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Sakana AI、LSTM考案者の一人シュミットフーバー氏を招聘──Transformer論文の共著者は氏ではなく同社CTOのLlion Jones氏

Sakana AIは2026年9月24日、Jürgen Schmidhuber氏が現職と兼任のChief Scientific Advisorとして同社に参画し、社内の「Recursive Self-Improvement (RSI) Lab」に携わると公式ブログで発表した。同社は氏を「現代AIの父」と紹介している。氏は1997年のLSTM論文の共著者だが、2017年の論文『Attention Is All You Need』の共著者8人には含まれず、その8人の1人が同社CTOのLlion Jones氏である。

Sakana AI、LSTM考案者の一人シュミットフーバー氏を招聘──Transformer論文の共著者は氏ではなく同社CTOのLlion Jones氏
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2026年9月25日未明(日本時間)時点の情報です。 日本のAI企業Sakana AIは2026年9月24日、公式ブログでJürgen Schmidhuber氏の参加を発表した。発表文によれば、Schmidhuber氏は現職と兼任する形で「Chief Scientific Advisor」(日本語版の表記は「チーフ・サイエンティフィック・アドバイザー」)としてSakana AIに正式に参画し、同社の研究グループ「Recursive Self-Improvement (RSI) Lab」に携わる。発表文はSchmidhuber氏を「現代AIの父」として世界的に知られる研究者と紹介し、世界モデルやメタ学習などの研究を挙げている。氏はLSTM(長短期記憶)を1997年にSepp Hochreiter氏と発表した研究者でもあるが、発表文自体はLSTMに触れていない。一方で、2017年の論文『Attention Is All You Need』でTransformerを提案した共著者8人にSchmidhuber氏の名前はなく、その8人の1人が同社CTOのLlion Jones氏である。

3行まとめ

  1. Sakana AIは2026年9月24日、Jürgen Schmidhuber氏が現職と兼任でChief Scientific Advisorとして参画し、社内の研究グループ「RSI Lab」に携わると公式ブログで発表した。発表文に開始日は無く、同社のRSI Lab紹介ページが「2026年9月」に参画したと書いている。現職の名称は発表文に無い。
  2. 発表文はSchmidhuber氏の実績として、世界モデル(World Models)・メタ学習・ゲーデルマシン・1991年のディープラーニング技術を挙げ、「現代AIの父」という紹介には2023年のガーディアン紙の記事(見出しの表現は「father of AI」)をリンクしている。LSTM(1997年、Sepp Hochreiter氏との共著)への言及は発表文自体には無い。
  3. 2017年の論文『Attention Is All You Need』の共著者8人にSchmidhuber氏は含まれない(arXivで確認)。8人の1人は、9月18日の研究グループ「Frontier Intelligence Group」の発表文でも「Transformerの発明者の一人」と紹介された同社CTOのLlion Jones氏である。

9月24日の発表文に書かれていること

発表文(英語版・日本語版とも同一ページに掲載)から確認できる事実を整理する。

項目 発表文の記載
発表日 2026年9月24日(ページの<time>要素も同日付)
新しい役職 Chief Scientific Advisor(現職と兼任)
関わる組織 社内の研究グループ「Recursive Self-Improvement (RSI) Lab」
来日予定 定期的に東京を訪れ、チームおよび日本のAIエコシステム全体を支援すると記載
新製品・新モデルの発表 無し。氏の基礎研究をもとに「Agent-Native World Models」を開発中と書くが、公開時期や仕様は書いていない
役職開始日・現職の名称・報酬 発表文に記載なし(開始時期は同社のRSI Lab紹介ページに「2026年9月」とある)

Chief Scientific Advisorとして何をするか

発表文はSchmidhuber氏の役割を「現職と兼任する形で」RSI Labに携わることと説明する。RSI Labは当サイトが既報の通り、2026年6月5日にSakana AIが設立を発表した研究グループで、同社の日本語版の紹介ページの言葉では「AIの開発プロセスそのものを設計し直すことを担う専任の研究グループ」だ。同じページは、Darwin Gödel MachineやThe AI Scientist(Nature掲載)などを、ラボの土台となる研究として挙げている。今回の発表文は、シュミットフーバー氏が「新設のRSI Labの舵取りを支援します」と書き、再帰的自己改善とメタ学習を扱った氏の1987年の学位論文にさかのぼるビジョンが、Darwin Gödel MachineからThe AI Scientistまでの同社の成果に「直接的な影響を与えています」としている。

