2026年7月31日 金曜日
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介護現場のAI活用──記録・見守り・ケアプラン作成の実際【2026年】

介護記録ソフトの利用率は全体で75.4%に達し、ICT機器・介護ロボットを導入した施設系(入所型)事業所の73.1%が「昼間の業務負担が軽減した」と回答している(介護労働安定センター調べ)。一方で介護ロボットの利用率はどの種類も10%に届いていない。AI排泄予測センサーやAIケアプラン作成支援など、現場に浸透しつつある技術と、進んでいない部分を数字で整理した。

介護現場のAI活用──記録・見守り・ケアプラン作成の実際【2026年】
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目次

3行まとめ

  1. 介護記録ソフト(ケア記録・ケアプラン入力)の利用率は全体で75.4%、施設系(入所型)では82.8%に達している(介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」)
  2. ICT機器・介護ロボットを導入した施設系(入所型)事業所の73.1%が「昼間の業務負担が軽減した」と回答する一方、介護ロボット(移乗・排泄・入浴支援等)の利用率はどの種類も10%未満にとどまる
  3. AIによる排泄予測センサー「Helppad2」やAIケアプラン作成支援「SOIN」など、記録・見守り領域から実装が先行している

なぜ「介護×AI」が注目されるのか

介護現場は、他の産業以上に人手不足が深刻な領域だ。厚生労働省は経済産業省と共同で「ロボット技術の介護利用における重点分野」を6分野13項目(移乗支援・移動支援・排泄支援・見守り・コミュニケーション・入浴支援・介護業務支援)に整理し、開発と導入の両面から支援策を講じている(厚生労働省)。

ここでいう「介護ロボット」は、単なる機械ではなく「情報を感知(センサー系)、判断し(知能・制御系)、動作する(駆動系)」という3要素を備えた知能化システムと定義されている(厚生労働省)。見守りセンサーや排泄予測AIも、この定義に含まれる。

一方で「AI」という言葉が指す範囲は広い。本記事では、①介護記録・ケアプラン作成を支援するソフトウェア、②見守り・排泄予測などのセンサー系AI、③国の政策・補助金の3つに分けて、公的統計と一次情報で確認できる範囲を整理する。


現場での利用実態──記録ソフトは7割超、ロボットは1割未満

公益財団法人介護労働安定センターが2025年7月28日に公表した「令和6年度介護労働実態調査」(回答事業所数8,978)は、介護現場のICT・介護ロボット導入状況を最も広く捉えた統計の一つだ。

介護ソフト・ICT機器の利用率(「日常的に利用している」)

機器・機能 全体 訪問系 施設系(入所型) 施設系(通所型) 居住系
ケア記録・ケアプラン等の入力・保存・転記(PC介護ソフト) 75.4% 76.4% 82.8% 72.2% 65.6%
ケア記録入力(タブレット・スマホの介護アプリ) 50.5% 56.6% 52.2% 44.5% 47.6%
ベッドセンサー(マット型・内蔵型) 20.0% 6.8% 70.1% 9.5% 41.7%
音声入力によるテキスト化機能 9.6%(PC)/13.0%(タブレット) - - - -

出典:介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」

パソコンによるケア記録・ケアプラン入力は、すでに介護現場の「標準装備」と呼べる水準まで普及している。訪問系ではタブレット端末・スマートフォンの活用率が高く、施設系(入所型)・居住系ではベッドセンサーなどのセンサー系ICT機器の利用率が相対的に高い、という棲み分けが見える。

一方、介護ロボットの利用率は軒並み10%未満

同調査では、移乗支援・移動支援・排泄支援・コミュニケーション・見守り通報・入浴支援の各ロボットの利用率も個別に集計している。

ロボットの種類 全体 施設系(入所型)
入浴支援ロボット 2.3% 8.4%(最高値)
移乗支援ロボット(マッスルスーツ等) 1.3% 6.2%
移動支援ロボット 1.1% 5.4%
見守り・転倒通報ロボット 0.6% 2.6%
排泄支援ロボット 0.4% 1.9%
コミュニケーションロボット 0.3% 1.1%

