ファイアウォール(firewall・FW)とは通信を規則に照らして許可・遮断する仕組み。Windowsは標準で有効、Macにも組み込み、多くのルーターにもある。確かめる手順と、ファイアウォールだけでは防ぎきれないものを公式資料で【2026年10月版】
ファイアウォール(firewall、略してFW)とは、ネットワークの通信を決めた規則に照らして許可・遮断する仕組みです。総務省の用語集は「外部からの不正な侵入を防ぐことができるシステム」、NIST(米国標準技術研究所)は「devices or programs」(機器またはプログラム)と説明します。Windowsは既定で有効(Microsoft)、Macにも組み込まれ(Apple)、ルーターの多くにも入っています(総務省)。Macの状態は、設定画面のほかに、設定を変えない読むだけのコマンド socketfilterfw --getglobalstate でも表示でき、筆者が2026年10月13日にこのMacで実行して表示のされ方を確かめました。

目次
- ファイアウォールとは何か。総務省・NIST・NTT東日本の説明を並べる
- 通信をどう許可し、どう遮断するのか
- ファイアウォールの種類。パケットフィルタ・ステートフル・アプリケーション・パーソナル
- ファイアウォールと取り違えやすいもの。NATとウイルス対策ソフト
- 家庭ではファイアウォールはどこにあるのか
- Windowsでファイアウォールの状態を確かめる手順(Microsoft Defender ファイアウォール)
- Macでファイアウォールの状態を確かめる手順
- 設定画面を開かずに、ターミナルの1行でMacの状態を読む
- ファイアウォールだけでは防ぎきれないもの。公的機関の説明から
- 「FW」が指すもの。ファイアウォールのほかに、メールの FW: とファームウェア
- この記事で確かめていないこと
- ファイアウォールの記事が引いた公式ページと取得した時刻
- この記事でよく聞かれること
2026年10月13日・日本時間時点の情報です。 ファイアウォール(firewall、略してFW)とは、ネットワークの通信を、あらかじめ決めた規則に照らして「通す」か「止める」かを判断する仕組みで、パソコンの中で動くソフトの形と、機器の形があります。総務省の用語集は「外部からの不正な侵入を防ぐことができるシステムのこと。またはシステムが導入された機器。」と説明しています。家庭では、Windowsに最初から入っていて既定で有効(Microsoft Learn)、Macにも組み込まれ(Apple)、ルーターの多くにも入っています(総務省)。Macでオンになっているかは、Appleのユーザガイドによると「システム設定」の「ネットワーク」>「ファイアウォール」で確かめられます。
3行まとめ
- ファイアウォール(FW)は、通信を規則に照らして許可・遮断する仕組み。NIST(米国標準技術研究所)は2009年9月公開の文書で「devices or programs」(機器またはプログラム)と書き、総務省は「システムが導入された機器」とも書く。
- 家庭では、Windows(Microsoft Learnは既定で有効と書く)・Mac(Appleは組み込まれていると書く)・ルーター(総務省は多くに装備と書く)にある。状態は、Windowsは「Windows セキュリティ」の「ファイアウォールとネットワーク保護」、Macは「システム設定」>「ネットワーク」>「ファイアウォール」で見る(2026年10月13日取得の公式ページ)。
- ファイアウォールだけでは防ぎきれないものがある。総務省もNISTもそう読める説明を書く。Macは、設定を変えない読むだけのコマンド
socketfilterfw --getglobalstateでも状態を表示できる(筆者が2026年10月13日2時1分にこのMacで実行)。
ファイアウォールとは何か。総務省・NIST・NTT東日本の説明を並べる
総務省の「国民のためのサイバーセキュリティサイト」の用語集(は行)は、名前の由来の「防火壁」も添えて、次のように書いています。
「外部のネットワークと内部のネットワークを結ぶ箇所に導入することで、外部からの不正な侵入を防ぐことができるシステムのこと。またはシステムが導入された機器。ファイアウォールには“防火壁”の意味があります。」
NISTの文書「Guidelines on Firewalls and Firewall Policy」(SP 800-41 Rev. 1、公開日は2009年9月)は、次のように定義しています。
