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バイナンス(Binance)がハッキング、Chainalysis推計で約59億ドル流出し暗号資産史上最大EIP-7702の許可を50通り送った手口と、通貨ごとの値動き

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日刊AIニュース10月29日(木)号:前日のAIのニュース54本を短くまとめました(約22分)›

世界最大の暗号資産取引所バイナンスが、2026年10月30日未明(日本時間)にハッキングを受けた。Chainalysisの見積もりでは盗まれた額は約59億1200万ドルで、2025年のBybitの約4倍。バイナンスは「損失は全部補う」と発表し、入金と出金を全面停止した。凍結できたのはバイナンス発表で約30億ドル。流出の直前と比べ、犯人が売りさばいたENAは最大19.7%、BNBは最大8.2%下がった(CoinGeckoの値)。

バイナンス(Binance)がハッキング、Chainalysis推計で約59億ドル流出し暗号資産史上最大──EIP-7702の許可を50通り送った手口と、通貨ごとの値動き
目次

世界最大の暗号資産取引所バイナンス(Binance)が、2026年10月30日の未明(日本時間)にハッキングを受けました。Chainalysisの見積もりでは、盗まれた額は約59億1200万ドルで、これまで最大だった2025年のBybitの事件の約4倍、暗号資産の歴史で最大の被害です。バイナンスは日本時間9時13分に「損失は全部補う」と発表し、入金と出金を全面的に止めました。この記事の数字と経過は、10月30日11時(日本時間)時点のものです。動画版は YouTube にあります。

  • Chainalysisの推計で約59億1200万ドルが流出し、Bybit(2025年・約15億ドル)の約4倍。バイナンス自身は額を発表していない
  • 犯人は「Binance 14」の名前で署名されたEIP-7702の許可を50通り送り、1つが通った4分後に約25億3000万ドルを1回で抜いた
  • 凍結はバイナンス発表で約30億ドル。流出の直前と比べ、ENAは最大19.7%、BNBは最大8.2%下がり、TRXだけ8.0%上がった

日本時間5時4分から、9時13分の「全額補う」まで

CertiKの技術者 Dickson Wu がオンチェーンの記録を1件ずつ追った結果(TechFlow掲載)と、各社のX投稿から、未明の流れを日本時間で並べます。

時刻(日本時間) 出来事
5時4分 バイナンスのXRPの財布から、知らない宛先への流出が始まる
5時10分〜5時22分 ソラナ、オプティミズム、ビットコイン、トロンの財布から次々に流出
5時20分 Binance 14に、EIP-7702の許可50通りを載せた取引が送られる
5時24分 1回の取引で、イーサ16万7464枚とUSDT 16億1500万ドル分ほか61種類(計約25億3000万ドル)
5時32分 オンチェーンを見ているSpreekが、Xで最初に警告
6時1分 Tetherが最初の凍結
6時15分 創業者のCZが「It does look like a hack on Binance.」と投稿
7時15分ごろ バイナンスが出金を停止(FinanceFeedsによる)
9時13分 バイナンス公式「Binance will cover all losses.」、入金と出金を全面停止
9時52分 バイナンス公式、凍結額は約30億ドル

CZは「I don't manage Binance (.com) anymore, but as a shareholder, I expect all user funds will be fully covered.(もう経営はしていないが、株主として利用者の資金は全部補われると思う)」と書いています。一方、6時16分のバイナンス公式の最初の投稿は、調べている、利用者の資金への影響はまだ確認していない、という内容でした。会社として「全部補う」と言ったのは、9時13分の投稿が最初です。

盗まれた額は、見積もる会社ごとに33億〜63億ドル

バイナンスは盗まれた額をまだ発表していません。各社の見積もりは次のとおりです。

出したところ 見積もり 中身
Blockaid(最初の集計) 約33億ドル イーサリアム・アービトラム・アバランチ(Cointelegraphによる)
Glassnode 約53億ドル Bitcoin.com Newsによる
The Kobeissi Letter 約57億ドル X投稿
Arkham 約58億4000万ドル 犯人の財布の残高。確定額ではない(Cointelegraphによる)
Chainalysis 約59億1200万ドル 盗まれた時点の値段で
CertiKの技術者 約62億8000万ドル 8チェーンを1件ずつ追跡。うち60億7000万ドルは最初の55分

CertiKの技術者の内訳では、イーサリアムが約37億4000万ドル、ビットコインが約14億7000万ドル(1万8270BTC)、トロンが約6億3000万ドル、XRPが約3億ドルです。日本円では9000億円を超える規模だと、CoinPostは報じています。

