2026年7月31日 金曜日
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建設業のAI活用──施工管理・図面・安全管理の実際【2026年】

国土交通省「i-Construction 2.0」は2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、生産性を1.5倍以上に高める目標を掲げる。ICT施工は2022年度時点で直轄土木工事の87%まで普及した一方、BIM/CIMの原則適用は2023年度から始まったばかりだ。施工管理アプリ「ANDPAD」は26万社・69万人が利用し、鹿島建設はAIによる危険予知や資機材管理で作業時間75%削減を実現するなど、現場に浸透しつつあるAI活用の実際を一次資料で確認できる範囲で整理した。

建設業のAI活用──施工管理・図面・安全管理の実際【2026年】
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目次

3行まとめ

  1. 国土交通省「i-Construction 2.0」は、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割(生産性1.5倍以上)向上させる目標を掲げる。ICT施工は2022年度時点で直轄土木工事の87%まで普及済みだが、BIM/CIMの原則適用は2023年度から始まったばかりだ
  2. 施工管理アプリ「ANDPAD」は利用社数26万社、ユーザー69万人を超え、シェアNo.1クラウド型建設プロジェクト管理サービスを謳う(デロイト トーマツ ミック経済研究所調べ)
  3. 鹿島建設はAI危険予知システムや資機材管理AI(作業時間75%削減)、コンクリート充填異常検出AIなど、施工管理・安全管理の複数領域でAIを実装済み

なぜ「建設業×AI」が政策の中心テーマになっているのか

建設業は他産業以上に人手不足が深刻な領域だ。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によれば、日本の生産年齢人口は2040年には現在から2割減少すると見込まれている。国土交通省の資料によれば、就業者に占める55歳以上の割合は建設業で全産業平均より高い水準で増加傾向にある一方、29歳以下の割合の増加は緩やかで、今後は高齢就業者の大量退職も見込まれるという(国土交通省「i-Construction 2.0」)。

こうした状況を受け、国土交通省は2024年4月16日、建設現場の省人化対策をまとめた「i-Construction 2.0」を策定したと発表した。「施工のオートメーション化」「データ連携のオートメーション化」「施工管理のオートメーション化」を3本柱に、2040年度までに2023年度比で建設現場の省人化を少なくとも3割、すなわち生産性を1.5倍以上向上させることを目指すという(同発表)。

本記事では、①国の政策目標と現状、②施工管理・図面まわりのAIツール、③安全管理AIの実例の3つに分けて、一次資料で確認できる範囲を整理する。


現状はどこまで進んでいるのか──ICT施工87%、BIM/CIMはこれから

「i-Construction 2.0」本文によれば、2016年度から進めてきたICT施工は、2022年度時点でICT施工を実施できる直轄土木工事の87%で実施されており、2015年度と比較して平均約21%の作業時間短縮効果を確認しているという。都道府県・政令市におけるICT施工の公告件数も、2016年度の84件から2022年度には13,429件へと大幅に増加した。建設業の付加価値労働生産性は、i-Constructionの進展との因果関係は明確ではないとしつつも、2021年度は2015年度に比べ9.2%増加したという(同資料)。

一方、3次元設計データを活用するBIM/CIM(Building/Construction Information Modeling, Management)は、2023年度から原則適用が始まったばかりだ。同資料は「現時点では3次元モデルと2次元図面が連動していないため、3次元モデルは参考資料として活用している」と、普及の初期段階にあることを認めている。ドローン測量については「従来手法の約4割の人工で測量することが可能」と、省人化効果がすでに現れている分野として紹介されている。

「i-Construction 2.0」は、施工のオートメーション化の実現に向けて、5年以内に現場のリアルタイムデータ活用、10年程度で大規模土工など一定条件下での自動施工の標準化、15年程度で大規模現場での自動施工・最適施工の実現という3段階のロードマップを示している。これらは「現時点での想定」であり、今後の技術開発状況に応じて見直すとされている。


施工管理アプリの普及──ANDPADの例

施工管理領域では、クラウド型のプロジェクト管理アプリの普及が進んでいる。株式会社アンドパッドが提供する「ANDPAD」は、公式サイトによれば利用社数26万社、ユーザー69万人を超え、「シェアNo.1クラウド型建設プロジェクト管理サービス」と謳っている。このシェアの根拠として、同社は「建設業マネジメントクラウドサービス市場の動向とベンダシェア(ミックITリポート2025年12月号)」(デロイト トーマツ ミック経済研究所調べ)を明記している。

ANDPADは施工管理・チャット・図面・検査・黒板といった機能を一元化するサービスだが、AI機能そのものについては公式サイト上で詳細な説明は限定的だ。2026年5月29日には、国土交通省「令和8年度 建築行政DX総合推進事業」に採択され、AI技術による行政手続きの効率化を検証すると発表しているが、この検証自体はまだ実施段階にある。


図面・検査のAI化──SPIDERPLUS×鴻池組の音声入力AI

図面・検査領域では、スパイダープラス株式会社が2026年6月15日、大手総合建設会社の鴻池組と共同で「仕上検査音声入力AI機能」を開発したと発表した。仕上検査(竣工前の内装・外装の傷や汚れ、設備動作の最終確認)で発生する指摘事項を、検査員が音声で読み上げるとAIが「部位」「状態」などを自動で項目ごとに振り分け、専門工事業者ごとに整理して是正指示まで一連で行う機能だ。

