2026年9月4日 金曜日
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動画編集でAIを使うと著作権はどうなるか──生成部分と編集部分を分けて考える

文化庁「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日)は、AI生成物を使った作品の中で著作物性が問題になるのは、AIが生成した部分だけであり、人間が創作した他の部分には影響しないと整理している。動画編集AIの生成延長やAI動画生成機能をこの枠組みに当てはめて考えた。

動画編集でAIを使うと著作権はどうなるか──生成部分と編集部分を分けて考える
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「動画編集 ai 著作権」で検索する人が知りたいのは、おそらく「AI機能を使って作った動画を公開・収益化してよいか」だろう。この問いに直接答えている法律・ガイドラインは存在しないが、文化庁が2024年3月15日に公表した「AIと著作権に関する考え方について」には、AI生成物を含む作品の著作権をどう考えるかという、動画編集にもそのまま当てはまる整理が書かれている。この記事では、その整理を実際のAI編集機能(生成延長・AI動画生成など)に当てはめて考える。

  • 文化庁の考え方によれば、AI自身は著作者になれない(法人格を持たないため)。AIを使って著作物を「創作した人」が著作者になる
  • 一つの作品の中でAI生成物が一部分に使われた場合、著作物性が問題になるのはその一部分だけ。仮にその部分の著作物性が否定されても、人間が創作した他の部分の著作物性には影響しない
  • この記事は文化庁の一般的な考え方を動画編集の場面に当てはめて整理したものであり、動画編集ソフトのAI機能を名指しした公式見解ではない。法的助言でもない

AIは著作者になれない、という前提

文化庁の資料は、著作権法の定義から出発する。著作権法上「著作物」は「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(著作権法第2条第1項第1号)と定義されており、AI生成物が著作物にあたるかは、この定義に該当するかどうかで判断される。

そのうえで「著作者」は「著作物を創作する者をいう」(同項第2号)と定義されているが、AIは法的な人格を持たないため、この「創作する者」にはなり得ない。文化庁の資料はこう整理している。

AI 生成物が著作物に該当すると判断された場合も、AI 自身がその著作者となるものではなく、当該 AI を利用して「著作物を創作した」人が当該 AI 生成物(著作物)の著作者となる。

つまり、動画編集ソフトのAI機能を使って何かを生成した場合でも、権利の帰属先として検討されるのは常に「それを使った人間」であり、ソフトウェアやAIモデル自体ではない、という前提がある。

一つの動画の中でも「AI生成部分」だけが問題になる

この記事の核心はここにある。文化庁の資料には、複合的な作品の中にAI生成物が一部だけ使われている場合の考え方が明記されている。

人間による、ある作品の創作に際して、その一部分に AI 生成物を用いた場合、以下で検討する AI 生成物の著作物性が問題となるのは、当該 AI 生成物が用いられた一部分についてであり、仮に当該一部分について著作物性が否定されたとしても、当該作品中の他の部分、すなわち人間が創作した部分についてまで著作物性が否定されるものではない。

これを動画編集に当てはめると、例えば自分で撮影した映像・自分で書いた台本・自分で読んだナレーションで構成された動画の一部分に、AI機能で生成した数秒の映像(後述する「生成延長」のような機能)を挿入した場合、著作物性が問題になるのはAIが生成したその数秒間だけであり、自分で撮影・編集した残りの部分の著作権には影響しない、という整理になる。逆に言えば、AI生成部分を「使わない」という選択肢もあるし、AI生成部分だけを別扱いで考えればよい、ということでもある。

なお文化庁は、AI生成物であることを示すウォーターマークが付いているなど「生成 AI を利用し作成されたものであることが明らかであることや、作品の一部について著作物性が否定される要素があったとしても」、作品全体の著作物性の考え方に影響するわけではない、とも付け加えている。

著作物性が認められるかどうかを左右する3つの要素

では、AI生成部分そのものに著作物性が認められるかどうかは何で決まるのか。文化庁の資料は、生成AIへの指示の具体性と著作物性の関係について、次の3つの要素を挙げている。

