2026年8月28日 金曜日
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研究· 約15

フリーライターは、放送記者や作詞家と同じ列にいた──野村総研2015年リスト100職業を原文で数える

「ライターはAIで消える」という言説の震源とされる野村総合研究所×オックスフォード大学の2015年12月2日プレスリリースを、Wayback Machine経由で原文にあたった。代替可能性が「低い」100職業(50音順)を実際に数えると、フリーライターは作詞家・作曲家・雑誌編集者・シナリオライター・放送記者と同じ側に実名で並んでいる。ただし2015年・生成AI以前の推計であり、2026年に語られる通説とは前提が異なる。

フリーライターは、放送記者や作詞家と同じ列にいた──野村総研2015年リスト100職業を原文で数える
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「AIでライターの仕事はなくなる」という言い回しを、2026年8月の時点でもよく見かける。この言説がしばしば引き合いに出す震源のひとつが、野村総合研究所(NRI)とオックスフォード大学の共同研究(2015年)だ。ただしそのページは今、野村総研の公式サイトから消えている。Wayback Machineで原文を開き、「代替可能性が低い100職業」を実際に数えてみたところ、フリーライターはそのリストに実名で載っていた。しかも隣り合うのは、放送記者、雑誌編集者、シナリオライター、作詞家、作曲家、コピーライター──書き手・作り手系の職業が、リストの中で固まって並んでいる。

  • 野村総研とオックスフォード大の共同研究(2015年12月2日発表)は、日本の職業601種のうち「代替可能性が低い100種」を実名で公表している。原文をWayback Machine(web.archive.org)経由で取得し確認したところ、フリーライターはこの低リスク側の100職業に含まれていた
  • 同じリストの中で、コピーライター・作詞家・作曲家・雑誌編集者は5職業のうち4つが連続して並び、フリーライターの4つ後(間に3職業)には放送記者が続く。書き手・作り手系の職業がリスト内で固まっている
  • ただしこれは2015年・生成AI登場前の「技術的代替可能性」(66%以上の確率で業務全てをコンピューターが代替できるか)の推計。NRI自身が原文で「実際に代替されるかどうかは、労働需給を含めた社会環境要因の影響も大きい」「本試算においてそれらの社会環境要因は考慮していません」と明記しており、この記事は2026年時点の実態には答えていない

消えていたページを、Wayback Machineで開く

野村総研の公式サイトで https://www.nri.com/jp/news/2015/151202_1.aspx に直接アクセスすると、2026年8月27日の時点では一覧ページ(https://www.nri.com/jp/news)へ転送される。当該のプレスリリースは、少なくとも今アクセスできる場所には残っていない。そこでWayback Machineの保存版(2018年8月29日キャプチャ)をcurlで取得した。タイトルは以下の通りで、内容も文末の担当者名(若尾、清水)や電話番号まで含めて、NRI公式サイトの体裁と一致している。

日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に | 野村総合研究所(NRI)

本文の冒頭は、こう書かれている。

株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役会長兼社長:嶋本 正、以下「NRI」)は、英オックスフォード大学のマイケル A. オズボーン准教授およびカール・ベネディクト・フレイ博士1との共同研究により、国内601種類の職業2について、それぞれ人工知能やロボット等で代替される確率を試算しました。この結果、10~20年後に、日本の労働人口の約49%が就いている職業において、それらに代替することが可能との推計結果が得られています。

ネット上で単独で引用されがちな「49%」という数字は、ここが出どころだ。ただし原文には、その49%が何を意味するかについての注記も付いている。

その結果、従事する一人の業務全てを、高い確率(66%以上)でコンピューターが代わりに遂行できる(技術的に人工知能やロボット等で代替できる)職種に就業している人数を推計し、それが就業者数全体に占める割合を算出しています。あくまで、コンピューターによる技術的な代替可能性であり、実際に代替されるかどうかは、労働需給を含めた社会環境要因の影響も大きいと想定されますが、本試算においてそれらの社会環境要因は考慮していません。

つまりこの49%は「実際にAIに置き換わった/置き換わる予定の割合」ではなく、「業務全体を66%以上の確率でコンピューターが技術的に代替できる職業に就いている人の割合」という、かなり限定された定義の数字だ。社会環境要因(労働需給など)は明示的に「考慮していません」と書かれている。