出典:同上

もっとも利用率が高い「入浴支援ロボット」でも、施設系(入所型)で8.4%にとどまる。記録・見守り領域(ソフトウェア・センサー)の普及が先行し、身体介助を直接担うロボットの普及はまだ限定的、という構図が数字から読み取れる。

導入効果──施設系(入所型)では7割超が「効果あり」

導入効果については、「効果がある」+「やや効果がある」の合計で、全体では「昼間の業務負担の軽減」49.4%、「夜間の業務負担の軽減」44.6%だった。施設系(入所型)に限ると、この数字はそれぞれ73.1%、72.6%まで上がる(同調査)。「介護の質の向上」についても、全体35.4%に対し施設系(入所型)は56.5%と高い。

センサー・ロボット系の導入が進んでいる施設系(入所型)ほど、体感される効果も大きいという傾向が見える。


記録業務を変えるAI──ケアプラン作成支援「SOIN」の例

介護記録・ケアプラン作成の分野では、AIを組み込んだ専用ツールの提供が始まっている。

株式会社シーディーアイが提供する「SOIN(そわん)」は、利用者の基本情報・状態像を入力すると、AIがケアプランの提案や今後の状態予測を行うサービスだ。2026年1月27日、同社は施設向けの新版「SOIN-M(そわんエム)」の提供を開始したと発表した(PR TIMES)。

このプレスリリースによれば、SOIN-Mは約47万件の要介護認定項目データを活用し、アセスメントと矛盾チェック、AIによるニーズ提案、施設サービス計画書など複数帳票の自動作成、音声認識による議事録作成などの機能を持つ。運営会社は2017年3月設立、資本金1億円。対象は特定施設入居者生活介護からスタートし、将来的には特別養護老人ホーム・介護老人保健施設への展開も予定しているという。

介護労働安定センターの調査で「音声入力によるテキスト化機能」の利用率がまだ1割前後(PC9.6%/タブレット13.0%)にとどまっていることを踏まえると、SOINのような専用ツールがどこまで現場に浸透するかは、今後の実績次第という段階にある。


見守り・排泄予測AI──センサーで「気づき」を代替する

排泄予測「Helppad2」(株式会社aba)

株式会社abaが開発する排泄検知センサー「Helppad2」は、マット状のセンサーで「におい」「湿度」「温度」のデータを取得し、AIが尿と便を識別する仕組みだ(aba公式サイト)。センサーは利用者の肌に直接触れない設計で、利用者ごとに検知感度を調整できるという。

排泄の失敗を未然に防ぐ「予測」ではなく、排泄後の状態を迅速に検知して介助のタイミングを最適化する「検知」に近い技術だが、夜間巡回の頻度を減らせる可能性がある点で、現場のニーズと一致している。

睡眠・体動センシング「眠りSCAN」(パラマウントベッド)

パラマウントベッドの「眠りSCAN」は、ベッドに何も装着せず寝返りなどの体動を検知し、覚醒・離床・起き上がりをリアルタイムに把握するセンサーだ(パラマウントベッド公式サイト)。クラウド型の「眠りCONNECT」で複数居室のデータを一元管理し、日誌データの分析機能も備える。

福祉新聞(2025年2月6日付)の報道によれば、眠りSCANは2024年3月時点で年間販売台数4万3,000台、累計販売台数18万7,000台、導入施設数は約7,000施設に達しているという。レンタル料金は月2,000円程度とされる。この数字は業界紙の報道であり、パラマウントベッド自身の公式発表として一次確認できたものではない点は留意されたい。


国の支援策──補助金は「機器」より「幅」が広い

厚生労働省のページ(記載時点は令和4年9月30日)によれば、介護ロボット・ICT導入に対する主な補助金・支援策は次の通りだ(地域医療介護総合確保基金、厚生労働省老健局/問合せ先は都道府県庁)。

支援策 補助上限額
介護ロボット導入支援(機器1台あたり) 30万円
移乗支援・入浴支援ロボット 100万円
見守りセンサーの通信環境整備(Wi-Fi・インカム等) 750万円
ICT導入支援事業(介護ソフト・タブレット等、事業所職員数により変動) 100万円〜260万円
業務改善支援(コンサル費用) 30万円

