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NVIDIAとプリンストン大Dao AI Lab、ハイブリッドモデルの推論を速める「ReplaySSM(リプレイSSM)」を公開SSMカーネル1.46〜1.80倍、投機的デコードはvLLM比1.85〜2.10倍

執筆:約15分で読めます

NVIDIAとプリンストン大学Dao AI Labは2026年10月12日(米国時間)、SSM層を含むハイブリッドモデルのデコードを速める手法ReplaySSMを、論文・コード付きで公開した。NVIDIAの検証では、H100・B300で動かした4モデルでSSMカーネルが1.46〜1.80倍(バッチサイズ256)、120B級2モデルの投機的デコードのスループットがvLLMの投機的デコードの1.85倍と2.10倍になった。

NVIDIAとプリンストン大Dao AI Lab、ハイブリッドモデルの推論を速める「ReplaySSM(リプレイSSM)」を公開──SSMカーネル1.46〜1.80倍、投機的デコードはvLLM比1.85〜2.10倍
目次

NVIDIAとプリンストン大学のDao AI Labは2026年10月12日(米国時間)、Mamba系などSSM層を含む「ハイブリッドモデル」のデコードを速める手法 ReplaySSM(リプレイSSM)を、論文とコード付きで公開した。NVIDIAの技術ブログ(日本時間では10月13日午前1時ごろの公開)によると、H100とNVIDIA Blackwell Ultra B300で動かした4モデルでSSMカーネルが1.46〜1.80倍(バッチサイズ256)、B300で動かした120B級2モデルの投機的デコードのスループットがvLLMの投機的デコードの1.85倍と2.10倍になった。論文はarXivに10月9日付で投稿されている。

3行まとめ

  1. NVIDIAとプリンストン大Dao AI Labが、SSMの状態を「チェックポイント+直近入力のバッファ」で持つReplaySSMを公開(2026年10月12日・米国時間)。論文はarXiv 2610.13778、コードはGitHub。
  2. NVIDIAの検証(バッチサイズ256)でSSMカーネル1.46〜1.80倍、デコード1ステップ全体は1.20〜1.47倍。120B級2モデルの投機的デコードは、バッチサイズ512でvLLMの1.85倍と2.10倍。
  3. NVIDIAはTensorRT-LLM・vLLM・FlashInferへの統合とGLM-5.3-Flash・Kimi-K3での本番利用を説明。一方GitHubのREADMEでは、vLLM本家にマージ済みなのはMamba2の標準デコードのみ。

本記事の内容は、日本時間10月13日1時台に公式ページで確認したものです。

ReplaySSMは何をする手法か

ハイブリッドモデルは、SSM層(状態空間モデルの層)と少数のアテンション層を交互に重ねたモデルだ。NVIDIAの技術ブログは、NVIDIA Nemotron(ネモトロン)3、Qwen3.5からQwen3.8、Kimi-K3、GLM-5.3-Flash がこの作りで、SSM層にはMamba-2、Gated DeltaNet(GDN)、Kimi Delta Attention(KDA)が使われていると書いている。

SSM層は、文脈の長さに応じて増えるKVキャッシュの代わりに固定サイズの「状態」を持つ。この状態のせいで、バッチサイズの大きい実運用ではアテンションよりSSM層のほうが遅延の主因になりうる、とブログは言う。ブログによると、Nemotron-3-Super-NVFP4をB300 1基・バッチサイズ256で動かした場合、文脈100Kトークンまでは SSM層がデコード1ステップで最大の部分を占めた。

従来のデコードは、1ステップごとに状態を読み出して更新し、書き戻す。ReplaySSMはこれを次のように変える(NVIDIAの説明)。

  • 状態を「チェックポイント」と「直近の入力の小さなバッファ」で表す
  • 大半のステップでは、入力をバッファに足して、チェックポイントとバッファから出力だけを計算する(状態は書かない)
  • バッファがL件たまったときだけ、入力をチェックポイントに畳み込み、HBM(高帯域メモリ)に1回書いてバッファを空にする

ブログによると、出力は浮動小数点の誤差を除けば従来のデコードと一致する。

何がどれだけ速くなったのか

NVIDIAは、Nemotron 3(Mamba-2層)とQwen3.5(GDN層)の2系列から4モデルを選び、vLLMで実装して、チューニング済みのvLLM自身のカーネルと比べている。

モデル SSM層 重み GPU
Nemotron-3-Nano-4B Mamba-2 BF16 H100 1基
Nemotron-3-Super-120B-A12B Mamba-2 NVFP4 B300 1基
Qwen3.5-4B GDN BF16 H100 1基
Qwen3.5-122B-A10B GDN NVFP4 B300 1基

