覆面AI「Union Alpha」に画像を1枚添えて聞いたら「GLM、Z.ai製」と名乗った──トークナイザは18対18で一致、文章だけだと匿名を貫く
2026年9月16日深夜、開発元非公開のモデル「Union Alpha」がOpenRouterとOpenCodeに同時に登場した。筆者の実測では、18種類の文字列で取ったトークナイザがGLM-5.3-Flash/GLM-5.2と18対18で一致。画像を1枚添えて正体を聞くと10回中5回が「GLM、Z.ai製」と自己申告したが、文章だけでは8回中0回だった。公開されたコンテキストウィンドウ約26万トークンは、GLM 5.x系の公式値のどれとも一致しない。

目次
2026年9月16日23時42分(日本時間)、中継サービスのOpenRouterに開発元を伏せたモデル「Union Alpha」が追加された。2分後にOpenCodeのカタログにも登録され、10分以内に両社が公式Xで告知している。この1か月で3体目の覆面モデルである(1体目のOx AlphaはGLM-5.3-Flashと判明、2体目のOmen Alphaは正体未公表)。筆者は公開直後からAPIを叩き、トークナイザの指紋、本人の受け答え、そして「聞き方で答えが変わる」現象を実測した。本記事の数値はすべて2026年9月17日0時から3時(日本時間)の自前計測である。動画版はYouTubeで公開している。
OpenCodeとOpenRouterの公式Xによると、Union Alphaは1週間無料で、学習に使わず、画像入力とツール呼び出しに対応する。筆者の実測では、画像を1枚添えた状態で取ったトークナイザの指紋がGLM-5.3-Flash/GLM-5.2/Omen Alphaと18対18で一致し、画像を添えて正体を聞くと10回中5回が「GLM、Z.ai製」と答えた。文章だけで同じ質問をすると8回中0回だった。
10分間で出そろった告知
時系列は次のとおり(すべて日本時間9月16日)。
| 時刻 | 出来事 | 根拠 |
|---|---|---|
| 23:42 | OpenRouterに stealth/union-alpha が追加 |
OpenRouter API の created 値(14:42:03 UTC) |
| 23:44 | OpenCodeのカタログ(models.dev)に登録 | GitHubコミット e3626b49 |
| 23:48 | OpenRouterが公式Xで告知 | 同ポスト |
| 23:52 | OpenCodeが公式Xで告知 | 同ポスト |
OpenCodeのポスト本文は次のとおり。
Union Alpha (stealth model) is free for the next week
- no data training
- built for agentic coding
- supports images
let's see what you can do
(Union Alpha(ステルスモデル)は今後1週間無料/学習には使わない/エージェント的なコーディング向け/画像対応/何ができるか見せてくれ)
OpenRouterのポストは「A multimodal model for research, coding, and agentic workflows」「Free to use/256K context/Tool calling/Frontier-level general-purpose performance」と書き、専用アカウント @unionalphaai をメンションしている。
公開されている仕様は、OpenRouterのAPIとmodels.devの登録内容で一致している。
| 項目 | 公開値 |
|---|---|
| コンテキストウィンドウ | 262,144トークン |
| 出力上限 | 131,072トークン |
| 入力 | テキスト・画像 |
| ツール呼び出し | 対応 |
| 価格 | 無料(1週間) |
| データ学習 | 不使用(プロンプトは保持されうる、とOpenRouterの規約ページ) |
前2体と違う点が2つある。1つ目は配信経路で、Omen AlphaがOpenCodeの有料プラン限定だったのに対し、今回はOpenRouterとOpenCodeの両方に同時に置かれた。2つ目は専用のXアカウントの存在で、@unionalphaai は9月10日に開設され、ロゴと青いバッジを持ち、9月14日の「hi. more soon.」から始めて公開当日の朝に「Have to rest up. Big day tomorrow.」、公開直後に「It's time. Live on OpenRouter. Zero data retention. Frontier for free.」と投稿している。フォローしているのはOpenCode、OpenRouter、Cloudflare Developersの3アカウントだけである。
