Transformer著者7/8人、ノーベル賞受賞者──GoogleからAIの立役者が消えていく
AlphaFold開発者John JumperがAnthropicへ、Transformer共同発明者Noam ShazeerがOpenAIへ。Gemini 3.5 Pro発表を控えるGoogleから、AI分野の最重要人物たちが相次いで離脱している。

3行まとめ
- 2026年6月、ノーベル化学賞受賞者John JumperがAnthropicへ、Transformer共同発明者Noam ShazeerがOpenAIへ離脱
- 2017年のTransformer論文著者8人について、出典のFourWeekMBAの一覧表では全員がすでにGoogleを去ったことになっている(同記事本文の「8人中7人」という記述とは食い違いがある)
- Gemini 3.5 Proの一般リリースを控える中、Geminiは安定性とベンチマーク評価の両面で批判が続いている
2026年6月18日と19日、2日連続でGoogleからAI分野の象徴的人物が離脱した。現代AIの基礎技術も、最大の科学的成果も、Google/DeepMindから生まれた。だがそれを作った人たちが、もうGoogleにいない。
6月の2大離脱
John Jumper → Anthropic(6月19日発表)
JumperはAlphaFoldの開発リーダーで、2024年にDemis Hassabisと共にノーベル化学賞を受賞した。タンパク質の立体構造予測を根本から変え、2億以上の構造を予測したAlphaFoldは、DeepMindの最大の科学的成果とされる。移籍の経緯とAlphabet株価への影響は別記事で詳しく整理している。
Jumper本人はXで以下のように投稿した。
"After nearly nine years, I have decided to leave Google DeepMind and join Anthropic."
(9年近く在籍したGoogle DeepMindを離れ、Anthropicに参加することを決めた。)
Anthropicは2026年に入りウェットラボの開設、Allen InstituteやHoward Hughes Medical Instituteとの提携など、AI×科学の基盤構築を進めている。ノーベル賞受賞者の合流はその延長線上にある(Bloomberg、CNBCの報道による)。
Noam Shazeer → OpenAI(6月18日発表)
Shazeerは2017年の論文「Attention Is All You Need」の共著者で、現代AIの基盤であるTransformerアーキテクチャの共同発明者。Google GeminiのEngineering VP兼共同リードだった。
Googleは2024年、ShazeerをCharacter.AIから約27億ドルで引き戻した。2年足らずでの再離脱となる。OpenAIでの肩書は「Lead for Architecture Research」(OpenAIのチーフ・リサーチ・オフィサーMark ChenがTechTimesに確認した表記。「AI」を含めた「Lead for AI Architecture Research」という表記は出典では確認できなかった)。移籍発表の経緯と本人のXポストの詳細はノーム・シャジーアのOpenAI移籍を扱った記事にまとめている。
Transformer論文著者8人の現在
2017年の「Attention Is All You Need」は現代AIの出発点とされる。その8人の著者の現在を整理した(FourWeekMBA、RiffOn等の報道に基づく)。
| 著者 | 現在の所属 | Google残留 |
|---|---|---|
| Noam Shazeer | OpenAI(2026年6月〜) | ❌ |
| Ashish Vaswani | Adept共同創業 | ❌ |
| Aidan N. Gomez | Cohere創業・CEO | ❌ |
| Jakob Uszkoreit | Inceptive創業 | ❌ |
| Lukasz Kaiser | OpenAI(2021年〜) | ❌ |
| Niki Parmar | Adept共同創業 | ❌ |
| Illia Polosukhin | NEAR Protocol創業 | ❌ |
| Llion Jones | Sakana AI創業(東京) | ❌ |
出典のFourWeekMBAの一覧表では8人全員がGoogleを離れたことになっている(本文中には「8人中7人」離脱という記述も別にあり、両者は整合していない。当初「Lilian Jones」がGoogleに残留と記載していたが、実在するTransformer論文の8人目の著者はLlion Jonesであり、同記事の一覧表では彼もSakana AI創業のためGoogleを離れたとされている。「Google残留」の1人が誰なのかを特定できる記述は出典に見当たらなかった)。
その他の主要な離脱
Transformer著者とJumper以外にも、DeepMindの中核人材の流出が続いている。
- David Silver → Ineffable Intelligence創業(2025年11月)。AlphaGoの中心的研究者(Fortune報道)
- Ioannis Antonoglou → Reflection AI。AlphaGo/AlphaZero共同開発者
- Laurent Sifre、Karl Tuyls → それぞれAIスタートアップを創業
- Pete Florence → Generalist AI創業(ロボティクス、Nvidia出資)(TechCrunch報道)
- Dave Citron → Microsoft AI部門Corporate VP
FourWeekMBAの集計によると、DeepMindからの流出は2025年以降で21人以上が確認されている(Google公式発表ではなく報道ベースの集計)。
