2026年9月12日 土曜日
AI時短ラボ
業界· 約15

AIに打った内容は誰が見られるのか──OpenAI・Anthropic・Googleの規約原文を並べたら、3社で書き方がはっきり違った

AIチャットの入力内容を提供会社がどこまで見られるのか、3社のプライバシーポリシー原文を確認した。Googleは「レビュアーに見られたくない機密情報は入力しないでほしい」と明記し人間のレビュアーの存在を認めている。Anthropicは安全性レビューでフラグされた会話はオプトアウトしていても例外だと書き、必要なら再識別しうるとしている。OpenAIは「プラットフォーム上で送信または交換されるコンテンツを監視する」と書く。2026年9月10日にAnthropicが公開した脅威レポートは、この条項が実際に行使された記録でもある。

AIに打った内容は誰が見られるのか──OpenAI・Anthropic・Googleの規約原文を並べたら、3社で書き方がはっきり違った
執筆・編集:
目次

AIチャットに打ち込んだ内容を、提供している会社はどこまで見られるのか。OpenAI・Anthropic・Googleの規約原文を2026年9月12日に取得して確認したところ、3社とも「見ることがある」と書いていた。ただし書き方の率直さが大きく違う。Googleは「レビュアーに見られたくない機密情報は入力しないでほしい」と読者に呼びかけ、Anthropicは「必要なら再識別することがある」と書き、OpenAIは「コンテンツを監視する」と目的の一つに挙げている。

この確認をしたきっかけは、2026年9月10日にAnthropicが公開した154ページの脅威レポートだった。あの文書には、他社サービス経由で流れてきた利用者の作業内容が具体的に書かれている。規約にある権限が実際に行使された記録が先に出て、そのあとで規約を読んだ形になった。

3行まとめ ① Googleは人間のレビュアー(外部委託先を含む)が会話の一部をレビューすると明記し、「レビュアーに見られたくない機密情報は入力しないでほしい」と書いている。一時チャットは72時間、レビュー済みフィードバックと関連会話は最大3年保持。 ② Anthropicは、安全性レビューでフラグが立った会話は学習利用のオプトアウトをしていても例外とし、規約執行のために内容を再識別することがあると書いている。 ③ OpenAIは個人データの利用目的に「プラットフォーム上で送信または交換されるコンテンツを監視する」ことを挙げる。削除しても30日以内だが、ポリシー違反でアカウントが禁止された場合はデータを保持することがある。

3社が原文で何と書いているか

人間のレビュー 学習オプトアウトの例外 保持
Google(Gemini Apps) 明記。外部委託先の訓練を受けたレビュアーを含む Keep Activityをオフにすれば将来のチャットはレビュー対象外 一時チャット72時間/レビュー済みフィードバックと関連会話は最大3年
Anthropic(Claude) 明記なし。フラグ時の再識別を明記 フラグされた会話とユーザーが報告した内容は例外 会話削除は30日以内にバックエンドから削除
OpenAI(ChatGPT) 明記なし。コンテンツの監視を目的に記載 記載を確認できず 削除後30日以内/ポリシー違反での禁止時は保持しうる

「人間のレビュー」の欄は、各社のポリシー本文に人間のレビュアーへの言及があるかどうかを指す。記載がないことは、レビューが行われていないことを意味しない。

Googleがいちばんはっきり書いている

Gemini Appsのプライバシーハブにはこう書かれている。

Human reviewers (including trained reviewers from our service providers) review some of the data we collect for these purposes. Please don't enter confidential information that you wouldn't want a reviewer to see or Google to use to improve our services, including machine-learning technologies.