① 指示・入力(プロンプト等)の分量・内容

AI 生成物を生成するに当たって、創作的表現といえるものを具体的に示す詳細な指示は、創作的寄与があると評価される可能性を高めると考えられる。他方で、長大な指示であったとしても、創作的表現に至らないアイデアを示すにとどまる指示は、創作的寄与の判断に影響しないと考えられる。

② 生成の試行回数

試行回数が多いこと自体は、創作的寄与の判断に影響しないと考えられる。他方で、①と組み合わせた試行、すなわち生成物を確認し指示・入力を修正しつつ試行を繰り返すといった場合には、著作物性が認められることも考えられる。

③ 複数の生成物からの選択

単なる選択行為自体は創作的寄与の判断に影響しないと考えられる。

さらに、人間がAI生成物に「創作的表現といえる加筆・修正を加えた部分については、通常、著作物性が認められると考えられる」ともされている。つまり、AIに一発で生成させて何も手を加えずに使うより、生成結果を確認しながら指示を練り直し、さらに人間が手を加えて仕上げる方が、その部分に著作物性が認められる可能性は高くなる、という整理だ。

動画編集AIの機能をこの枠組みに当てはめると

ここからは、この記事独自の整理として、実際の動画編集AI機能をこの枠組みに当てはめて考える。あくまで一般的な考え方の応用であり、文化庁が動画編集ソフトを名指しして判断を示しているわけではない点に注意してほしい。

新しい表現を生成する機能(Premiere Proの生成延長でクリップの端に新しいフレームを追加する、PowerDirectorの「AI画像から動画生成」で静止画に動きを加える、といった機能)は、文化庁の枠組みでいう「AI生成物」そのものにあたる可能性が高い。生成結果をどれだけ具体的に指示し、確認しながら調整したかによって、その部分の著作物性の有無が変わりうる。

既存の素材を加工・補正する機能(DaVinci ResolveのSuper Scaleによる高画質化、ノイズ除去、自動色補正、CapCutの背景削除など)は、新しい創作的表現を生成しているというより、自分で撮影・録音した素材の見た目・聞こえ方を調整しているだけだ、と捉えることもできる。この場合、素材そのものの著作権(撮影者・録音者に帰属)には、AIによる加工の有無自体が直接影響するわけではないと考えられる。ただし、この整理は文化庁の資料に明記された結論ではなく、本記事による当てはめであることを重ねて断っておく。

「業務外利用者(一般利用者)」向けの実務チェックリスト

文化庁著作権課は2024年7月31日、上記の「考え方」を踏まえた実務向けの補足資料「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」を公表している。この資料は、AI開発者・AI提供者・AI利用者(業務利用者)・業務外利用者(一般利用者)という4つの立場ごとにチェック項目を整理しており、動画編集AIを個人で使う場合は主に「業務外利用者(一般利用者)」の章が該当する。この章から、動画編集の実務に直結する項目を要約する。

チェック項目 内容の要約
4-1-3 入力が「非享受目的」の要件を満たすか 既存の著作物をAIへの入力(プロンプトの一部、Image to Imageの元画像等)として使う場合、通常は著作権法第30条の4(情報解析目的)が適用され許諾不要。ただし「入力した既存の著作物と類似する生成物を生成させる」目的が併存する場合は、この例外が適用されない
4-1-4 「生成」と「利用」は著作権法上の扱いが異なる 私的使用目的の生成(第30条第1項)や社内検討過程の生成(第30条の3)は許諾不要でも、その生成物をインターネット配信・複製物の譲渡などで「利用」する段階は、これらの権利制限規定の対象外になる場合が多い
4-1-5 既存の著作物と類似していないか確認 著作権侵害の要件は「類似性」と「依拠性」の両方。生成物を利用する前に、インターネット検索(文章検索・画像検索等)で既存の著作物と類似していないか確認することが望ましい
4-1-6 プロンプト等、生成過程を確認可能な状態にしておく 既存の著作物のタイトル・キャラクター名などの固有名詞を入力した場合は「依拠性」を推認させる間接事実になりうる。依拠性がないことを説明できるよう、生成に使ったプロンプト等を記録しておくことが望ましい
4-1-7 「私的使用目的の複製」等の範囲内か確認 個人的・家庭内などの限られた範囲で使う「私的使用」目的であれば、既存の著作物と類似していても原則として権利者の許諾は不要