「Firewalls are devices or programs that control the flow of network traffic between networks or hosts that employ differing security postures.」 (訳:ファイアウォールは、セキュリティの方針が異なるネットワークまたはホストの間で、ネットワーク通信の流れを制御する、機器またはプログラムである。)
NISTの出版物検索で「800-41」を引くと(2026年10月13日)、出てくるのはこのRev. 1(2009年9月28日・Final)と、取り下げ済みの初版(2002年)などで、Rev. 1が現行の版です。ただし文書の例には「Microsoft Windows Vista」「Macintosh OS X」が出てくる、古い文書です。NTT東日本の用語解説は、略称のFWを添えて、次のように書いています。
「ファイアウォール(FW)とは、外部のネットワークからの不正なアクセスや悪意を持った攻撃に対して自らのネットワーク及びコンピュータ等の端末を守るために設置する機器及びその役割を持つソフトウェアのことである。」
IPAの2017年の相談事例も、脚注でファイアウォールを「外部からの不要な通信をブロックするセキュリティ製品および機能。」と書き、Windowsでは通常「Windowsファイアウォール」が有効になっている、と続けます。どの説明にも共通するのは、機器かソフトの形で、ネットワークの出入りの途中に置かれ、通信を選別する点です。ネットワークは、コンピューターどうしをつないでデータをやり取りする通信の網のことです。パケットは、総務省の用語集によると「ネットワークを通して送信されるデータを分割する際に使われる単位」で、ファイアウォールはこの単位で判断します。
総務省のこのサイトは、2003年に「国民のための情報セキュリティサイト」として始まり、2022年に現在の名前になりました(総務省の2024年5月24日の報道資料)。
通信をどう許可し、どう遮断するのか
判断の材料は、パケットに書かれた情報です。NISTがいちばん基本的な形(パケットフィルタ)の項目として挙げるものを、表に並べます。左の2列は筆者の言い換えです。
| 見る項目 | 意味 | 出典に書かれていること |
|---|---|---|
| 送信元のIPアドレス | 通信を送ってきた機器の住所 | NIST「the address of the host from which the packet originated」 |
| 宛先のIPアドレス | 届け先の機器の住所 | NIST「the address of the host the packet is trying to reach」 |
| プロトコル | 通信の方式 | NISTは「TCP, UDP, or ICMP」を例に挙げる |
| ポート番号 | 機器の中の窓口の番号 | 総務省の用語集は「HTTPSはTCPの443番ポートを使用します」と書く |
| 通信の向き | 外から内か、内から外か | NIST「inbound or outbound」 |
これらを組み合わせた規則(NISTは ruleset と呼ぶ)に合うかどうかで、通すか止めるかが決まります。NTT東日本の用語解説は、規則の働きを「それ以外のパケットをネットワーク内に浸入させないようにしたり、逆にネットワーク内から外部に出る事を防いだりできる」と書いています。入ってくる通信だけでなく、出ていく通信も対象です。ルーターの設定画面にも同じ種類の欄があります(NEC プラットフォームズのAterm BL1000HWの機能詳細ガイド「パケットフィルタの設定例」)。
何を既定で通し、何を止めるかは、製品で違います。Microsoft Learnは、Windowsファイアウォールの既定の動作を「block all incoming traffic, unless solicited or matching a rule」「allow all outgoing traffic, unless matching a rule」と書きます(訳:受信は、こちらから求めたものか規則に合うものを除いて、すべて止める。送信は、規則に合うものを除いて、すべて通す)。送信を既定で通す点は、「防ぎきれないもの」の節の1つ目に関わります。
ファイアウォールの種類。パケットフィルタ・ステートフル・アプリケーション・パーソナル
| 種類 | 何を見て判断するか | 出典の説明 |
|---|---|---|
| パケットフィルタ | 上の表の項目。通信の中身は見ない | NIST「Unlike more advanced filters, packet filters are not concerned about the content of packets.」 |
