飲食店・外食業のAI活用──予約・シフト・需要予測の実際【2026年】
ホットペッパーグルメ外食総研の調査(2026年3月調査、有効回答1,929件)によると、飲食店でデジタルツールを導入済み・検討中の合計は63.6%で、直近5回の調査で横ばいが続く。予約管理ツールの導入・検討合計は26.3%、シフト・勤怠管理システムは22.0%にとどまる。AI需要予測で発注業務の90%削減を見込む事例や、AI電話予約で20万人の予約を受け付けた事例など、一次資料で確認できた範囲を整理した。

目次
3行まとめ
- ホットペッパーグルメ外食総研の調査(2026年3月調査、経営者・役員899件対象)によれば、飲食店でデジタルツールを導入済み・検討中の合計は63.6%(前回差-2.2pt)で、直近5回の調査(2022〜2026年)で大きな変化は見られない
- ツール別では予約管理ツールの導入・検討合計が26.3%(前回差+2.9pt)、シフト・勤怠管理システムは22.0%(前回差+0.4pt)と、キャッシュレス決済(49.7%)に比べるとまだ普及の途上にある
- AI需要予測型自動発注サービス「HANZO」を導入したラーメンチェーン「どうとんぼり神座」(84店舗)は、年間15,000時間かかっていた発注業務を90%削減する効果を見込むと発表している
なぜ「飲食店×AI」なのか──人手不足の解消だけが唯一増加した経営課題
ホットペッパーグルメ外食総研(株式会社リクルート)は、全国47都道府県の飲食店経営者・役員・従業員を対象に、デジタルツールの導入意向・導入実態を毎年3月に調査している。2026年3月調査(有効回答数1,929件、うち経営者・役員899件)によると、現在抱えている経営課題(複数回答)のトップは「売上UP」36.3%(前回差-9.7pt)、2位は「食材費の削減/最適化」25.6%(同-8.6pt)だった(同社調査)。
注目すべきは、前回調査からの増加幅を見ると、「人手不足の解消」(22.0%)だけが唯一プラス(+1.6pt)だったという点だ。売上や物価高騰への課題意識が緩和傾向にある一方、人手不足への課題感だけは高まっている。同調査ではデジタルツール導入に興味・関心を持ったきっかけとしても、「人材不足」が38.8%(前回差+3.3pt)で2位に入っており、コスト高騰要因(食材費の高騰34.4%、光熱費の高騰28.4%)がいずれも順位を下げる中で人材関連の課題感だけが底堅い(同調査)。
外食産業の規模感としては、一般社団法人日本フードサービス協会が加盟230社・37,231店舗(全店データ)を対象に毎月実施する「外食産業市場動向調査」があり、2026年6月度は売上高が前年同月比103.3%(客数100.8%、客単価102.4%)だった(同協会、2026年7月27日発表)。台風の接近や土日の少ない曜日回りで客数は伸び悩んだが、客単価上昇と店舗数増でカバーした格好だ。多店舗・多業態にわたる労働集約型の産業であることが、この2つの調査の母数(37,231店舗、1,929件の個人回答)からもうかがえる。
全体の導入状況──「導入済み+検討中」は63.6%で横ばい
ホットペッパーグルメ外食総研の調査では、2022年3月調査から2026年3月調査までの5回にわたり、デジタルツールの導入・検討状況を追跡している。
| 調査時期 | 導入済み | 導入検討中 | 導入済み+検討中の合計 |
|---|---|---|---|
| 2022年3月調査(n=1,141) | 55.6% | 10.4% | 66.0% |
| 2023年3月調査(n=1,085) | 57.7% | 10.0% | 67.6% |
| 2024年3月調査(n=1,029) | 58.3% | 11.2% | 69.5% |
| 2025年3月調査(n=813) | 56.5% | 9.3% | 65.8% |
| 2026年3月調査(n=899) | 56.5% | 7.1% | 63.6% |
出典:ホットペッパーグルメ外食総研「飲食店DX調査(2026年3月調査)」
同調査は「デジタルツール」全般(POSレジ、キャッシュレス決済、予約管理、シフト・勤怠管理等を含む)を対象にしたもので、AI機能に限定した調査ではない点には注意が必要だ。ツール別(2026年3月調査、導入済み+検討中の合計)では、キャッシュレス決済が49.7%(前回差-1.1pt)で単体トップ、カテゴリ別では「店内オペレーション管理」52.6%(同-0.9pt)、「予約・集客管理」47.8%(同+1.6pt)が上位2カテゴリだった(同調査)。
