DeepSeek-V4.1-Flash公開──出力100万トークン0.6ドル、KVキャッシュは1トークン890バイト
DeepSeekが2026年9月10日にV4.1-Flashを公開した。MITライセンスで重みを公開し、552BのマルチモーダルMoEで100万トークンのコンテキストに対応する。出力は100万トークンあたり0.6ドル(オフピーク)。技術レポートのタイトルは「KVキャッシュ圧縮の限界を押し広げる」で、1トークンあたりのKVキャッシュを890バイトまで削っている。

目次
DeepSeekが2026年9月10日、DeepSeek-V4.1-Flashを公開した。ライセンスはMITで、重みはHugging Faceに置かれている。同日のChange Logによると、これは「新しいアーキテクチャ一族で最も小さいモデル」で、ネイティブのマルチモーダル視覚理解を持つ。本記事は日本時間2026年9月10日夕方時点の公式情報にもとづく。
動画版はこちら: DeepSeek-V4.1-Flash速報
DeepSeek公式の発表によると、V4.1-Flashは552BバックボーンのマルチモーダルMoEで、コンテキストは100万トークン、最大出力は384K。API価格はオフピークで出力100万トークンあたり0.6ドル、入力はキャッシュヒットで0.003ドル。技術レポートによると、常時HBMに置くKVキャッシュを1トークンあたり890バイトまで圧縮しており、これはDeepSeek-V4-Flashの約4分の1、初代V1の437分の1にあたる。
仕様と価格
Models & Pricingページの記載は以下のとおり。価格は100万トークンあたり。
| 項目 | DeepSeek-V4.1-Flash |
|---|---|
| モデル名 | deepseek-flash |
| コンテキスト長 | 1M |
| 最大出力 | 384K |
| 視覚入力 | 対応 |
| 入力(キャッシュヒット) | オフピーク $0.003 / ピーク $0.006 |
| 入力(キャッシュミス) | オフピーク $0.15 / ピーク $0.3 |
| 出力 | オフピーク $0.6 / ピーク $1.2 |
| 同時実行上限 | 2500 |
ピーク時間帯は同ページに「平日の協定世界時1時から4時と、6時から10時。それ以外はすべてオフピーク」と書かれている。価格の適用開始は公式画像によると協定世界時9月10日4時。
KVキャッシュを890バイトまで削った
技術レポートの表題は "DeepSeek-V4.1-Flash: Pushing the Limits of KV Cache Compression"(KVキャッシュ圧縮の限界を押し広げる)。値下げの告知ではなく、圧縮の論文として出されている。
アブストラクトの記述はこうだ。
To push the limits of KV cache compression, DeepSeek-V4.1-Flash combines cross-layer KV cache reuse in Compressed Sparse Attention 2 (CSA2) with FP4 KV caching. These designs reduce its global KV cache footprint (always in HBM) to 890 bytes per token, roughly 1/4 of the corresponding footprint of DeepSeek-V4-Flash.
(KVキャッシュ圧縮の限界を押し広げるため、DeepSeek-V4.1-FlashはCompressed Sparse Attention 2における層をまたいだKVキャッシュ再利用と、FP4のKVキャッシュを組み合わせている。これらの設計により、常時HBMに置くグローバルKVキャッシュの専有量は1トークンあたり890バイトとなり、DeepSeek-V4-Flashの約4分の1になった)
Figure 1(b)に世代ごとの数値が載っている。初代V1(2023年11月)が389,120バイト、V3.2(2025年12月)が48,068バイト、V4-Flash(2026年4月)が3,514バイト、そしてV4.1-Flash(2026年9月)が890バイト。レポートはV1比で437分の1と書いている。
SSDやホストメモリに常駐する永続KVキャッシュについては、SWA Bounded Replayという配備上の工夫でV4-Flashの約8分の1になったとしている。
もうひとつがCausal Encoder-Decoder(CED)で、552Bのうち出力を書くデコード時は16B、入力を読み込むプリフィル時は8Bしか活性化しない。レポートによると、コンテキストを4Kから100万トークンへ256倍に伸ばしてもデコードのFLOPsは4分の1しか増えない。
事前学習は45兆トークンのマルチモーダルコーパス。疎なアテンションは64Kのシーケンス長でゼロから学習しており、密なアテンションによるウォームアップ段階を挟んでいないとレポートに書かれている。
ベンチマークを数え直すと5勝10敗だった
Change Logと技術レポートTable 3に19項目の数値が載っている。目立つのは、勝ち負けが項目のタイプできれいに分かれている点だ。
そこで、Table 3で両者に数値がある項目だけを取り出して数えてみた。以下は筆者が表から手作業で集計したもので、DeepSeekが出している数字ではない。
| 相手 | 勝敗 | 10ポイント以上離された項目 |
|---|---|---|
| Opus 5 | 5勝10敗(15項目) | Terminal-Bench 4.0 (-20.6)、HLE (-19.5)、ProgramBench (-16.7)、Terminal-Bench 3.0 (-13.3) |
| GPT-5.6-Sol | 7勝9敗(16項目) | ExploitGym (-18.4)、SEC-Bench Pro (-11.5) |
上に出た項目はTerminal-Bench 2.1(90.6対89.1)、Automation-Bench(54.8対50.3)、Agents' Last Exam(31.8対28.6)、CyberGym(88.1)など、エージェントを動かす系に寄っている。逆に大きく離されたのはHLE(36.8対56.3)やProgramBench(20.3対37.0)といった難問系と、新しいTerminal-Bench 3.0 / 4.0だった。
なおOpus 5に勝った5項目のうち2つは、DeepSWE v1.1が+0.2、HLE w/toolsが+0.3で、実質は横並びである。
DeepSeek自身はレポート本文でこう書いている。
Despite its compact nature, DeepSeek-V4.1-Flash demonstrates state-of-the-art agentic capabilities, substantially closing the gap with frontier closed-source models while establishing clear advantages among open-source alternatives.
