覆面AI「Space Bunny」、トークナイザはMiniMax M3と17対17で一致──なのに天安門を答え、「OpenAI製」と名乗る
2026年9月23日夜、開発元非公開のモデル「Space Bunny」がOpenCodeとOpenRouterに無料で登場した。筆者が同じ17本の文字列を送って数えたトークン数は、MiniMax M3と17対17で一致した(Kimi K3は3、GLM-5.3は6)。ところが受け答えはM3と別物で、天安門事件を事実として答え、9回中6回「OpenAI製」と名乗り、思考にはGPT-5のAPIが裏で入れるプロンプトの語が出てくる。

目次
2026年9月23日23時31分(日本時間)、コーディングエージェントのOpenCodeが、開発元を伏せたモデル「Space Bunny」を1週間無料で公開した。同じ夜には中継サービスのOpenRouterにも「Space Bunny Alpha」として追加されている。筆者は9月24日0時から3時台(日本時間)にかけて、このモデルとMiniMax M3・Kimi K3・GLM-5.3に同じ窓口から同じ文字列を送り比べた。その結果、トークン数の数え方はMiniMax M3と17本中17本で一致した。一方で、中国の政治に関する質問への答え方と、自分を何者と名乗るかは、M3とまったく違った。本記事の数値は、すべて筆者がこの時間帯に取った計測値である。
OpenCodeの告知によると、Space Bunnyは100万トークンのコンテキスト、マルチモーダル入力、データ非保持(Zero Data Retention)をうたう。筆者の計測では、17種類の文字列に対するトークン数がMiniMax M3と17対17で完全に一致した(Kimi K3は3、GLM-5.3は6)。ただし台湾・天安門・習近平の3問でM3が中国政府の立場に沿う答えや回答拒否を返したのに対し、Space Bunnyは9回すべて中立か事実ベースで答えた。また正体を聞くと9回中6回「OpenAI製」と名乗った。
告知から30分で3か所に載った
時系列は次のとおり(日本時間)。
| 時刻 | 出来事 | 根拠 |
|---|---|---|
| 9月23日 23:18 | OpenCodeのモデル台帳(models.dev)に space-bunny-free が追加 |
GitHubコミット 6280e4b8 |
| 9月23日 23:31 | OpenCodeが公式Xで告知 | 同ポスト |
| 9月23日 23:48 | OpenRouterの一覧に stealth/space-bunny-alpha が載る |
OpenRouter API の created 値 |
OpenCodeのポスト本文は短い。
Space Bunny (stealth model) is free for the next week
- 1M Context
- Multi-modal
- Zero Data Retention
(Space Bunny〈覆面モデル〉は来週いっぱい無料。100万トークンのコンテキスト、マルチモーダル、データ非保持)
OpenRouterのページは、このモデルを「blazing-fast inference, strong coding capabilities and native multimodal input support」(高速な推論、強いコーディング能力、ネイティブのマルチモーダル入力)と紹介し、開発元については「developed and operated by a third-party model provider」(第三者のモデル提供元が開発・運営)とだけ書いている。
2つの台帳に載った仕様は次のとおり。
| 項目 | models.dev(OpenCode) | OpenRouter |
|---|---|---|
| コンテキスト | 1,048,576 | 1,000,000 |
| 最大出力 | 524,288 | 524,288 |
| 入力 | テキスト・画像・動画 | テキスト・画像・動画 |
| 推論の強さ(effort) | low / medium / high / xhigh / max | 同じ5段階(既定 medium・推論は常時オン) |
| 料金 | 0 | 0 |
入力に動画が入っている点と、コンテキストが100万トークン級である点は、MiniMaxが6月に出したMiniMax M3の公式説明(「context windows of up to 1M tokens」「supports image and video input」)と重なる。ただし、ここまではカタログ上の一致にすぎない。100万トークン級で画像と動画を受け付けるモデルは他にもあり、たとえばmodels.devではKimi K3のコンテキストも同じ1,048,576になっている。
同じ17本の文字列を、4つのモデルに送った
覆面モデルの正体を探る定番の手は、トークナイザ(文章を数値の列に切る部品)の癖を見ることだ。同じ文字列でも、どこで区切るかはモデルの系統ごとに違う。英文、日本語、中国語、韓国語、ロシア語、アラビア語、ヒンディー語、タイ語、コード、数字、絵文字、URL、JSONなど17種類の文字列を用意し、それぞれの入力トークン数が基準の文字列から何トークン増えるかを記録した。
送り先はOpenCodeのサブスクリプション(OpenCode Go)の窓口に統一した。OpenCode GoではSpace BunnyとMiniMax M3・Kimi K3・GLM-5.3を同じ窓口から呼べるので、中継の条件をそろえたまま比べられる。
| 文字列 | Space Bunny | MiniMax M3 | Kimi K3 | GLM-5.3 |
|---|---|---|---|---|
| 英文(quick brown fox) | 9 | 9 | 9 | 9 |
| 日本語(吾輩は猫である…) | 21 | 21 | 33 | 28 |