50通りの許可を一度に送り、1つが通った

使われたのは、2025年のPectraアップグレードで入ったEIP-7702という仕組みです。普通の財布が「このプログラムに自分を動かしていい」と許可を出せるもので、許可を出した瞬間に、財布の操作を丸ごと渡すことになります。

Blockaidの投稿によると、この許可は財布の取引の通し番号が合わないと通りません。Binance 14はそのときも出金を処理し続けていて、番号が進んでいました。そこで犯人は、番号を50個分変えた許可を1回の取引でまとめて送りました。

The attacker didn't know Binance 14's live nonce. So they sprayed 50 EIP-7702 auths (18914775-18914824) in one type-4 tx. Only 1 of 50 was a hit. (犯人はBinance 14の今の通し番号を知らなかった。だから50通りのEIP-7702の許可を1つの取引に載せてばらまいた。当たったのは50のうち1つだった)

当たった時点から、Binance 14は犯人のプログラムどおりに動く財布になりました。CertiKの技術者によると、その後、Binance 14が持ち主になっていた別の財布からも、約8億2000万ドル分のUSDCが抜かれています。

一番の謎は、50通りの許可がBinance 14の鍵で署名されていたことです。CertiKの技術者は、許可は使われる数分前に署名されていたと書いています。Blockaid CEOのIdo Ben-Natanは「It seems to be… a compromise of signing infrastructure. We don't think a key was leaked.(署名の仕組みが乗っ取られたように見える。鍵が漏れたとは考えていない)」と話し、あくまで初期の見立てだとしています。Coboの共同創業者シェン・ユーも、チェーンの上から見る限り問題は署名の手順にあり、コントラクトの弱点は見られないと分析しています(TechFlowによる)。本当の入り口は、バイナンスの調査結果を待つしかありません。

前の日から準備し、予行演習までしていた

CertiKの技術者の追跡では、犯人は28日16時(日本時間)にTornado Cashから手数料用のイーサを引き出し、29日11時に吸い出し用のプログラムを置き、29日夜に自分の財布で同じ手順を試しています。TechFlowによると、最後の予行演習から本番までは3時間半でした。ビットコインはちょうど1000BTCずつに分けて、同じブロックで送り出されています。

凍結できたのは約30億ドル、逃げた分も32億ドル超

Tetherは、イーサリアムで抜かれてから37分後に最初の凍結をかけ、CEOは最終的に15億6700万ドルを超えるUSDTを凍結したと書きました。Circleは警察と連携して8億ドルを超えるUSDCを凍結しています。Ripple、World Liberty、Paxos、アービトラムのセキュリティ評議会も凍結に加わり、バイナンスは9時52分に、凍結額は約30億ドルだと発表しました。

ただ、CertiKの技術者の追跡では、イーサリアム上のUSDTのうち約4億3500万ドル分は凍結が追いつく前に売られていました。ビットコインとイーサは発行元が凍結できる仕組みが無く、日本時間8時50分時点で、凍結できていない分は約32億7000万ドルあるとしています。犯人は盗んだUSDTを担保にAaveから約4460万ドル分のイーサを借りていて、Aaveは多くの市場を凍結しました(Cointelegraphによる)。

通貨ごとの値動き──ENAは最大19.7%、TRXだけ上がった

CoinGeckoの5分ごとの値を取り、流出の直前(日本時間30日5時)と比べました。

通貨 直前(5時・ドル) 最安値 最大の下げ 11時
ビットコイン 80,769 76,666 -5.1% -5.1%
イーサ 2,335 2,192 -6.1% -6.1%
BNB 744.1 683.3 -8.2% -5.6%
XRP 1.282 1.205 -6.0% -5.8%
ソラナ 99.77 92.90 -6.9% -6.3%
ドージコイン 0.0792 0.0730 -7.8% -7.1%
TRX 0.3313 0.3295 -0.5% +8.0%

犯人の手に渡ったトークンの下げは、もっと大きくなっています。

トークン 直前(5時・ドル) 最安値 最大の下げ 11時
ENA 0.2092 0.1680 -19.7% -15.8%
PEPE 0.0000052 0.0000044 -15.3% -12.4%
AAVE 133.4 116.6 -12.6% -10.6%
UNI 7.167 6.273 -12.5% -9.5%
LINK 11.68 10.32 -11.6% -10.3%
ARB 0.1682 0.1503 -10.6% -9.2%

この表は、筆者がCoinGeckoのAPIから自分で値を取って計算したものです。計算していて目についたのは、主な通貨の中でTRXだけが上がっていたことでした。CertiKの技術者の追跡では、犯人は凍結される前に、トロンの上で約2億3400万ドル分のUSDTをTRXに替えていました。値上がりとの関係までは、この表からは言えません。ENAとPEPEについては、TechFlowが、犯人がENAを2億1750万枚売りさばき、PEPEも7兆7700億枚をイーサに替えていたと伝えています。

