NEC調査、AI利用率7割超でも幸福感『向上』は18.2%左右するのは自律性・主体性への不安
日刊AIニュース10月27日(火)号:前日のAIのニュース12本を短くまとめました(約8分)›
NECは2026年9月15日、全国15〜74歳の男女2,057人を対象にした「AIとウェルビーイングに関する生活者調査」を公開した。プライベートでのAI利用率は7割超に達した一方、AIで幸福感が「向上した」は18.2%、「低下した」は6.0%(いずれも非利用者を含む全回答者ベース。AI利用者1,500人に限ると向上23.6%)。NECは、幸福感を左右するのは偽情報やプライバシーより自律性・主体性への不安だと分析している。

目次
2026年9月25日昼・日本時間時点。NEC(日本電気株式会社)は2026年9月15日、全国15〜74歳の男女2,057人を対象にした「AIとウェルビーイングに関する生活者調査」を公開した。NECの発表によると、プライベートでのAI利用率は7割を超えているが、AIを使うようになって幸福感が「向上した」と回答したのは18.2%にとどまる。「低下した」は6.0%で、合計24.2%が幸福感に変化があったと答えた。この18.2%はAIを使っていない人も含む2,057人全体に対する割合で、NECが公開しているPDFレポートによると、AI利用者(自認)1,500人に限った「向上した」は23.6%、「低下した」は4.2%になる。NECは、幸福感を左右するのは偽情報やプライバシーへの不安よりも「自律性・主体性が脅かされる不安」だとしている。
3行まとめ
- NECの発表によると、プライベートでのAI利用率は7割超(PDFレポートでは72.9%)。AIで幸福感が「向上した」は18.2%、「低下した」は6.0%で、NECが「幸福」−「不幸」と定義する幸福スコアは全体平均で+12.2だった
- 「多少手間がかかっても自分の力でやり遂げたい」プロセス重視派は55.5%。AI利用者のプロセス重視派では63.7%が達成感の低下を感じており、NECのPDFレポートによると、そのうち対話型でAIを使う95人は幸福22.1%・不幸5.3%、それ以外の使い方の373人は幸福8.3%・不幸5.9%だった
- NECの発表では、偽情報・プライバシーへの不安による幸不幸の差は3ポイント前後にとどまる一方、「AIに行動を方向づけられる不自由さ」など自律性・主体性への不安による差は17.4〜23.5ポイントに達したとしている
数字で見る全体像
NECの発表文(PR TIMES)、公式の特設ページ、特設ページからダウンロードできるPDFレポート(67ページ)の記載を突き合わせた数字は以下の通り。AIを「何に使っているか」をまとめたHarvard Business Reviewの2026年版調査は本サイトでも扱ったが、今回のNEC調査は、使った結果として幸福感が変わったかを2,057人へのアンケートで尋ねている点が異なる。
| 指標 | 数値 | 出典・備考 |
|---|---|---|
| 調査対象 | 全国15〜74歳の男女2,057人 | NEC調査概要(2026年6月・インターネット調査) |
| うちAI利用者(自認) | 1,500人 | PDFレポート4ページ |
| プライベートでのAI利用率 | 72.9% | PDFレポート11ページ(発表文・特設ページは「7割以上」) |
| 幸福感が「向上した」 | 18.2% | 発表文・特設ページ(全回答者2,057人ベース) |
| 幸福感が「変わらない」 | 75.7% | 特設ページ |
| 幸福感が「低下した」 | 6.0% | 発表文・特設ページ |
| 幸福感に変化ありの合計 | 24.2% | 同 |
| 幸福スコア(「幸福」−「不幸」・全体平均) | +12.2 | 発表文・PDFレポート17ページ |
| AI利用者(自認)に限った「向上」/「低下」 | 23.6%/4.2% | PDFレポート17ページ |
| プロセス重視派/結果重視派 | 55.5%/44.5% | 発表文・特設ページ |
| AI利用者のプロセス重視派(735人)で達成感が減った割合 | 63.7% | 同・PDFレポート21ページ |
| その中で対話型の使い方(95人)の幸福/不幸 | 22.1%/5.3% | PDFレポート21ページ |
| その中で対話型以外の使い方(373人)の幸福/不幸 | 8.3%/5.9% | 同 |