一方のGemini:3.5 Proはまだ出ていない
人材流出が進む中、Googleの主力AI製品Geminiは厳しい評価が続いている。
Gemini 3.5 ProはGoogle I/O 2026(5月19日)で発表されたが、2026年6月20日時点でまだ一般リリースされていない。Vertex AI上の限定プレビューにとどまっている。I/Oの壇上でSundar Pichai CEOが「来月」と述べた際、会場からは溜息が漏れたとの報道がある。
先行してリリースされたGemini 3.5 Flashには複数の批判が出ている。
- 9to5Googleの報道によると、Androidコーディングベンチマークでトップ5に入れず6位
- BigGo Financeは「IQ Drop」(知性の低下)と表現。複雑な推論で旧世代の3.1 Proに劣るとの指摘
- トークン消費量の増加により、実質運用コストは前世代比で75%増とする試算もある
- Google AI Developers Forumでは「The 2026 Stability Crisis: Geminiは最も不安定なフロンティアAI」と題したスレッドが立っている
正直に言うと:まだわからないことが多い
- 離脱者たちの具体的な離脱理由は、ほとんどの場合公式に語られていない。報酬、研究の自由度、組織文化など推測はあるが、断定できるものではない
- 「21人以上」の流出数は報道ベースの集計であり、Google公式の発表ではない
- Gemini 3.5 Proの実力は一般リリース前のため、評価しようがない。Flashの問題がProに引き継がれるかは不明
- Google側の公式見解(人材流出への反論や対策)は、本記事執筆時点で確認できていない
- Niki Parmarの2026年時点での所在は未確認(Adept共同創業は確認済み)
ここから何が見えるか
事実の構造だけ整理する。Googleは現代AIの基礎技術(Transformer)と最大の科学的成果(AlphaFold)の両方を生み出した。だがその技術を作った人たちが、ライバル企業(Anthropic、OpenAI)や独立スタートアップに移っている。Gemini 3.5 Proという次の旗艦モデルのリリースを前に、チームの顔ぶれは大きく変わっている。市場もこの流出を無視しなかった。Alphabet株は6月22日に約6%下落しており、設備投資への懸念とあわせた反応の詳細はAlphabet株が約6%急落――AI投資拡大と主要研究者の流出が重なり、投資家の懸念が表面化にまとめている。
これが「Google大丈夫なのか」を意味するのか、それとも巨大組織は個人に依存しないのか。判断は読者に委ねる。
本記事は2026年6月20日時点の情報に基づいています。続報があり次第更新します。
出典・参照資料
- 二次資料Nobel Winner John Jumper to Leave Google DeepMind for Anthropic (Bloomberg) ↗
- 二次資料John Jumper to leave Google DeepMind for Anthropic (CNBC) ↗
- 二次資料Transformer Architect Behind Gemini Jumps to OpenAI (TechTimes) ↗
- 二次資料Google Built the Foundation of Modern AI — Then Lost Everyone Who Made It (FourWeekMBA) ↗
- 二次資料Gemini 3.5 Flash Sparks Controversy: 'IQ Drop' (BigGo Finance) ↗
- 二次資料The 2026 Stability Crisis (Google AI Developers Forum) ↗
更新・訂正履歴
- John Jumperの引用を訂正。「After nearly 9 years, I have decided to leave Google DeepMind and join Anthropic (after taking some time to recharge).」としていたが、出典のCNBC記事(Wayback Machine保存版で確認)に実際に掲載されている本人の投稿は「After nearly nine years, I have decided to leave Google DeepMind and join Anthropic.」であり、「9」は数字ではなく英単語表記、かつ「(after taking some time to recharge)」という一節は存在しなかった。原文どおりに修正した。
- Noam Shazeerの新肩書「Lead for AI Architecture Research」を「Lead for Architecture Research」に訂正。出典のTechTimes記事に、OpenAIのチーフ・リサーチ・オフィサーMark Chenが確認した表記として「Lead for Architecture Research」(AIを含まない)と明記されていた。
- Transformer論文8著者の表で、8人目を「Lilian Jones(Google残留)」としていたが誤り。実在する8人目の著者はLlion Jonesであり、出典のFourWeekMBAの一覧表では彼もGoogleを離れてSakana AI(東京)を創業したとされている。「Lilian Jones」という人物・「Google残留」という記述はいずれも出典に存在せず、氏名・在籍状況ともに訂正した。あわせて「8人中7人が離脱、残留は1人のみ」という要約も、出典の一覧表(8人全員離脱)と本文(「8人中7人」)が食い違っている旨を明記する形に改めた。
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