| ステートフルインスペクション | 上の項目に加えて、接続の状態(始まった・続いている・終わった) | NIST「Stateful inspection improves on the functions of packet filters by tracking the state of connections and blocking packets that deviate from the expected state.」 |
| アプリケーションファイアウォール | アプリの通信の中身や使われ方 | NISTは、メールの添付ファイルの種類で判断できる例を挙げる |
| ホスト型・パーソナル | 1台のパソコンの出入り | 総務省「個人で利用するためのファイアウォール製品。ソフトウェアとして提供されることが多く、インターネットに接続するコンピュータにインストールして利用します。」 |
| WAF(Web Application Firewall) | Webサイトのアプリへの通信 | 総務省「WAFはアプリケーションレベルでの監視を行います」 |
ステートフルインスペクションと同じ名前の機能は、ルーターのマニュアルにもあります。Aterm(WG1200HS4)のマニュアルは「IPv6ファイアウォール機能(Stateful Packet Inspection)」を「LAN側の子機(パソコンなど)がIPv6でアクセスすると、それに応じてWAN側のポートが開き、通信を開始する機能です。」と説明し、「本商品は、工場出荷状態で本機能が使用できる設定になっています。」と書きます(この1機種のマニュアルの記述です)。
ファイアウォールと取り違えやすいもの。NATとウイルス対策ソフト
NAT(住所の付け替え)。 ファイアウォールの技術だと思われがちですが、別の技術だとNISTは書いています。
「network address translation (NAT) is sometimes thought of as a firewall technology, but it is actually a routing technology.」 (訳:NAT(ネットワークアドレス変換)はファイアウォールの技術だと思われることがあるが、実際にはルーティングの技術である。)
IPAは2017年の相談事例で、ルーター経由でつなぐと「プライベートIPアドレスが割り当てられる」ので、インターネット上の別の機器からアクセスされない、と書いています。ルーターを使うこと自体の守りと、ファイアウォールの設定は別の話、と読めます(筆者の整理)。
ウイルス対策ソフト。 総務省の用語集は、ウイルス対策ソフトに「他のコンピュータとの通信状況を監視してウイルスの侵入を予防するファイアウォールの機能を備えているものもあります」と書きます。別の機能が同じソフトに入っている場合がある、という説明です。セキュリティソフトのファイアウォールを使っているパソコンについて、IPAは「Windowsファイアウォールを有効にすることでセキュリティソフト等が正常に動作しなくなる(そのために無効に設定されている)可能性があります。」と書いています。
家庭ではファイアウォールはどこにあるのか
| 場所 | 出典に書かれていること |
|---|---|
| Windowsのパソコン | Microsoft Learn「Windows ファイアウォールは、オペレーティング システムに含まれ、すべての Windows エディションで既定で有効になっているホスト ベースのファイアウォールです。」「追加のハードウェアやソフトウェアは必要ありません」 |
| Mac | Appleのセキュリティガイド(Webページの公開日の表示は2021年2月18日)「macOSには、ネットワークアクセスおよびDOS(denial-of-service)攻撃からMacを保護するためのファイアウォールが組み込まれています。」 |
| ルーター | 総務省「ブロードバンドルーターの多くには、ファイアウォール機能など、安全にインターネットを利用できるようにするための機能も装備されています。」 |
NISTは、自宅のネットワーク用の小型の機器を「firewall appliance or firewall router」と呼び、パソコン側にファイアウォールがあっても、その機器は「a valuable added layer of security」(訳:価値のある追加の守りの層)だと書きます。総務省の「セキュリティ対策ソフトを活用しよう」は、ファイアウォール機能を有効にすると「不要な通信を遮断して、不正に操作される危険性を減らします」と書き、セキュリティ対策ソフトの主な機能の1つに挙げています。