| 確認・協働型/対話型(合計) | 50.5%/28.6%(79.0%) | 特設ページ・PDFレポート14ページ(母数は使い方が明確に定義されたAI利用者1,281人) |
| AIの答えをそのまま使う「代替型」 | 11.7% | 同 |
| 自律性・主体性への不安による幸不幸差 | 17.4〜23.5ポイント | 発表文・特設ページ |
| 偽情報・プライバシーへの不安による幸不幸差 | 3ポイント前後 | 同 |
| 発表日 | 2026年9月15日 | NECプレスリリース(PR TIMES) |
「どれだけ使うか」より「どう使うか」
NECの発表文は、調査結果サマリーの最初の項目に「「どれだけ使うか」より「どう使うか」?」という問いを掲げている。プライベートでのAI利用率が7割を超えている一方、それによって幸福感が「向上した」と答えた人は18.2%、「低下した」は6.0%で、合計24.2%が幸福感の変化を回答した。差し引きの幸福スコアは全体平均で+12.2になるとNECは説明しているが、高い利用率に対して幸福実感の広がりはまだ限定的だ、というのがNECの評価である。
PDFレポートの17ページには、この数字のもとになった設問が載っている。「AIが一般化し、ご自身も使うようになって、あなた自身の幸福感(生活全体の幸せ・心の豊かさ)は、全体としてどのように変化したと感じますか。」という質問で、幸福スコアは「幸福」の割合から「不幸」の割合を引いた値(18.2−6.0=12.2)だと同ページは示している。利用頻度別に見ると、「頻繁に使っている」518人では「向上した」が41.9%だった。
プロセス重視派の63.7%が「達成感が減った」
NECの発表によると、調査全体ではAIの利用によって「思考の自由度」「思考の自律性」が向上したと感じる人が多い一方、「達成感」については減ったと感じる人が優勢だった。「多少手間がかかっても自分の力でやり遂げたい」という「プロセス重視派」は55.5%、「AIに任せても早く結果を出したい」という「結果重視派」は44.5%で、プロセス重視派の63.7%が達成感の低下を感じているという。PDFレポート21ページによると、この63.7%はAI利用者のうちプロセス重視派735人に対する割合で、結果重視派765人でも53.3%が達成感の低下を感じている。
NECの発表文と特設ページは、ここから「プロセス重視派であっても、AIと対話・協働して使う層は幸福スコアが高い(幸福22.1%/不幸5.3%)」のに対し、「対話・協働型以外の使いかた」の層は「むしろ不幸感が強い(幸福8.3%/不幸5.9%)」と書いている。PDFレポート21ページの図で母数を確かめると、この2つの数字はプロセス重視派全体ではなく、「プロセス重視かつ達成感が減った人」468人を、「対話型」の使い方をする95人と、それ以外の373人に分けたものだった。対話型95人の幸福スコアは+16.8、それ以外の373人は+2.4である。プロセスを重視する人ほど、AIを避けるのではなく対話しながら使うことが幸福感につながっている、というのがNECの見立てだ。
使われ方の内訳は「全自動」でなく「確認・協働」
NEC特設ページによると(この内訳はPR TIMESの発表文の本文には無く、特設ページとPDFレポートに載っている)、AIの使い方について「AIが出したものを自分で確認・修正して使う(確認・協働型)」が50.5%、「対話しながら、自分の考えをまとめていく(対話型)」が28.6%で、合わせて79.0%を占める。一方「AIの答えをそのまま使う(代替型)」は11.7%にとどまる。PDFレポートでは、この割合の母数は、AI利用者のうち使い方が明確に定義された1,281人である。NECは、AIを使い込むほど対話型の割合が増える一方、確認型の割合は利用頻度に関わらずほぼ一定だとし、「最終判断は自分の手に残したい」という意識の表れだと解釈している。
奪われたくないのは、情報より自分らしさ
NECの発表では、偽情報やプライバシーへの不安による幸福層・不幸層の差は3ポイント前後にとどまり、特設ページは「ほとんど違いは見られませんでした」としている。対して差が大きかったのは、「AIに行動を方向づけられる不自由さ」「人と直接話す機会が減る寂しさ」「自分のスキルが衰える不安」といった、自律性・主体性が脅かされる不安で、幸福層と不幸層の間には17.4〜23.5ポイントの差があったという。NECはこの結果から、企業には情報基盤に関する不安への対応に加えて主体性の不安への配慮が求められると述べている。
