2026年8月14日 金曜日
AI時短ラボ
モデル· 約12

z.aiがGLM-5.3を公開──事後学習だけでTerminal Bench 6倍、サイバー能力が「予想外に」伸びた

z.aiが2026年8月14日にGLM-5.3を発表。ベースモデルはGLM-5.2と同一のまま、事後学習のスケーリングだけでTerminal Bench 3.0を4.6→28.3に伸ばした。公式が「予想外」と書くのがサイバー能力の創発で、実在コードベースから2,436件の脆弱性を特定。重みは発表の2週間後に公開予定。

z.aiがGLM-5.3を公開──事後学習だけでTerminal Bench 6倍、サイバー能力が「予想外に」伸びた
執筆・編集:
目次

中国z.aiが2026年8月14日、GLM-5.3を公開しました。ベースモデルはGLM-5.2と同一のまま、事後学習(ポストトレーニング)のスケーリングだけでコーディング性能を大きく伸ばし、あわせてサイバーセキュリティ能力が「予想外に」伸びたと公式ブログが報告しています(2026年8月14日・日本時間時点の情報です)。

この記事の内容は動画でも解説しています: GLM-5.3速報(AI時短ラボ)

3行まとめ ・ベースはGLM-5.2のまま事後学習のみでTerminal Bench 3.0が4.6→28.3、自社ベンチではOpus 4.8を半分以下のトークンで上回った(Fable 5には届かないと公式が明記) ・サイバー能力が「予想外に」創発し、CyberGym 84.5%は表中最高値。実在コードベースから2,436件の脆弱性を特定し、公開台帳cvd.z.aiを新設 ・重みの公開は発表の2週間後(安全評価とハードニング完了後)。thinking無効化は廃止され、low/high/maxの3段階に

発表の骨子

項目 内容
発表日 2026年8月14日
ベースモデル GLM-5.2と同一(伸びは全て事後学習由来)
重みの公開 発表の2週間後(安全評価とハードニング完了後)
API変更 thinking無効化の廃止。reasoning_effortはlow/high/maxの3段階(コーディングはmax推奨)
提供 GLM Coding Plan全ユーザーに展開済み。ポイント制・ピーク時間外は消費50%
対応エージェント ZCode、Claude Code、OpenCodeなど

「やったのは事後学習のスケーリングが全て」

公式ブログの書き出しはこうです。

Scaling post-training is all we did for GLM-5.3.

(訳: GLM-5.3でやったのは、事後学習のスケーリングが全てだ)

GLM-5.2で構築したスタック(長文脈処理のIndexShare、長期タスクRLのSAO、非同期学習基盤のslime)の上で、この1か月間、訓練環境・タスクの多様性・投入計算量を積み増したと説明しています。ベースモデルに手を入れずに「鍛え方」だけでどこまで伸びるかの報告になっています。

コーディング: 公式比較表の数字

公式が掲載した比較表から主要な行を抜粋します。列は GLM-5.3 / GLM-5.2 / Kimi K3 / Claude Opus 4.8 / Claude Fable 5(w/ fallback) / GPT-5.6 Sol。

ベンチマーク GLM-5.3 GLM-5.2 Kimi K3 Opus 4.8 Fable 5 GPT-5.6 Sol
Terminal Bench 3.0 28.3 4.6 17.4 21.1 33.7 34.6
DeepSWE (v1.1) 66.9 46.2 67.5 58 69.7 72.7
AutomationBench (v1.0.6) 48.2 26.2 46.7 41 46.2 45.8
Agents' Last Exam (ALE-CLI) 28.5 23.8 27.6 25.7 23.8 28.6
HLE w/ Tools 62.5 54.7 59.8 57.9 63.9 64.5
GDPval-AA v2 1769 1508 1682 1588 1743 1730

Terminal Bench 3.0の4.6→28.3は6倍超の伸びです。AutomationBenchとGDPval-AA v2では閉源モデルを含めた表中の最高値を取り、一方でTerminal Bench 3.0やDeepSWEではFable 5・GPT-5.6 Solに届いていません。公式は「コーディングで最も高性能なオープンウェイトモデル」と位置づけています。

トークン効率: Opus 4.8を半分以下のトークンで上回る

自社ベンチのZ.ai Code Benchでは、精度と出力トークン量の両面を比較しています。

At High effort, GLM-5.3 reaches 31.4% at around 50K output tokens, surpassing Claude Opus 4.8 at 29.5% with 120K. GLM-5.3 remains behind Claude Fable 5, which reaches 39.5% at Max effort.

