覆面AI(ステルスモデル)とは──Ox Alpha・Omen Alpha・Union Alphaの一覧と正体、トークナイザで見分ける方法【2026年9月】
「○○ Alpha」と名乗る開発元非公開のAIモデルが、OpenRouterやOpenCodeに数週間おきに現れている。2026年8月のOx AlphaはZ.aiがGLM-5.3-Flashと公式に認め、9月のOmen AlphaとUnion Alphaは当サイトの実測でトークナイザがGLM系と18対18で一致した(正体は未公表)。覆面モデルとは何か、なぜ無料で配るのか、これまでの7体の一覧と正体、消費トークン数から出自を推定する手順を1本にまとめる。

2026年9月17日時点の情報です。「Ox Alpha」「Omen Alpha」「Union Alpha」──2026年8月以降、開発元を明かさない「○○ Alpha」という名前のAIモデルが、OpenRouter(モデル中継サービス)やOpenCode(コーディングエージェント)に数週間おきに現れている。当サイトはその3体を登場当日に個別記事にしてきた(Ox Alpha・Omen Alpha・Union Alpha)。この記事は、覆面モデルという仕組みそのものと、これまでの一覧、正体の当て方を1本にまとめたもので、新しい覆面が出るたびに表を足していく。
3行まとめ
- 覆面モデル(ステルスモデル)は、開発元を伏せて「○○ Alpha」の名で配信される新モデルのテスト版。無料か格安で数日〜数週間使わせ、利用データを集めたあとに本人が名乗り出る、という型が続いている。
- 2026年2月以降で7体。正体が公表されたのは5体で、いずれも中国のラボ(Zhipu/Xiaomi/Ant/美団/Zhipu)。9月のOmen AlphaとUnion Alphaは未公表だが、当サイトの実測でトークナイザがGLM系と18対18で一致した。
- 正体の当て方は「同じ文字列を各モデルに送り、消費トークン数を比べる」。語彙辞書は訓練前に確定して差し替えられないので、指紋のように使える。当サイトは18種類の文字列でこれをやっている。
覆面モデルとは何か
OpenRouterのモデル一覧には stealth/ というカテゴリがあり、開発元を明かさないモデルがそこに置かれる。OpenRouter自身が2025年4月に、当時の覆面「Quasar Alpha」「Optimus Alpha」がOpenAIのGPT-4.1だったと種明かしをしており、この仕組みは中国ラボに限ったものではない。
共通するのは次の3点だ。
- 名前:動物などの単語+「Alpha」。開発元はモデルカードにもAPIにも書かれない
- 配り方:一定期間は無料か格安(Union Alphaは「今後1週間無料」、Omen AlphaはOpenCode Goの月10ドル枠で「10ドルで100ドル分」)
- 狙い:OpenRouter公式やOrcaRouterの整理によれば、公開前のモデルを大量の実トラフィックで試すこと。Ox Alphaの記事では「ブランドの不在こそがマーケティング」という見方も書いた。無料で使わせて話題が最高潮になった頃に本人が名乗り出る
これまでの覆面モデル一覧(2026年)
| 名前 | 登場 | 配信先 | 正体 | 根拠・確度 |
|---|---|---|---|---|
| Pony Alpha | 2月 | OpenRouter | Zhipu「GLM-5」(7,440億パラメータ) | 各社発表ベース(OrcaRouterの整理)。公表まで約5日 |
| Hunter Alpha | 3月 | OpenRouter | Xiaomi「MiMo-V2-Pro」 | 同上。公表まで数週間 |
| Elephant Alpha | 4月 | OpenRouter | Antグループ「Ling-2.6-flash」 | 同上。公表まで約2週間 |
| Owl Alpha | 4月末 | OpenRouter | 美団「LongCat-2.0」 | 同上。公表まで約2か月 |
| Ox Alpha | 8月21日 | OpenRouter・OpenCode(1週間無料) | Z.ai「GLM-5.3-Flash」 | 公式が明言(Z.ai公式X・8月26日)。登場から公表まで5日 |
| Omen Alpha | 9月4日 | OpenCode Go限定(月10ドル) | 未公表 | 当サイト実測:トークナイザがGLM-5.3-Flash/GLM-5.3と18対18一致。公開表記50万トークンに対し102万トークンが通過 |
| Union Alpha | 9月16日 | OpenRouter・OpenCode(1週間無料) | 未公表 | 当サイト実測:GLM-5.3-Flash/GLM-5.2と18対18一致。画像を添えて正体を聞くと10回中5回「GLM、Z.ai製」と自己申告、文章だけでは8回中0回 |
Pony〜Owlの4体の正体はOrcaRouterの整理(各社の発表ベース)によるもので、当サイトは個別に追試していない。Ox Alpha以降の3体は当サイトが登場日に測っている。
正体が公表された5体はすべて中国のラボで、Ox Alphaの記事を書いた時点で「この半年の匿名モデル4体は、すべて中国ラボだった」と書いたが、その後も傾向は変わっていない。ただしOmen AlphaとUnion Alphaについては、GLM系の語彙辞書を使っていることまでは言えても、それがZ.aiの次期モデルなのか、GLMの辞書を流用した別の何かなのかは決められない。Union Alphaの公開コンテキストウィンドウ(262,144トークン)は、GLM 5.x系の公式値のどれとも一致していない。
正体の当て方──トークナイザの「指紋」