(当社が収集するデータの一部は、人間のレビュアー(サービスプロバイダーの訓練を受けたレビュアーを含む)がレビューします。レビュアーに見られたくない機密情報、または機械学習技術を含む当社サービスの改善にGoogleが使うことを望まない情報は、入力しないでください。)

ここで重要なのは「service providers」という語で、Googleの社員だけでなく外部委託先のレビュアーも含まれると書いてある点。同じページには、レビューに回す前にアカウントとの紐付けを外す(disconnected from your Google Account)という記述もある。

保持期間は具体的に書かれている。Keep Activityをオフにしたときと一時チャットは72時間。理由として「システム障害の可能性に備えて」と説明されており、一時チャットはモデルの訓練には使われないとされる。一方で、利用者がフィードバックを送信した場合は扱いが変わる。

Reviewed feedback, associated conversations, and related data are retained for up to 3 years, disconnected from your Google Account.

(レビュー済みのフィードバック、関連する会話、および関連データは、Googleアカウントとの紐付けを外したうえで最大3年間保持されます。)

「フィードバックを送る」という操作が、その会話を3年保持の対象に移す。この対応関係は、画面上のボタンからは読み取れない。

Anthropicの「再識別」条項

Anthropicのプライバシーポリシーには、フラグが立った場合の扱いが書かれている。

If our systems flag Inputs or Outputs for harmful content or for potentially violating our policies, we disassociate the content from your user ID to train our trust and safety internal classification and generative models. However, we may re-identify the Inputs or Outputs to enforce our Terms of Service or Usage Policy with the responsible user if necessary.

(当社のシステムが入力または出力を有害なコンテンツまたはポリシー違反の可能性ありとフラグした場合、当社はその内容をユーザーIDから切り離し、信頼性・安全性に関する内部の分類モデルおよび生成モデルの訓練に使用します。ただし必要な場合、当社は責任のある利用者に対して利用規約または使用ポリシーを執行するために、入力または出力を再識別することがあります。)

「切り離す」と「必要なら結び直す」が1つの段落に書かれている。

学習利用のオプトアウトについても例外が明記されている。

Even if you opt-out, we will use Inputs and Outputs for model improvement when: (i) your conversations are flagged for safety review to improve our ability to detect harmful content, enforce our policies, or advance AI safety research, or (ii) you've explicitly reported the materials to us

(オプトアウトしていても、当社は次の場合に入力および出力をモデル改善に使用します。(i) 有害なコンテンツの検出能力の向上、ポリシーの執行、またはAI安全性研究の推進のために会話が安全性レビューにフラグされた場合、(ii) 利用者が明示的に当社へ報告した場合。)

つまり設定でオプトアウトしても、フラグが立てば適用されない。何がフラグの条件になるかは、このポリシーには書かれていない。

OpenAIは「監視」を目的に挙げている

OpenAIのプライバシーポリシー(2026年2月6日更新・日本語版)は、個人データの利用目的の一つにこう書く。

当社のサービスにおける詐欺、違法行為、または不正使用を防止し、当社のプラットフォーム上で送信または交換されるコンテンツを監視するなどして、当社のシステムおよびサービスのセキュリティを保護するため

保持については、削除操作をしても即時ではないと書かれている。

お客様が個人データの削除を選択した場合、当社は…30日以内に当社のシステムから削除します

ただし例外がある。

特定のコンテンツまたはお客様のアカウントが、当社の使用に関するポリシー違反を理由に禁止された場合、当社は、当社のサービスを詐欺、不正使用、またはその他のポリシー違反から保護するために、そのデータを保持することがあります。

BANされると削除の話とは別の扱いになる、と読める。

職場での利用に関わる記述もある。

お客様がChatGPT Enterprise又はビジネスアカウントに登録した場合には、当該アカウント管理者は、お客様のコンテンツ情報へのアクセスを含め、お客様のOpenAIアカウントにアクセスし、それを管理することができます。

会社のアカウントで打った内容は、会社の管理者が見られる。これはAI企業が見るかどうかとは別の論点だが、実務では先に効いてくる。

なお、OpenAIのこのポリシーは冒頭で「APIサービスなど事業者向けサービスには適用されない」と断っている。API利用の条件は顧客契約側にあるため、この記事の範囲外になる。

規約の条項が行使された記録が先に公開されていた

2026年9月10日にAnthropicが公開した脅威レポートには、同社に届いたリクエストの中身が具体的に書かれている。人民解放軍と関係があるとAnthropicが評価する利用者が成都の監視カメラ映像を読み込ませて特定個人の行動を分析させていた例、ロシア国防省と関係する機関のデータベースの有効な認証情報が含まれていた例などが挙がっている。

これらはメタデータからは書けない。プロンプトの中身を読まなければ書けない記述である。

同じ報告書の生物の章の結論には、その必要性が明記されている。

Safeguarding access to such content will necessarily require account and institutional signals to verify user legitimacy, and the rudimentary observability provided by data retention to identify misuse.

