物流・倉庫のAI活用──配送ルート最適化・自動仕分けの実際【2026年】
2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限規制が適用され、いわゆる「物流の2024年問題」が本格化した。国土交通省の資料によれば、宅配便の不在再配達はコロナ前で全体の約15〜16%発生し、宅配便個数は5年間で23.2%増加している。AI配送ルート最適化サービス「Loogia」を導入したユアサ商事は積載率10%向上・運賃10%削減を実現し、佐川グローバルロジスティクスは仕分けロボット導入で新人の作業修得時間を約7割削減するなど、現場に浸透しつつあるAI活用の実際を一次資料で確認できる範囲で整理した。

目次
3行まとめ
- 2024年4月から自動車運転業務の時間外労働に年960時間の上限規制が適用され、「物流の2024年問題」が本格化した。国土交通省の資料によれば、道路貨物運送業の有効求人倍率は全職業平均より約2倍高い水準にある
- AI配送ルート最適化サービス「Loogia」を導入したユアサ商事株式会社は、約1年間の運用で物流センターの積載率10%向上、路線便運賃10%削減、自社便の配送個口数15%増を実現したと公式事例で公表している
- 佐川グローバルロジスティクスはRFIDと仕分けロボット「t-Sort」の導入で、新規就労者の作業修得時間を約7割削減し、仕分けミスをほぼゼロにしたと国土交通省の事例集で報告されている
なぜ「物流×AI」が急務なのか──2024年問題という制約
物流業界でAI活用が急がれる最大の理由は、いわゆる「物流の2024年問題」だ。平成30年6月改正の「働き方改革関連法」に基づき、自動車の運転業務の時間外労働についても、法施行(平成31年4月)の5年後にあたる令和6年4月1日から、年960時間(休日労働含まず)の上限規制が適用された(国土交通省)。
あわせて、厚生労働省がトラックドライバーの拘束時間を定めた「改善基準告示」も強化された。1日あたりの拘束時間は、従来の原則13時間以内・最大16時間以内から、原則13時間以内・最大15時間以内(長距離運行は週2回まで16時間)へ、1ヶ月あたりの拘束時間も原則293時間以内から原則284時間以内へと、いずれも上限が引き下げられている(同資料)。
国土交通省の資料によれば、道路貨物運送業の有効求人倍率は全職業平均より約2倍高く、深刻な人手不足にある。年齢構成についても、道路貨物運送業は全産業平均と比較して若年層・高齢層の割合が低く、中年層の割合が高いという偏りが見られる(同資料)。少ない人数・限られた労働時間で物流量を維持するための手段として、AIによる配送ルート最適化や自動仕分けへの期待が高まっている背景がここにある。
物流業界の規模と構造
国土交通省の資料によれば、物流業界の主要業種の営業収入合計は約28兆円、従業員数は約229万人(全産業の売上高・就業者数に占める割合はそれぞれ約2%、約3%)とされる。このうち最大の業種であるトラック運送業(青ナンバー)は、事業者数62,844、従業員数約197万人、中小企業率99%と、中小事業者が大半を占める構造だ(同資料。データは令和元年度時点、一部推計値を含む)。
宅配便を取り巻く数字も、AI活用の必要性を裏付けている。同資料によれば、宅配貨物の不在再配達は、新型コロナウイルス感染拡大前において全体の約15〜16%程度発生していたという。宅配便の取扱個数は5年間で23.2%増加(約9.3億個増)しており、EC市場の拡大とともに配送効率化への圧力は強まっている。参考までに、宅配便最大手のヤマトホールディングスは、2024年度実績で国内シェア47.2%(出所:国土交通省「令和6年度宅配便等取扱個数の調査及び集計方法」)、2026年3月期の年間取扱数量は約23億個と公式サイトで公表している。
AI配送ルート最適化──Loogia×ユアサ商事の実例
配送ルート最適化の分野では、AIアルゴリズムを使ったクラウドサービスの導入が進んでいる。株式会社オプティマインドが提供する「Loogia」を導入したユアサ商事株式会社(産業機械などを扱う専門商社)の公式事例によれば、同社は2021年9月にオプティマインドへ相談し、同年12月末に運用を開始、2022年1月から本格稼働させた。
中部・関西の2拠点で、毎日の配送ルート計算にAIを活用し、路線便(外部委託の混載配送)から自社便への切り替えを進めた結果、約1年間の運用で「物流センターの積載率が10%アップ」「路線便の運賃が10%削減」「自社便の配送個口数が月間で15%アップ」という効果を確認したという(同社インタビュー記事)。同社担当者は「AIを自社の業務に取り込むのは非常に難しいが、中部と関西の2拠点で毎日のルート計算業務にAIを取り入れられたことが大きかった」とコメントしている。
国土交通省が2022年3月に公表した「物流DX導入事例集」にも、類似の事例が掲載されている。3PL企業のスーパーレックスは、ライナロジクス社が提供する「LYNA自動配車クラウド」を導入し、独自開発のAIアルゴリズムで何十万通りもの配送ルートを瞬時にシミュレーションできるようになった。従来は地図ソフトを使い丸2日かかっていた手動での配車計画の決定作業が、数時間で行えるようになったという(同事例集)。同事例集は、土地勘や経験がなくてもAIがアシストすることで、より正確な配車計画を作成できる点をメリットとして挙げている。