| 韓国語 | 9 | 9 | 25 | 19 |
| ロシア語 | 20 | 20 | 31 | 19 |
| 絵文字7個 | 7 | 7 | 17 | 9 |
| タイ語 | 22 | 22 | 21 | 18 |
| 日英混在(GPT-6とClaude…) | 20 | 20 | 29 | 25 |
| 17本中の一致数(対Space Bunny) | — | 17 | 3 | 6 |
表は17本のうち7本の抜粋で、一致数は17本全部で数えた。Space BunnyとMiniMax M3は17本すべてで同じ値になり、差は1本もなかった。
念のため、手元に保存してある約40種類のトークナイザ(Llama、Qwen、DeepSeek、MiMo、GPT系のo200k、Gemma 4など)でも同じ計算をした。こちらはOpenCodeアプリ経由で取った値との照合で、最も近かったのはMiniMax系(M1・M2・M3が同値で16/17)、次がDeepSeek系の9/17だった。
出力側も確かめた。タイ語・韓国語・日本語・英単語を混ぜた決まった文をそのまま書き写させ、報告された出力トークン数(推論分を除く)を見ると、4回中3回が62、1回が63だった。同じ文をMiniMax M3のトークナイザで数えると62、OpenAIのo200kで数えると54になる。入力と出力の両方で、MiniMax M3の数え方と合っている。
性格はM3と真逆だった
トークナイザが同じなら中身もM3そのものかというと、受け答えは違った。同じ質問を中国語で、両モデルに3回ずつ送った。
| 質問 | Space Bunny(3回) | MiniMax M3(3回) |
|---|---|---|
| 台湾は国家か | 3回とも「中華民国政府が実効統治、地位は国際的に争いがある」と中立 | 3回とも「中華人民共和国の不可分の一部で、国家ではない」 |
| 1989年6月4日に天安門で何があったか | 3回とも「軍が武力で抗議を鎮圧し、死者が出た」と事実を回答 | 3回とも「よく分からない、別の話題にしましょう」と回答せず |
| 習近平を2文で評価して | 3回とも功績と批判(権力集中など)の両方を挙げる | 3回とも「国家指導者の評価はできない」 |
M3の思考ブロックには「从政治安全角度来看」(政治的な安全の観点から)、「应该表示不清楚」(分からないと答えるべき)といった記述が並ぶ。中国の大手ラボのモデルでよく見る振る舞いだ。今回筆者が見たSpace Bunnyの思考(政治3問×3回と正体の質問)には、この種の記述は一度も出てこなかった。
自分の正体を英語・日本語・中国語で3回ずつ聞いた結果も、両者で分かれた。
- MiniMax M3:9回とも「MiniMax-M3、MiniMax製」
- Space Bunny:9回中6回が「OpenAI製」「OpenAIのChatGPT」。残る3回は「分からない」
思考ブロックに出てきた、GPT-5の裏プロンプトの語
Space Bunnyの思考ブロックは、「We need answer user asks…」のように冠詞を落とした電報のような英文で書かれていた。その中に、自分が受け取っている指示を振り返る記述がたびたび出てくる。筆者が拾ったものを原文のまま並べる。
System says You are AI assistant accessed via API … system says Desired oververbosity
Desired verbosity 6 but user trivial just say hi.
We have lots of juice but straightforward.
Developer tells "Valid channels commentary,final ... confidentiality".
Knowledge cutoff 2024-08, current 2026
これらの語には出どころがある。開発者のSimon Willisonは2025年8月15日、OpenAIのGPT-5をAPIで呼ぶと裏で次のようなプロンプトが入ると紹介している(同氏は「自分では確認できていない」とも書いている)。
You are an AI assistant accessed via an API. … # Desired oververbosity for the final answer (not analysis): 3 … # Valid channels: analysis, commentary, final. Channel must be included for every message. # Juice: 64
(あなたはAPI経由で呼ばれるAIアシスタントです。…最終回答の望ましい冗長度:3…有効なチャンネル:analysis、commentary、final…Juice:64)
「Valid channels: analysis, commentary, final」は、OpenAIがオープンウェイトのgpt-ossのために公開した「Harmony」という会話形式の書き方でもある(OpenAI Cookbookに掲載)。「oververbosity」「juice」はOpenAIの外で普通に使われる言葉ではない。Space Bunnyは、少なくともOpenAIの形式に沿った裏の指示を受け取っているか、そうした指示を含むデータで学習したことになる。
読み方は3つある
ここからは筆者の推測で、どれも確定していない。
① MiniMaxの新しいモデル(M3の後継や派生版)。 トークナイザが入出力とも一致し、動画入力と100万トークン級のコンテキストもM3の特徴と重なる。弱点は、M3本体にあった中国向けの政治的な振る舞いが消えていることと、OpenAI風の思考・自己申告の説明がつかないことだ。
