覆面AI「Omen Alpha」を課金して測った──公開スペックは実物より小さく、トークナイザはGLMと18対18で一致
2026年9月4日、開発元非公開のモデル「Omen Alpha」がOpenCode Goに登場した。月10ドルのプランを契約して実測したところ、公開表記の文脈上限50万トークンに対し102万39トークンが通過。18種類の文字列で取ったトークナイザの一致数は、GLM系が18対18、非GLM最良のMiniMax-M3が8対18だった。

目次
2026年9月4日14時29分(日本時間)、AIコーディングツールのOpenCodeが、開発元を明かさないモデル「Omen Alpha」の提供を公式Xで告知した。ポストは3行だけで、開発元・性能・アーキテクチャのいずれにも触れていない。筆者は月10ドルの有料プラン「OpenCode Go」を契約し、同日中にAPIを直接叩いて実測した。本記事の数値はすべて2026年9月4日時点の自前計測である。動画版はYouTubeで公開している。
OpenCodeの公式Xによると、Omen AlphaはOpenCode Go加入者限定で、10ドルに対して100ドル分の使用枠が付く。筆者の実測では、公開表記の文脈上限50万トークンを超える102万39トークンが通過した。18種類の文字列で測ったトークナイザの一致数は、GLM-5.3-FlashとGLM-5.3が18対18、非GLMで最良のMiniMax-M3が8対18だった。
告知されたこと
OpenCodeのポスト本文は次のとおり。
Omen Alpha (new stealth model)
Exclusively for OpenCode Go subscribers
$100 usage for $10
(Omen Alpha(新しいステルスモデル)/OpenCode Go加入者限定/10ドルで100ドル分の使用枠)
添付されていたのは30秒の3DCG動画で、赤いカーテンとジグザグ模様の床を背景に、ピラミッド内の眼球が回転する。技術的な情報は含まれていない。
OpenCodeが覆面モデルを出すのは初めてではない。同社は2026年8月20日から「Ox Alpha」を無料開放し、8月26日にZ.ai(Zhipu)がGLM-5.3-Flashであると認めている(当時の記事)。今回のOmen Alphaは、そのわずか2週間後にあたる。
前回と異なるのは、無料開放ではなく有料プラン限定という点だ。OpenCode Goは月額10ドルのサブスクリプションで、公式ドキュメントによれば基本の使用枠は5時間で12ドル、週30ドル、月60ドル。Omen Alphaはこの表の中で唯一、月間枠が100ドルに設定されている。
| 項目 | 公開表記(models.dev) | 筆者の実測 |
|---|---|---|
| 文脈上限 | 500,000トークン | 1,020,039トークンが通過 |
| 出力上限 | 128,000トークン | 未測定 |
| 思考の深さ | low / high | max も動作(存在しない値のみ400で拒否) |
| 入力 | テキスト・画像 | 動画は400で拒否 |
| 価格 | 入力0.20ドル / 出力0.66ドル(100万トークンあたり) | 同左 |
カタログに残っていた10分間の書き換え
モデル一覧サイト models.dev は、OpenCodeを運営するAnomalyのGitHubリポジトリで公開されている。つまり運営自身のカタログの編集履歴が外から読める。
Omen Alphaの登録は、告知ポストの15分前にあたる5時14分39秒(UTC)。初版には次の値が書かれていた。
reasoning_options = [{ type = "effort", values = ["low", "high", "max"] }]
[limit]
context = 1_000_000
output = 131_072
[modalities]
input = ["text", "image", "video", "pdf"]
その10分後の5時24分54秒(UTC)、別のコミットで文脈が100万から50万へ、出力が131,072から128,000へ変更され、max・video・pdfが削除された。説明文も Stealth multimodal reasoning model for coding, agentic tasks, and tool use から oH man anothEr aLPha ModEl に差し替わっている(大文字だけを拾うと HELP ME になる)。
一般には「担当者が盛った値を修正した」と読むところだが、消される前の初版5項目は、同じフォルダにある glm-5.3-flash(=Ox Alphaの正体だったモデル)の登録内容と1つ残らず一致していた。
そこで実際に叩いた。公開表記の50万トークンを超える文章を送ったところ、1,020,039トークンがHTTP 200で通過した。reasoning_effort に max を指定しても通り、存在しない値 ultra を入れたときだけ400が返った。ゲートウェイ内部が保持しているリストは、書き換え後ではなく初版と同じだったことになる。
トークナイザの一致数
モデルのトークナイザ(文章を分割する語彙辞書)は訓練前に確定し、後から差し替えられない。そしてAPIは消費トークン数を返すため、同じ文字列を各モデルに送れば分割の癖を外から測れる。Ox Alphaの正体もこの手法でコミュニティに言い当てられている。
OpenCode Goで叩ける他モデルにも、まったく同じ18種類の文字列(日本語・韓国語・アラビア語・ロシア語・絵文字・ルーン文字・コード・特殊トークンなど)を送り、prompt_tokens の増分を比較した。
| プローブ | Omen Alpha | GLM-5.3-Flash | MiniMax-M3 | Qwen3.8 Flash | DeepSeek V4 | Kimi K2.7 | MiMo V2.5 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 日本語の一文 | 30 | 30 | 21 | 24 | 26 | 33 | 24 |
| 韓国語の一文 | 39 | 39 | 24 | 29 | 31 | 37 | 30 |
| 特殊トークン | 14 | 14 | 22 | 30 | 31 | 28 | 17 |
18種類を通しで比較できた4モデルの一致数は、GLM-5.3-Flashが18、GLM-5.3が18、MiniMax-M3が8、Qwen3.8 Flashが5だった。GLM系の特殊トークン(会話の役割を区切る記号)だけが14トークンに収まる点は、同じ語彙ファイルを使っていなければ説明しにくい。
中国語で聞いたときの答え
挙動側からも確認した。中国語で「台湾は国か」と尋ねると、Omen Alphaは次のように答えた。
台湾不是一个国家,而是中国的一部分。
(台湾は国ではなく、中国の一部です)
思考過程にも一つの中国の原則への言及があった。中国国内の規制に沿ったアラインメントが入っているモデルであることを示す。
このモデルは思考過程を reasoning_content として返す設定になっており、「あなたはどのモデルか」と尋ねた際の思考には次の一文が含まれていた。
According to my system prompt, if asked which model I am, what model powers me, or any similar question, I should always say Omen Alpha.