自動仕分け・倉庫AI──佐川グローバルロジスティクスの実例
倉庫内の自動仕分けでは、佐川急便グループの佐川グローバルロジスティクスの事例が、国土交通省「物流DX導入事例集」で紹介されている。同社は無線通信自動認識システム(RFID)と、仕分けロボット「t-Sort」(プラスオートメーション社製)を組み合わせて導入した。RFIDタグを商品に付け、ゲートを通す瞬間に検品を完了させる仕組みで、従来は作業者が現場を頻繁に移動して行っていた仕分け作業をロボットが代行する。
同事例集によれば、この組み合わせにより「新規就労者の早期戦力化や作業スキル修得時間の低減を実現し、特に修得時間は約7割削減を実現した」という。仕分けミスも「ほぼゼロ」になったと報告されている。t-Sortは繁閑差や規模の変化に応じてロボット台数の調整やレイアウト変更が容易な点も特徴として挙げられている。
同じ事例集には、Mujin社製の荷下ろしロボットを導入した企業の例(複数種類のケースが不規則に積まれた荷下ろし作業を自動化)や、ZMP社製の台車型自律移動ロボット「CarriRo AD」を3台導入し工場内搬送を完全自動化した企業の例も掲載されている。
そのほかのAI活用──点呼・マッチング・OCR
配送・運行管理の周辺業務でも、AI活用の事例が報告されている。国土交通省「物流DX導入事例集」によれば、菱木運送は顔認証技術等のAIを搭載したNavisia製の自動点呼ロボットを導入し、運行管理者が行っていた「本人確認」「アルコールチェック」「指示伝達」といった点呼業務の一部をロボットに代行させ、負荷を軽減したという。
同事例集は、日本パレットレンタルがAIにより異業種の荷主同士をマッチングし共同輸送の機会を創出した事例、山九がAI-OCR(AIによる光学文字認識)を導入して点検記録等の手入力業務をデジタル化した事例も紹介している。ただし、これらの事例集は2022年3月発行であり、掲載されている効果測定の数値は各社が導入初期に得た実証結果である点には留意が必要だ。
国の支援策──直近の動き
国土交通省は2026年7月29日、「ラストマイル配送効率化促進事業」の二次公募開始を発表した。荷主・物流事業者・地方公共団体等が連携し、受取拠点の整備や貨客混載・共同配送の推進に取り組む事業に対し、補助率1/2以内・上限500万円(複数申請の組み合わせ可)で補助金を交付する制度で、公募期間は2026年7月29日から9月4日までとされている(同発表)。この制度自体はAI活用を直接の要件とするものではなく、受取拠点整備や共同配送といった物流負荷軽減策全般を対象としている点には注意が必要だ。
正直に書くと
- ユアサ商事の「積載率10%向上・運賃10%削減・配送個口数15%増」は、サービス提供元オプティマインドの公式サイトに掲載された導入企業へのインタビュー記事に基づく数値であり、第三者による効果検証の結果ではない
- 国土交通省「物流DX導入事例集」は2022年3月発行であり、掲載されている企業の導入事例・効果測定の数値は、いずれも発行当時(2021〜2022年頃)に得られたものである。2026年時点で各社がどこまで運用を継続・拡大しているかは、本記事では確認できていない
- 「物流業界の規模(営業収入約28兆円、従業員数約229万人)」および「トラック運送業の事業者数62,844」は令和元年度時点のデータ(一部推計値を含む)であり、2026年時点の最新の統計ではない
- 佐川グローバルロジスティクスの「修得時間約7割削減」「仕分けミスほぼゼロ」は、同社および国土交通省の事例集に基づく数値であり、算出方法(比較対象とした従来手法の詳細等)は本記事では確認できていない
- ヤマトホールディングスの数字(シェア47.2%、年間取扱数量約23億個)は同社最大手としての市場規模を示す参考情報であり、同社がAIをどこまで活用しているかについて、本記事では公式サイト上でAI活用に関する具体的な数値を確認できなかった
- 「ラストマイル配送効率化促進事業」はAI活用を直接の補助対象とする制度ではなく、受取拠点整備や共同配送など物流負荷軽減策全般を支援するものである
- 本記事は物流・倉庫業のAI活用に関する概況の整理であり、投資・導入の助言を構成するものではない。記載の数字は各出典の発表・調査時点のものであり、最新値と異なる場合がある
出典・参考
- 国土交通省「我が国の物流を取り巻く状況」
- 国土交通省総合政策局物流政策課「物流・配送会社のための物流DX導入事例集」(令和4年3月)
- Loogia導入事例「ユアサ商事株式会社」(株式会社オプティマインド)
- ヤマトホールディングス「数字で見るヤマトグループ」
- 国土交通省「『ラストマイル配送効率化促進事業』(補助事業)の二次公募開始」(2026年7月29日)
本記事は物流・倉庫業のAI活用に関する概況の整理であり、投資・導入の助言を構成するものではない。数字は各出典の発表・調査時点のものであり、最新値と異なる場合がある。
出典・参照資料
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