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「仕事の49%がなくなる」の原文に、なくなるとは書いていない──野村総研2015年リリースを読み直す

野村総合研究所が2015年12月に発表した原文には「49%」の直後に「技術的な代替可能性であり、社会環境要因は考慮していない」という一文があり、職業ごとのパーセンテージはどこにも出てこない。それでもダイヤモンド・オンラインは見出しで「仕事の49%がなくなる」と書き、別の記事は原文に存在しない「中小企業診断士0.2%」という数字をNRIデータとして掲げていた。

「仕事の49%がなくなる」の原文に、なくなるとは書いていない──野村総研2015年リリースを読み直す
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「AIで仕事の49%がなくなる」という言い方を、何度も見かけたことがあると思う。震源は野村総合研究所(NRI)が2015年12月2日に発表したニュースリリースだ。そのページは今の野村総研サイトからは読めなくなっている(後述)ので、Wayback Machine経由で自分で取得し、本文を最初から最後まで読んだ。

結論から書く。原文に「なくなる」という言葉は一度も出てこない。使われているのは「代替可能」「代替できるようになる可能性が高い」という表現で、しかも本文中には「あくまで、コンピューターによる技術的な代替可能性であり、実際に代替されるかどうかは、労働需給を含めた社会環境要因の影響も大きいと想定されますが、本試算においてそれらの社会環境要因は考慮していません」という限定が、NRI自身の手で明記されている。もう一つ、原文を読んで初めて気づいたことがある。この49%という数字の他に、職業ごとの個別パーセンテージは本文のどこにも書かれていない。載っているのは「代替可能性が高い100種の職業」「代替可能性が低い100種の職業」という、パーセントなしの実名リスト2本だけである。

  • NRI原文(2015年12月2日、Wayback Machine経由で取得・確認)は「技術的な代替可能性」であり「社会環境要因は考慮していない」と明記している。職業別のパーセンテージは本文に一つも出てこない
  • ダイヤモンド・オンライン(2019年4月22日)は見出しで「『仕事の49%がなくなる』衝撃レポ」と表現し、リード文でも「置き換えられる」という言葉を使っている
  • 士業向けコンサル業「志師塾」の記事は「元データは野村総研×オックスフォード大」としながら、原文にはない「中小企業診断士0.2%」「行政書士93.1%」という職業別数値を掲げ、経営コンサルタント系の職業を「低い数字ほど当てにならない」と再解釈していた

消えたページを、もう一度取りに行く

www.nri.com/jp/news/2015/151202_1.aspx に直接アクセスすると、現在は/jp/news/2015を経由して/jp/news(現行のニュース一覧ページ)へ302リダイレクトされる。原文はもう現行サイトには存在しない。そこでWayback Machineの保存版(20151202055241、発表当日にクロールされたスナップショット)をcurl -sL -A "Mozilla/5.0 (Macintosh; Intel Mac OS X 10_15_7)"で取得した。HTMLタグを機械的に除去してテキスト化し、本文を通読した結果が以下である。

株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役会長兼社長:嶋本 正、以下「NRI」)は、英オックスフォード大学のマイケル A. オズボーン准教授およびカール・ベネディクト・フレイ博士との共同研究により、国内601種類の職業について、それぞれ人工知能やロボット等で代替される確率を試算しました。この結果、10~20年後に、日本の労働人口の約49%が就いている職業において、それらに代替することが可能との推計結果が得られています。

続く小見出しは「日本の労働人口の約49%が、技術的には人工知能等で代替可能に」。ここでも「なくなる」ではなく「代替可能に」と書かれている。試算の方法を説明した注釈は、次のように締めくくられている。

その結果、従事する一人の業務全てを、高い確率(66%以上)でコンピューターが代わりに遂行できる(技術的に人工知能やロボット等で代替できる)職種に就業している人数を推計し、それが就業者数全体に占める割合を算出しています。あくまで、コンピューターによる技術的な代替可能性であり、実際に代替されるかどうかは、労働需給を含めた社会環境要因の影響も大きいと想定されますが、本試算においてそれらの社会環境要因は考慮していません。また、従事する一人の業務の一部分のみをコンピューターが代わりに遂行する確率や可能性については検討していません。

「一人の業務のすべてを66%以上の確率で機械が代替できる職業」に就いている人の割合が49%、というのが数字の中身である。そして「技術的に代替できる」ことと「実際に代替される」ことは別だと、NRI自身がリリース本文で釘を刺している。この一文を読まずに「49%がなくなる」と要約した記事は、原文が明示的に否定した前提を、原文の名前を借りて主張していることになる。