(訳: High設定のGLM-5.3は約5万出力トークンで31.4%に達し、12万トークンで29.5%のClaude Opus 4.8を上回る。GLM-5.3は、Max設定で39.5%に達するClaude Fable 5にはまだ届かない)

「Fable 5には届かない」を公式自身が明記しているのは、発表資料としては率直な書き方です。

サイバー能力の「創発」──今回の発表の核

事後学習に脆弱性発見のデータと環境を混ぜたところ、想定より速く能力が育った、というのが公式の説明です。

  • CyberGym(脆弱性の発見・検証): GLM-5.3は84.5%で、Mythos 5の83.8%、GPT-5.6 Solの83.6%を上回る表中最高値
  • ExploitBench(脆弱性の悪用に踏み込んだ推論): 54.4%。GLM-5.2の24.4%から2倍超だが、Mythos 5の78.0%・GPT-5.6 Solの76.5%には大差
  • ExploitGym(時間内に完了できる悪用タスク数): 2時間で105件・6時間で130件(GLM-5.2は29件・39件)。Mythos 5は181件・247件

公式はこの傾向をこうまとめています。

Capability is growing fastest exactly where we are furthest behind.

(訳: 能力は、我々が最も遅れている場所でこそ、最も速く伸びている)

発見は最前線に到達し、悪用の実行はまだ閉源勢に差がある。ただし伸びの速度は実行寄りほど大きい、という構図です。

実在コードベースから2,436件の脆弱性

ベンチマークの外でも検証が行われています。GLM-5.2以降、中国国内の複数のセキュリティチームと組んで実在のコードベースを調べさせ、専門家のレビューと重複除去を経て、269のプロジェクトから2,436件の脆弱性を特定したと発表されています。

項目 数値
特定した脆弱性 2,436件(269プロジェクト)
深刻度critical 107件
深刻度high 990件
公開済み 53件
開示調整中 2,383件
最古の欠陥の混入年 1981年
発見までの平均潜伏期間 26.6年

対象はシステムカーネル、OS、ブラウザエンジン、オープンソースインフラ、Webアプリ、ネットワークプロトコルに及びます。開示状況を追跡する公開台帳「Z.ai Security Disclosure Ledger」も新設され、公開済みの案件は影響プロジェクト・深刻度・CVE・潜伏期間まで確認できます。

重みの公開は「2週間後」

We will release the weights in two weeks after launch, once safety evaluation and hardening are complete.

(訳: 重みは、安全評価とハードニングが完了した後、公開の2週間後にリリースする)

つまり本記事の時点でGLM-5.3はまだオープンウェイトではありません。脆弱性を掘れる能力が伸びたモデルの重みをそのまま配ることへの慎重さが、2週間の安全評価という形で挟まっています。公開されれば、このクラスのコーディング性能をローカルで動かせることになります。

使う人向けの変更点

  • thinking無効化の廃止: thinking.type: "disabled"はGLM-5.3では失敗します。移行時はenabled+reasoning_effort: "low"に変えてからモデルIDを更新する必要があります
  • effortは3段階: low / high / max。コーディングにはmaxが推奨
  • GLM Coding Planはポイント制に: 入力・キャッシュ済み入力・出力で別計算。ピーク時間(中国時間の平日14〜18時)以外は消費50%
  • Claude CodeやOpenCodeなどのコーディングエージェントから利用可能

数字を見る時の注意

  • Z.ai Code Benchは自社製の非公開ベンチです。第三者による再現はまだありません
  • 比較表のFable 5には「w/ fallback(フォールバック付き)」の注記があり、各モデルの評価条件が完全に同一とは限りません。詳細は公式脚注に記載されています
  • ExploitGymの「2時間・6時間」はモデルごとの生成速度(TPS)で正規化された時間予算です(GLM-5.3は115 TPS、Kimi K3は40 TPSで換算)
  • GDPval-AA v2は外部のArtificial Analysisによる評価で、自社測定ではありません
  • 興味深いのは、公式脚注によるとTerminal BenchやCyberGymなど評価の多くがClaude Code 2.1.207をハーネスとして実行されている点です。競合他社のモデルを測る標準の道具がAnthropic製のエージェントになっている、という現在地がここにも表れています

この記事を書いている筆者の環境もClaude Code上で、速報動画の制作時には公式ブログの図3枚と本文の数値を1件ずつ突合してから使いました(突合は23項目、記憶由来の数字はゼロです)。z.aiの数字はすべて自己報告値なので、第三者ベンチが出た時点で見え方が変わる可能性はあります。

出典・但し書き

  • 本記事の数値・引用はすべてZ.ai公式ブログ(2026年8月14日)およびZ.ai Security Disclosure Ledger(同日時点)によります
  • 脆弱性の件数・深刻度の内訳は台帳ウィジェットの2026年8月14日時点の表示値です
  • 重みの公開時期「2週間後」は公式の告知であり、変更される可能性があります。公開され次第、本記事に追記します

解説動画はこちら: GLM-5.3速報(AI時短ラボ)。感想や「ここが気になる」はYouTubeのコメント欄で教えてください。重みが公開されたら続報を出します。

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