世代差と完璧主義──発表文には無い追加データ
NEC特設ページとPDFレポートは、PR TIMESの発表文には含まれない追加の分析も載せている。特設ページによると、10代はAIの利用率が最も高い一方、AIへの不安感も他世代より強く、買い物については他世代より4.6ポイント以上、健康については14.8ポイント以上「人を信じる」と回答する割合が高かった。PDFレポートでは、この調査の「10代」は15〜19歳の170人で、プライベートでAIを日常的に使う割合は80.6%(60〜74歳は40.5%)。「買うもの・選ぶものの相談は、AIより人を強く信じる」は10代24.7%・20代20.1%、「健康の判断は、AIより人を強く信じる」は10代42.4%・20代27.6%で、4.6ポイントと14.8ポイントはいずれも、次に高い20代との差にあたる。なお特設ページの図の説明文は、2項目をまとめて「他世代より10ポイント以上高い」と書いており、買い物の項目はPDFの表の数字と合わない。
またNECによると、AIに常に正確性・完璧さを求める層は、不幸になった人の割合が平均の約2.1倍に達した。PDFレポート22ページでは、「AIには常に完全な正確性を求めるべきであり、誤りは基本的に許容できない」と答えた層の「不幸になった」が12.6%(全体平均は6.0%)。一方、「軽微な誤りであれば許容できる」層は幸福27.9%・不幸3.9%、「利便性が高ければ問題ない」層は幸福32.0%・不幸5.8%だった。
有識者5人のインタビューは9月30日公開予定と告知
NECは、調査結果を踏まえた有識者インタビュー(大澤正彦氏・石川善樹氏・石山アンジュ氏・原田曜平氏・田川欣哉氏の5名)を2026年9月30日にWebサイトで公開すると発表している。発表文自身が「(下記の内容は現時点での予定です)」と留保しており、タイトルにはいずれも「(仮)」が付いている。2026年9月25日昼(日本時間)にNEC BluStellarの調査レポート一覧ページと調査の特設ページを取得した時点では、一覧ページに5人の名前と仮題が並んでいるだけで、記事本文へのリンクはどちらのページにも無かった。本記事はインタビューの内容を扱っていない。
発表文の「22.1%」はプロセス重視派全体の数字ではなかった
本記事は、PR TIMESの発表文、NEC特設ページ、特設ページのリンク先にあるPDFレポートの3つを取得して数字を突き合わせた。3者に共通する数字(18.2%、6.0%、24.2%、+12.2、55.5%、63.7%、22.1%/5.3%、8.3%/5.9%、17.4〜23.5ポイントなど)は一致している。
食い違いが出たのは、数字の母数と倍率の説明だった。発表文と特設ページの本文は22.1%/5.3%を「プロセス重視派であっても、AIと対話・協働して使う層」の数字として書いているが、PDFレポート21ページの図では、母数は「プロセス重視かつ達成感が減った人」468人のうち対話型の95人である。また特設ページの図3の説明文は「対話型以外の使いかた(8.3%)よりも7倍高い」と、幸福の割合(22.1%と8.3%、比はおよそ2.7倍)について7倍と書いているが、PDFの図で「7倍」の表示が付いているのは幸福スコア(+16.8と+2.4)の比である。
調査概要表の「サンプル数:2,057s」の「s」について、PDFレポート4ページは、2,057sのうち1,500sがAI利用者(自認。利用頻度の設問で「利用有り」に該当)、1,805sが「AI利用者(自認)+無意識のAI利用者」だと注記しており、部分集団の人数にも同じ「s」を付けている。人数(サンプル数)の単位として使われている表記である。
本記事がPDFレポートで読んだのは4・11・14・17・21・22・23・27・34ページで、詳細編の集計表を含む残りのページは読み込んでいない。有識者インタビューの内容も、前述のとおり確認していない。
出典・参照資料
大きいニュースはYouTubeでも解説しています。Xでは新着記事をお知らせしています。
コメント
まだコメントはありません。最初のコメントを書いてみませんか?
AIについて聞きたいことはありますか?
質問箱で無料で受け付けています。回答は公開され、他の方の参考にもなります。
質問箱を見る →