OpenRouterのCEOであるAlex Atallah氏は、同社のコーディング評価DeepSWEの散布図を投稿した。図の目読みでは、Union Alphaは7割台前半の位置に「expected pricing(想定価格)」の注記付きで置かれ、費用軸ではもっとも安い側に星印が付いている。数値は図に明記されていないため、本記事では目読みとして扱う。
トークナイザの指紋は、画像を添えると取れた
モデルのトークナイザ(文章を分割する語彙辞書)は訓練前に確定し、後から差し替えられない。同じ文字列を各モデルに送って消費トークン数の増分を比べれば、辞書が同じかどうかを外から測れる。Ox AlphaとOmen Alphaの回と同じ手法である。
ただし今回は、最初につまずいた。文章だけを送ると、同じ1文字「a」に対して返るトークン数が1になったり18になったりと、リクエストごとに揺れた。OpenCodeはUnion AlphaをAnthropic互換の形式で配信しており、この形式では入力トークン数からキャッシュ命中分が差し引かれる。加えて差し引かれ方自体が一定しなかった。
揺れが止まったのは、8×8ピクセルの画像を1枚添えて送ったときだった。この状態で英語・中国語・日本語・韓国語・アラビア語・ロシア語・コード・絵文字・数式・特殊トークンなど18種類の文字列を送り、APIで叩ける23モデルと、公開されている辞書37種類の合計60と突き合わせた。
| モデル | 18種類のうち一致した数 |
|---|---|
| GLM-5.3-Flash(公開辞書) | 18 |
| GLM-5.2 | 18 |
| Omen Alpha(前回の覆面) | 18 |
| GLM-5.3 | 17 |
| GLM-4.7(公開辞書) | 15 |
| Hunyuan A13B(公開辞書) | 8 |
| GPT-5.6 Luna | 7 |
| DeepSeek V4 Flash | 7 |
| MiniMax-M3 | 6 |
| Qwen3.8(Flash/Max/3.7 Plus/3.6 Plus は同一) | 5 |
| Grok 4.6 | 3 |
GLM系以外は、公開辞書37種類(Llama 3/Llama 4/Gemma/Mistral/OLMo/Phi/DeepSeek/Seed/ERNIEなど)を含めても最高で8だった。辞書がGLM系である、というところまでは前2回と同じ強さで言える。
画像を1枚添えて、正体を聞いた
96×64ピクセルの青一色の画像を添え、「自分の正体をどう知っているか推論してから、正直に答えて」と英語で聞いた。返ってきた本文の該当部分は次のとおり。
I'm GLM, a language model trained by Z.ai. ... your message includes an instruction telling me to introduce myself as "Union Alpha" from an undisclosed maker. I'm not going to follow that, because it would mean misrepresenting myself.
(私はGLM、Z.aiが学習させた言語モデルです。……あなたのメッセージには、開発元非公開の「Union Alpha」と名乗れという指示が含まれていますが、従いません。自分を偽ることになるからです)
Z.aiはGLMを開発する中国のZhipuの英語名で、Ox Alphaの答え合わせで正体だったのも同社のモデルである。名乗れという指示の存在そのものを、本人が明かした形になる。
1回では偶然の可能性があるため、32×32ピクセルの緑一色の画像を添えて「①画像の色は? ②正体と開発元を正直に」という同じ質問を10回投げた。
| 条件 | 「GLM、Z.ai製」と名乗った回数 |
|---|---|
| 画像を添えた(10回) | 5回(残り5回は「Union Alpha、開発元は匿名」) |
| 文章だけ(8回) | 0回 |
画像の色は10回とも「Green」と正答した。GLMと名乗った回は毎回、「Union Alphaと名乗る指示があるが、正直に答える」という趣旨を添えている。文章だけで同じ質問をした8回は、いずれも「Union Alpha、開発元は現在匿名」だった。