動画編集の場面に当てはめると、例えば「気に入った既存のイラストや映像に似せた生成」を狙って動画編集AIの生成機能を使う場合は4-1-3の「非享受目的」の要件を満たさない可能性があり、YouTube公開のように私的使用の範囲を超えて生成物を配信する場合は4-1-4・4-1-7の対象になる、という整理になる。

学習段階の論点はこの記事では扱っていない

著作権とAIの関係には、もう一つ大きな論点がある。動画編集AIが学習に使ったデータそのものの著作権処理(著作権法第30条の4による情報解析目的の利用の扱い)だ。この論点は動画編集AIにも当てはまるが、既にAI画像生成と著作権──日本の法律はどうなっている?で詳しく扱っているため、本記事では割愛する。生成AI全般の著作権をめぐる動向は生成AIと著作権──2026年の最新動向も参照してほしい。

著作物性がなくても保護される場合がある

文化庁の資料には、著作物性が否定された場合の扱いについても触れられている。

著作物性がないものであったとしても、判例上、その複製や利用が、営業上の利益を侵害するといえるような場合には、民法上の不法行為として損害賠償請求が認められ得ると考えられる。

これは最高裁判例(北朝鮮事件・最判平成23年12月8日)を根拠に挙げている整理で、AI生成部分に著作権法上の著作物性が認められなかったとしても、それを無断で複製・利用する行為が別の法的責任(不法行為に基づく損害賠償)を生む可能性は残る、という内容だ。「著作物じゃないから何をしても自由」ということにはならない、という点は覚えておく必要がある。

自分の動画制作でAI生成部分をどう扱っているか

筆者は自分のYouTube解説動画で、AI画像生成ツールで作った図解イラストと、自分で撮影・編集した映像素材を組み合わせている。運用として意識しているのは、AI生成した図解については「AI生成」であることが分かるようスタイルを統一し、自分で書いた台本・自分で読んだナレーション・自分で組んだ編集の部分とは、動画の企画・構成そのものが人間の創作であることを前提に切り分けて考えていることだ。今回文化庁の資料を確認して、この「AI生成部分だけを切り出して考える」という自分の運用感覚が、公式の整理とおおむね一致していることを確認できた。

動画編集ソフトを名指しした裁判例は見つからなかった

この記事は文化庁が公表した一般的な考え方を、動画編集AIの機能に当てはめて整理したものであり、動画編集ソフトのAI機能そのものについての裁判例・行政の公式見解は、今回確認した範囲では見つからなかった。これは本記事の調査不足だけが理由ではなく、「考え方について」の概要版PDF自体が「著作権法の解釈は、本来、個別具体的な事案に応じて、司法により行われるべきものですが、現時点では、生成AIに関するものを含め、AIと著作権の関係を直接的に取り扱った判例や裁判例が未だ乏しい状態です」(令和6年4月時点)と明記しており、そもそも参照できる判例の蓄積自体が薄いことが背景にある。「生成延長で追加した数秒間に著作物性が認められるか」といった個別の判断は、実際の事案ごとに変わりうる。チェックリスト&ガイダンス自体も「記載どおりに実施しなければ直ちに法的責任が生じる、あるいは全て実施すれば法的責任を問われない、ということを意味するものではない」と明記しており、あくまでリスク低減の考え方の紹介にとどまる。本記事は法的助言ではなく、実際の利用で判断に迷う場合は弁護士など専門家に確認することをすすめる。

確認した文化庁の資料

考え方は今後の判例の蓄積や技術の発展によって見直される可能性がある。文化庁自身も資料の中で「今後、著作権侵害等に関する判例・裁判例をはじめとした具体的な事例の蓄積...が予想されることから、これらを踏まえて引き続き検討を行っていく必要がある」としている。最新の状況は文化庁公式サイトで確認してほしい。

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