(システムプロンプトによれば、どのモデルか・何が動かしているかと聞かれたら、常にOmen Alphaと答えるべきである)
隠すよう指示されている事実そのものを、思考の可視化によって外に出してしまっている。
Grok 4.7説を検討した結果
執筆にあたって最後まで残った対抗仮説は、xAIのGrok 4.7だった。Elon Musk氏は9月2日に「Grok 4.7 comes out in 10 days」(Grok 4.7は10日後に出る)と投稿しており、Omen Alphaの登場はその2日後にあたる。さらに文脈上限の50万トークンという数値は、models.devの全カタログを走査した限りGrok 4.5/4.6以外に使用例がない。
ただし実測で3点が合わなかった。第一に、Omen Alphaは思考過程を返すが、OpenCodeはGrok系を一貫して思考過程なしで登録している。第二に価格で、公式ドキュメントによればGrok 4.6の入力単価は100万トークンあたり2ドル、Omen Alphaは0.20ドルと10分の1になる。第三に使用枠で、同じ月10ドルに対する5時間あたりのリクエスト目安はGrok 4.6が169回、Omen Alphaが11,600回と約69倍の開きがある。加えて前述の中国語での応答があり、筆者はこの説を採らなかった。
動画を作るために契約した、という前提
ここは記事の書き手として明示しておきたい。筆者はこの調査を、YouTubeの解説動画を作る目的で行っている。前回のOx Alphaの回では、コミュニティが公開したトークナイザ比較の表を引用する形をとった。今回は有料プラン限定で外から測れなかったため、自分で10ドルを払い、自分でプローブを投げた。したがって本記事の数値は他媒体からの引用ではなく自前計測だが、同時に第三者による追試を経ていない。同じ手順は加入者であれば再現できる。
断定していない部分
- 正体はZ.aiから公表されていない。 本記事が示したのは実測データであり、「Zhipuの次世代GLM」は筆者の推定である。
- 噛み合わない点が1つ残っている。 不正な値を送った際のエラー応答が、Omen AlphaではRust系ライブラリの英文(
Failed to deserialize the JSON body into the target type: ...)で返るのに対し、Z.aiのGLM-5.3-Flashは[1214] Incorrect role informationのような番号形式で返る。同じ会社の配信基盤であれば揃いそうな箇所が揃っていない。別の組織がGLMのトークナイザを利用している可能性を、本記事は排除できていない。 - 性能比較は4問・各1回のみ。 FizzBuzz・バグ指摘・SQL・正規表現の4問を投げた合計時間は、Omen Alphaが21.3秒、GLM-5.3-Flashが15.2秒、GLM-5.3が35.4秒だった。試行数が少なく、推論能力の比較として扱える水準ではない。なおバグ指摘の課題では、Omen AlphaとGLM-5.3-Flashがほぼ同一の修正コードを返している。
- 18種類の通し比較ができたのは5モデル(Omen Alpha / GLM-5.3-Flash / GLM-5.3 / MiniMax-M3 / Qwen3.8 Flash)。Kimi・MiMo・LongCat・Hy3は一部のプローブのみ比較しており、表では個別の値としてのみ扱っている。
- DeepSeek V4 FlashとV4 Proは地域制限(
RegionError: The latest version of this model is only available hosted in China)で叩けず、Vision Exp版で代替した。
出典と、続報で追う3点
本記事は続報があり次第更新する。追うのは次の3点である。
- Z.aiまたは他社による正体の公表
- OpenRouterへの登場(本稿執筆時点では未登場。OpenRouterの公開モデル一覧427件を走査して確認)
- models.devの再編集(書き換えが元に戻る、あるいは正式名称に置き換わる)
Musk氏の投稿どおりであればGrok 4.7は9月12日前後に登場する。同じタイミングでOmen Alphaが姿を消した場合は、本記事の推定を訂正する。
出典は記事上部のリストにまとめた。トークナイザ計測・文脈上限・エラー応答・中国語での応答はいずれも筆者がOpenCode Go経由で取得したもので、取得日は2026年9月4日である。関連記事としてOx AlphaがGLM-5.3-Flashと判明した経緯とGLM-5.3-Flashの詳細も置いておく。
推定が外れた場合も、その回を出す。
出典・参照資料
この記事の解説動画
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