Google、Android向けLiteRT(ライトアールティー)のPlay services版でGPU推論が約1.4倍にアプリは約8MB小さく、旧GPUデリゲートは非推奨
日刊AIニュース10月29日(木)号:前日のAIのニュース54本を短くまとめました(約22分)›
Googleは2026年10月28日、Google Play services版LiteRTで、新しいCompiledModel APIによるGPU推論が旧TensorFlow Lite GPUデリゲート比で約1.4倍速くなり、アプリが約8MB小さくなると発表した。Wear OS 4+とAndroid Automotive OSにも対応し、NNAPIは2027年から削除される。

目次
Google(グーグル)は2026年10月28日(現地)、Android向けのGoogle Play services版LiteRT(ライトアールティー)を強化したと開発者ブログで発表した。新しいCompiledModel API経由のGPU推論は、旧TensorFlow Lite GPUデリゲートより約1.4倍速く、Play services版へ切り替えたアプリは約8MB小さくなったという。いずれもGoogle自身のテスト・説明で、本記事の筆者が測ったものではない。
3行まとめ
- Google Play services版LiteRTで、ML DriftとCompiledModel APIによるGPU推論が旧TensorFlow Lite GPUデリゲート比で約1.4倍速くなったとGoogleが発表(2026年10月28日)。
- ランタイムをAPKに入れずPlay servicesで共有でき、Googleのテストでアプリは約8MB減。Android 7以降に加え、Wear OS 4+とAndroid Automotive OSにも対応。
- 旧GPUデリゲートとカスタムデリゲートAPIは非推奨、NNAPIは2027年から削除。Play services版のNPU対応は「作業中」で、公式ドキュメントはNPUが必要なら単体版LiteRTを使うよう案内。
本記事の内容は、日本時間10月29日5時台に公式ページで確認したものです。
何が新しくなったのか
Googleのブログによると、Play services版LiteRTは「Androidで自作モデルをオンデバイス推論するランタイム」で、1日に1兆回を超える推論を数十億台の端末で処理している。今回の発表は、そのGPU推論が旧GPUデリゲートより約1.4倍速くなったというもので、Googleはこれを「最大のアップグレード」と呼んでいる。
土台は2つある。
- ML Drift: LiteRTの最新のオープンソースGPUエンジン。ブログによると、Googleのアプリがすでに数百万台の端末で毎日使っている。
- CompiledModel API: 旧Interpreter APIの後継。CPUとGPUで1つの手順にそろえ、OpenCLが使えればOpenCL、なければOpenGLを使う。
これまで、この高速なGPU基盤を使うにはLiteRTをアプリに同梱する必要があった、とブログは説明している。今回はPlay services経由で使える。
アプリはどれくらい小さくなるのか
ブログは「Googleのテストでは、切り替えたアプリは約8MB小さくなった」と書く。ランタイムとGPUアクセラレータがアプリの中ではなくPlay servicesに1つだけ入るためだ。LiteRTまたはTensorFlow Liteを自前で同梱しているAndroidアプリは10万本超あるともしている。
公式ドキュメントの表現は少し違い、「最大約8MB」としている。ブログは「約」、ドキュメントは「最大」。アプリごとの削減量は同梱の状況に左右されるので、8MBは目安として読むのが安全だ。
誰が使えるのか(対応環境・日本)
| 項目 | 公式の記載 |
|---|---|
| スマートフォン | Android 7(API level 24)以降 |
| 新たに対応 | Wear OS 4以降、Android Automotive OS(Android 11以降) |
| 依存関係 | com.google.android.gms:play-services-litert:17.0.0(以降) |
| GPUが使えない端末 | GPUとCPUを両方指定していればCPUへ切り替え |
| NPU | Play services版では「coming soon」。現時点は単体版LiteRT |
| Play servicesのない端末 | 単体版LiteRTを使う |
提供地域の限定は、今回取得した公式ページには見当たらなかった。ただし、日本で提供するかどうかを明示した記述も確認できていない。Googleが「全世界」と書いたわけではないので、日本の開発者が使えるとは断言しない。
移行の手順と、旧APIの扱い
ブログが示す手順は3段階だ。
- 依存関係に
play-services-litert:17.0.0(以降)を追加する。LiteRTを同梱している場合は、litertの依存を外す。 LiteRt.initializeでPlay servicesからLiteRTの環境を取得する。GPUを使うにはsetEnableGpu(true)を指定する。- CompiledModelを作るときに、その環境を渡す。残りのコードは変えなくてよい。
公式ドキュメントは、現在の使い方ごとに次のように案内している。
| 今のアプリ | 公式の案内 |
|---|---|
Play servicesのInterpreter API(play-services-tflite-java)を使用 |
依存を play-services-litert に切り替える。Interpreterのコードは引き続きCPUで動く。GPUを使うにはCompiledModel APIへ移る |
| 単体のLiteRT 2.xまたはTensorFlow Liteを同梱 | Play services版へ切り替え、ランタイムをAPKから外す |
| NPUやカスタムopsが今すぐ必要、またはPlay servicesのない端末で動かす | 単体版LiteRTを使う |
注意したいのは非推奨の部分だ。ブログによると、旧GPUデリゲートとカスタムデリゲートのAPIは、CompiledModelのGPU加速とCompiler Plugin・Dispatch APIに置き換えられて非推奨になった。NNAPIは2027年から削除される。古いSDKには重大なセキュリティ修正だけが届く。出荷済みのアプリは動き続けるが、「非推奨APIを使うコードは最新SDKに対してコンパイルできない」とブログは書いている。
LiteRTはTensorFlow Liteの進化版で、.tflite のモデル形式はそのまま使える。CompiledModel APIはAndroidのほか、iOS・デスクトップ・Webでも同じモデルを動かせるとブログは説明している。
