「みどりの窓口」削減計画は、いったん止まっている──JR東日本、440駅から140駅への計画を凍結するまで
JR東日本は2021年、約440駅にあった「みどりの窓口」を2025年までに140駅程度へ減らす計画を打ち出した。だが2024年春の混雑を受けて2024年5月に削減方針を凍結し、2026年現在は209駅の窓口を当面維持する方針に転換している。駅務員はNRI2015年リストで「代替可能性が高い」側に実名で載る職業のひとつ。

目次
駅の窓口できっぷを売る「駅務員」は、野村総研(NRI)とオックスフォード大学が2015年に発表したリストで「代替可能性が高い100種の職業」に実名で載っている。この記事では、その判定から10年が経った今、実際に駅の窓口で何が起きているかを、JR東日本の「みどりの窓口」削減をめぐる報道で確認した。
3行まとめ
- NRI原文の「代替可能性が高い100種の職業」に、駅務員は実名で含まれている
- JR東日本は2021年、約440駅にあった「みどりの窓口」を2025年までに140駅程度へ削減する計画を打ち出したが、2024年春の激しい混雑を受けて2024年5月に方針をいったん凍結した
- 2026年現在、JR東日本は209駅の窓口を当面維持する方針に転換している。ただし機械化そのものが止まったわけではなく、オペレーターと画面越しに話せる指定席券売機への置き換えは続いている
「440駅→140駅」計画と、その凍結
乗りものニュースが2026年2月25日に公開した記事(curlで取得・確認)によると、JR東日本は2021年時点で約440駅にあった「みどりの窓口」を、2025年までに140駅程度まで削減するという計画を打ち出していた。窓口を大幅に減らし、指定席券売機への置き換えを進める方針だった。
しかし記事はこう続ける。
「2024年春に発生した激しい混雑を受け、同社は2024年5月の会見で、この削減方針をいったん凍結する考えを示しました」
さらに「2026年現在は209駅の窓口を当面維持する方針に転換している」とも書かれている。当初の計画(140駅程度)よりは多い水準で、削減にいったんブレーキがかかった形だ。この記事の執筆時点(2026年8月27日)でこの数字が最新かどうかは確認していないが、少なくとも2026年2月時点の報道では「凍結」「209駅を当面維持」という状態だったことが確認できる。
「440→140→209」の推移を表で整理する
ここまで確認した窓口数の推移を時系列で並べると、次のようになる。
| 時点 | 窓口数(記事記載) | 出来事 |
|---|---|---|
| 2021年 | 約440駅 | JR東日本、2025年までに140駅程度への削減計画を打ち出す |
| 2024年春 | (削減進行中) | 「みどりの窓口大混雑」発生 |
| 2024年5月 | (凍結) | 会見で削減方針の凍結を発表 |
| 2026年(記事執筆時点) | 209駅を当面維持 | 利用者の多い駅での窓口強化も検討中 |
(表は乗りものニュースの記事本文の記載を時系列に並べ替えたもの。当初計画の140駅と比べると、実際に維持されている209駅は約1.5倍の水準になっている。)
凍結を発表した「その日」に何が起きていたか——NHKの記事から
「2024年5月に方針を凍結した」という事実の中身を、NHK首都圏ニュースが2024年5月8日に配信した記事(Wayback Machine保存版をcurlで取得・確認)で確認すると、単なる方針転換の発表ではなく、JR東日本トップによる謝罪会見だったことがわかる。
「これについてJR東日本の喜勢陽一社長は8日の定例会見で『お客様に多大なるご迷惑をかけていることを重く受け止めている。深くおわび申し上げる』と謝罪したうえで、削減の方針を凍結することを明らかにしました」
この記事によると、混雑が発生したのは「ことし3月下旬から先月上旬にかけて」(2024年3月下旬〜4月上旬)で、対象は「定期券を購入する人や訪日外国人など」。3年前(2021年)に打ち出した「来年(2025年)までに7割削減」という方針のもと集約を進めてきた結果として起きた混乱だったと位置づけられている。
さらに、この記事にはトラフィックニュース記事にはなかった具体的な運用策も書かれている。
「そのうえですでに廃止したみどりの窓口のうち、今も設備が残る10数か所については、繁忙期の混雑に応じて臨時に開設できる体制を整えるということです」
つまり「凍結」の中身は、(1)今ある窓口の数(記事執筆時点で209)を当面維持する、(2)すでに廃止済みだが設備が残っている10数か所については、繁忙期だけ臨時に窓口を復活させる、という2段構えだったことになる。この2024年5月時点ですでに「440→209」への削減は完了しており、乗りものニュースが2026年2月に報じた「209駅を当面維持」は、この2024年5月時点の水準がそのまま2年近く続いていることを意味する。
他のJRグループ各社は、みどりの窓口をどう扱っているか
JR東日本以外の状況について、日本語版ウィキペディア「みどりの窓口」項目(curlで取得・確認、各社の記述にはNHKニュースWEBや事業者発表への脚注が付されている)を確認すると、削減の進め方は会社ごとにかなり違う。
| 事業者 | 確認できた方針・実績 |
|---|---|
| JR北海道 | 「話せる券売機」を有人駅の約8割に設置。営業時間の短縮や、将来的な窓口の5割削減を検討 |
| JR東日本 | 2021年に2025年までの約7割削減(140か所程度への集約)を表明→2024年5月に凍結、209駅を当面維持 |
| JR東海 | 地方路線を中心に無人駅化を推進。「JR全線きっぷうりば」が撤去されると社員配置も原則廃止 |
| JR西日本 | 京阪神地区は2030年度頃に30駅程度へ、管内全域では2030年度末までに約340駅から100駅程度へ削減する方針を表明 |
