Metaが「Muse Code」を公開──Muse Spark 1.2はOpus 5の4分の1、データを渡せばさらに12分の1
Metaが2026年8月5日、ターミナルで動くコーディングエージェント「Muse Code」と最新モデル「Muse Spark 1.2」を同時公開。Meta自身が出した公式ベンチマーク7枚を1枚ずつ数えると、Muse Spark 1.2が首位なのはMCP Atlasの1枚だけで、残り6枚はClaude Opus 5が上だった。一方の価格は100万トークンあたり入力1.25ドルでOpus 5の4分の1、さらに「コードを製品改善に使う」ことに同意する版は入力0.10ドルと12分の1になる。

2026年8月6日時点の情報です。
Metaが2026年8月5日、ターミナルで動くコーディングエージェント**「Muse Code」(ベータ版)と、それを動かす最新モデル「Muse Spark 1.2」**を同時に公開しました。Claude CodeやCodexと同じ土俵への参入です。Meta AI Researchの発表と開発者向け製品ページの両方を読み、公式が掲載したベンチマークのグラフ7枚を1枚ずつ数えた結果をまとめます。動画版はこちら(13分46秒)。
Metaが2026年8月5日、コーディングエージェント「Muse Code」とモデル「Muse Spark 1.2」を同時公開した。 公式ベンチ7枚のうちMuse Spark 1.2が首位なのはMCP Atlasの1枚(90.3%)だけで、残り6枚はClaude Opus 5が上だった。 価格は100万トークンあたり入力1.25ドル・出力4.25ドル。「コードを製品改善に使う」版は入力0.10ドル・出力0.20ドルで、入力12分の1・出力21分の1になる。
何が出たのか
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Muse Code | ターミナルで動くコーディングエージェント。macOS / Linux、ベータ版 |
| インストール | curl -fsSL https://dev.meta.ai/install.sh | bash の1行 |
| Muse Spark 1.2 | Muse Codeを動かす最新モデル。1.1のコーディング特化アップデート |
| 提供 | Muse Code と Meta Model API の両方で公開時点から利用可能 |
| 文脈長 | 100万トークン |
Meta AI Researchの発表によると、Muse Codeが引き受けるのは「大きなリポジトリをまたぐ複雑なソフトウェア工学のタスク」で、変更の計画・コードの記述・結果の検証までを担当します。
設計で他と違う3点
1. バックグラウンドエージェントが「消えない」
発表によると、Muse Codeは本体のシンプルなエージェントループに、非同期のバックグラウンドエージェント群を足す構成です。特徴は立てるタイミングで、タスクごとに生成して破棄するのではなく、セッションの間ずっと生き続けます。
These specialized background agents remain active throughout each session, rather than being spawned for individual tasks, helping avoid redundant information gathering.
(これらの専門バックグラウンドエージェントは、個別タスクごとに立ち上げられるのではなく、セッションを通じて動き続ける。これによって余計な情報収集を避けられる。)
さらに次の手を自分で進め、本体に報告するタイミングも自分で選ぶとしています。開発者ページ側では、この設計を「Multi-agent by default(マルチエージェントが既定)」と表現し、「並列で働く実行役と、裏で動くレビュー役」と説明しています。
2. イベントログで「落ちても続きから」
Muse Codeはローカルにイベントログを持ち、モデルの呼び出し・ツールの実行・承認・編集をすべてそこに追記します。発表はこれを唯一の正しい記録(single source of truth)として扱うことで、実行がreplay-exact and restart-safe(そっくり再生でき、再起動に強い)になると説明しています。クラッシュしても止まった位置から正確に再開できる、という設計です。開発者ページの表現は「Every action is transparent and traceable(すべての動作が透明で追跡できる)」。
3. 付属スキル /plan /grill /goal
発表によると、Muse Codeには3つのスキルが最初から入っています。/plan はタスクを承認ゲート付きの計画に変換し、/grill はその計画が持ちこたえるまで叩き、/goal は指定した目標の達成まで走ります。自分で立てた計画を自分で潰しにいく工程が、既定で用意されている形です。
このほか発表では、家の中を飛ぶように撮影した動画をmp4のままターミナルに入力すると、Muse Codeがそれを解釈して別荘の宣伝・予約ページを生成するデモが示されています。
公式ベンチ7枚を1枚ずつ数えた
ここが今回いちばん確認したかった部分です。Metaは発表内に7枚のグラフを掲載しています。Muse Spark 1.2が首位なのは、そのうち1枚だけでした。
| グラフ | Muse Spark 1.2 | 首位 |
|---|---|---|
| Terminal-Bench 2.1 | 82.9%(2位) | Opus 5 + Claude Code 86.7% |
| MCP Atlas | 90.3%(1位) | Muse Spark 1.2 |
| Meta Internal Coding Bench | 70.6%(2位) | Opus 5 79.4% |
| DeepSWE 1.1 | 59.3%(3位) | Opus 5 65.0% |
| GDPVal-AA V2 | 1631(2位) | Opus 5 1852 |
| KDA カーネル速度向上 | +68.7%(4位) | Opus 5 +74.0% |
| MLA カーネル速度向上 | +61.1%(4位) | Opus 5 +75.4% |
