Google I/O 2026、「Gemini 3.5 Flash」を発表 ― エージェント・コーディング特化
Googleは2026年5月20日のGoogle I/O 2026で、エージェントとコーディングに特化した新モデル「Gemini 3.5 Flash」を発表し同日展開を開始。Terminal-Bench 2.1で76.2%などのベンチマークを公式ブログで示した。

目次
3行まとめ
- GoogleはI/O 2026でエージェント・コーディング特化の「Gemini 3.5 Flash」を発表、同日展開開始
- Terminal-Bench 2.1で76.2%などを示し、Gemini 3.1 Pro超えと半額未満のコストを訴求
- 数値はいずれもGoogleの自社発表値で、第三者による独立検証は別途確認が必要
何が起きたか
Googleは2026年5月20日に開催した開発者向けイベント「Google I/O 2026」で、新モデル「Gemini 3.5 Flash」を発表し、同日からの展開を開始した。Google Cloudの公式ブログによると、同モデルはエージェント(自律的にタスクを進めるAI)とコーディングに特化した位置づけで、長い手順を要する複雑なタスクへの対応を強みとして打ち出している。
公式ブログが示したベンチマーク値は、ターミナル操作の評価指標「Terminal-Bench 2.1」で76.2%、エージェント性能の指標「GDPval-AA」で1656 Elo、「MCP Atlas」で83.6%、マルチモーダル理解の「CharXiv」で84.2%。Googleはこれらの主要ベンチマークで従来の「Gemini 3.1 Pro」を上回るとし、「比較対象モデルの半額未満のコストで提供されることが多い」と説明している。
あわせて、上位モデルの「Gemini 3.5 Pro」は現在テスト中で来月(2026年6月)提供予定、動画生成モデル「Gemini Omni Flash」は数週間内に開発者・企業向けに展開予定とした。同じI/O 2026では、Google Cloud上で24時間稼働する自律型パーソナルAIエージェント「Gemini Spark」も発表されている。
なぜ重要か
近年のモデル競争は、単なる会話精度よりも「エージェントとして実務をこなせるか」「開発作業をどれだけ自動化できるか」に軸が移りつつある。Gemini 3.5 Flashが前面に出しているTerminal-BenchやMCP Atlasといった指標は、まさにこの自律実行・ツール連携の能力を測るもので、Googleがこの領域を主戦場と見ていることがうかがえる。
加えて「半額未満」というコスト訴求は、性能だけでなく運用単価でも競合に揺さぶりをかける狙いと読める。
公式ドキュメントに載っているモデルIDと上限値
Gemini APIの公式モデルページによると、Gemini 3.5 Flashの識別子は gemini-3.5-flash。入力トークンの上限は1,048,576、出力トークンの上限は65,536で、入力として受け付けるのはテキスト・画像・動画・音声・PDF、出力はテキストのみと記載されている。同ページはこのモデルの最終更新を「May 2026」と表記している(2026年8月14日確認)。
提供面について、発表時のGoogle Cloud公式ブログが挙げているのはGemini Enterprise Agent Platform、Google AI Studio、Antigravity、Gemini Enterpriseアプリの4つ。加えて、ai.google.devの価格ページとモデル一覧に gemini-3.5-flash が掲載されているため、Gemini API経由でも利用できる。価格ページには無料枠の列もあり、無料枠では入力・出力・コンテキストキャッシュがいずれも無料である一方、Google検索によるグラウンディングは利用不可、入力は製品改善に使われると記されている。
「半額未満」は公式価格表で再現するか
発表時のGoogle Cloud公式ブログは、Gemini 3.5 Flashを「often at less than half the cost of comparable models(比較対象モデルの半額未満のコストで提供されることが多い)」と説明していた。ただし、この「比較対象モデル」が何を指すかは同ブログに書かれていない。Gemini APIの公式価格ページに載っている有料枠の単価(100万トークンあたり・米ドル)を並べると次のとおり。
| モデル | 入力 | 出力(思考トークン込み) |
|---|---|---|
| Gemini 3.5 Flash | $1.50 | $9.00 |
| Gemini 3.1 Pro Preview(プロンプト20万トークン以下) | $2.00 | $12.00 |
| Gemini 3.1 Pro Preview(プロンプト20万トークン超) | $4.00 | $18.00 |
| Gemini 3.5 Flash-Lite | $0.30 | $2.50 |
(Gemini API公式価格ページ、2026年8月14日確認)
