2026年9月5日 土曜日
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「空間知能」とは何か──Fei-Fei Liが掲げるAIの次のフロンティア

ImageNetの生みの親として知られるFei-Fei Li氏は2025年11月10日の論説で「LLMは雄弁だが経験のない“暗闇の言葉巧者”に過ぎない」とし、3次元空間を理解・生成する『空間知能』こそAIの次のフロンティアだと主張した。同氏が共同創業したWorld Labsは2025年11月にマルチモーダル世界モデル『Marble』を一般公開し、2026年7月にはロボティクス企業SceniXを買収している。

「空間知能」とは何か──Fei-Fei Liが掲げるAIの次のフロンティア
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目次

3行まとめ

  1. ImageNetの構築で知られるスタンフォード大学教授Fei-Fei Li氏は2025年11月10日付の論説で、大規模言語モデル(LLM)を「雄弁だが経験がなく、知識はあるが現実に根ざしていない“暗闇の言葉巧者”」と表現し、3次元空間を知覚・推論・行動できる「空間知能(Spatial Intelligence)」こそAIの次のフロンティアだと主張した。ただしWorld Labs公式ブログを遡ると、Li氏がこの語を使った最初の投稿は2024年5月16日で、2025年11月の論説はこの主張の集大成にあたる。
  2. Li氏が共同創業者を務めるWorld Labsは、2025年11月12日にマルチモーダル世界モデル「Marble」を一般公開し、2026年1月21日にはテキスト・画像・動画から探索可能な3D世界を生成する「World API」を発表した。
  3. 同社は2026年7月21日にロボティクス企業SceniXを買収したと発表しており、事業の軸をコンテンツ生成からロボット学習・実世界応用へと広げつつある。

「言葉巧者」であることの限界

Fei-Fei Li氏の論説は、現在のAIが到達した地点を率直に評価するところから始まる。生成AIモデル(LLMなど)は研究室から日常生活へと広がり、一貫した文章・大量のコード・写実的な画像・短い動画クリップまで生成できるようになった。「AIが世界を変えるかどうかはもはや問いではない。どんな合理的な定義に照らしても、AIは既に世界を変えている」と同氏は書く。

しかしその一方で、自律ロボットのビジョンは「興味深いが投機的なもの」にとどまり、創薬・新材料発見・素粒子物理学のような分野での研究の劇的な加速も「大部分は未達成」だとする。同氏はこの限界の理由を、人間の知能の進化をたどることで説明する。動物が巣を作ったり子を育てたり言語でコミュニケーションしたりするよりずっと前から、「外界から情報を得る」という単純な知覚の働きが、知覚と行動を結ぶ橋として進化的な知能の土台になった、という論旨だ。車を駐車する時にバンパーと縁石の隙間を想像する、放られた鍵を空中でつかむ、混雑した歩道を衝突せずに歩く――こうした日常の動作はすべて「空間知能」に支えられているとLi氏は説明する。

World Labsの歩み

Li氏は、この「視覚・空間知能」の追求こそが自身のキャリアを貫く北極星だったと振り返る。大規模な視覚学習・ベンチマークデータセットImageNetの構築(現代AIの誕生を可能にした3要素の一つとされる)も、スタンフォードの自身の研究室がこの10年間コンピュータビジョンとロボット学習を組み合わせてきたことも、そして共同創業者のJustin Johnson氏・Christoph Lassner氏・Ben Mildenhall氏とともに1年以上前にWorld Labsを設立したのも、すべてこの空間知能を実現するためだったとしている。

追記(2026年9月4日):本記事が更新履歴を確認したのは8月27日だが、その後の2026年9月1日にWorld Labsは新しい世界モデル「Atlas: A World Model for Spatial Intelligence」を公開している(公式ブログの表記は「Introducing Atlas, our new omni world model for spatial intelligence」)。下のタイムラインは8月27日時点までのもので、Atlasは含まれていない。

World Labs公式ブログの更新履歴を一件ずつ全て確認したところ(2026年8月27日時点でcurl確認)、当初把握していたより2年近く古い時点から「空間知能」という語が使われていたことが分かった。