性能テストはSSM状態をFP32のまま、窓の長さL=16で行ったとブログは書いている。NVIDIAが挙げる効果は3つある。

1. 状態のメモリ通信が約半分になる

窓L個のトークンのあいだ、従来方式は状態をL回読んでL回書く。ReplaySSMは読みは毎回行うが、書くのは1回だけだ。NVIDIAの説明では、これで支配的な状態のメモリ通信がおよそ半分になる。

バッチサイズ256では、カーネルが1.46〜1.80倍、デコード1ステップ全体が4モデルで1.20〜1.47倍になった。一方、バッチサイズ1では他の遅延要因が支配的で、「これらのテストでは速くならなかった」とブログは書いている。

2. 投機的デコードのやり直し(ロールバック)が軽くなる

投機的デコードは、ドラフトモデルが提案したT個のトークンをまとめて検証し、受理された所まで戻る方式だ。アテンションならKVキャッシュのポインタを動かせば戻れるが、SSMは状態に畳み込んだ後の更新を簡単に元に戻せない。ブログは、vLLMなどでは各ドラフトトークンの後に状態のスナップショットを保存する回避策が使われ、これがGPUメモリを圧迫して同時処理数の上限になると説明している。

ReplaySSMではドラフトの入力をバッファに足すだけで、受理分だけバッファのポインタを進める。スナップショットも、戻すべき状態もない。ブログのGSM8Kプロンプトでの測定(T=4、L=16、FP32状態、モデルごとにB300 1基)では、バッチサイズ512でvLLMの投機的デコードの1.85倍と2.10倍のスループットになり、受理長(acceptance length)は一致していたという。

比較対象 結果(NVIDIAの技術ブログ)
標準デコード、カーネル(バッチ256) 1.46〜1.80倍
標準デコード、1ステップ全体(バッチ256) 1.20〜1.47倍
投機的デコードのスループット(120B級2モデル、バッチ512、T=4) 1.85倍、2.10倍

3. 低精度の状態でも誤差がたまりにくい

SSMでは、量子化した状態が次の更新の入力にもなるため、丸め誤差が再帰のたびに入り込む。ReplaySSMは、再帰に使う高精度のチェックポイントと、出力の読み出し用の低精度コピーを分けて持つ。低精度コピーは再帰には戻されないので、その誤差は現在の窓の出力にしか影響しない、とブログは説明している。

ブログの測定では、Mamba-2でNVFP4の状態を読む非フラッシュのカーネルは、FP32の状態を読む場合の3.8倍速かった。精度面では、Qwen3.5-4Bで128Kトークン生成時のKLダイバージェンスが、NVFP4読み出し+FP32再帰で0.136から0.0038に下がったと書かれている。GPQA-Diamondでの変化は次のとおり(FP32との差、ポイント)。

モデル FP32の正答率 NVFP4の共有チェックポイント NVFP4読み出し+FP16再帰 NVFP4読み出し+FP8再帰
Nemotron-3-Nano-4B 56.7 −31.3 −6.7 −5.6
Nemotron-3-Super-NVFP4 79.3 −12.5 −1.4 −1.4
Qwen3.5-4B 76.3 −3.2 +0.7 +1.5
Qwen3.5-122B-A10B-NVFP4 82.7 −5.2 −2.0 −1.7

ブログは、4モデル中3モデルがFP32から約2ポイント以内に収まったとまとめている。Nemotron-3-Nano-4Bは分離しても5.6〜6.7ポイント下がっており、すべてのモデルで差が消えるわけではない。

誰がいつから使えるのか

コードはGitHub(Johnny-Liou/ReplaySSM)で公開されていて、ライセンスはApache-2.0と表示されている。リポジトリはvLLMのフォークで、Mamba2とGDNの標準デコードおよび投機的デコードの実装と、低精度のカーネルを含む。vLLMの統合では、標準デコードに --use-replayssm、投機的デコードに --use-replayssm-spec を使い、窓の長さは --replayssm-buffer-len 16 で指定するとREADMEに書かれている。

NVIDIAの技術ブログは、ReplaySSMがTensorRT-LLM、vLLM、SGLang、FlashInferに組み込まれ、GLM-5.3-Flashは ReplaySSMを使って提供されていると説明している。Z.aiのインフラ報告がKDAデコードカーネルへの追加を述べていること、Kimi-K3がKDA層でドラフトの入力をキャッシュして検証に使い、ReplaySSMを「並行する手法」として引用していることも、同じ節に書かれている。