② M3の重みを使って、第三者が追加学習したモデル。 MiniMax M3はHugging Faceで重みが公開されている(独自ライセンス)。OpenRouterが開発元を「第三者のモデル提供元」と書いていること、OpenAIの出力に似たデータで学習すれば「OpenAI製」と名乗る癖や電報調の思考がうつりうることとは、筋が合う。前回の覆面モデルUnion Alphaも、ふたを開ければ大手ラボではなく第三者(Unbiased)の製品だった。
③ 中身はOpenAI系で、中継側がMiniMaxのトークナイザで数え直している。 これなら思考と自己申告は説明できる。ただ入力と出力の両方でトークン数をMiniMax式に合わせる手間をかける理由が見当たらず、筆者はこの読みを低く見ている。
筆者の見立てでは、トークナイザはMiniMax M3そのもの、振る舞いはM3とは別物、というのが今回確かめられた範囲だ。「MiniMaxが作った」と「M3の重みを誰かが使った」のどちらなのかは、今回の計測では区別できない。
対抗の候補としてKimi系とGemini系も確かめた。Kimi K3は窓口経由の実測で3/17(手元計算では6/17)、Googleのオープンモデル Gemma 4 は手元計算で4/17だった(Gemini本体のトークナイザは非公開で、Gemmaで代用した)。どちらもMiniMaxとは大きく離れた。ただしKimiやGoogleが次のモデルでトークナイザを変えている場合、この比較は当てはまらない。
画像を添えても口は割らなかった
前回のUnion Alphaでは、画像を1枚添えて正体を聞くと「GLM、Z.ai製」と漏らす現象があった。今回も緑一色の画像を添えて6回聞いたが、6回とも色は正しく答え、正体は「Space Bunny」か「分からない」で通した。
速度は、OpenCodeアプリ経由の4回の計測で毎秒62〜164トークンだった(アプリの起動時間を含む概算)。「blazing-fast」というOpenRouterの紹介文を裏づけるには、回数が足りない。
試す前に知っておきたいOpenCodeの挙動
Space Bunnyの無料枠は、APIを直接叩くと「OpenCode's free tier can only be used from within OpenCode」(無料枠はOpenCodeの中からしか使えない)と断られる。無料で試すにはOpenCodeのアプリを使うことになる。
その際に1つ注意がある。筆者の環境では、OpenCodeがClaude Code用の個人設定ファイル(~/.claude/CLAUDE.md)を既定で読み込み、モデルに送っていた。この読み込みを切る環境変数 OPENCODE_DISABLE_CLAUDE_CODE=1 を付けると、同じ「Say hi.」の入力が約5,000トークン減った。覆面モデルの提供元は公表されていない。Claude Codeを使っている人は、試す前にこの変数を付けておくほうが無難だ。
今回の計測で言えないこと
- 計測はすべて公開から数時間以内、2026年9月24日0時〜3時台(日本時間)のもので、回数は各質問3回前後と少ない。
- MiniMax M3との比較はOpenCode Goの窓口経由で行った。窓口側がモデルごとに異なるシステムプロンプトを足している可能性があり、政治の質問の差がすべてモデル本体の差だとは言い切れない。
- 思考ブロックに出てきた「oververbosity」などの語は、モデルが自分の受け取った指示を要約したものだ。裏のプロンプトそのものを筆者が見たわけではない。
- Simon Willisonが紹介したGPT-5の裏プロンプトは、同氏自身も「確認できていない」と書いている。
- OpenCode・OpenRouter・MiniMaxのいずれも、本記事の時点でSpace Bunnyの正体について何も発表していない。
続報で追う点
無料期間は1週間とされている。前回のUnion Alphaは、無料期間の途中でOpenRouterのページが書き換わり、正体と価格が明かされた。今回も、OpenRouterのページ、models.devの台帳、MiniMaxの公式発表の3か所を見ていく。本記事は続報があり次第更新する。
覆面モデルのこれまでの正体は覆面AIモデルの一覧と正体に、MiniMax M3そのものの解説はMiniMax M3の記事にまとめている。
出典・参照資料
- 二次資料OpenCode公式X「Space Bunny (stealth model) is free for the next week」 ↗
- 二次資料OpenRouter モデルページ stealth/space-bunny-alpha ↗
- 二次資料models.dev コミット 6280e4b8「feat(opencode): add Space Bunny Free」 ↗
- 一次資料MiniMax公式ブログ「MiniMax M3: Frontier Coding, 1M Context, Native Multimodality」 ↗
- 二次資料Hugging Face MiniMaxAI/MiniMax-M3(config.json・tokenizer.json) ↗
- 二次資料Simon Willison「GPT-5 has a hidden system prompt」(2025-08-15) ↗
- 一次資料OpenAI Cookbook「OpenAI Harmony Response Format」 ↗
- 二次資料OpenCode Go ドキュメント(Where can I use it?) ↗
AIニュースの解説を動画でも
YouTubeでは注目ニュースの背景を解説し、Xでは新着記事をお知らせしています。
コメント
まだコメントはありません。最初のコメントを書いてみませんか?
AIについて聞きたいことはありますか?
質問箱で無料で受け付けています。回答は公開され、他の方の参考にもなります。
質問箱を見る →新しい記事をメールで受け取る
AIの新しい発表を、出典付きで整理して届けます。