有料道路の料金所は、係員がいなくなる方向に進んでいる──NEXCO発表を年ごとに数える
野村総研2015年リストで「代替可能性が高い」側に分類されていた有料道路料金収受員。NEXCO中日本・西日本の公式ニュースリリースを年ごとに数えると、ETC専用料金所は2023年春11箇所→2024年春23箇所→2025年春は西日本だけで32箇所→2026年春は中日本だけで35箇所と、確認できる範囲では拡大が続いている。

野村総研(NRI)とオックスフォード大学の2015年リストで「代替可能性が高い100種の職業」に実名で載っている職業のひとつに、有料道路料金収受員がある。当時から10年が経った今、実際に何が起きているのかを、NEXCO(高速道路会社)が毎年公表している「ETC専用料金所」化のニュースリリースをcurlで取得し、年ごとの箇所数を数える形で確認した。
3行まとめ
- NRI原文の「代替可能性が高い100種の職業」リストに、有料道路料金収受員は実名で含まれている
- NEXCO各社は毎年、有人ブースを減らす「ETC専用料金所」化を進めており、今回確認できた範囲だけでもNEXCO中日本は2026年春に35箇所、NEXCO西日本は2025年春に32箇所を新たにETC専用化している
- ただし「ETC専用化」は完全な無人化ではない。ETCを積んでいない車のために「サポートレーン」が残り、NEXCO公式サイトは「係員などの指示にしたがってください」と案内しており、係員自体がゼロになったとは書かれていない
NRI原文で確認する
別記事で確認した通り、NRI原文の「代替可能性が高い100種の職業」は50音順のリストで、パーセンテージは示されていない。このリストを実際に読むと「有料道路料金収受員」という職業名がそのまま載っている。判定の根拠になった具体的な確率や理由は、原文には記載がない。
NEXCOの発表を年ごとに数える
NRIの2015年判定そのものに対する日本側の答え合わせ(有料道路料金収受員が実際に何人減ったかという統計)は、今回のセッションでは取得できていない。代わりに、NEXCO各社が定期的に発表している「ETC専用料金所」化のニュースリリースをcurlで取得し、確認できた範囲の年ごとの箇所数を並べた。
それぞれのリリース本文の冒頭には公表日が入っており、curlで取得した本文から実際の公表日・箇所数・運用時期を突き合わせると次のようになる。
| リリース公表日 | 発表元 | 新規ETC専用化 | 運用開始時期 |
|---|---|---|---|
| 2022年11月30日(令和4年) | NEXCO西日本 | 11料金所 | 2023年春 |
| 2024年2月5日 | NEXCO中日本 | 23料金所 | 2024年春 |
| 2024年12月13日(令和6年) | NEXCO西日本 | 32料金所 | 2025年2月20日〜3月17日(順次) |
| 2026年1月22日 | NEXCO中日本 | 35料金所 | 2026年3月9日〜5月12日(順次) |
2026年春のNEXCO中日本リリースを実際に開くと、対象となる料金所・ICの名称と運用開始の年月日・時刻が35件すべて個別に一覧化されている(例:一宮木曽川IC、2026年4月10日10時運用開始、など)。1件ずつ日時まで指定して切り替えていく、実務的な発表であることが確認できた。
2025年春のNEXCO西日本リリースも同様に、32料金所すべての名称と地域が一覧化されている。地域別に数えると次の内訳になる(curlで取得した本文を実際に1件ずつ数えて合計32と一致することを確認した)。
| 地域 | 新規ETC専用化の料金所数 | 運用開始日 |
|---|---|---|
| 関西 | 14 | 2025年3月4日〜3月12日 |
| 中国 | 8 | 2025年2月20日 |
| 四国 | 5 | 2025年2月27日 |
| 九州 | 5 | 2025年3月17日 |
| 合計 | 32 | ― |
なお、この4件(2023〜2026年)は今回のセッションで確認できた範囲にとどまり、NEXCO東日本・首都高速道路・阪神高速道路など他の高速道路会社の同種の発表は、今回は個別に取得していない。全国の料金所全体でどれだけのペースでETC専用化が進んでいるかという集計値は、この記事では示せない。
この政策はいつ、誰が始めたのか
2023年春のNEXCO西日本リリース本文を実際に読むと、この11料金所が「NEXCO西日本管内で初めてのETC専用料金所」だったと明記されている。そしてその根拠として、リリース本文自体が国土交通省の文書を名指しで引用している。
curlで当該のリンク先(国土交通省の報道発表資料ページ)を実際に開いて確認すると、2020年9月25日、社会資本整備審議会道路分科会国土幹線道路部会が『「持続可能な国土幹線道路システムの構築に向けた取組」中間とりまとめ』を公表したことが分かる。この中間とりまとめを踏まえて、同年12月17日に国土交通省と高速道路会社6社が「ETC専用化等のロードマップ」を公表し、料金所のキャッシュレス化・タッチレス化を計画的に進めることにした、とNEXCO西日本のリリースは説明している。
このロードマップのPDF(NEXCO西日本のリリースページに添付されているもの)を実際にcurlで取得しpdftotextでテキスト化すると、2020年12月1日時点でNEXCO西日本管内にあった非ETC専用の課金料金所数と、地域ごとの完成目標が数値で書かれていた。