「低い」100職業を数えると、書き手系がひとかたまりで並ぶ

原文の後半には、「代替可能性が高い100種の職業」と「代替可能性が低い100種の職業」がそれぞれ50音順で実名掲載されている。見出しの原文はこうだ。

人工知能やロボット等による代替可能性が低い100種の職業(50音順、並びは代替可能性確率とは無関係) ※職業名は、労働政策研究・研修機構「職務構造に関する研究」に対応

このリストを、見出しの数え上げではなく職業名を1件ずつテキストに書き出して数えたところ、ちょうど100件だった(自己申告ではなく実数として確認)。フリーライターはこの100件の中に実名で入っている。周辺の並びを抜き出すと次のようになる(50音順なので近い読みの職業が連続する構造)。

…コピーライター/作業療法士/作詞家/作曲家/雑誌編集者/産業カウンセラー…

…バーテンダー/俳優/はり師・きゅう師/美容師/評論家/ファッションデザイナー/フードコーディネーター/舞台演出家/舞台美術家/フラワーデザイナーフリーライター/プロデューサー/ペンション経営者/保育士/放送記者/放送ディレクター/報道カメラマン…

コピーライター・作詞家・作曲家・雑誌編集者は、間に作業療法士を1件挟むだけで4つが連続している。シナリオライターも同じブロックの少し後に続く。フリーライターの4つ後、間にプロデューサー・ペンション経営者・保育士の3職業を挟んで放送記者が並ぶ。これは50音順という機械的な並びが生んだ偶然の隣接であって、NRIが「書き手だから固めた」わけではない。ただし結果として、文章・言葉を扱う職業のかなりの部分が、この「低い」側にまとまって実名を連ねている。

NRIは、なぜこうした傾向が出たかについても原文で説明している。

この研究結果において、芸術、歴史学・考古学、哲学・神学など抽象的な概念を整理・創出するための知識が要求される職業、他者との協調や、他者の理解、説得、ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業は、人工知能等での代替は難しい傾向があります。一方、必ずしも特別の知識・スキルが求められない職業に加え、データの分析や秩序的・体系的操作が求められる職業については、人工知能等で代替できる可能性が高い傾向が確認できました。

創造性や協調性を要する業務は代替が難しい、という傾向の説明であり、フリーライターや作詞家・作曲家がこの側に位置づけられたこと自体には、少なくとも原文レベルでの一貫した理屈がある。

同じ49%を引用しながら、リストの中身までは開かれていない

では「ライターはAIで消える」という言説の側は、実際どこで、どう書かれているのか。筆者が確認できた範囲で、2026年8月時点の記事を3本挙げる。

ひとつは「SHIFT AI TIMES」(AI研修サービスを運営するSHIFT AIのオウンドメディア、2026年8月26日更新)の記事だ。タイトルからしてこうなっている。

AIでライターはなくなる?職種別比較やなくならないライターの特徴を解説

本文の書き出しは、次のように「ライターはAIで消えるのでは」という不安を前提として置く。

「AIの普及によりライターの仕事がなくなるのでは?」 のように将来を不安視するライターの声を耳にする機会が増えました。

そのうえで結論として、次のように書く。

【結論】情報だけ書くライターはAIによってなくなる 結論を先にいえば、 既存の情報を収集し文章にまとめるだけのライターはAIによって仕事を奪われる でしょう。

念のため補足すると、この記事は職種別に「なくなる確率」を高・中・低で分けており、「脚本家」「小説家」「インタビューライター」は低リスク側に置いている。つまり本文をよく読めば、NRIの「創造性が要る仕事は残る」という論旨とそれほど遠くない整理をしている。ただし記事のタイトルと導入部が掲げる問いかけ自体が「AIでライターはなくなる?」であり、これが検索・SNSで流通する見出しの形だ。

もう1本、「AI鬼管理」というサイトの記事(2026年4月25日公開・8月14日更新)も、ほぼ同じ導入を使っている。

「AIが進化したら、ライターの仕事はなくなるのでは?」——2026年現在、この不安を抱えているライターは少なくありません。

さらに興味深いのが、「AIインサイト研究所」というサイトの記事(2026年5月19日公開・8月22日更新)だ。この記事は「AIでなくなる仕事ランキング」でライターを8位に置いているが、その根拠づけの冒頭で、NRIの同じ数字をこう引用している。