AIとの関係──発表はまだ無いが、見方を書く

今回の攻撃にAIが使われたという発表は、10月30日11時時点でありません。犯人も分かっていません。ここからは、確認できている事実と、このサイトの見方を分けて書きます。

確認できている事実は次のとおりです。

  • Blockaid CEOは、今回の動きは北朝鮮のハッカーの手口にとても似ていると話しています(Cointelegraphによる)。2025年のBybitの事件は、北朝鮮のハッカーの仕業とされています(TechCrunchによる)
  • The Hacker Newsの8月の記事では、北朝鮮の工作員とみられる人たちが、Google Geminiで加工された身分証の画像や、AIの面接補助ツールを使っていました
  • The Informationなどの報道によると、バイナンスは2026年4月に、Coinbaseと一緒にAnthropicの「Claude Mythos Preview」の利用を求めていました。Claude Mythosは、ハッキングの力が強すぎるとして一般公開されていないモデルで、試験で27年間見つからなかったOpenBSDの弱点を見つけたと報じられています(ForkLogによる)
  • イーロン・マスクは、The Kobeissi Letterの速報を引用して「Everyday is Zeroday(毎日がゼロデイだ)」とだけ書きました

このサイトの見方では、前の日からの予行演習、50通りの許可を先に用意する手際、8つのチェーンをほぼ同時に抜く手順を見ると、今のハッキングはAIが絡んでいる前提で見るべきだと考えています。ハッキングの力が強すぎるとされるAIの利用を求めていた取引所が、その半年後に暗号資産史上最大の被害を受けた、という並びは事実です。

分かっていないこと

  • 盗まれた額:バイナンスは発表していません。この記事の額は、すべて各社の見積もりです
  • 入り口:鍵が漏れたのか、署名の仕組みが乗っ取られたのか。バイナンスは、調査が終わったら詳しい報告を出すとしています
  • 出金の再開:時期は発表されていません
  • 値動き:11時の値で計算しています。この記事を読む時点では動いているはずです

本記事は、バイナンスの発表など続報があり次第更新します。

動画では、凍結との競争や通貨ごとの表を画面で見せています。見た感想や「この点を追ってほしい」という声は、YouTubeのコメント欄に書いてもらえれば、続報の記事と動画で拾います。

この記事でよく聞かれること

バイナンスのハッキングで、いくら盗まれたのですか?
まだ確定していません。バイナンスは盗まれた額を発表していません。Chainalysisは盗まれた時点で約59億1200万ドルと見積もり、2025年のBybitの事件の約4倍としています。ほかに、Blockaidの最初の集計が約33億ドル、Glassnodeが約53億ドル、CertiKの技術者が8つのチェーンを追って約62億8000万ドルと出しています。
バイナンスの利用者の資金はどうなりますか?
バイナンスは日本時間10月30日9時13分のX投稿で「Binance will cover all losses.(損失は全部バイナンスが補う)」と発表しました。同時に、念のため入金と出金を全面的に止めています。出金の再開時期は発表されていません。
どうやって盗まれたのですか?
BlockaidとCertiKの技術者の追跡によると、犯人はBinance 14というイーサリアムの財布の名前で署名された、EIP-7702という仕組みの許可を50通り、1回の取引でまとめて送り、取引の通し番号が合った1つが通りました。その4分後、1回の取引で約25億3000万ドル分が抜かれています。許可がなぜバイナンスの鍵で署名されていたのか(鍵が漏れたのか、署名の仕組みが乗っ取られたのか)は、バイナンスがまだ発表していません。
仮想通貨の値段はどれくらい下がりましたか?
CoinGeckoの値で流出の直前(日本時間30日5時)と比べると、ビットコインは最大5.1%、イーサは6.1%、BNBは8.2%下がりました。犯人の手に渡ったトークンの下げはもっと大きく、ENAは最大19.7%、PEPEは15.3%です。TRXだけは11時の時点で8.0%上がっていました。
今回のハッキングにAIは使われたのですか?
AIが使われたという発表はありません(10月30日11時時点)。犯人も分かっていません。Blockaid CEOは、手口が北朝鮮のハッカーの手口にとても似ていると話しています。バイナンスは2026年4月に、ハッキングの力が強すぎるとして一般公開されていないAnthropicのClaude Mythosの利用を求めていたと報じられています。
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出典・参照資料

YouTubeで見る ↗
AI時短ラボ

大きいニュースはYouTubeでも解説しています。Xでは新着記事をお知らせしています。

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