日付 タイトル 内容
2024年5月16日 With Spatial Intelligence, AI Will Understand the Real World Li氏が「空間知能」という語を掲げた最初期の投稿
2024年9月20日 A New Frontier 空間・世界モデル駆動の体験について
2024年12月2日 Generating Worlds ブラウザ上で探索できる永続的3D世界の初期進捗
2025年9月16日 Generating Bigger and Better Worlds より大規模・高精細な3D世界生成のブレークスルー
2025年10月16日 RTFM: A Real-Time Frame Model インタラクションに応じてリアルタイムに映像生成する世界モデルのプレビュー
2025年10月28日 Content 3.0 in the GenAI Era 共同創業者Christoph Lassner氏による、動的に進化するキャラクター・世界という新しいメディア論
2025年11月10日 From Words to Worlds Li氏の論説(本記事の主題)
2025年11月12日 Marble: A Multimodal World Model マルチモーダル世界モデル「Marble」を一般公開
2026年1月21日 Announcing the World API テキスト・画像・動画から探索可能な3D世界を生成する公開API
2026年2月18日 World Labs Announces New Funding 新規資金調達(金額等の詳細は本記事では未確認)
2026年3月3日 3D as code 3Dが空間の共通インターフェースになるという論説
2026年4月14日 Streaming 3DGS worlds on the web Spark 2.0によるガウシアンスプラッティングのストリーミング配信技術
2026年6月3日 A Functional Taxonomy of World Models レンダラー・シミュレーター・プランナーという世界モデルの機能分類
2026年7月21日 World Labs Acquires SceniX ロボティクス企業SceniXの買収を発表
2026年7月28日 The Next Frontier of AI Is Spatial Intelligence / Building Worlds That Train Robots a16zのMartin Casado氏との対談、Real-to-sim-to-real(R2S2R)によるロボット訓練の解説

このタイムラインからは、Li氏の「空間知能」という主張自体は2024年5月から一貫して続いていたこと、そして2025年後半のMarble公開を境に、World Labsが「3D世界の生成・探索」というコンテンツ生成寄りの立ち位置から、2026年に入ってロボティクス・実世界応用へと事業の重心を広げていることが読み取れる。

Marbleが具体的に何をするか

Marbleの発表ブログ本文を直接確認すると、一般公開時点(2025年11月12日)で拡張された機能が具体的に書かれていた。テキスト・画像・動画・大まかな3Dレイアウトのいずれからでも3D世界を生成でき、生成後は2D・3Dの両方でインタラクティブに編集・拡張・結合ができる。出力形式はGaussian Splat・メッシュ・動画としてエクスポート可能だとされる。同時に「Marble Labs」というクリエイター向けハブも立ち上げられており、ゲーム・VFX・デザイン・ロボティクスなど分野横断の事例集・チュートリアル・ドキュメントを提供する場と位置づけられている。

SceniX買収の金額・条件はブログ本文でも明かされていない

SceniX買収の発表ブログ本文(2026年7月21日付)も直接確認したが、買収金額・SceniXの従業員数・具体的な技術内容には一切触れられていなかった。ブログは「SceniXが築いてきた初期の技術、それが今何をできるか、なぜ重要か、これからどこへ向かうのかは近日中に詳しく共有する」と書くにとどめている。つまり、この記事がSceniX買収の条件に触れていないのは確認不足ではなく、World Labs公式の発表自体がこの時点で条件を公開していないためだ。

なぜ「空間」が次のインターフェースなのか

論説のタイトルが示す通り、Li氏の主張の核は「言葉(Words)から世界(Worlds)へ」という比喩に集約される。テキストが人間とソフトウェアをつなぐ共通インターフェースになったのと同じように、3次元空間が人間とAIシステムをつなぐ共通インターフェースになる、というのがWorld Labsの掲げる方向性だ。論説は、この空間知能の獲得が創造性・身体性を持つ知能(embodied intelligence)・人類の進歩全般に影響を及ぼすとしている。

RTFM・World APIなど個別記事の技術本文はまだ読めていない

  • 本記事はFei-Fei Li氏のSubstack論説、World Labs公式ブログの更新履歴一覧、Marble公開記事、SceniX買収記事を2026年8月27日にcurlで取得した内容にもとづく。上記タイムライン表のうち、RTFM・World API・Spark 2.0・A Functional Taxonomy of World Modelsなど、Marble/SceniX以外の個別記事は見出しと概要の範囲での紹介にとどめており、本文までは読み込んでいない
  • 「空間知能」という語自体は、Li氏やWorld Labs以外の研究者・企業も独自の文脈で使っている可能性があるが、本記事ではWorld Labs関連の一次情報のみを扱っている
  • 日本語圏でのこのテーマの認知度・報道状況は今回確認していない
  • 2026年2月18日付の資金調達発表について、調達額・投資家名は本記事では確認していない(見出し・概要のみを把握)

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