2026年9月11日 金曜日
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OpenAI、ChatGPTの新デフォルト「GPT-5.5 Instant」を投入 ― 幻覚を大幅削減

OpenAIがChatGPTの新デフォルト「GPT-5.5 Instant」を公開。低遅延を保ちつつ、法律・医療・金融など高リスク領域での幻覚を削減したと説明している(削減幅の定量値は確認できる出典に示されていない)。

OpenAI、ChatGPTの新デフォルト「GPT-5.5 Instant」を投入 ― 幻覚を大幅削減
執筆・編集:
目次

3行まとめ

  1. OpenAIがChatGPTの新デフォルト「GPT-5.5 Instant」を公開、GPT-5.3を置き換え
  2. 法律・医療・金融の幻覚を削減したと説明、ただし削減幅の定量値は確認できる出典になく独立検証もない
  3. 検索が過去会話・ファイル・Gmailを参照可能に、提供は一部有料プランから順次拡大

2026-08-14 追記:公開時に取得できなかったOpenAI公式ページを、Internet Archiveの保存版で確認した。幻覚削減の定量値(内部評価で52.5%削減)とベンチマーク5項目の数値は公式ページに記載されていた。上の3行まとめ2点目「定量値は確認できる出典になく」は公開時点の状態を指す記述で、以下の追記で一次ソースの数値に置き換える。独立検証がない点は変わらない。また3点目の提供範囲の書き方も、公式の記述に照らして本文末尾で訂正した。

OpenAIがGPT-5.5 Instantを公開した経緯

OpenAIは2026年5月5日、ChatGPTの新しいデフォルトモデル「GPT-5.5 Instant」を公開し、従来の「GPT-5.3 Instant」を置き換えた。TechCrunchの報道によれば、新モデルは旧モデルの低遅延を維持したまま回答精度を高めることを狙ったもので、APIでは「chat-latest」として提供される。GPT-5.5 Instantはその後も改良が続いており、2026年6月24日には意図理解や複雑な制約への対応を改善するスタイル更新を受けている(詳細はGPT-5.5 Instantのスタイル更新記事)。

最大の訴求点は幻覚(hallucination、事実に反する誤った主張)の削減だ。OpenAIは、法律・医療・金融といった誤りが深刻な結果を招きやすい領域での幻覚を減らしたと説明している。TechCrunchの報道はこの点について定性的な記述にとどまり、削減幅を示す定量値は本稿で確認できた出典には示されていない。

ベンチマークでは、数学コンテストAIME 2025のスコアが65.4から81.2へ、マルチモーダル理解の指標MMMU-Proが69.2から76へ向上したとされる。

パーソナライズ面では、検索ツールが過去の会話・アップロードしたファイル・Gmailを参照できるようになった。どの記憶ソースが使われたかは全モデルで表示され、ユーザーは古い情報の削除や修正が可能。共有チャットでは相手に記憶ソースが見えない設計だという。

幻覚削減という訴求点の重み

幻覚はLLM実用化の最大の障壁の一つで、特に法律・医療・金融では一つの誤りが実害につながる。OpenAIがこの3領域を名指しで成果を強調したのは、業務利用での信頼性を競争軸に据えている表れと読める。低遅延を保ったまま精度を上げた点も、日常的に最も使われる「デフォルト」モデルだからこそ影響が大きい。この検索・推論能力は後にテキストの外でも使われることになり、全二重音声モデル「GPT-Live」は会話中に検索や深い推論が必要になった場面で、バックグラウンドでこのGPT-5.5系に処理を委任する設計を採っている。詳細はGPT-Liveの記事にまとめた。

自己申告の数値とプライバシーへの注意

幻覚削減はOpenAI自身の説明に基づくもので、独立検証されたものではない点に注意したい(本稿はTechCrunchの報道に基づく。OpenAI公式ページは執筆時点で取得できず、内容確認には用いていない)。Gmail参照などのパーソナライズは利便性と引き換えにプライバシー上の論点を伴うため、何が参照されるかを把握したうえで使うのが現実的だ。なお提供範囲は、まず一部の有料プランから順次、無料・ビジネス・エンタープライズへ拡大されると報じられている。

公式ページが示した幻覚削減の数値は52.5%と37.3%

OpenAIの公式ページは、削減幅として次の2つの数値を挙げている(内部評価、GPT-5.3 Instantとの比較)。

  • 医療・法律・金融といった高リスク領域を扱うプロンプトで、誤った主張(hallucinated claims)が52.5%少なかった
  • ユーザーが事実誤認としてフラグを立てた、特に難しい会話で、不正確な主張を37.3%削減した