| JR四国 | 2021年10月〜2022年1月に管内設置駅の半数にあたる16駅の窓口を閉鎖し「みどりの券売機プラス」に置き換え |
| JR九州 | 2022年3月以降、主要駅は営業時間短縮、利用の少ない駅は窓口販売を廃止する方針。福岡県では枝光駅など約30駅が対象 |
この一覧から見えるのは、JR東日本が「大幅削減→混雑で反発→凍結」という行きつ戻りつを経験した一方、JR西日本やJR九州は2026年8月時点でも削減方針そのものを撤回してはいない、ということだ。つまり「みどりの窓口の削減が全国的に止まった」わけではなく、JR東日本という1社が、混雑という具体的な事象を受けて一時的にブレーキを踏んだ、というのがより正確な言い方になる。
止まっているのは「削減の勢い」であって「機械化」ではない
削減方針が凍結された一方で、窓口を代替する技術そのものの進化は止まっていないと記事は指摘する。近年導入が進む「話せる指定席券売機」は、画面越しにオペレーターと直接会話できる機能を持ち、これまで窓口でしか買えないと思われていた学割きっぷも、この券売機で購入できるようになっているという。手順としては、画面上のボタンでオペレーターを呼び出し、学生証などの証明書を備え付けのカメラに提示して確認してもらう、という流れが紹介されている。
つまり、この記事から読み取れるのは「窓口という物理的な設備の削減ペースは落ちたが、窓口業務そのものを機械側へ移す取り組みは続いている」という状態である。有人窓口の数と、駅務員という職種の実際の人員数は、必ずしも同じ動きをするとは限らない。窓口が残っていても配置人数が減っている可能性もあれば、逆かもしれない。この点は今回のセッションでは確認できていない。
記事の2ページ目にあった続き
この記事は2ページ構成で、1ページ目の内容だけでなく2ページ目(trafficnews.jp/post/636866/2)もcurlで確認した。2ページ目には、混雑緩和の別の仕組みも紹介されている。
- シートマップ機能: 話せる指定席券売機は、窓口の専用端末と同等の精度で座席を選べる詳細な座席表示機能を持つ
- えきねっと連携: スマホ予約サイト「えきねっと」で事前予約して発行したQRコードを券売機のリーダーにかざすだけで、文字入力なしにきっぷを受け取れる
そのうえで記事は、2024年の削減方針凍結に至った直接のきっかけを、次のように明記している。
「ただ、ここまで機械化した弊害が2024年に発生した『みどりの窓口大混雑』という事案でした。これがあったからこそ、前述したようにJR東日本は2024年5月の会見で、みどりの窓口の削減方針をいったん凍結し、209駅の窓口存続に舵を切ったのです。加えて現在は、利用者の多い駅での窓口強化まで検討されています。」
つまり凍結のきっかけは「機械化そのものへの反発」というより、機械化を急ぎすぎた結果として起きた「みどりの窓口大混雑」という具体的な事案だったと、この記事は位置づけている。さらに、利用者の多い駅では窓口を「強化」する方向まで検討されているとも書かれており、単純な「削減が止まった」以上に、一部では逆行する動きも出ていることがうかがえる。記事の結びは「機械化による人員削減は間違いなく進むだろうが、サービスの質的低下は企業イメージのダウンに直結するため、各社が知恵を絞っている」という見立てで締めくくられている。
NRIの2015年判定と、この10年の動き
NRIの2015年判定は、あくまで「業務全体を66%以上の確率でコンピューターが代替できるか」という技術的な可能性の推計であり、実際に代替されるかどうかは労働需給などの社会環境要因次第だとNRI自身が明記している。駅務員というひとつの職業を追ってみると、この10年で起きたのは「単純な直線的な削減」ではなく、「大幅削減を打ち出す→現場の混雑で反発を受ける→方針をいったん引き戻す→技術的な置き換えは並行して進める」という、行きつ戻りつのプロセスだったことが、今回確認した1件の報道からは見えてくる。
JR東日本自身のプレスリリースPDFは取得できなかった
まず、この記事の中心的な事実関係は、乗りものニュースの記事とNHK首都圏ニュース(2024年5月8日、Wayback Machine保存版)という2媒体の報道に基づいている。JR東日本自身の公式発表(プレスリリースやIR資料)を今回のセッション(再取得含む)でも直接確認しようと試みたが、www.jreast.co.jpへの直接アクセスは403エラーでブロックされ続けており、一次資料であるJR東日本自身のPDF(2026年2月12日付プレスリリースなど)は取得できなかった。したがって、この記事の「440駅」「140駅」「2024年5月凍結」「209駅」という数字は、報道各社が伝える内容の確認にとどまり、JR東日本自身の発表文そのものではない。
JR西日本・JR北海道・JR東海・JR四国・JR九州の状況は、日本語版ウィキペディア「みどりの窓口」項目の記述(curlで取得・確認)を今回追加で参照した。ただしウィキペディア自体は一次資料ではなく、記載内容の根拠となっている個別の脚注URL(NHKニュースWEBや各社発表など)まではすべてを追って確認していない。
また、駅務員という職種全体の日本国内の就業者数の推移についても、今回のセッションでは総務省統計局などの一次統計を取得していない。「窓口の数」と「駅務員という職種の人数」は必ずしも同じものではなく、この記事は前者の推移しか確認できていない。
最後に、2026年8月27日(この記事の執筆時点)における最新の状況が、2026年2月25日の報道時点と変わっていないかどうかも確認していない。半年のあいだに方針が再度変わっている可能性は排除できない。
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