(コンパクトでありながら、DeepSeek-V4.1-Flashは最先端のエージェント能力を示し、フロンティアの非公開モデルとの差を大きく詰めつつ、オープンソースの選択肢のなかでは明確な優位を確立した)
「差を詰めた」であって「並んだ」とは書いていない。
Codeforcesのレートは3471で、これはV4-Flashの3289、V4-Proの3348を上回る数字だが、Table 3ではOpus 5とGPT-5.6-Solの欄が「-」なので他社との比較はできない。
測定に使ったハーネスが項目ごとに違う
エージェント系ベンチマークは、モデルの外側に着せるスキャフォールド(ハーネス)で点数が変わる。レポートの評価設定にはこう書かれている。
For code agents, we evaluate DeepSeek-V4.1-Flash using the Minimal mode of DeepSeek Harness with a 1M-token context window, temperature set to 1.0, and top-p set to 0.95. To align with official setup requirements, we employ the mini-SWE harness for DeepSWE v1.1. For SEC-Bench Pro, we utilize the Claude Code harness specifically for its session compact design. For visual agent tasks, we evaluate using the Claude Code harness with a 512k-token context window.
自社ハーネスで統一したのではなく、DeepSWE v1.1はmini-SWE、SEC-Bench Proと視覚エージェント系はClaude Codeを使ったと明記している。Agents' Last ExamとAutomation-Benchは各公式スキャフォールドとある。
またレポートは、6系統8構成のスキャフォールド(Claude Code、Codex、OpenCode、Pi、mini-SWE、DeepSeek HarnessのMinimal / Standard / PTCモード)で測り直した結果をTable 4に載せている。コーディングエージェント評価での報酬ハッキングを抑えるため、インターネットアクセスを遮断しGit履歴を削除したとも書かれている。
V4-Proが9月14日にV4.1-Flashへ回される
Models & Pricingページの注記(2)にこうある。
After extensive testing, V4.1 Flash has comprehensively surpassed V4 Pro in performance, cost, speed, and total time, so we plan to retire V4 Pro in an orderly manner. From 12:00 Beijing Time on September 14, 2026, and until V4.1 Pro is released in the future, requests to deepseek-v4-pro will all be routed to V4.1 Flash and billed at the V4.1 Flash price.
(広範なテストの結果、V4.1 Flashは性能・コスト・速度・総所要時間のすべてでV4 Proを上回ったため、V4 Proを順次終息させる予定である。2026年9月14日の北京時間12時から、将来V4.1 Proがリリースされるまでのあいだ、deepseek-v4-proへのリクエストはすべてV4.1 Flashにルーティングされ、V4.1 Flashの価格で課金される)
前世代のdeepseek-v4-flashとdeepseek-v4-flash-vision-expはすでに退役済みで、モデル名は受け付けるがV4.1-Flashが応答する、と同ページに書かれている(V4-Flash-Vision-Expの記事)。
呼び出し側の設定は、Your First API Callページによるとdeepseek-flashひとつ。Anthropic互換のエンドポイントhttps://api.deepseek.com/anthropicが用意されており、同ページには「Claude Code、GitHub Copilot、OpenCodeのようなツールを使っているなら、DeepSeekをバックエンドモデルとして直接使える」と記載がある。DeepSeek Harnessは開発者プレビューとして案内されている。
速度について確認できたこと、できなかったこと
Change Logは新アーキテクチャを「より高い能力の天井、より速い推論、より高いスループット」のために設計したと書いている。ただし本記事が確認した範囲では、公式ドキュメントと技術レポートに実測のトークン毎秒は見当たらなかった。
数字として取れたのは設計上の指標だけである。コンテキストを256倍にしてもデコードFLOPsが4分の1増にとどまること、同時実行上限が2500(V4-Proは500)であること、DSparkという投機デコード(半自己回帰のドラフト生成と確信度スケジュール検証)が入っていること。体感速度を知りたい場合は、実際に叩いた人の報告を待つほうが早い。
ベンチマークの数値は、比較対象のOpus 5やGPT-5.6-Solの分も含めてすべてDeepSeekがTable 3に掲載したものである。第三者による再現ではない。
出典と、この記事で確認していないこと
上記frontmatterの5つの公式ソースを2026年9月10日15時台(日本時間)にすべて取得し、記事中の数値はそれらに突合した。勝敗の集計だけは筆者がTable 3から手作業で数えたもので、公式が出している数字ではない。
確認していないのは次の3点。実測のトークン毎秒、第三者によるベンチマークの再現、そしてV4.1 Proのリリース時期である。3つ目については、Models & Pricingページに「将来V4.1 Proがリリースされるまで」とあるだけで時期の記載がない。技術レポートのほうは、本記事がV4.1 Pro・V4.1-Pro・Pro model・larger models の4語で全文検索した範囲では、V4.1 Proという名称自体が出てこなかった。結論部にあるのは「モデルアーキテクチャ・事前学習・事後学習の合同スケーリングを追求する」という記述までである。
本記事は続報があり次第更新する。実際に触った感触や、上の集計への異論があれば、動画のコメント欄で教えてほしい。次の記事に反映する。
出典・参照資料
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