DeepSWE 1.1ではOpus 5(65.0%)とGPT 5.6 Terra(64.8%)が0.2ポイント差で競り合い、Muse Spark 1.2はそこから5ポイント以上離れた3位です。MCP Atlasではその1.1(88.1%)すら1.2に次ぐ2位に入っており、この系統がMuse Sparkの得意分野であることがうかがえます。
注目したいのは、これがMeta自身の発表資料だという点です。比較相手からClaude Opus 5を外しておらず、MCP AtlasにはClaude Fable 5(83.3%・5位)まで並べています。自社が2位以下になる図を、7枚中6枚そのまま載せています。
24時間・1000回超のカーネル最適化
発表で規模が大きいのが、GPUカーネル最適化のケーススタディです。モデルに1000回を超えるツール呼び出し・最長24時間をかけさせ、書く→コンパイルする→計測する→改善する、を反復させています。対象はNVIDIA HopperのKDAとMLAのカーネル。
条件が厳しく、FLAのような既存のカーネルライブラリを直接読み込むことは禁止され、Tritonで自力実装させています。発表によれば、Muse Spark 1.2はKDAでチャンク並列の準備カーネルと逐次のチャンク間スキャンを組み合わせ、ゲート付き累積減衰をチャンク中点で再センタリングするKDA固有の最適化を当てたとのことです。
結果はKDAで+68.7%(首位のOpus 5は+74.0%)、MLAで+61.1%(同+75.4%)。MLAは14ポイント差がつきました。
本題は価格表にある
性能で2番手が定位置なら、後発が何で入ってくるのか。答えは開発者ページの価格表に書いてありました。Muse Spark 1.2には値段が2つあります。
| モデル | 文脈長 | 入力 /100万トークン | キャッシュ入力 | 出力 /100万トークン | 価格表の説明 |
|---|---|---|---|---|---|
muse-spark-1.2 |
1M | $1.25 | $0.15 | $4.25 | Not used to improve our products.(製品改善に使わない) |
muse-spark-1.2-contributor |
1M | $0.10 | $0.002 | $0.20 | Used to improve our products.(製品改善に使う) |
比較のため、Anthropicの公式価格を並べます。Claude Opus 5は入力5.00ドル・出力25.00ドル、Claude Haiku 4.5は入力1.00ドル・出力5.00ドルです(いずれも100万トークンあたり)。
- 標準版 → Opus 5に対して入力が4分の1、出力がおよそ6分の1
- コントリビューター版 → 標準版に対して入力が12分の1、出力が21分の1
- コントリビューター版 → Haiku 4.5に対して入力が10分の1、出力が25分の1
つまりAnthropicで最も小さいモデルより安い水準まで、コードを学習に使う同意と引き換えに下がる、という値付けです。両方とも文脈長は100万トークンで同じです。
「今更」と思いながら開いて、価格表で止まった
正直に書くと、この発表を最初に見たときの感想は「今更?」でした。ターミナルのコーディングエージェントはClaude CodeとCodexで実運用が回っている分野で、乗り換えのコストは設定・慣れ・チーム運用のすべてにかかります。性能で明確に上を取れないなら、後から入る余地は小さいはずです。
その見立てが変わったのは、7枚のグラフを数え終えて価格表を開いたときでした。性能で1位を取れないことを資料の側で隠していないうえで、価格に二段構えを置いてある。しかも安いほうの条件が値引き率ではなく「コードを製品改善に使ってよいか」という渡すものの違いとして書かれています。ベンチの数字より、この表の一行のほうが今回は情報量がありました。
なお、Metaがなぜこの値付けにしたのかという意図は、公式資料には書かれていません。ここは推測の領域なので断定を避けます。
正直な但し書き
- ベンチマークはすべてMeta自身が公開した値です。第三者による再現・検証ではありません。7枚のグラフは公式発表の掲載図をそのまま参照しています。
- 「12分の1」「21分の1」は丸めた表現です。正確には入力が12.5倍、出力が21.25倍の差になります。
- コントリビューター版で提供したコードが具体的にどう使われるかは、価格表の「Used to improve our products.」という一文以上のことを公式資料から確認できていません。利用範囲・保持期間・除外設定の有無は未確認です。
- Anthropic側はClaude Sonnet 5に2026年8月31日までの導入価格がありますが、本記事の比較には使っていません。比較はOpus 5とHaiku 4.5の通常価格のみです。
- Muse Codeは公開時点でベータ版です。筆者は本記事の執筆時点でMuse Code自体の動作検証は行っておらず、記述はすべて公式発表と製品ページに基づく読み取りです。
- 本記事は続報があり次第更新します。
出典・関連
- Meta AI Research「Introducing Muse Code and Muse Spark 1.2」(2026年8月5日): https://research.meta.ai/blog/introducing-muse-code-and-muse-spark-1-2
- Meta for Developers「Muse Code」製品ページ(価格表・機能・クックブック): https://developer.meta.com/ai/products/muse-code/
- Anthropic 公式価格(Claude Opus 5 / Claude Haiku 4.5 の比較に使用)
動画版では、上記7枚のグラフを実際に画面で並べながら解説しています → 【速報】Meta Muse Code & Muse Spark 1.2登場
比較対象として登場するClaude Code側の基礎については、Claude Codeとは何ができるのかもあわせてどうぞ。
記事や動画で扱ってほしいテーマがあれば、コメントで教えてください。続報が出たら本記事に追記します。
出典・参照資料
この記事の解説動画
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