日本での提供や料金について、今回取得したページには記載がない。コードとフレームワークの変更はオープンソースの形で公開されている。

一人称の観測:公開直後のブログとGitHubで食い違っていた点

日本時間10月13日1時台に公式ブログ、arXiv、GitHub、Tri Daoのブログ、TensorRT-LLMのPRの5ページを続けて取得して読んだが、ここで見つかった食い違いが3つある。製品を動かして確かめたものではなく、取得したページの文面を突き合わせた結果だ。

  1. 論文リンク: ブログの「Get started」の節では、論文の項目が「ReplaySSM: Cache SSM Inputs, Not State [TODO: Link]」という未記入のプレースホルダーのままだった。ただし同じページの別の位置にはarXivへのリンクがあり、そのarXivページ(2610.13778)は取得できた。
  2. vLLMへの統合状況: ブログは「vLLMに統合」と書く。GitHubのREADMEは、vLLM本家にマージ済みなのはMamba2の標準デコードのカーネルだけで、他の3つのデコード経路(GDN標準、Mamba2・GDNの投機的)は「このフォークにしかない」と書き、READMEの表でもvLLMの #48792・#49847・#49887 は open と表示されていた。ブログが挙げるvLLMのPR(48018、52506、52928)のうち、READMEの表に載るのは48018(merged)だけで、52506と52928の状態は今回確認していない。
  3. 投機的デコードの倍率: ブログは1.85倍と2.10倍、arXivのアブストラクトは「120B級2モデルでvLLMの投機的デコードの約1.8倍のスループット」と書く。Tri Daoのブログは、標準デコードで最大1.48倍、投機的デコードで「vLLMの標準デコード比」1.87〜1.96倍と書く。比べる相手がvLLMの投機的デコードではなく標準デコードで、Nemotron-3-Ultra-550B(B300 2基、TP2)を含む別の構成の数字だ。

Tri Daoのブログの数字は比べる相手と構成が違うことがページ上に書かれているが、NVIDIAのブログ(1.85倍・2.10倍)とarXivのアブストラクト(約1.8倍)の差の理由はどちらのページにも書かれていない。本記事では推測せず、各ページの数字を出どころ付きで並べている。

数字を読むときの注意

  • 速度の数字はすべてNVIDIAと論文著者らによる測定で、本記事では再現していない。比較対象は「チューニング済みのvLLM自身のカーネル」で、他の実装(TensorRT-LLMやFlashInferの既存カーネルなど)との直接比較は、今回読んだブログの本文には見当たらなかった。
  • バッチサイズ1では速くならないとブログ自身が書いている。効果が出るのは、大きいバッチで動かすサービング用途だ。
  • 速くなるのはSSM部分だけで、アテンションやGEMMは変わらない。Tri Daoのブログも、エンドツーエンドの伸びがカーネルより小さいのはそのためだと説明している。
  • 評価した4モデルは、Nemotron 3とQwen3.5の2系列だけだ(Tri Daoのブログには550Bの結果もある)。GLM-5.3-FlashやKimi-K3での速度の数字は、今回読んだページには見当たらなかった。
  • NVIDIAの技術ブログの冒頭の要約は、ページ自身が「AIによる要約」と注記している。本記事では本文側の数字を使った。

同じ日のNVIDIAの発表では、Vera Rubin(ベラ・ルービン)のラック設計をOCPに提供した件も出ている。こちらはハードウェア側の話で、ReplaySSMはソフトウェア(カーネル)側の話だ。

出典と確認時刻

本記事は続報があり次第更新します。

この記事でよく聞かれること

ReplaySSMとは何ですか?
NVIDIAとプリンストン大学Dao AI Labが公開した、SSM(状態空間モデル)層を含むハイブリッドモデルのデコードを速める手法です。NVIDIAの技術ブログによると、SSMの状態を「チェックポイント+直近の入力のバッファ」で表し、出力の計算と状態の更新を分けます。論文はarXivで、コードはGitHubで公開されています。
ReplaySSMでどのくらい速くなりますか?
NVIDIAの技術ブログによると、バッチサイズ256のとき、SSMカーネルは4モデルで1.46〜1.80倍、デコード1ステップ全体は1.20〜1.47倍になりました。120B級2モデルの投機的デコードのスループットは、バッチサイズ512でvLLMの投機的デコードの1.85倍と2.10倍です。バッチサイズ1では速くならなかったと書かれています。
ReplaySSMはどのモデル・どのフレームワークで使えますか?
NVIDIAの技術ブログは、TensorRT-LLM、vLLM、FlashInferに統合済みで、GLM-5.3-FlashとKimi-K3の本番でも動いていると説明しています。ただしGitHubのREADMEは、vLLM本家にマージ済みなのはMamba2の標準デコードのカーネルだけで、残りは未マージ(open)の項目があると書いています。
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出典・参照資料

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