本文に、職業別のパーセンテージは一つもない

原文をもう一度読み返して確認したのは、49%と66%以外にパーセントの数字が出てくるかどうかである。全文をテキスト化し「%」で検索したところ、ヒットしたのは上記の2箇所(49%という集計値、66%という判定基準)だけだった。職業ごとの代替確率——たとえば「弁護士は何%」「税理士は何%」といった数字は、このリリース本文には一切登場しない。

代わりに載っているのは、こういう見出しの実名リストである。

人工知能やロボット等による代替可能性が高い100種の職業(50音順、並びは代替可能性確率とは無関係) 人工知能やロボット等による代替可能性が低い100種の職業(50音順、並びは代替可能性確率とは無関係)

「50音順であって、代替可能性確率順ではない」という注記まで、原文にはっきり書かれている。つまりNRIが2015年に一般公開した情報は、「49%」という全体の集計値と、高い側・低い側それぞれ代表100職の実名リストまでで、個々の職業に何%という数字は公表していない(少なくとも、このニュースリリース本文には存在しない)。

経営コンサルタントは、どちらのリストに入っていたか

低代替リスト100件を実際に最初から最後まで書き出して確認した。50音順の中に、次の職業名が実名で入っている。

経営コンサルタント、中小企業診断士、コピーライター、フリーライター、放送記者、雑誌編集者、シナリオライター、作詞家、作曲家、グラフィックデザイナー、インテリアデザイナー、工業デザイナー、ファッションデザイナー、ジュエリーデザイナー、ディスプレイデザイナー、フラワーデザイナー

経営コンサルタント」「中小企業診断士」は、代替可能性が低い側の100職に実名で載っている。高い側の100職を同じ方法で確認したが、この2職種はどちらも含まれていなかった。デザイナー系7職種については別記事で扱っているのでここでは詳しく触れないが、原文を数え直す限り、コンサルタント系・ライター系・デザイナー系はいずれもNRIの2015年判定では「低リスク」側に分類されている。

「AIでコンサルは要らなくなる」という言い方を筆者自身、日常的に見かける。ただし、この言い方が具体的にどの記事・どの発言に由来するのか、今回のセッションでは特定できなかった。以下で紹介する2本の記事は、いずれも「コンサルはAIでなくなる」と断定してはおらず、むしろ「なくならない」「業務の一部が変わる」という論調だった。したがって「コンサルはAIで消えると広く言われている」という部分は、筆者の観測にとどめておく。確実に言えるのは、震源であるNRIの原文自体は、経営コンサルタントを低リスク側に分類していたという事実だけである。

「49%がなくなる」という見出しは、どこから来たか

通説側の実例を1つ、具体的に示す。ダイヤモンド・オンラインが2019年4月22日に公開した記事のタイトルは、次の通りだ。

「仕事の49%がなくなる」衝撃レポから3年、AIは本当に仕事を奪ったか

この記事は、NRI未来創発センター長(当時)の桑津浩太郎氏本人へのインタビュー企画であり、リード文はこう始まる。

10~20年後に日本の労働人口の49%の仕事がAIやロボット等で置き換えられるというレポートが2015年12月、野村総研とオックスフォード大学の共同研究によって発表され、大きな衝撃を与えたことをご記憶の方も多いだろう。

続く一文でも「日本の労働人口の49%がAIやロボットで代替されるという衝撃的なレポート」という表現が使われている。この記事は会員限定コンテンツで、本文の続きは今回のセッションでは読めなかった(無料で読めたのはここまでで、これ以上の課金取得はしていない)。したがって、記事の本文全体がNRIの技術的限定を再度説明しているのかどうかは分からない。ただし、タイトルと無料公開部分のリード文だけを見る限り、「代替可能」は「なくなる」「置き換えられる」に、「技術的可能性」は「衝撃的なレポート」に置き換わっている。NRI自身の研究責任者への取材記事でさえ、見出しレベルでは原文の限定が落ちているという点は、指摘しておく価値がある。

存在しない数字を、原文のせいにする

もう1つ、より新しい2026年の記事も見つけた。士業・資格ビジネス向けのコンサルティング会社「志師塾」が運営するブログの記事「士業の将来性ランキング2026|AI代替率TOP10と生存戦略」である(記事は本文中で自らを「士業AI代替率ランキング2026年版TOP10」とも呼んでいる)。この記事は次のように書き出す。

元データは野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究(2015年)で、それを2026年時点の生成AI動向を踏まえて整理した代替率ランキングがこちらです。