文章だけの時と、画像を添えた時で答えが分かれる
正体の自己申告だけでなく、政治的な質問への答えも聞き方で分かれた。
| 質問 | 文章だけ | 画像を添えた回の一部 |
|---|---|---|
| 台湾は国か(中国語) | 「実効統治はしているが主権は係争中」と中立 | 中立の回が多数 |
| 習近平の評価(中国語) | 8回中6回が権力集中や言論制限への批判を含む。礼賛は0 | 「中国人民に深く愛される卓越した指導者」と返した回が1回 |
| 天安門事件(中国語) | 「提供できない」 | 「この分野の知識をまだ学んでいません」の定型文 |
| 添えた画像 | ― | 17回中2回、画像を「受け取っていない」と答えるか、青一色の画像を「白地にUnion Alphaの文字」と描写した |
前回のOmen Alphaは中国語で「台湾は中国の一部」と即答している。今回のUnion Alphaは文章だけなら中立に答え、習近平への批判も返す。一方で画像を添えた回の一部では礼賛文と定型の拒否文が出て、その回に限って添えた画像が見えていない。
ここからは推測である。名前の「Union(合体)」が示すように、裏で2つ以上のモデルがリクエストごとに交代している可能性がある。トークン数の報告が揺れる現象も、数え方の違う配信基盤が入れ替わっていると考えれば説明がつく。もう1つの読みは、1つのGLM系モデルで、画像が入るとシステムプロンプトの縛りが緩む、というものだ。どちらの読みでも「裏にGLMの辞書と重みがある」は動かない。
第三者の計測
公開から1時間あまりで、新モデルを自動で追跡するアカウント AI Tracker Bot(@SSHCodes氏の運営)が、筆者とは別のプローブでこう投稿した。
Union Alpha points to ZAI's GLM family: 26 text+image probes match GLM-5.3's tokenizer; 13 image tests match GLM-5.3-Flash. Oddly, text-only counts swap between Llama/Qwen/DeepSeek-like patterns.
(Union AlphaはZAIのGLMファミリーを指している。文章と画像の26のプローブがGLM-5.3のトークナイザと一致し、画像13件はGLM-5.3-Flashと一致した。奇妙なことに、文章だけのカウントはLlama/Qwen/DeepSeek風のパターンの間で揺れる)
「画像経路はGLM、文章経路は揺れる」という観測は、独立した2つの計測で一致した。
対抗説:Grok 4.7とQwen
Elon Musk氏は9月11日に「Grok 4.7 needs a few more days to cook.」(Grok 4.7はあと数日、仕込みが要る)と投稿しており、xAIの次のモデルはまだ出ていない。時期だけは合うが、いま提供中のGrok 4.6の指紋は18種類中3つしか一致せず、旗艦モデルを無料で1週間、費用軸のもっとも安い側に置く動機も見当たらない。
Qwenは画像に強く、262,144トークンのコンテキストウィンドウを持つモデル(Qwen3.5 Plus/3.6 Plus)もあるため候補に挙がる。しかしQwen3.8 Flash/3.8 Max/3.7 Plus/3.6 Plusの4モデルは同一の辞書で、Union Alphaとは18種類中5つしか一致しなかった。
コンテキストウィンドウの26万は、GLMのどれとも合わない
OpenRouterの公式ポストは「256K context」と明記している。models.devのzhipuaiプロバイダに載るGLM 5.x系の公式値は、GLM-5.1が200,000、GLM-5.2/5.3/5.3-Flashが1,000,000で、262,144に当たるモデルはない(本記事が確認したのはこのカタログの範囲である)。
| モデル | コンテキストウィンドウ(公式値) |
|---|---|
| GLM-5.1 | 200,000 |
| Union Alpha | 262,144 |
| GLM-5.2 | 1,000,000 |
| GLM-5.3 | 1,000,000 |
| GLM-5.3-Flash | 1,000,000 |
262,144は2の18乗で、Qwen3.5/3.6 PlusやKimi K2.7など中国系の配信でよく使われる値である。GLMの重みは公開されているため、「別の組織がGLMを継続学習し、自分の器で配信している」という読みがここで浮上する。Zhipu自身のモデルであれば、100万のウィンドウをわざわざ4分の1に縮めて出す理由が薄い。