このほか、開発側への補助として「ロボット介護機器開発・標準化事業」(経済産業省/AMED)が年間上限1億円、「課題解決型福祉用具実用化開発支援事業」(経済産業省/NEDO)が年間上限2,000万円で用意されている(厚生労働省)。また、介護報酬上も、見守り機器等のテクノロジー活用について、安全体制確保を要件に夜勤配置基準での評価が行われている。

なお、これらの補助金情報は厚生労働省ページの記載時点(令和元年〜令和4年)のものであり、2026年時点での金額や要件は変更されている可能性がある。実際の申請にあたっては、都道府県・自治体の最新情報を確認する必要がある。


記録データの標準化──科学的介護情報システム「LIFE」

介護の「科学化」を支える基盤として、厚生労働省が運用する「科学的介護情報システム(LIFE)」がある。施設・事業所がケア情報を入力・提出すると、国がそのデータを分析し、フィードバックを事業所に返す仕組みだ(厚生労働省)。

LIFEに関連する介護報酬上の加算は、科学的介護推進体制加算、ADL維持等加算、個別機能訓練加算、リハビリテーションマネジメント加算、栄養マネジメント強化加算、口腔衛生・機能向上加算、褥瘡マネジメント加算、排せつ支援加算の8種類が確認できる(厚生労働省)。

LIFEそのものはAIによる自動判断を行うシステムではないが、全国の事業所から集まる標準化されたケアデータは、将来的にAIによる分析・予測モデルの学習データとして活用される土台になり得る。SOINのような民間AIサービスが「約47万件の要介護認定項目データ」を活用していることも、この文脈と重なる。


市場規模──介護ロボット単体では小さいが、成長率は高い

矢野経済研究所が2022年10月17日に発表した調査によれば、介護ロボット市場は2021年度に21億7,500万円(前年度比12.1%増)で、2025年度には36億2,500万円まで拡大すると予測されていた(矢野経済研究所)。

この数字は「介護ロボット」(移乗・移動・排泄・入浴・見守り支援等の物理的ロボット)に限定した市場規模であり、介護記録ソフトやケアプラン作成AIなどの「介護テクノロジー」全体を含む、より広い市場規模ではない。矢野経済研究所は2024年11月にも介護テクノロジー市場全体を対象にした調査を実施しているが、詳細な数値は有償レポート(165,000円)内にあり、本記事執筆時点で確認できたのは調査対象範囲(移乗・移動・排泄・見守り・コミュニケーション・入浴・介護業務支援の各機器・システム)のみだった。

したがって、2026年時点の最新の市場規模を裏付ける数字は、本記事では確認できていない。


正直に書くと

  • 介護ロボット市場の数字(21.75億円→36.25億円予測)は2022年発表の調査であり、2026年時点の最新実績ではない。より新しい2024年の矢野経済研究所調査は存在を確認できたが、具体的な数値は有償レポート内にあり本記事では未確認
  • 眠りSCANの「導入施設数約7,000」「累計販売台数18万7,000台」は福祉新聞の報道によるもので、パラマウントベッド自身の公式発表として一次確認はできていない
  • 厚生労働省の補助金情報ページは、金額の記載時点が令和元年〜令和4年とまちまちで、2026年時点での最新の金額・要件と一致するとは限らない。実際の申請では自治体への確認が必須
  • 「令和6年度介護労働実態調査」は介護労働安定センターによる悉皆調査ではなくサンプル調査(回答事業所8,978)であり、業界全体を完全に代表する数字ではない
  • SOINやHelppad2などの個別製品の効果(作成時間短縮率、検知精度等)について、各社の公式ページでは具体的な数値が公開されておらず、本記事では確認できた範囲(データ規模、仕組み)のみを記載した
  • 本記事は介護テクノロジーの概況整理であり、個別施設の導入判断には各自治体の最新の補助金情報、および各社への直接確認を推奨する

出典・参考

本記事は介護テクノロジーに関する概況の整理であり、導入・申請の助言を構成するものではない。数字は各出典の調査・報道時点のものであり、最新値と異なる場合がある。

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