| 区分 | 2020年12月1日時点の非ETC専用料金所数 | 完成目標 |
|---|---|---|
| 都市部(近畿圏) | 94 | 5年後概成(都市部)、10年後概成(地方部を含めて) |
| 地方部 | 339 | 10年後概成(2030年度頃) |
つまり、ETC専用化そのものの起点は2020年の新型コロナウイルス対応をめぐる国土幹線道路部会の議論であり、「AIやロボットで代替する」という文脈で始まった施策ではない。NRIの2015年リストとNEXCOのETC専用化は、そもそも出発点が別の話だという点は、この一次資料からはっきり確認できる。
もうひとつ、4件のリリース本文を突き合わせて気づいたのが、案内文言の違いだ。文言は会社ごとに違っていた。2023年春(西日本)のリリースは「ETC車載器を搭載していない車両のご利用はできません」。2024年春(中日本)は同じ意味だが表現が違い、実際の文言は「ETC車載器を搭載していない車両はご利用になれません。」だった(2026年9月4日に本文を再取得して確認)。一方、2026年春(中日本)のリリースにはこの「ご利用はできません」という一文がなく、サポートレーンへの案内のみになっている。4件だけからこの違いが意図的な方針転換なのか、単なる文面の簡略化なのかは判断できない。
「係員がいなくなる」わけではない
ETC専用料金所化は、有人ブースでの現金・クレジットカード収受業務をなくす取り組みだが、NEXCO中日本の公式リリースにはこう書かれている。
「ETCがご利用になれない状態(ETC車載器未設置、ETCカード未挿入など)でETC専用料金所をご利用された場合は後退せずに、『ETC/サポート』または『サポート』と表示されたレーンを通行し、一旦停止して係員などの指示にしたがってください」
つまり、ETC専用化後も「サポートレーン」という形で係員の対応窓口自体は残る設計になっている。有料道路料金収受員という職種の総数がどれだけ減っているかは、料金所の数だけでは測れず、1箇所あたりの配置人数やサポートレーンの運用体制まで見ないと正確には分からない。今回のセッションでは、そこまでの人員配置データは取得できていない。
料金収受員が実際に何人減ったかは確認できていない
まず、有料道路料金収受員という職種全体の就業者数が、この10年で実際に何人・何%減ったかは、この記事では確認できていない。NEXCO各社の有価証券報告書や決算資料に人員数の記載がある可能性はあるが、今回は取得していない。
次に、2023年春・2024年春・2025年春・2026年春の4件は、いずれもcurlでリリース本文そのものを開いて箇所数を確認している。ただしNEXCO東日本・首都高速道路・阪神高速道路の同時期の発表は今回は取得しておらず、この4件だけで全国のETC専用化ペースを代表させることはできない。
また、「ETC専用化等のロードマップ」のPDFは、NEXCO西日本のリリースに添付されていた抜粋版で、都市部94箇所・地方部339箇所という数字もNEXCO西日本管内のものだけである。ロードマップ自体は国土交通省と高速道路会社6社の連名で公表されているが、NEXCO東日本・中日本・首都高速道路・阪神高速道路・本州四国連絡高速道路それぞれの数値目標は、今回は取得できていない。
また、NEXCO東日本・首都高速道路・阪神高速道路の状況、および有人料金所そのものが最初から存在しない地方の一部道路の状況は、今回のセッションでは調べていない。全国一律のペースで進んでいるとは限らない。
最後に、ETC専用化が進む理由としてNEXCOが公式に挙げているのは「キャッシュレス化・タッチレス化の推進」「柔軟な料金設定」「渋滞緩和」「維持管理・運営コストの削減」であり、「AIによる代替」という表現は今回確認したリリース本文には出てこない。この記事のタイトルにある「係員がいなくなる方向」という表現は、料金所の無人化という観察に基づくものであり、NEXCO側が「AI・自動化のため」と明言しているわけではない点は明記しておく。
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出典・参照資料
- 二次資料日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に(野村総合研究所プレスリリース・2015年12月2日/Wayback Machine保存版) ↗
- 二次資料2026年春から35料金所がETC専用料金所になります(NEXCO中日本ニュースリリース) ↗
- 二次資料2025年春から32料金所がETC専用料金所になります(NEXCO西日本ニュースリリース) ↗
- 二次資料2024年春から23料金所がETC専用料金所になります(NEXCO中日本ニュースリリース) ↗
- 二次資料2023年春から11料金所がETC専用料金所になります(NEXCO西日本ニュースリリース) ↗
- 一次資料「持続可能な国土幹線道路システムの構築に向けた取組」中間とりまとめの公表について(国土交通省・令和2年9月25日) ↗
- 二次資料ETC専用化等のロードマップについて(令和2年12月17日公表資料抜粋・NEXCO西日本掲載PDF) ↗
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