本記事のテーマである予約・シフト・需要予測に関連するツールの導入・検討状況は次の通り。
| ツール | 導入済み+検討中(2026年3月) | 前回差 |
|---|---|---|
| 予約管理ツール | 26.3% | +2.9pt |
| シフト、勤怠管理システム | 22.0% | +0.4pt |
| オンライン発注システム | 30.1% | -0.7pt |
| 人事労務管理 | 26.8% | +2.3pt |
出典:同調査
いずれも、単体トップのキャッシュレス決済(49.7%)や「自社ホームページの制作/ローカルビジネス登録サービスの活用」(37.2%、前回差+3.2ptで増加幅最大)に比べると、まだ普及の途上にある。
需要予測・発注領域──AIで発注業務を90%削減へ(見込み)
需要予測AIによる自動発注の具体例として、ラーメンレストラン「どうとんぼり神座」を展開する株式会社理想実業(大阪市)は2024年10月1日、株式会社Goalsが提供する「HANZO 自動発注」を84店舗で導入した(同社プレスリリース)。天候や直近の注文傾向を加味した売上予測をAIが店舗ごとに算出し、191品目の食材発注量を自動で決定する仕組みで、同社は「年間15,000時間以上かかっていた業務を90%削減する効果が見込まれ」るとしている(同社発表)。
ここで重要なのは、「90%削減」は導入時点でのプレスリリースに記載された見込み効果であり、実績として事後検証された数字ではないという点だ。プレスリリースでは、経験の浅いスタッフでも対応できるようになる効果や、発注ミスによる食材ロス軽減への貢献も挙げられているが、廃棄ロス削減の具体的な数値は記載されていない。
予約領域──AI電話応対で20万人分の予約を受付(トレタの例)
飲食店予約サービスを手がける株式会社トレタは、電話予約をAIが自動応対する「トレタ予約番」(2021年4月提供開始)と、留守番電話特化型の「トレタ AIるすでん」(2022年6月提供開始)について、サービス開始から1年8ヶ月で予約受付人数が20万人を突破したと2022年12月21日に発表した(同社プレスリリース)。
同社の試算では、両サービスによって約7億4,513万6,917円の売上に貢献しているという(同社独自の算出方法による試算)。個別の導入事例としては、都内5店舗を展開する外食法人が営業時間外の電話対応をトレタ予約番に切り替えたところ、2020年12月の1ヶ月間で1,168人の予約を受け付け、人件費をかけずに約600万円の売上を獲得した例が紹介されている。また、関西エリア7店舗での実証実験(2021年3月1日〜14日の18〜20時)では、578件の電話のうち287件をAIが予約受付まで完了させ、残り262件のみを店舗に転送したという(同社発表)。
このプレスリリースは2022年12月時点のものであり、2026年時点での最新の利用者数や売上貢献額は本記事では確認できていない点に留意されたい。
シフト管理領域──生成AIでの本格参入は始まったばかり
シフト・勤怠管理システムは、ホットペッパーグルメ外食総研の調査では導入・検討合計22.0%(前回差+0.4pt)と、本記事で扱う3領域の中では最も普及率が低い。ただし2026年に入り、生成AIを活用したシフト作成支援サービスの発表が出てきている。
飲食店向け経営システムを手がける株式会社アルファクス・フード・システムは2026年6月24日、生成AIを活用したシフト作成支援SaaS「Timely生成AIシフト」の提供を開始したと発表した(同社プレスリリース)。従来の機械的な自動割当とは異なり、生成AIがスタッフのスキルや相性、急な変更希望などを文脈として理解し、店舗独自のルールを踏まえた最適なシフト案の構築を補助する機能で、外食産業向けに個人店から複数店舗チェーンまで月額サブスクリプション形式で提供するという(同社発表)。
このプレスリリースには、シフト作成にかかる時間の削減率など、定量的な導入効果の数字は記載されていない。生成AIによるシフト作成支援は2026年時点でまだ立ち上がったばかりの領域であり、実績データの蓄積はこれからという段階にあると見られる。
導入後の効果実感と、導入のハードル