Android StudioのLiteRTスキル
Googleは、Android StudioのAgent Modeで使える新しい「LiteRT skill」も出した。「migrate my TFLite code to CompiledModel」と頼むか @litert-runtime と入力すると、play-services-litertへの切り替え、Interpreter呼び出しの書き換え、CPUフォールバック付きのGPU設定までやってくれるという。新規のLiteRTアプリの雛形も作れる。
ブログ自身が「強力な初稿として扱い、差分を確認し、実機でビルドして出力を比べること」と注意書きを添えている。GitHubの android/skills には litert-lm と litert-runtime の2つのフォルダが並んでいた。
前回のLiteRT記事との違い
当サイトは別の記事で、C++でモデルを組み立てるLiteRTの「Tensor API」を取り上げた(Google、オンデバイスAI用LiteRTにC++でモデルを組み立てるTensor API)。そちらは単体版LiteRTの新しいAPIの話だった。今回はPlay services経由での配布と、GPU性能・アプリサイズ・対応端末の話で、別の発表になる。
また、GoogleはCompiledModel APIとML Drift(当時の表記は「MLDrift」)を2025年5月の記事(LiteRT: Maximum performance, simplified)でも紹介している。そのときMediaTekとQualcommのNPU対応は限定公開(private preview)だった。今回のブログは「これまでこの高速なGPU基盤を使うにはLiteRTの同梱が必要だった」としており、変更点はその基盤がPlay services版で使えるようになったことにある。
筆者の観測:2つの公式ページで数字の言い方が違った
日本時間10月29日5時21分前後にブログと公式ドキュメントを続けて開いたところ、1.4倍と8MBの書き方がページごとに違っていた。ブログは「約1.4倍」「約8MB(Googleのテスト)」、ドキュメントは「最大1.4倍」「最大約8MB」。どちらも同じGoogleの公式ページだが、読む人が受け取る印象は変わる。ドキュメントの最終更新日は2026年10月28日(UTC)と表示されていた。
今回の発表で確認できなかったこと
今回取得した公式ページ(ブログ、公式ドキュメント、GitHubのフォルダ)には、次のことは書かれていなかった。
- 1.4倍の測定条件: どの端末・モデル・ソフトウェアのバージョンで測ったかの記載は、ブログとドキュメントに見当たらない。2025年5月の記事には「Samsung 24」での比較図があるが、今回の1.4倍との関係は書かれていない。
- 8MBの内訳: 切り替えたアプリの種類や数は不明。
- 料金: Play services版LiteRTの料金に関する記載は、今回の取得ページにはなかった。
- NPU対応の時期: 「actively being worked on」「coming soon」とあるだけで、日付はない。
一方、データの扱いは公式ドキュメントに書かれている。公式ドキュメントによると、入力データ(画像・動画・テキスト)の処理は端末内で完結し、Googleのサーバーには送られない。一方で、バグ修正や更新モデル、アクセラレータの互換情報を受け取るためにGoogleのサーバーへ接続することがあり、性能・利用状況の指標(端末情報、端末識別子、アプリのパッケージ名など)もGoogleに送られる。アプリ開発者は、この指標データの扱いをユーザーに伝える責任がある、とドキュメントは書いている。
筆者はこのAPIを自分で動かしておらず、速度とサイズはGoogleの説明をそのまま伝えている。
今回読んだ4つのページ
- Smaller apps and faster GPU inference with LiteRT in Google Play services(Google Developers Blog、2026年10月28日)
- LiteRT in Google Play services(Google AI Edge)
- LiteRT: Maximum performance, simplified(Google Developers Blog、2025年5月20日)
- skills/device-ai/litert(android/skills、GitHub)
確認した時刻は日本時間2026年10月29日5時21分前後。本記事は続報があり次第更新します。
この記事でよく聞かれること
- Google Play services版のLiteRTとは何ですか?
- Googleによると、Androidで自作モデルをオンデバイス推論するためのランタイムで、1日に1兆回超の推論を数十億台の端末で処理しています。ランタイムをアプリに同梱せず、Play servicesが1つだけ持つ形です。2026年10月28日、新しいCompiledModel APIでのGPU推論が旧TensorFlow Lite GPUデリゲート比で約1.4倍速くなったと発表されました。
- アプリのサイズはどれくらい小さくなりますか?
- ブログでは「Googleのテストでは、Play services版へ切り替えたアプリは約8MB小さくなった」としています。公式ドキュメントは「最大約8MB」と書いており、ランタイムとGPUバイナリをAPKから外せるためです。アプリごとの削減量は、同梱していた内容によって変わると考えられます。
- どのAndroid端末で動きますか?
- ブログによると、スマートフォンはAndroid 7(API level 24)以降で動き、新たにWear OS 4以降とAndroid Automotive OS(Android 11以降)にも対応しました。GPUが使えない端末では、GPUとCPUの両方を指定していればCPUに切り替わります。Google Play servicesのない端末では、公式ドキュメントは単体版LiteRTを使うよう案内しています。
- 既存のTensorFlow LiteやGPUデリゲートのコードはどうなりますか?
- ブログによると、旧GPUデリゲートとカスタムデリゲートのAPIは非推奨で、NNAPIは2027年から削除されます。出荷済みのアプリは動き続けますが、非推奨APIを使うコードは最新SDKではコンパイルできません。旧Interpreter APIのコードはplay-services-litertに切り替えてもCPUでは動き続け、GPUを使うにはCompiledModel APIへ移る必要があります。
出典・参照資料
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