し米国の働く人では5%でした。
- AIが仕事を担うと考える人は、失業率も高く予想していますか?
- 報告によると、はい。自分の仕事の80%以上をAIが担えると考える米国の働く人は、2030年の失業率を平均12.2%と予想しました。現在の失業率4.2%と伝えたうえでの回答です。社員にも同じ傾向があり、同じ水準の自動化予想なら失業率の予想はほぼ同じだったとしています。
出典・参照資料
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