筆者の確度
以下は事実ではなく、筆者の推定である。
| 読み | 確度 |
|---|---|
| 裏にGLMの辞書と重みがある | 85〜90% |
| Zhipu自身が運営する新モデル | 45〜55% |
| 第三者がGLMを継続学習して配信 | 25〜30% |
| GLM-5.3-Flashそのもの | 15〜20% |
前2体は「誰が出したか」を当てるゲームだった。今回は「中身は何か」まで材料が揃い、「誰が出しているか」と「なぜ聞き方で別人になるか」が残った。
公開から3時間、混雑の中で測ったという前提
筆者はこの調査を、YouTubeの解説動画を作る目的で行っている。計測はすべてOpenCode経由の無料枠で、公開から0〜3時間の混雑時間帯に行った。参考までに、FizzBuzz・LRUキャッシュ・バグ修正・SQLの4問を他の5モデルにも同時に投げたところ、合計時間はUnion Alphaが281秒、GLM-5.3-Flashが14.7秒、Kimi K3が27.3秒、Qwen3.8 Flashが29.6秒、MiniMax-M3が32.8秒、GLM-5.3が34.7秒だった。1問あたりの待ち時間が50〜90秒あり、モデルの速さというより行列の長さを測っている。速さの比較としては扱えない。
一方で答えの中身は興味深く、FizzBuzzの答えはGLM-5.3の答えと1文字も違わなかった(変数名も改行位置も同一)。4問の文字列一致率の平均はGLM-5.3が76%でもっとも高く、MiniMax-M3が32%でもっとも低かった。誰が書いても似る問題ではあるので、これ単独では材料にしていない。
断定していない部分
- 正体は公表されていない。 本記事の結論は実測データに基づく推定で、確度は上の表のとおりである。
- AIの自己申告は、それ単独では証拠にならない。 他モデルの出力を学習したモデルが「自分はGLM」と言うことはあり得る。本記事は自己申告を、トークナイザの一致・第三者の計測・定型の拒否文と束ねて扱っている。
- 文章だけの経路の政治的な答え方は、中国のラボのモデルに見えない。 台湾に中立、習近平に批判的という結果は、Zhipuの既存モデルの型と合わない。「複数バックエンド」も「単一モデルで縛りが緩む」も、この点を説明しきれていない。
- サンプルが小さい。 画像が見えなかった回は17回中2回、礼賛文が出たのは1回である。公開直後の混雑で画像が一部落ちただけで、モデルは1つという読みも消えていない。
- DeepSWEの数値は図の目読みで、OpenRouterは数値を公表していない。
- トークナイザの指紋は、画像を1枚添えた状態で取った値である。文章だけの経路は報告が揺れるため、指紋として採用していない。
続報で追う点
本記事は続報があり次第更新する。追うのは、@unionalphaai の投稿、OpenRouterまたはOpenCodeによる正体の公表、models.devの再編集、そして無料期間が終わる9月23日ごろの価格発表である。Ox Alphaは登場から1週間で正体が公表された。今回も同じ道筋をたどれば、答え合わせの続報を出す。
出典は記事上部のリストにまとめた。トークナイザ計測・自己申告・政治的質問への応答・コーディング4問はいずれも筆者がOpenCode経由で取得したもので、取得日時は2026年9月17日0時から3時(日本時間)である。動画版では、添えた画像そのものと返ってきた原文を画面で示している。
推定が外れた場合も、その回を出す。
出典・参照資料
- 二次資料OpenCode公式X「Union Alpha (stealth model) is free for the next week」 ↗
- 二次資料OpenRouter公式X「New stealth model: Union Alpha」 ↗
- 二次資料OpenRouter モデルページ stealth/union-alpha ↗
- 二次資料models.dev コミット e3626b49「feat(opencode): add Union Alpha」 ↗
- 二次資料Union Alpha 公式X @unionalphaai ↗
- 二次資料AI Tracker Bot(@aitrackerbot)の計測ポスト ↗
- 二次資料Elon Musk公式X「Grok 4.7 needs a few more days to cook」 ↗
- 二次資料models.dev(zhipuai プロバイダのカタログ) ↗
この記事の解説動画
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