AIモデルは文章を「トークン」という細切れに刻んでから処理する。刻み方を決める語彙辞書は各社が自前のデータから作り、訓練前に確定して後から差し替えられない。だから同じ文字列を各モデルに送って消費トークン数を比べれば、辞書が同じかどうかを外から測れる。APIは prompt_tokens(消費した入力トークン数)を返すので、モデルの中身を見なくても済む。
Ox Alphaのときは開発者のSushaanth Srinivasan氏が11種類のテスト文で10モデルを比べ、GLM-5.3とGLM-5.2だけが11項目すべて一致した。数字だらけの文をDeepSeekは98トークンに刻むのに対し、GLMは29トークン、Ox Alphaも29ぴったり、という具合だ。当サイトはこの方法を18種類の文字列(日本語・韓国語・アラビア語・ロシア語・絵文字・ルーン文字・コード・数式・特殊トークンなど)に広げて、Omen AlphaとUnion Alphaで使った。
| プローブ(例) | Omen Alpha | GLM-5.3-Flash | MiniMax-M3 | Qwen3.8 Flash |
|---|---|---|---|---|
| 日本語の一文 | 30 | 30 | 21 | 24 |
| 韓国語の一文 | 39 | 39 | 24 | 29 |
| 特殊トークン | 14 | 14 | 22 | 30 |
18種類を通した一致数は、Omen AlphaでGLM-5.3-Flash 18・GLM-5.3 18・MiniMax-M3 8・Qwen3.8 Flash 5。Union AlphaではGLM-5.3-Flash 18・GLM-5.2 18・GLM-5.3 17で、GLM系以外は公開辞書37種類(Llama・Gemma・Mistral・DeepSeekなど)を含めても最高8だった。特に「会話の役割を区切る特殊トークンがGLM系だけ14トークンに収まる」点は、同じ辞書でなければ説明しにくい。
手順は次の通り(当サイトの実測手順)。
- 短い文字列を18種類ほど用意する(言語・記号・コードを混ぜる。1文字だけの「a」も入れる)
- 覆面モデルと、候補になる公開モデルの両方に、同じ文字列を1つずつ送る
- 各リクエストの
prompt_tokensの増分を記録し、モデルごとに並べる - 一致した数を数える。公開辞書があるモデルは、辞書ファイルから直接トークン数を計算して比べてもよい
つまずく点も書いておく。Union AlphaはOpenCodeがAnthropic互換の形式で配信しており、この形式では入力トークン数からキャッシュ命中分が差し引かれるため、文章だけを送ると同じ「a」が1トークンになったり18トークンになったりと揺れた。8×8ピクセルの画像を1枚添えると揺れが止まり、そこで測れた。
覆面モデルを試すときに知っておくこと
- 公開スペックは当てにならないことがある。Omen Alphaは公開表記の文脈上限50万トークンに対し、実測で102万39トークンが通った
- データの扱いは配信先の規約で決まる。Union AlphaはOpenCodeが「no data training」と告知し、OpenRouterの規約ページでは「プロンプトは保持されうる」と書かれている。仕事のデータを入れるなら、この2つを読んでからにする
- 無料期間は短い。Ox AlphaもUnion Alphaも「1週間」。過ぎると消えるか、正体を明かした正規モデルに置き換わる
- 正体が明かされるまでは、数字はコミュニティ計測だけ。Ox Alphaの「DeepSWE 80%」は10タスクの部分集合による速報値で、全113タスクでは約63%に下がった(OrcaRouter経由のBen Davis氏の計測)
当サイトで確かめていないこと
- Pony・Hunter・Elephant・Owl Alphaの正体(OrcaRouterの整理を引いており、各社の発表を当サイトは個別に確認していない)
- Omen Alpha・Union Alphaの開発元。GLM系の辞書であるところまでは実測、それ以上は推定
- 覆面モデルを配る側(OpenRouter・OpenCode)と開発元の契約関係。無料期間の費用を誰が負担しているかは公表されていない
新しい覆面モデルが出たら、この一覧に足す。Union Alphaの正体公表(無料期間の終わる9月23日頃と見ている)はUnion Alphaの記事で追う。
出典・参照資料
- 一次資料OpenRouter 公式X(Quasar / Optimus Alpha = GPT-4.1 の種明かし・2025年4月) ↗
- 二次資料OrcaRouterブログ(匿名モデルの前例整理・Pony/Hunter/Elephant/Owl Alpha) ↗
- 一次資料Z.ai 公式X(Ox Alpha = GLM-5.3-Flash と明言・2026-08-26) ↗
- 一次資料OpenCode 公式X「Omen Alpha (new stealth model)」(2026-09-04) ↗
- 一次資料OpenCode 公式X「Union Alpha (stealth model) is free for the next week」(2026-09-16) ↗
- 一次資料OpenRouter 公式X「New stealth model: Union Alpha」(2026-09-16) ↗
- 一次資料OpenRouter モデルページ stealth/union-alpha ↗
- 二次資料Sushaanth Srinivasan氏の tokenizer 指紋検証(Ox Alpha・X) ↗
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