2026年8月28日 金曜日
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デザイナー7職種は「AIで消える仕事」なのか──野村総研2015年リストを自分で数え直した

野村総合研究所が2015年12月2日に発表した原文をWayback Machine経由で取得すると、「代替可能性が低い100種の職業」にグラフィックデザイナーなど7つの『デザイナー』職が実名で並んでいた。一方、「AIでなくなる仕事ランキング」の中には、このNRIの発表を参照元に挙げながらグラフィックデザイナーを15職種中6位の『消える仕事』に置く記事もある。

デザイナー7職種は「AIで消える仕事」なのか──野村総研2015年リストを自分で数え直した
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「デザイナーはAIで真っ先に消える仕事」という言い方を見かける機会は多い。画像生成AIの進化スピードが速いぶん、この職種への不安はよく語られる。そしてこの手の話には、たいてい「震源」とされる調査が背後にある——野村総合研究所(NRI)が2015年12月2日、オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授、カール・ベネディクト・フレイ博士との共同研究として発表したニュースリリースだ。「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」というあの数字の出どころである。

この記事では、そのプレスリリースの原文を自分で取得し、そこに実名で載っている職業を実際に数えるところから始める。先に結論を書くと、NRIが「代替可能性が低い100種の職業」として例示したリストには、デザイナーを名乗る職業が7つ、実名で入っていた。グラフィックデザイナー・インテリアデザイナー・工業デザイナー・ファッションデザイナー・ジュエリーデザイナー・ディスプレイデザイナー・フラワーデザイナーである。一方、「代替可能性が高い100種の職業」の側には、デザイナーを名乗る職業は一つも入っていない。

  • NRIが2015年12月2日に発表した原文(Wayback Machine経由で取得・確認)の「代替可能性が低い100種の職業」には、グラフィックデザイナーなど7つの「デザイナー」職が実名で並んでいた。「代替可能性が高い100種の職業」側にデザイナー職は0件だった
  • 「AIでなくなる仕事ランキング」を掲げる記事の一つ(ミライラボ、2026年7月)は、グラフィックデザイナーを15職種中6位の「消える仕事」に置き、参考情報にこのNRIの発表を名指しで挙げている
  • ただしNRIの推計は「技術的代替可能性」であり「実際に代替されるか」ではないとNRI自身が本文に明記しており、また画像生成AIが本格普及する前、2015年時点の判定である点は、原典と通説を比べるうえで見落とせない

消えたページを、Wayback Machineで開く

NRIの当該ページ(nri.com/jp/news/2015/151202_1.aspx)は現在リダイレクトされており、現行サイトからは読めない。Wayback Machineの保存版(2018年8月29日クロール分)をcurlで取得し、本文をHTMLタグ除去して読んだところ、内容は次のように始まっていた。

株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役会長兼社長:嶋本 正、以下「NRI」)は、英オックスフォード大学のマイケル A. オズボーン准教授およびカール・ベネディクト・フレイ博士との共同研究により、国内601種類の職業について、それぞれ人工知能やロボット等で代替される確率を試算しました。この結果、10~20年後に、日本の労働人口の約49%が就いている職業において、それらに代替することが可能との推計結果が得られています。

この601職業のデータは、労働政策研究・研修機構(JILPT)が2012年に公表した「職務構造に関する研究」から取られたもので、フレイ&オズボーンが米国・英国で使ったのと同じ分析手法を当てはめている。

本文の後半、試算方法を説明した注釈には、次の一文がある。

あくまで、コンピューターによる技術的な代替可能性であり、実際に代替されるかどうかは、労働需給を含めた社会環境要因の影響も大きいと想定されますが、本試算においてそれらの社会環境要因は考慮していません。

「技術的に代替できる」と「実際に代替される」は別だと、NRI自身が原文で釘を刺している。この限定を落として「49%の仕事がなくなる」とだけ孫引きする記事が多いという傾向は、既に別記事(同じNRIリリースを扱った本サイトの記事)で触れているので、ここでは繰り返さない。

低代替100職を、実際に数えてみた

原文の後半には「ご参考」として、代替可能性が高い職業・低い職業それぞれ100種が、実名で列挙されている。見出しにはこう書かれている。

人工知能やロボット等による代替可能性が低い100種の職業(50音順、並びは代替可能性確率とは無関係) ※職業名は、労働政策研究・研修機構「職務構造に関する研究」に対応

「50音順」であって「低リスク順」ではない、という注記がある点も見落としやすい。この100件を実際にすべて書き出し、「デザイナー」という文字列を含む職業名を機械的に数えたところ、次の7件がヒットした。

インテリアデザイナー/グラフィックデザイナー/工業デザイナー/ジュエリーデザイナー/ディスプレイデザイナー/ファッションデザイナー/フラワーデザイナー

この記事のもとになった探査段階のメモでは「グラフィック/インテリア/工業/ファッション/ジュエリー/ディスプレイの6職種」という数字が挙がっていたが、実際にリストを開いて数え直すと、フラワーデザイナーが1件抜けており、正しくは7職種だった。「リストに載っている」という主張は自分で数えないと確認したことにならない、という今回のいちばん具体的な教訓がこれである。