ホットペッパーグルメ外食総研の調査では、デジタルツール導入済み店舗(全体n=508)に効果実感を尋ねている。全体では「売上UP」44.9%が最も高く、「顧客満足度UP」44.1%、「人手不足の解消」32.3%(前回差+4.4ptで増加)と続いた(同調査)。カテゴリ別に見ると「予約・集客管理」導入店では売上UPの効果実感が49.6%と、全カテゴリの中で最も高い。
一方、導入時のハードルとしては「ランニングコストが高い」33.1%が最多で、「活用スキルの問題」24.8%、「定着するまで時間がかかりそう」23.2%(前回差+1.4pt)と続く(同調査)。「過去に自店で導入して失敗した経験がある」も14.6%(前回差+3.2ptで最大の増加幅)あり、コストだけでなく現場での定着に対する懸念が導入の壁になっていることがうかがえる。
正直に書くと
- ホットペッパーグルメ外食総研の調査は「デジタルツール」全般を対象にしたものであり、AI機能に限定した調査ではない。予約管理ツールやシフト・勤怠管理システムの中にどれだけAI機能を含むものがあるかは、この調査単体では区別できない
- どうとんぼり神座のHANZO自動発注事例における「90%削減」は、2024年10月の導入時点でのプレスリリースに記載された見込み効果であり、事後に実績として検証・公表された数値ではない
- トレタの「20万人突破」「7億4,513万円の売上貢献」は2022年12月時点の発表であり、2026年時点の最新実績ではない。売上貢献額はトレタ独自の想定顧客単価データに基づく試算であり、第三者による検証は確認できていない
- Timely生成AIシフトなど、2026年に発表された生成AI活用のシフト作成支援サービスについては、時間削減率や導入店舗数といった定量的な効果データが、本記事執筆時点のプレスリリースでは公開されていない
- 日本フードサービス協会の市場動向調査は加盟230社・37,231店舗のデータであり、外食産業全体(協会非加盟の個人店・中小チェーンを含む)を完全に代表するものではない
- 本記事は公開されている一次資料・企業公式発表の範囲での整理であり、個別店舗の導入判断には各サービス提供企業への直接確認を推奨する
出典・参考
- ホットペッパーグルメ外食総研「飲食店DX調査(2026年3月調査)」Research Report(2026年7月8日)
- 日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査 2026年6月度 結果報告」(2026年7月27日)
- 株式会社理想実業「【どうとんぼり神座】AI需要予測型自動発注クラウドサービス『HANZO 自動発注』を10月1日より84店舗で導入開始」(PR TIMES、2024年10月8日)
- 株式会社トレタ「飲食店の電話予約をAIが自動で対応する『トレタ予約番』・『トレタ AIるすでん』サービス提供開始1年8ヶ月で、予約受付人数20万人突破!」(PR TIMES、2022年12月21日)
- 株式会社アルファクス・フード・システム「生成AI事業へ本格参入!シフト作成支援SaaS『Timely生成AIシフト』提供開始」(PR TIMES、2026年6月24日)
本記事は飲食店・外食業のAI活用に関する概況の整理であり、投資・導入の助言を構成するものではない。記載の数字は各出典の調査・発表時点のものであり、最新値と異なる場合がある。
出典・参照資料
- 一次資料飲食店DX調査(2026年3月調査)Research Report — 株式会社リクルート ホットペッパーグルメ外食総研 ↗
- 一次資料外食産業市場動向調査 2026年6月度 結果報告 — 一般社団法人日本フードサービス協会 ↗
- 一次資料【どうとんぼり神座】AI需要予測型自動発注クラウドサービス「HANZO 自動発注」を10月1日より84店舗で導入開始 — 株式会社理想実業(PR TIMES) ↗
- 一次資料飲食店の電話予約をAIが自動で対応する「トレタ予約番」・「トレタ AIるすでん」予約受付人数20万人突破 — 株式会社トレタ(PR TIMES) ↗
- 一次資料生成AI事業へ本格参入!シフト作成支援SaaS「Timely生成AIシフト」提供開始 — 株式会社アルファクス・フード・システム(PR TIMES) ↗
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