中国勢・オープンウェイト2026年上半期 ― DeepSeek V4、Qwen 3.6、MetaはLlama休止
2026年上半期、オープンウェイトの主役が中国勢に。DeepSeekはV4を、AlibabaはQwen 3.6を相次ぎ投入する一方、Metaは新規Llamaを出さずクローズドへ。

目次
3行まとめ
- DeepSeekが2026年4月にV4を投入、V4-Proは総1.6T・活性49B・1Mコンテキスト
- AlibabaはQwen 3.5/3.6を相次ぎ公開、いずれもApache 2.0とされる
- Metaは上半期に新規Llamaを出さず、クローズドのMuse Sparkへ軸足を移した
2026年上半期に何が起きたか
2026年上半期、誰もが重みを公開して競う「オープンウェイト」の構図が大きく動いた。Digital Appliedのまとめによると、DeepSeekは2026年4月24日にアーキテクチャを刷新した「V4」を投入した。上位モデルのV4-Proは総パラメータ1.6T・活性49B、コンテキスト1Mトークンで、圧縮スパース注意(CSA)と高圧縮注意(HCA)を組み合わせた構成だ。同社の説明では、単トークン推論のFLOPsは前世代V3.2の約27%、1Mコンテキスト時のKVキャッシュは約10%まで削減されたとされる。軽量版V4-Flash(総284B・活性13B)も同時に並んだ。
AlibabaのQwenは最も活発だった。同まとめでは、Qwen 3.5を2月16日に投入したのち、4月16日にQwen 3.6(MoEの35B-A3Bを含む)、4月22日に27B版を公開。いずれもApache 2.0ライセンスとされる。
対照的にMetaは動かなかった。Digital Appliedによれば、2026年1月1日〜5月16日の期間に新規のオープンウェイトLlamaの公開はなく、直近の公開はさかのぼって2025年4月のLlama 4 Scout/Maverickまで。代わりに4月8日、クローズドな自社フロンティア「Muse Spark」を立ち上げ、軸足を移したと報じられている。
個人開発者・中小企業にとっての意味
オープンウェイトは、手元で動かせる・改変できる・コストを読めるという点で、個人開発者や中小にとって選択肢の中心だ。その供給源が中国勢(DeepSeek・Qwen)に寄り、米国の代表格だったMetaがクローズドへ転じる――この流れは「無料で使える強いモデル」の出どころが変わりつつあることを意味する。
数字の心証と読み方の注意
数値はいずれも各社・各まとめの公表値であり、第三者ベンチで再現されたものではない。なお、DeepSeek V4の公開日はLLM-Statsでは4月23日とされ、出典間で1日のずれがある。性能やコスト削減の主張は、自分のユースケースで小さく試してから判断したい。
DeepSeekはMIT、QwenはApache 2.0だった(2026年8月14日確認)
この記事は公開時、二次まとめ2本だけを出典にしていた。公開から約4か月が経ったので、配布元のページ——Hugging Faceのモデルカードとリポジトリのメタデータ、Metaの開発者サイト——を直接開いてスペックとライセンスを確認し直した。以下はいずれも2026年8月14日時点で各ページに実際に記載されていた内容だ。
| モデル | 総/活性パラメータ | コンテキスト長 | ライセンス表記 | 一次ソース |
|---|---|---|---|---|
| DeepSeek-V4-Pro | 1.6T/49B | 1Mトークン | MIT License | DeepSeek-V4-Pro モデルカード |
| DeepSeek-V4-Flash | 284B/13B | 1Mトークン | MIT License | DeepSeek-V4-Flash モデルカード |
| Qwen3.6-35B-A3B | 35B/3B | ネイティブ262,144、最大1,010,000まで拡張可 | apache-2.0 | Qwen3.6-35B-A3B モデルカード |
| Qwen3.6-27B | 27B(MoEではなく密モデル) | ネイティブ262,144、最大1,010,000まで拡張可 | apache-2.0 | Qwen3.6-27B モデルカード |
本文で挙げたV4-Proの削減率は、DeepSeek自身のモデルカードに "In the 1M-token context setting, DeepSeek-V4-Pro requires only 27% of single-token inference FLOPs and 10% of KV cache compared with DeepSeek-V3.2"(1Mトークンの文脈設定において、V3.2と比べて単トークン推論のFLOPsは27%、KVキャッシュは10%で済む)と書かれていた。二次まとめが独自に計算した数字ではなく、配布元の記載そのものだったことになる。同カードはアーキテクチャとして、本文で触れたCSA(Compressed Sparse Attention)とHCA(Heavily Compressed Attention)に加え、mHC(Manifold-Constrained Hyper-Connections)も挙げている。