(そうした内容へのアクセスを守るには、利用者の正当性を検証するアカウントおよび機関のシグナルと、悪用を特定するためにデータ保持がもたらす初歩的な観測可能性が、必然的に必要になる。)

Anthropicは「悪用を見つけるにはデータを保持して観測する必要がある」と、配慮の話としてではなく前提条件として書いている。同じ章には、ある中継基盤が「データ非保持(ZDR)サービスを使って内容を隠していた」という記述もある。裏を返せば、ZDR契約でなければ内容は観測できる、ということになる。

筆者が確認して、確認できなかったこと

この記事を書くにあたって、筆者は先にAnthropicの脅威レポート154ページを全文読み、2本の解説動画(前編後編)と解説記事を作った。そのうえで3社の規約に当たった。順序としては、条項が行使された具体例を先に読んでから条文を読んだことになる。その状態で読むと、同じ文面でも見え方が変わった。

確認できていないことを列挙する。

  • 人間が読んだのか、分類器だけなのかは判別できない。 明記しているのはGoogleだけで、Anthropicの「再識別」もOpenAIの「監視」も、自動処理のみで完結するのか人が介在するのかは条文からは読み取れない。
  • 社内の閲覧権限の設計は確認していない。 誰がどの条件で個々の会話を開けるのか、監査ログがあるのかは、3社ともこのポリシーには書かれていない。
  • 法人向け・API向けの条件は別文書にある。 OpenAIは本文で「適用されない」と明記しており、Anthropicの商用規約、Googleの Workspace/Vertex 側の条件はこの記事では扱っていない。ZDR(データ非保持)契約の条件も確認していない。
  • フラグの基準は公開されていない。 Anthropicの「フラグが立った会話」が何をもってフラグされるのかは、確認した範囲では3社とも公開情報に見当たらなかった。

打つ前に決められること

規約を読んで実務として変えられるのは、次の3点に絞られた。

  1. 一時チャット・Keep Activityオフを、機密を含む用途の既定にする。 Googleは一時チャットを訓練に使わないと明記し、保持は72時間と書いている。OpenAIも一時チャットは30日以内の自動削除としている(安全上・法的理由での保持を除く)。
  2. フィードバックボタンの意味を理解しておく。 Googleでは、フィードバックを送るとその会話が最大3年保持の対象になる。Anthropicも、明示的に報告した内容はオプトアウトの例外になると書いている。押した瞬間に扱いが変わる。
  3. 会社のアカウントと個人のアカウントを分ける。 OpenAIはビジネスアカウントの管理者が従業員のコンテンツにアクセスできると明記している。AI企業が見るかどうか以前に、雇用主が見られる。

中国系ラボ(DeepSeek・Moonshot・MiniMaxなど)の規約は書き方も保存先も別の話になるので、別の記事で扱う。

規約は改定される。この記事の内容は2026年9月12日に取得した版に基づいており、以後の変更は反映されない。読者が原文を確認できるよう、出典には各社のポリシーページを入れてある。

シェア: ポスト はてブ

出典・参照資料

AIニュースの解説を動画でも

YouTubeでは注目ニュースの背景を解説し、Xでは新着記事をお知らせしています。

コメント

まだコメントはありません。最初のコメントを書いてみませんか?

AIについて聞きたいことはありますか?

質問箱で無料で受け付けています。回答は公開され、他の方の参考にもなります。

質問箱を見る →

新しい記事をメールで受け取る

AIの新しい発表を、出典付きで整理して届けます。

関連記事