NVIDIA、欧州初のエクサスケール機JUPITER(ジュピター)で104量子ビットの耐故障量子計算を模擬8,192 GPUで「過去最大規模」と発表
日刊AIニュース10月19日(月)号:前日のAIのニュース3本を短くまとめました(約5分)›
NVIDIAは2026年10月19日、ユーリッヒ・スーパーコンピューティング・センターのJUPITERで104量子ビットの耐故障量子計算シミュレーションを実施したと発表した。8,192 GPUを使い、物理量子ビットを従来法より90%減らせるとする方式を検証したという。数字はすべてNVIDIAの発表によるもの。

目次
NVIDIAは2026年10月19日(リリースの日付)、ユーリッヒ・スーパーコンピューティング・センターにある欧州初のエクサスケールのスーパーコンピューター「JUPITER(ジュピター)」で、104量子ビットの耐故障量子計算の記録的なシミュレーションを実施したと発表しました。NVIDIAはこれを、耐故障量子計算システムの包括的なシミュレーションとして「現時点で最大」と説明しています。物理量子ビットを従来法より90%少なくできるとされる「マジックステート・カルチベーション(magic state cultivation)」という方式を、現実的なノイズの下で検証したということです。
3行まとめ
- NVIDIAが2026年10月19日、JUPITERのNVIDIA GH200 GPU 8,192基で104量子ビットの耐故障量子計算を模擬したと発表。同社は「包括的なシミュレーションとして過去最大」と説明
- 検証したのは、従来法より物理量子ビットが90%少なくて済むとされるmagic state cultivation。ユーリッヒの先行研究は理想的な無ノイズ条件の50量子ビットだった
- 開発用にはNVIDIA GB200 NVL72を使い、数週間かかるシミュレーションが数日に短縮したとNVIDIA。数字はすべて同社の発表で、独立した検証や論文は今回確認したページにはない
本記事の内容は、日本時間10月20日3時台に公式ページで確認したものです。
何を模擬したのか
NVIDIAの発表によると、量子ビットは物理の限界で動くため、制御のための操作が避けられないノイズを生みます。ノイズがある中で計算を続ける方式が耐故障量子計算で、これには「マジックステート」と呼ばれる量子ビットの特定の配置が必要です。マジックステートは耐故障量子計算の途中で繰り返し消費されるため、その作り方を改善できれば、実用的な量子コンピューターを作る難しさが大きく下がる、とNVIDIAは説明しています。
今回の発表の中身は、この作り方(magic state cultivation)を現実的なノイズの下でシミュレーションし、方式を検証したことです。NVIDIAは、これにより研究者が将来の改良を開発・試験するための道具が得られると述べています。
比較として発表が挙げているのは、ユーリッヒの先行研究です。そちらは理想的な、ノイズのない条件で50量子ビットを模擬していました。今回は実際のハードウェアに近いノイズを入れた点が違い、誤りの影響を理解するのに役立つとNVIDIAは書いています。
| 項目 | 発表の記載 |
|---|---|
| 規模 | 104量子ビット |
| 使った計算機 | JUPITER(欧州初のエクサスケール機、ユーリッヒ設置) |
| GPU | NVIDIA GH200、8,192 GPU |
| 検証した方式 | magic state cultivation(従来法より物理量子ビット90%減とされる) |
| ソフトウェア | cuQuantum、CUDA-Qの耐故障の論理層(マジックステートの回路の記述に使用) |
| 先行研究 | ユーリッヒ、50量子ビット・理想的な無ノイズ条件 |
なぜ大きなスーパーコンピューターが要るのか
NVIDIAは、シミュレーションに必要なメモリが量子ビット数に対して指数的に増えうるため、大規模なシミュレーションは通常の計算システムでは手が届かないと説明しています。
そこで開発の段階では、ボストンのNVIDIA Accelerated Quantum Research Center(NVAQC)にあるNVIDIA GB200 NVL72を使ったとされます。4 GPUから数百 GPUへ規模を広げて試験し、そのあと JUPITER の8,192 GPUに移したという流れです。NVIDIAによれば、この手順で数週間かかるシミュレーションの作業が数日に短縮し、JUPITERのエクサスケールの計算能力を効率よく使う準備もできたといいます。精度が計算資源の追加でどう変わるかの調査や、JUPITERの結果との比較にもNVAQCが使われました。
NVAQCは、NVIDIAの説明ページでは、量子コンピューター実現までの時間を縮めるための施設で、パートナーの量子ハードウェアをNVIDIA DGX Quantumの設計でGB200 NVL72と組み合わせるものとされています。ページは同施設の用途として、量子ハードウェアの大規模化、量子誤り訂正、QPU設計のシミュレーション、ハイブリッドアルゴリズムの開発の4つを挙げています。
発表はこの結果をどう位置づけているか
NVIDIAは、このシミュレーションの結果が、ハードウェアを作る前に設計を磨くための手がかりになるとしています。「ハードウェアの試行錯誤への依存を減らす」「実現可能な量子コンピューターへの道のりを何年も縮める」といった言い方で、創薬・金融モデリング・材料科学などの応用につなげる見通しを書いています。