同社の実証実験(3室・23箇所の指摘事項を設定し、従来の仕上検査機能と新機能をそれぞれ10通り試行して所要時間差を比較)によれば、検査時間を平均33%短縮できたという。実際のマンション自主検査では1戸あたり60〜90箇所の指摘事項が発生するため、規模が大きい現場ほど削減効果が拡大すると見込まれている(同発表)。スパイダープラスは2013年から鴻池組向けに「KOCoチェック」というアプリを提供してきた協力関係があり、今回の機能は2026年冬〜2027年春頃の一般リリースを見据えて、引き続き鴻池組の現場で検証を重ねるとしている。


安全管理AI──鹿島建設の複数の実例

安全管理領域では、大手ゼネコンの鹿島建設が複数のAI活用事例を公式に発表している。

AI危険予知「鹿島セーフナビ(K-SAFE)」(2021年10月14日発表)は、鹿島が保有する約5,000件の災害事例と、厚生労働省が運営する「職場のあんぜんサイト」に掲載された約64,000件の災害事例を、AIの自然言語処理技術で解析し、類似作業の災害傾向をグラフで見える化するシステムだ。株式会社UNAIITと共同開発した。現場の安全担当者が作業内容を入力すると、関連する過去の災害事例を多面的に参照できるようになり、危険予知活動の精度向上を狙う。

AIとドローンによる資機材管理システム(2023年7月19日発表)は、AI inside株式会社と共同開発したもので、ドローンが空撮した動画からAIが資機材を認識し、現場の3Dモデル上に位置を表示する。国土交通省北陸地方整備局発注の工事に適用した結果、資機材管理の作業時間を約75%削減(1回あたり約2時間→30分)したという。同システムは2022年度の国交省「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト(PRISM)」に採択されている。

画像AIによる技能者の人数・作業時間の自動把握システム(2024年2月29日発表)は、建設現場に常設した固定カメラの映像を画像AIで解析し、指定エリア内の技能者数と作業時間を自動計測するもので、橋梁の建設現場に導入して効果を実証した。工事出来高と連携させることで、正確な「歩掛(ぶがかり、作業手間の数値化)」を自動算出できるという。発表文では、2024年4月から適用される時間外労働時間の上限規制を背景として挙げている。

最新の事例としては、CFT柱のコンクリート充填作業の異常検出AI(2026年7月8日発表)がある。鋼管柱内にコンクリートを充填するCFT構造の施工では、異物混入などの異常があれば迅速に作業を中断する必要があるが、従来は施工担当者や技術者が長時間現場に立ち会う必要があった。鹿島は株式会社Ridge-iと共同で、遠隔監視システム「moni-as」に、AIが充填映像を監視して異常検出を支援する機能を追加した。使用したAIモデルは、moni-asで蓄積してきた2,000時間以上の充填映像データに、鹿島独自の施工ノウハウを組み込んで構築したという。


建設現場の労働災害の実態

「i-Construction 2.0」は、安全確保を建設現場のオートメーション化を進める理由の一つに挙げている。同資料が引用する厚生労働省「労働災害統計」(2022年)によれば、建設機械に起因すると想定される死亡事故は、建設業の死亡災害全体のおよそ2割を占めるという。建設業の死亡災害は2021年までの過去50年間で大幅に減少しているものの、年間300人弱程度の死亡事故が発生していると同資料は指摘している。

こうした背景から、国土交通省は建設機械の自動化・遠隔化により人的被害のリスクを低減することを目標の一つに掲げている。鹿島建設のAI危険予知システムや異常検出AIも、この文脈に位置づけられる取り組みといえる。


正直に書くと

  • 「2040年度までに省人化3割・生産性1.5倍」は国土交通省が掲げる政策目標であり、達成を保証する予測ではない。ロードマップ自体も「現時点での想定」と明記されており、今後の技術開発状況に応じて見直される
  • ANDPADの「シェアNo.1」「利用社数26万社、ユーザー69万人」は同社公式サイトの記載であり、第三者調査機関(ミック経済研究所)の算出方法や調査対象範囲の詳細は本記事では確認できていない
  • SPIDERPLUSの「検査時間33%短縮」は、3室23箇所の指摘事項という限定的なテスト環境(10通り試行)で得られた実証実験の結果であり、実際の建設現場での効果を保証するものではない。一般リリースも2026年冬〜2027年春頃の予定であり、本記事執筆時点ではまだ提供開始されていない
  • 鹿島建設の各AI事例(資機材管理75%削減など)は、いずれも同社のプレスリリースに基づく自社発表の数値であり、第三者による効果検証の結果ではない。また各システムの適用範囲は特定の工事・現場での実証や導入例が中心で、全社的な導入率などは確認できていない
  • 建設機械起因の死亡事故「約2割」「年間300人弱」は、国土交通省の資料が引用する厚生労働省「労働災害統計」(2022年)の数値であり、本記事では厚生労働省の一次統計そのものは確認できていない
  • BIM/CIMの具体的な普及率(%)については、本記事で確認できた一次資料の範囲では公表されていない。「2023年度から原則適用」という制度上の開始時期のみが確認できた事実である
  • 本記事は建設業のAI活用に関する概況の整理であり、投資・導入の助言を構成するものではない。記載の数字は各出典の発表・調査時点のものであり、最新値と異なる場合がある

出典・参考

本記事は建設業のAI活用に関する概況の整理であり、投資・導入の助言を構成するものではない。数字は各出典の発表・調査時点のものであり、最新値と異なる場合がある。

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