「AIで仕事がなくなる」という話は、嘘でも誇張でもなく、データに裏付けられた現実です。 2013年にオックスフォード大学のオズボーン准教授らが「米国の雇用の約47%が自動化リスクにさらされている」と発表し、2015年には野村総研との共同研究で「日本の労働人口の49%がAIに代替可能」という試算が出されました。

つまりこの記事は、NRIの「49%」という数字を「AIで仕事がなくなるのは現実だ」という主張の裏付けとして引用しながら、同じNRIの発表に含まれる「代替可能性が低い100職業」のリスト(フリーライターが載っている側)には触れていない。ライターを8位に置いた根拠は「複数の研究機関・専門家の見解」という別立ての基準であり、NRIのリストそのものをライター順位の根拠にしているわけではない。したがってこの記事が「NRIのリストを読み違えた」とまでは言えない。ただし、震源データの片方(49%という総論の数字)だけが引用され、同じ発表のもう片方(フリーライターを含む低リスク側の実名リスト)は引用も参照もされていない、という非対称は、確認できた範囲で事実として存在する。

NRIの判定そのものが正しいかは検証していない

原文に当たって確認できたのは、あくまで「2015年のNRIの発表文に、フリーライターの実名が低リスク側リストに載っている」という一点だ。ここから先に踏み込めないことを、以下に列挙する。

  1. NRIの判定が正しいかどうかは、この記事では検証していない。 Frey and Osborne型の職業代替可能性推計(職業をタスクに分解し確率化する手法)そのものの妥当性や、後年の学術的な評価・批判については、今回のリサーチで一次資料を確認できていない。原文を読めたことと、その中身が正しいことは別の話だ。
  2. 2015年の判定は、生成AI以前のものである。 ChatGPTの一般公開は2022年11月であり、NRIの試算・データはそれより7年前、対象となった601職業の分類も2012年のJILPT調査に基づく。2015年時点の「技術的代替可能性」の推計が、2026年の生成AI普及後のライター需要にどこまで当てはまるかは、この記事のデータ単独では判定できない。
  3. 「原典ではこう書いてあった」は「だから通説が間違っている」を意味しない。 SHIFT AI等の3記事は2026年時点の生成AI普及後の実態を論じており、NRIは2015年時点の技術的可能性の話をしている。両者は同じ時点・同じ問いに答えているわけではなく、単純な「震源と真逆」として片付けることはできない。実際、SHIFT AIの記事本文は職種を細分化しており、NRIの「創造性が要る仕事は残る」という論旨とそこまで矛盾しない整理もしている。
  4. 日本のフリーライターの実態データ(求人数・単価の推移など)は、今回未取得。 2015年から2026年にかけて、日本語圏でフリーライターという職業の需要・収入が実際にどう変化したかを示す一次統計は、このリサーチでは確認していない。「震源データでは低リスクだった」ことと「実際に仕事が減っていない」ことは別の主張であり、後者はこの記事では立証していない。
  5. 通説側として確認できたのは3本のオウンドメディア記事にとどまる。 いずれも生成AI関連の教育・コンサルティング事業を営む企業のコンテンツマーケティング記事であり、集客目的の色合いがある。これが「世間の通説」をどこまで代表しているかは筆者の観測の域を出ず、断定はできない。

出典と検証方法

  • NRIプレスリリース原文は、https://www.nri.com/jp/news/2015/151202_1.aspx へ2026年8月27日にアクセスしたところ一覧ページへ転送されることを確認したうえで、Wayback Machineの保存版(web.archive.org、2018年8月29日キャプチャ)をcurlで取得し、本文全文をテキスト化して読んだ。引用箇所はすべてこのテキストからの直接引用であり、要約や意訳は行っていない。
  • 「代替可能性が低い100種の職業」は、見出しの自己申告(「100種」という表記)を鵜呑みにせず、リスト中の職業名を1件ずつ数えて100件であることを確認した。
  • 通説側の3記事(SHIFT AI TIMES、AI鬼管理、AIインサイト研究所)は、いずれもcurlで本文を取得し、公開日・更新日はページ内のメタデータ(datePublished/dateModified)で確認した。
  • 本記事はAIの支援で下書きし、引用文はすべて一次ソースの原文と突き合わせて確認した。NRIの判定の妥当性、および2026年時点のライター職の需給を保証するものではない。
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