ライセンスについては、記事本文が「いずれもApache 2.0とされる」と書いたQwen 3.5/3.6は、Hugging Face上の各リポジトリのライセンス欄が実際に apache-2.0 になっていた。一方DeepSeek V4はApache 2.0ではなくMIT Licenseで、この点は本文が触れていなかった。どちらのモデルカードにも、Llama 4のコミュニティライセンスのようなモデル固有の追加規定(利用規約や月間アクティブユーザー数による制限)は添付されておらず、表記は標準ライセンス名のみだった。この「重みは配るがライセンス条件は各社バラバラ」という構造についてはオープンウェイトとは何か──「オープンソース」との違いに整理がある。
公開日の1日のずれは、リポジトリの更新が3日にまたがっていた
本文末尾で「DeepSeek V4の公開日はLLM-Statsでは4月23日、Digital Appliedでは4月24日」と未解決のまま残していた食い違いは、リポジトリの履歴を見ると説明がつく。Hugging FaceのAPIが返すDeepSeek-V4-Proの作成時刻は2026年4月22日06:04:45(UTC)で、コミット履歴は4月22日に "initial commit"、4月23日に "add inference code" とファイル群のアップロード、4月24日にREADME・技術レポート・ベンチマーク図の更新、と3日連続で動いている。つまり「リポジトリ作成」「重みと推論コードの設置」「READMEの公開」が別々の日で、2つのまとめはそれぞれ別の瞬間を公開日として拾ったと読める。
同じずれはQwenでも起きている。Hugging FaceのAPIで各リポジトリの作成時刻を取ると、Qwen3.5-397B-A17Bが2026年2月16日、Qwen3.6-35B-A3Bが4月15日、Qwen3.6-27Bが4月21日だった。本文がDigital Appliedに基づいて書いた「4月16日」「4月22日」より、いずれも1日早い。なお、これらはUTC表記だが、時刻はいずれも04時台〜07時台(Qwen3.5-397B-A17Bが04:55、Qwen3.6-35B-A3Bが05:59、Qwen3.6-27Bが07:50)なので日本時間(+9時間)に直しても同じ日付のままで、時差では説明がつかない。
Metaのリポジトリには2026年に作られたモデルが1本もない
本文の「上半期に新規オープンウェイトLlamaの公開はなかった」という主張は、二次まとめの記述だけを根拠にしていた。Meta公式のHugging Face organization meta-llama を作成日の新しい順に並べると、最も新しいリポジトリはLlama-Prompt-Guard-2-86Mの2025年4月28日で、2026年に作られたリポジトリは1本もなかった(8月14日確認)。本体モデルとしてはLlama-4-Scout-17B-16EとLlama-4-Maverick-17B-128Eの2025年4月上旬が最後で、本文の記述と一致する。
もう1つ、上半期以降の変化として、Llama専用ドメインだった llama.com は現在Meta開発者サイトへ301リダイレクトされ、developer.meta.com/ai/ に着地する(8月14日確認)。その着地ページで前面に出ているのはMuse Spark 1.2、Muse Spark 1.1、Muse Glimmerで、Llama 4/Llama 3はモデル一覧の中に置かれている状態だった。
上半期のあと、MetaはLlamaではなくMuseの名前でオープンウェイトに戻った
ここは記事公開時点では存在しなかった動きなので、上半期の総括を覆すものではないが、読み方に関わるので付け加えておく。Metaは2026年8月、meta-models organizationからMuse-Glimmer-30Bを公開した。モデルカードの記載は "Model Release Date: August 2026"、著者は "Meta Superintelligence Lab"、ライセンスはApache 2.0で、BF16のフル精度重みと4bit量子化版がダウンロードできる。パラメータは約29.6B(視覚エンコーダ込み)、コンテキストは131,072以上とされている。Hugging FaceのAPI上のリポジトリ作成時刻は2026年8月9日17:51:35(UTC)。日本時間(+9時間)に直すと2026年8月10日02:51になる。