その6月5日付のRSI Lab紹介ページには、本記事が9月25日に取得した時点で「Chief Scientific Advisor: Jürgen Schmidhuber」という節があり、日本語版は「2026年9月、ユルゲン・シュミットフーバー博士が、チーフ・サイエンティフィック・アドバイザーとしてSakana AIに参画し、RSI Labの研究の指導に携わることになりました」と書いている。役割については「私たちの世界モデルや自律システムに関する研究を、アドバイザーとして導いていただきます」とある。インターネットアーカイブが2026年6月26日に保存した同ページ(英語版)にはこの節が無く、6月26日より後に書き足されたことになる。

発表文はSchmidhuber氏の言葉として、次の引用を掲載している。

"Japan is a birthplace of foundational neural network architectures and advanced robotics. It is a privilege to join Sakana AI to help bridge these two worlds. The future of intelligence is not just language; it is physical AI powered by World Models. Sakana AI is uniquely positioned to reclaim Japan’s legacy of innovation by building autonomous systems that can truly understand, simulate, and interact with the physical universe."

(「日本は、ニューラルネットワークの基盤となるアーキテクチャと、高度なロボティクスを生み出してきた国です。この二つの世界の橋渡しを担うべく、Sakana AIに参画できることを光栄に思います。知能の未来は言語だけではなく、世界モデル(World Models)を原動力とするフィジカルAIにあります。物理世界を真に理解し、シミュレートし、相互作用できる自律システムを構築することで、日本のイノベーションの伝統を取り戻す。この挑戦において、Sakana AIは他にないユニークな立ち位置にあります」/Sakana AI公式ブログ日本語版より)

発表文はさらに、Schmidhuber氏の基礎研究をもとに「Agent-Native World Models」の開発を進めているとし、これは行動が物理世界にもたらす結果を、実際に行動する前に安全にシミュレートできるモデルだと説明している。

Sakana AIが紹介するSchmidhuber氏の実績

発表文はSchmidhuber氏を「現代AIの父」として世界的に知られると紹介し、その語に2023年のガーディアン紙の記事をリンクしている。同記事の見出しの表現は「‘father of AI’ says」で、本文は氏を "The man once described as the father of artificial intelligence"(かつて人工知能の父と評された人物)と紹介している。ガーディアン紙の表現は「現代AIの父」ではなく「AIの父」で、「かつて評された」という書き方である。発表文が氏の貢献として名前を挙げているのは、世界モデル(World Models)・メタ学習(Meta-Learning)・ゲーデルマシン(Gödel Machine)、そして「今日のAIブームの多くを支える1991年のディープラーニング技術」の4つで、それぞれ氏の研究ページへのリンクが張られている。

発表文はまた、Schmidhuber氏が日本人研究者の功績を称えてきたとして、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の原型となる1979年の「ネオコグニトロン」を考案した福島邦彦氏と、ホップフィールド・ネットワークに先行する研究を行ったとする甘利俊一氏の名前を挙げている。この2人への評価には、Schmidhuber氏自身のX(旧Twitter)投稿や研究ページへのリンクが付いており、本記事はSakana AIの発表文の記載を紹介するにとどまる。

なお、LSTM(長短期記憶、Long Short-Term Memory)への直接の言及は、今回のSakana AIの発表文には無い(発表文がリンクする「1991年のディープラーニング技術」のページにはLSTMへの言及がある)。LSTMはSepp Hochreiter氏とSchmidhuber氏が1997年に学術誌Neural Computationで発表した研究で、Wikipediaの該当項目も両氏の共著として記載している。LSTM考案者という紹介のされ方は、Sakana AIの発表文自体の記述ではなく、広く知られた経歴として本記事が補ったものであることを明記しておく。

「Transformer論文の共著者」ではない

発表文が「1991年のディープラーニング技術」としてリンクしているページ「Munich 1991: the Roots of the Current AI Boom」は、Sakana AIのDavid Ha氏とSchmidhuber氏の連名で2026年6月18日付だ。Ha氏の序文は、1991年に氏の研究室が "the very first Transformer variant"(最初のTransformerの変種)を発表したと書き、続くSchmidhuber氏の年表は、その1991年の手法を "unnormalized linear Transformer" と呼んで、"normalized quadratic Transformer"(参考文献には2017年の論文を挙げている)の "predecessor"(前身)と位置づけている。同ページの参考文献欄は2017年の論文について、1991年の発表を引用していない("It did not cite the 1991 publication")と注記している。