つまり公式が示しているのは、旧モデルに対する相対的な減少率だけである。GPT-5.5 Instant自体の絶対的な誤り率が何%なのか、評価に使ったプロンプトが何件で誰がどう採点したのか、法律・医療・金融の領域別内訳はどうかは、いずれも公式ページに記載がない(2026-08-14 確認)。相対削減率だけでは「残りどれだけ間違うか」は分からないため、ハルシネーションの原因とモデル別の発生率と併せて読むほうが実務判断には近い。

公式ベンチマークは5項目、いずれもGPT-5.3 Instantとの2者比較

公式ページに掲載されたグラフの数値は以下のとおり。本稿が公開時に報道経由で挙げていたのはAIME 2025とMMMU-Proの2項目だが、公式ページには5項目が載っている。

ベンチマーク 測っているもの GPT-5.3 Instant GPT-5.5 Instant
AIME 2025 競技数学 65.4% 81.2%
GPQA 博士レベルの科学 78.5% 85.6%
MMMU-Pro Standard 専門的なマルチモーダル理解 69.2% 76.0%
CharXiv-reasoning 科学チャートの読解 75.0% 81.6%
OmniDocBench 文書パースの平均誤り率(低いほど良い) 14.6% 12.5%

縦軸はOmniDocBench以外が「Accuracy(正答率)」、OmniDocBenchのみ「Average error rate(平均誤り率、低いほど良い)」と公式ページに明記されている。一方で、ツール利用の有無・試行回数・pass@kといった測定条件の注記は、公式ページのどこにも見当たらない(2026-08-14 確認)。比較対象もGPT-5.3 Instantのみで、他社モデルや上位のGPT-5.5との比較は載っていない。

メモリと検索は何を参照し、ユーザーは何を消せるのか

公式ページの説明では、GPT-5.5 Instantは過去のチャット・アップロードしたファイル・接続済みのGmailの文脈を使う。加えて「メモリソース」を全ChatGPTモデルに導入し、回答がパーソナライズされたときに、保存済みメモリや過去チャットのうち何が使われたかを表示する。

ユーザー側の操作として公式ページに書かれているのは次の3つ。

  • 引用されたくないチャットを削除する
  • 設定画面から保存済みメモリの項目を削除・変更する
  • メモリを使わず更新もしない「一時チャット」を使う

チャットを共有した場合、相手にメモリソースは表示されない。ここで公式ページ自身が認めている限界がひとつある。メモリソースは「回答を形作ったすべての要因を示すとは限らない」(may not show every factor that shaped an answer)とされ、検索・参照した過去チャットの全部ではなく、関連性の高い一部だけが表示されることがあるという。表示されたものが参照範囲の全体だとは読めない、ということだ。

提供範囲は「モデルは初日から全ユーザー、パーソナライズは段階的」

公式ページの記述は次のとおり。

  • GPT-5.5 Instantは公開当日(2026年5月5日)から全ChatGPTユーザーへ展開を開始し、デフォルトモデルとしてGPT-5.3 Instantを置き換える。APIでは chat-latest として提供
  • 有料ユーザーはGPT-5.3 Instantをモデル設定から3か月間選べる。その後は提供終了
  • 過去チャット・ファイル・接続Gmailを使う強化版パーソナライズは、まずPlusとProのウェブ版。モバイルは近日、Free・Go・Business・Enterpriseへは数週間のうちに拡大予定
  • メモリソースの表示は全コンシューマープランのウェブ版から展開、モバイルは近日
  • パーソナライズに使えるソースは地域によって異なる場合がある

ここは本稿の記述を訂正する。公開時、本稿は報道に基づき「提供は一部の有料プランから順次拡大」と書いたが、公式ページに照らすと段階提供なのはパーソナライズ機能とメモリソース表示であって、GPT-5.5 Instantというモデル自体は初日から全ユーザー向けだった。

Internet Archiveの保存版を使った理由

  • 公式ページ(openai.com/index/gpt-5-5-instant/)は、本稿の確認環境から直接アクセスするとHTTP 403が返り取得できなかった。そのためInternet Archiveに保存された2026年5月5日 17:37:47(UTC)時点のスナップショットを読み、数値を取っている(確認日 2026-08-14)
  • 同じページの2026年6月23日の保存版とも突き合わせ、5項目のベンチマーク値と52.5%・37.3%に差がないことを確認した。ただし保存版である以上、閲覧時点の公式ページと完全に同一である保証はない
  • 本稿に載せた数値はすべてOpenAI自身の内部評価とその公表値である。第三者による再現や独立検証は、本稿の確認範囲では見つかっていない
  • 公式ページには「GPT-5.5 Instantは30.2%少ない語数、29.2%少ない行数」という記述もあるが、これは掲載された特定の応答例1組に付けられた比較コメントで、全応答の平均値として提示されたものではない
  • 幻覚削減が実際の業務でどれだけ体感されるかは、プロンプトの書き方・扱う分野・検索の使われ方に左右される。本稿は効果を保証しない
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