ここから比率を計算すると(本記事による計算)、同じGoogle製の上位モデルであるGemini 3.1 Pro Previewに対しては、標準となる20万トークン以下のプロンプトで入力・出力とも0.75倍にとどまり、半額未満にはならない。20万トークンを超えるプロンプトでは入力が0.375倍で半額未満に入るが、出力は0.50倍、つまりちょうど半額であって半額未満ではない。Gemini 3.1 Proと比べる限り「半額未満」が成り立つのは、20万トークン超のプロンプトの入力側だけという計算になる。Googleの言う比較対象が他社モデルを含む可能性は残るが、対象の記載がないため本記事では確認できていない。
トークン単価以外では、Gemini 3.5 Flashのコンテキストキャッシュが$0.15(100万トークンあたり)に加えて、保存料が100万トークンあたり・1時間あたり$1.00(原文表記は「$1.00 / 1,000,000 tokens per hour」で、保存量に比例する従量料金であり時間あたりの定額ではない)、Google検索によるグラウンディングは月5,000リクエストまで無料(Gemini 3.x系で共有)、超過分は1,000リクエストあたり$14と記載されている(同ページ、2026年8月14日確認)。
Gemini 3.5 Proは2026年8月14日時点で公式の価格表・モデル一覧に載っていない
本記事が「来月(2026年6月)提供予定」と伝えたGemini 3.5 Proについて、2026年8月14日にGemini APIの価格ページ・モデル一覧・変更履歴を確認したところ、いずれにも「Gemini 3.5 Pro」の項目は見当たらなかった。中止が公式に告知されたという意味ではなく、これらのページに掲載がないという確認にとどまる。なお同じモデル一覧には、本記事が同時に保留扱いとした「Gemini Omni Flash」がPreview(プレビュー)ステータスで掲載されている。3.5 Proと異なり、Omni Flashはこの時点で一覧に登場している。
一方、Flash系列はその後2回更新されている。Gemini APIの変更履歴によると、gemini-3.5-flash の一般提供(GA)開始は2026年5月19日、gemini-3.6-flash が2026年7月21日、gemini-3.7-flash が2026年8月13日。変更履歴は3.6 Flashを「improved token efficiency and code/agentic planning capabilities at a lower price point than 3.5 Flash(トークン効率とコード/エージェント計画能力が改善し、3.5 Flashより低い価格帯)」と説明している。
価格ページ上の3.6 Flash・3.7 Flashの有料枠単価は、どちらも入力$0.75・出力$3.75(2026年12月31日まで)、2027年1月1日以降は入力$1.50・出力$7.50。年内価格で比べると、入力は3.5 Flashの$1.50のちょうど半分、出力は$9.00の約42%にあたる(本記事による計算)。後続モデルの発表内容はGemini 3.6 Flashの同時発表3モデルと価格改定(2026年7月21日)で詳しく扱っている。
受け止め方
注意したいのは、ここで挙げた数値はいずれもGoogleの公式ブログが示した自社発表値である点だ。第三者による独立検証や、競合モデルとの横並び比較は別途確認が必要で、現時点でベンチマーク優位がそのまま実務での優位を意味するとは限らない。「Gemini 3.5 Pro」「Gemini Omni Flash」は本記事時点で未提供のため、実際の挙動・価格・提供範囲は今後の公開を待って判断するのが妥当だ。
発表日にGoogleの2つの公式ページで1日のずれがある
- Vertex AIでの提供:Google Cloudのドキュメントのナビゲーションには Gemini 3.5 Flash の項目があるが、モデル詳細ページとVertex AI価格ページから提供段階と単価を読み取れなかったため、未確認とする。
- Googleが「半額未満」と比較した相手:公式ブログに対象モデル名の記載がない。上の突き合わせはGemini API公式価格ページに載るGoogle自社モデルとの比較にとどまり、他社モデルとの比較は行っていない。
- ベンチマーク数値:Terminal-Bench 2.1の76.2%などは発表時と同じくGoogleの自社発表値で、第三者による独立検証は本記事では確認していない。
- 発表日の1日のずれ:本文の発表日はGoogle Cloud公式ブログに基づく2026年5月20日だが、Gemini APIの変更履歴は
gemini-3.5-flashのGA開始を2026年5月19日としている。どちらが基調講演の日付でどちらがAPI提供開始日かは、両ページの記述だけでは判別できなかった。 - 価格の有効期間:単価はいずれも2026年8月14日時点の公式価格ページの記載で、その後変わりうる。特に3.6 Flash・3.7 Flashは2026年12月31日までの期間限定価格が明示されている。
出典・参照資料
更新・訂正履歴
- コンテキストキャッシュの保存料の記述「1時間あたり$1.00」を訂正。Gemini API公式価格ページの原文は「$1.00 / 1,000,000 tokens per hour」で、保存量に比例する従量料金であり定額ではなかった。単位を明記した。あわせて、モデル一覧にGemini Omni FlashがPreviewとして掲載されている現況を1行追記した。
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