ただし、2017年にGoogleの研究者らが発表した論文『Attention Is All You Need』(Transformerを提案した論文)の共著者8人──Ashish Vaswani、Noam Shazeer、Niki Parmar、Jakob Uszkoreit、Llion Jones、Aidan N. Gomez、Łukasz Kaiser、Illia Polosukhin──に、Schmidhuber氏の名前は無い。arXivの該当ページで確認した。

同論文の共著者であるLlion Jones氏は、Sakana AIの会社情報ページによれば同社の共同創業者でCTOを務める。当サイトが9月18日の発表を扱った既報でも書いた通り、同社が同日公表した研究グループ「Frontier Intelligence Group (FIG)」の発表文は、Jones氏を「Transformerの発明者の一人」(one of the inventors of the Transformer)と明記している。今回のSchmidhuber氏の招聘発表とFIGの発表は6日違いで出た別々の発表であり、発表文どうしを直接結びつける記述は無い。

FIGとの関係

発表文が挙げるSchmidhuber氏の関与先はRSI Labで、発表文にFIGの名前は出てこない。FIG発表文(9月18日)にもSchmidhuber氏の名前は無い。ただしFIG発表文は、日本で人工ニューラルネットワークの基礎的な業績が数多く生まれた、と書く一文で、氏の研究ページ(deep-learning-history)にリンクしている。

RSI LabとFIGはいずれもSakana AI社内の研究グループだが、同社の各ページによれば、RSI Labは2026年6月5日に設立が発表された、AIの開発プロセスそのものを設計し直すことを担う専任の研究グループ、FIGは創業当初の研究者2人の週次の雑談から始まり、9月18日に初めて存在が公表された、主流とは別のパラダイムを探る集まりである。FIG発表文は再帰的自己改善を次のブレークスルーに向けた「自然な選択肢のひとつ」として挙げているが、RSI Labの名前は出てこず、RSI Labの紹介ページにもFIGの名前は無い。2つのグループの人員や予算の重なりについて、どちらのページも触れていない。

発表文から分からない開始日・現職・報酬

発表文には、Schmidhuber氏の役職開始日、兼任するとされる「現職」の名称(英語版は "his current positions" と複数形で書くが、名指しはしていない)、報酬・契約形態は書かれていない。開始時期については、前述のRSI Lab紹介ページが「2026年9月」と月までを書いている。現職については、発表文がリンクする1991年のページの署名欄が「Jürgen Schmidhuber, KAUST & IDSIA」で、2023年のガーディアン紙の記事は当時の氏をサウジアラビアのキング・アブドゥッラー科学技術大学(KAUST)のAIイニシアチブの責任者(director)と紹介していたが、Sakana AIが今回これらを現職として示したわけではない。福島邦彦氏・甘利俊一氏への評価の根拠としてリンクされているX投稿の内容は、本記事の執筆時点では未確認である。

英語版と日本語版の書き分け

英語版と日本語版の本文を段落ごとに読み比べたが、9月18日のFIG記事で見つかったような日英間の情報量の差(日本語版にのみ書かれた具体的な数字など)は、今回のSchmidhuber氏招聘の発表文では見当たらなかった。表現の違いとして目についたのは甘利俊一氏の紹介で、英語版は "the true pioneer of Hopfield Networks"(ホップフィールド・ネットワークの真の先駆者)と書き、日本語版は「ホップフィールド・ネットワークに先行する研究を行い」と書いている。また、1987年の学位論文のPDFへのリンクは英語版にだけある。

この記事が参照した情報

一次ソースはSakana AI公式ブログの発表文(sakana.ai/schmidhuber/、英語・日本語併記)。RSI Labの経緯と参画時期は同社のRSI Lab紹介ページ(英語版・日本語版)とインターネットアーカイブの保存版、FIGの記述は同社のFIG発表文、Jones氏の肩書きは同社の会社情報ページ、1991年の研究をめぐる記述は発表文がリンクする「Munich 1991」のページを、それぞれ本記事執筆時に開いて照合した。Transformer論文の著者確認はarXivの論文ページ、「現代AIの父」のリンク先はガーディアン紙2023年5月7日の記事本文、LSTMの著者確認はWikipediaの該当項目で行った。本文中のリンクはすべてcurlで到達確認済み。

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