念のため、もう一方の「代替可能性が高い100種の職業」の側も同じ方法で数えたが、「デザイナー」を含む職業名は1件もヒットしなかった。この原文に関する限り、デザイナー関連職はすべて低代替側に分類されており、高代替側には一つも入っていない。

なお、同じ低代替リストには「経営コンサルタント」「中小企業診断士」も実名で並んでいる。この2職種については別記事で扱っているため、本記事では深入りしない。

「消えるランキング」は、どこから来ているのか

通説側の出所を具体的に示せるかどうかも確認しておく必要がある。curl経由でYahoo!検索を使い、「デザイナー AI なくなる」系のクエリで見つかった記事のうち、NRIの発表を明示的に参照していたのが、AI関連情報サイト「ミライラボ」の記事だった。

タイトルは「ChatGPTなどの生成AI技術でなくなる職業・仕事ランキング15選!根拠も一覧で紹介」(2026年7月1日公開・7月9日更新)。本文はこう始まる。

野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究や、世界経済フォーラムの「Future of Jobs 2025」など、信頼性の高い一次情報に基づいて、“今後消える可能性が高い職種”を日本国内の労働統計と照らし合わせながらランキング形式で紹介します

本文は表形式になっており、列は「順位」「職業名」「国内従事者数(概算)」「AIによる失職リスク(推計%)」の4つ。6行目はこう並んでいる。

6|グラフィックデザイナー|約20万人|50〜70%

そして記事末尾の「参考情報」には、次の3つが列挙されている。

WEF – Future of Jobs Report 2025 NRI – 日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に 職業情報提供サイト(job tag)

正確に書いておくと、記事本文中でグラフィックデザイナーの項目そのものに添えられている根拠は、主に「Future of Jobs Report 2025」(世界経済フォーラム)であり、NRIの名前がその1行に直接ぶら下がっているわけではない。NRIの発表は、ランキング全体の「信頼性の高い一次情報」としてページ冒頭と参考情報欄にまとめて挙げられている形だ。それでも、この記事のランキングにグラフィックデザイナーが「なくなる仕事」の6位として載っており、その根拠の一つとして名指しでNRIの2015年発表が挙げられているのは事実として確認できる。NRIの原文自体はグラフィックデザイナーを低代替側に分類しているので、震源となったはずのデータと、それを参照元に挙げた記事の結論が、少なくともこの1件については逆向きになっている。

ここは正直に書いておきたい点がもう一つある。「デザイナーはAIで真っ先に消える仕事の代表格」と明言している大手メディアの記事や、著名な発言者による発言は、今回のセッションでは特定できなかった。見つけられたのは、NRIの発表を参照元の一つに挙げつつグラフィックデザイナーを「なくなる職業ランキング」に含めるタイプの記事であり、「代表格」とまで言い切っているわけではない。したがって「デザイナーが不安の代表格として語られている」という前提部分については、筆者がデザイナー関連のAI不安を扱う記事やSNS投稿を日常的に目にしている範囲での観測にとどまる。

NRIの判定が現実に近いかどうかは検証していない

原文とランキング記事を突き合わせて分かるのは「NRIの2015年の判定と、それを参照元に挙げた2026年のランキング記事の結論が食い違っている」という事実だけである。ここから言えないことを、はっきり書いておく。

  • NRIの技術的代替可能性の推計が「正しかったかどうか」は、この記事では検証していない。2015年の判定と2026年時点の実態(日本国内のデザイナー職の求人数・就業者数の増減など)を突き合わせるには、別途、統計局や求人データベースの一次統計を取得する必要があり、今回はそこまで手をつけていない。
  • 2015年のこの推計は、JILPTが2012年に集めたデータをもとにしている。Midjourney・Stable Diffusion・DALL-E・Adobe Fireflyといった画像生成AIは、いずれも2021年以降に登場したものであり、NRIの推計がこれらの技術の存在を前提にしていたわけではない。つまり「2015年時点でデザイナーが低リスク側だった」という事実は、「2026年の生成AI環境でもデザイナーが低リスクである」ことを意味しない。原典と通説がズレているという事実の指摘と、どちらの判定が今の現実に近いかという評価は、別の問題である。
  • NRIが例示した「低代替100職」「高代替100職」は、601職業全体のうちの代表例であり、原文自体が「代替可能性の高い職種、代替可能性の低い職種の一部を【ご参考】で紹介しています」と明記している。したがって、この100件のリストは低リスク職・高リスク職それぞれの全件ではない。「この100件に載っていない職業」について、NRIがどちら側に分類したかは、この記事の範囲では分からない。
  • ミライラボの記事がグラフィックデザイナーを6位に置いた根拠は、記事本文を読む限り主にWEFの「Future of Jobs Report 2025」であり、NRIの発表がそのランキング付け(順位や50〜70%という数字)に直接使われたと確認できたわけではない。NRIの名前は、ページ全体の参考情報として挙げられているだけである。この点を混同して「ミライラボはNRIのデータを見て逆の結論を出した」と断定するのは、原文以上のことを言うことになる。

NRI発表とミライラボ記事、Wayback Machine経由で確認

いずれも curl -sL -A "Mozilla/5.0 (Macintosh; Intel Mac OS X 10_15_7)" で本記事執筆時点に取得し、HTMLから本文テキストを抽出したうえで、低代替・高代替それぞれ100件のリストは機械的に文字列検索して件数を数えている。

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