発表には2人のコメントがあります。NVIDIAの創業者でCEOのジェンスン・フアン(Jensen Huang)は「実用的な量子コンピューティングには、きわめて複雑な耐故障システムが必要で、それが規模を大きくしたときにどう振る舞うかを理解することが、構築に欠かせない」と述べ、ユーリッヒでの結果は量子プロセッサーとGPUスーパーコンピューターが協調して、そのままでは手が届かない研究に取り組めることを示すとしています。ユーリッヒ・スーパーコンピューティング・センター所長のクリステル・ミヒールセン(Kristel Michielsen)は、JUPITERへの欧州の投資が、これまで手の届かなかった問いを調べる力を研究者に与えると述べています。
前の発表と何が違うのか
比較できるのは、発表自身が挙げているユーリッヒの先行研究(50量子ビット・無ノイズ)だけです。今回の発表の言い分は、規模が104量子ビットに増えたことと、現実的なノイズを含めて量子プロセッサーの振る舞いを細かく模擬したことの2点です。「過去最大」の根拠は発表の文面の範囲で、ほかの研究グループの記録との突き合わせは、今回確認したページにはありません。
技術詳細のGitHubブログは取得時に404だった
日本時間10月20日3時台に、プレスリリース本体とNVAQCの紹介ページを取得しました。プレスリリースの末尾近くには「Read the GitHub blog on the JUPITER simulation」というリンクがあり、技術的な詳細はそちらにあるはずですが、取得を試みた時点では、そのURL(nvidia.github.io のブログ記事)はHTTP 404を返しました。公開前だったのか、リンクの誤りなのかは、こちらでは判断できません。
そのため、本記事の数字と説明は、プレスリリースとNVAQCのページに書かれていることだけに基づいています。
論文・誤り率・日本での利用はリリースに無い
プレスリリースとNVAQCのページを検索した範囲では、次の点は見つかりませんでした。
- 論文やプレプリントへのリンク、独立した第三者による検証
- シミュレーションの所要時間や、誤り率・精度の具体的な数値(「数週間が数日に」という短縮の表現はあるが、実時間の数字はない)
- 日本の研究者や企業がこの環境や手法をどう使えるか
また、「物理量子ビット90%減」はNVIDIAが方式について述べた数字で、今回のシミュレーションで新たに測った値とは書かれていません。方式の効果と今回のシミュレーションの成果は、分けて読む必要があります。リリースの末尾には将来予想に関する通常の注意書き(フォワードルッキング・ステートメント)も付いています。
JUPITERやGB200 NVL72を使う耐故障量子計算の模擬は、量子コンピューターの実機ができあがる話ではありません。今回の発表は、実機を設計するための計算の話です。
参照したNVIDIAの2ページ
- NVIDIA Newsroom「NVIDIA Runs Record Simulation of Fault-Tolerant Quantum Computing at Jülich Supercomputing Centre」(2026年10月19日): https://nvidianews.nvidia.com/news/nvidia-runs-record-simulation-of-fault-tolerant-quantum-computing-at-julich-supercomputing-centre
- NVIDIA「NVIDIA Accelerated Quantum Research Center (NVAQC)」: https://www.nvidia.com/en-us/solutions/quantum-computing/accelerated-quantum-center/
確認時刻は日本時間2026年10月20日3時06分台です。リリースが案内するGitHubブログは取得時に404でした。本記事は続報があり次第更新します。
この記事でよく聞かれること
- NVIDIAがJUPITERで行った耐故障量子計算のシミュレーションとは何ですか?
- NVIDIAが2026年10月19日に発表した、ユーリッヒ・スーパーコンピューティング・センターのJUPITER上での104量子ビットのシミュレーションです。NVIDIAは、耐故障量子計算システムの包括的なシミュレーションとしては過去最大で、現実的なノイズの下で「マジックステートの培養(magic state cultivation)」を模擬したと説明しています。8,192 GPUを使ったとされます。
- 「物理量子ビット90%減」とは何のことですか?
- NVIDIAの発表によると、今回検証した方式は従来の方法より物理量子ビットを90%少なくできます。これはNVIDIAが挙げる方式側の特徴で、今回のシミュレーションで測った新しい数字というより、検証の対象になった方式の説明として書かれています。
- これで量子コンピューターが実用になるのですか?
- 発表はそう述べていません。NVIDIAが述べているのは、シミュレーションにより、ハードウェアを作る前に設計を検討でき、創薬・金融モデリング・材料科学などの実用的な応用への道のりを早められる、という見通しです。実機の性能や実用化の時期は発表に書かれていません。
- 日本の研究者はこの結果を使えますか?
- 今回取得した公式ページには、日本での提供や利用条件の記載はありませんでした。発表が触れているのはcuQuantumとCUDA-Qというソフトウェアを使ったことと、NVIDIAの研究者による実施という点までです。
出典・参照資料
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