つまり「Metaがオープンウェイトから撤退した」という読み方は上半期の事実としては正しいが、8月時点では当てはまらない。ブランドがLlamaからMuseに移り、フロンティア級はクローズド(Muse Spark)、手元で動く小型はオープンウェイト(Muse Glimmer)という切り分けになった、と見るほうが実態に近い。
DeepSeekとQwenも上半期で止まってはいない。Hugging FaceのAPIによると、DeepSeekはV4-Flash-0731(2026年7月31日作成)、V4-Pro-0813(2026年8月13日作成)とMITライセンスのまま更新版を出し続けている。Qwen側は最上位のQwen3.8-Max(2.4兆パラメータ)まで進んだ。上半期に見えた「オープンウェイトの供給源が中国勢に寄る」構図は、少なくとも8月時点では続いている。
ここまでで確認できなかったこと
- Qwenの旧公式ブログ(qwenlm.github.io)は2025年9月で更新停止し、現在は qwen.ai へ移転している。 RSSを開いたところ、最終更新は2025年9月23日で、2026年の投稿は1本も無かった(8月14日確認)。同サイトの404ページは「新しいブログはqwen.aiにあります」として自動的に qwen.ai/research へリダイレクトする案内を出しており、移転自体は確認できる。ただし移転先の qwen.ai/research はJavaScriptで描画されるSPAで、curl・WebFetchのいずれでも記事一覧の実体を取得できず、Qwen3.5/3.6のリリース記事がそこに存在するかどうかは確認できなかった。したがってQwenについての一次確認は、Hugging Faceのリポジトリ(ライセンス欄・作成時刻・モデルカード)に限られる。公式ブログの発表文の有無は、旧ブログ・新ブログいずれについても確認できていない。
- リポジトリの作成時刻は「一般公開の時刻」とは限らない。 非公開で作成しておいて後日公開する運用もあり得るため、上に挙げた日付は公開日の下限として読むのが妥当で、「この日に世に出た」と断定はできない。
- DeepSeek-V4-Flashのパラメータ数は表示が2つある。 モデルカード本文は284Bだが、Hugging Faceのモデル一覧上の表示は291Bだった。一覧表示は重みファイルから機械的に数えた値で、モデルカードの284Bとどちらが何を指すかまでは確認できていない。
- DeepSeekのGitHub organizationにV4専用のリポジトリは無い。 8月14日時点で作成日の新しい順に見ても、V4という名前のリポジトリは存在せず、推論コードはHugging Faceのリポジトリ内に置かれている。GitHubのリリースノートで公開日を突き合わせる、という裏取りはできなかった。
- 性能値は配布元の自己申告のまま。 FLOPs 27%・KVキャッシュ10%・コンテキスト1Mといった数値は、いずれも各社のモデルカードの記載であり、第三者による再現・検証は確認していない。
配布元ページを直接確認して直した点
- 2026-08-14: Qwenリポジトリ作成時刻の説明「06時台・07時台」を実測値(04時台〜07時台)に訂正。RSSのURL誤り(qwenlm.github.io/index.xml=404)を正しいパス(/blog/index.xml)に修正し、「Qwenの公式ブログには3.5/3.6のリリース記事が見当たらない」という断定を、qwen.aiへの移転とJS-SPAのため確認不能だった旨に修正。DeepSeek V4-Proモデルカードの引用に欠けていた前提条件「In the 1M-token context setting」を補い、訳注にも反映。Muse-Glimmer-30Bの作成時刻にUTC表記を明記し、日本時間では8月10日になる旨を追記。
出典・参照資料
- 二次資料Open-Weight Models H1 2026: DeepSeek, Qwen, Llama Recap — Digital Applied ↗
- 二次資料AI Updates Today (June 2026) – Latest AI Model Releases — LLM-Stats ↗
- 一次資料DeepSeek-V4-Pro モデルカード(Hugging Face) ↗
- 一次資料DeepSeek-V4-Flash モデルカード(Hugging Face) ↗
- 一次資料Qwen3.6-35B-A3B モデルカード(Hugging Face) ↗
- 一次資料Qwen3.6-27B モデルカード(Hugging Face) ↗
- 一次資料meta-llama(Meta公式のHugging Face organization) ↗
- 一次資料Meta for Developers: AI models ↗
- 一次資料Muse-Glimmer-30B モデルカード(Hugging Face / meta-models) ↗
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