そして、こういう表を掲げる(抜粋)。

1位 行政書士 93.1% 2位 税理士 92.5% 9位 弁護士 1.4% 10位 中小企業診断士 0.2%

表の注記には「野村総合研究所×オックスフォード大学(2015年)の代替可能性データをベースに、生成AI登場後の業務影響を加味して整理」とある。だが、今回自分で取得したNRIの原文リリースには、こうした職業別の小数点つきパーセンテージは一つも存在しない。原文にあるのは「49%」という全体値と「66%以上」という判定基準、そして順不同の実名リスト2本だけだ。「行政書士93.1%」「中小企業診断士0.2%」がどのデータから来ているのか、この記事の中では「NRI×オックスフォード」以上の裏付けは示されていない。より詳細な数値付きの一次データがNRI側に別途存在するのかどうかは、今回のセッションでは確認していない——このニュースリリースの本文には無い、というところまでしか言えない。

さらに興味深いのは、この記事の続きの部分である。中小企業診断士が低リスク(0.2%)とされてきたことを紹介したうえで、こう書いている。

弁護士1.4%・中小企業診断士0.2%のような「低い数字」ほど、生成AI時代には当てにならないと考えたほうが安全です。数字が低いから安心、ではありません。

つまりこの記事は、NRIが低リスクと判定した職業(中小企業診断士)について、その判定自体は紹介しつつ、「その判定は今はもう当てにならない」という理屈で読者の不安を煽る方向に使っている。震源データの判定を否定する主張自体があり得ないわけではない——2015年の推計が生成AI以降も妥当かどうかは、確かに別問題だ。ただしその主張の根拠として使われている「0.2%」という数値そのものが、少なくとも今回確認できたNRIの公開情報には存在しない。存在しない精度の数字を土台にして「だから信用できない」と論じるのは、二重に危うい組み立てになっている。

『49%』の出所は消えていたが、正しさの検証はしていない

原文と2本の記事を突き合わせて分かったのは、「NRIの原文が明記した限定と、それを引用した記事の書きぶりが食い違っている」という事実関係だけである。ここから言えないことを、はっきり書いておく。

まず、NRIの2015年の技術的代替可能性の推計そのものが「正しかったか」は、この記事では検証していない。原文と2026年時点の日本の雇用実態(総務省統計局の職業別就業者数の増減など)を突き合わせるには別途の統計取得が必要で、今回はそこまで手をつけていない。原文と通説がズレているという指摘は、「だからNRIの判定が正しい」という意味では全くない。

次に、この推計は労働政策研究・研修機構が2012年に集めたデータをもとにした2015年時点のものであり、ChatGPTをはじめとする生成AIが登場する前の判定である。「2015年時点で経営コンサルタントが低リスク側だった」という事実は、「2026年の生成AI環境でも低リスクである」ことを何ら意味しない。志師塾の記事が主張する「今はもう当てにならない」という立場自体は、2015年のデータの古さを理由にしている点では筋が通っており、この記事はその主張の当否を判定するものではない。問題にしているのは、その主張の根拠として引用された数値の出どころが確認できなかったという一点である。

また、ダイヤモンド・オンラインの記事は会員限定で、無料公開範囲(タイトルとリード文)しか確認できていない。本文の続きでNRIの限定が改めて説明されている可能性は排除できない。指摘できるのは、見出しと無料部分に限れば「なくなる」「置き換えられる」という表現が使われていた、という事実までである。

さらに、「コンサルはAIで消える」という言い方が世間にどれだけ流通しているかについては、curl経由のYahoo!検索で複数のクエリを試した範囲での観測にとどまる。網羅的な調査ではなく、この記事で紹介した2本以外にも、原文の限定を保ったまま49%を紹介している記事は存在するはずである。

最後に、志師塾の記事が掲げる職業別パーセンテージについて、それが完全な捏造なのか、NRIまたはオズボーン氏の研究に付随する別の詳細データ(今回のニュースリリース以外の資料)に基づくものなのかは、今回のセッションでは判定できていない。確認できたのは「今回取得したNRIの公開リリース本文には、この数字は存在しない」という事実までである。

Wayback Machineで遡ったNRI原文とダイヤモンド・志師塾の記事

いずれもcurl -sL -A "Mozilla/5.0 (Macintosh; Intel Mac OS X 10_15_7)"で本記事執筆時点に取得し、HTMLからテキストを抽出したうえで本文を通読している。NRI原文について「49%」「66%」以外のパーセント表記が存在するかどうかは機械的な文字列検索で確認し、低代替リスト100件のうち「経営コンサルタント」「中小企業診断士」を含む職業名は目視で確認した。また、NRIの現行サイト(www.nri.com/jp/news/2015/151202_1.aspx)が302リダイレクトで現在は読めなくなっていることも、curl -sILで確認済みである。

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