本記事が取得したAppleのページ(ユーザガイド、セキュリティガイド、デバイス管理の資料。一覧は出典の節)には、Macのファイアウォールが初期設定でオンかオフかを書いた文は見つかりませんでした(「既定」「デフォルト」「初期設定」「default」などで検索した範囲)。Macの状態は、自分で確かめる必要があります。
Windowsでファイアウォールの状態を確かめる手順(Microsoft Defender ファイアウォール)
Microsoftの文書には「Windows ファイアウォール」と「Microsoft Defender ファイアウォール」の2つの表記が出てきます。サポートページが前者の状態を後者の切り替えで変えると書いているので、同じ機能を指していると読めます(筆者の読み)。
Microsoftのサポートページ「Windows セキュリティ アプリのファイアウォールとネットワーク保護」の手順は、次の流れです(Windows 11とWindows 10の両方が対象と明記されています)。
- スタートメニューで「Windows セキュリティ」を検索して開く(「Windows セキュリティ アプリの概要」のページの案内)。
- 「ファイアウォールとネットワーク保護」を選ぶ(本文では「ファイアウォール & ネットワーク保護」とも表記)。
- いま接続しているネットワークの種類が表示されるので、「ドメイン ネットワーク」「プライベート ネットワーク」「パブリック ネットワーク」から、ネットワーク プロファイルを選ぶ。
- 「Microsoft Defender ファイアウォール」の切り替えで、オン・オフを変える。

(2026年10月13日2時13分に筆者が撮影したMicrosoftのサポートページ。ページ内の画面は、Microsoftの説明用の画像で、筆者のパソコンの画面ではありません。)
プライベートとパブリックの違いを、Microsoftは「主な違いは、同じネットワーク上の他のデバイスがお客様のデバイスの表示と接続を許可されるかどうかです。」と書き、「お近くのコーヒー ショップの Wi-Fi はパブリック ネットワーク」とも書いています。出先のWi-Fiやスマートフォンのテザリング(手順はテザリングのやり方の記事)につなぐときは、どちらの種類で使っているかを見るのがよい、というのが筆者の提案です。
困ったときの扱いも、Microsoftのページに書かれています。
- 「Windows ファイアウォールを無効にすると、デバイスが不正アクセスの被害を受けやすくなります。」
- 「ブロックされているアプリを使用する必要がある場合は、ファイアウォールを無効にするのではなく、ファイアウォールを経由できるようにします。」
- 別のページ「Windows ファイアウォール経由でアプリを許可するリスク」は、「許可されているアプリの一覧にアプリを追加する (リスクが低い)」と「ポートを開く (リスクが高い)」を並べ、「認識できないアプリがファイアウォール経由で通信することを許可しない」ことを勧める。
- 設定を変えて動作がおかしくなったときは、「ファイアウォールを既定に戻す」で、パソコンを入手したときの状態に戻せる。
組織が管理するパソコンでは、ポリシーの設定で変えられないことがある、とも書かれています。サービスにつながらないときのヘルプには、VPNやファイアウォールを切って試すよう書くものもあり、例はNotionのログインの記事にあります。Microsoftのページは、切るのではなく、必要なアプリの経由を許可するよう書いています。
Macでファイアウォールの状態を確かめる手順
Appleの「Macユーザガイド」(macOS 26版)の「ファイアウォールを使用してMacへの接続をブロックする」の手順は、次のとおりです。
- アップルメニュー >「システム設定」と選択し、サイドバーで「ネットワーク」をクリックしてから、「ファイアウォール」をクリックする(下にスクロールする必要がある場合がある)。
- ファイアウォールをオンにする(Appleの原文は「ファイアウォールをオンにします。」)。
- 追加の設定をするときは「オプション」をクリックし、設定のオン・オフを切り替えて「OK」をクリックする。

(2026年10月13日2時12分に筆者が撮影したAppleのサポートページ。)
同じガイドの「Macの『ファイアウォール』設定を変更する」(macOS 26版)は、「オプション」に「外部からの接続をすべてブロック」、アプリやサービスの「追加」「削除」、署名付きソフトウェアの自動許可2種類、「ステルスモードを有効にする」の項目があると書き、ステルスモードは「ICMP(ping)などの承認されていない要求には応答しないようになります」と説明します。注意書きも原文にあります。
「重要: リストに表示されない一部のアプリには、ファイアウォール経由のアクセスが許可されている可能性があります。これらには、システムアプリ、サービス、およびプロセスと、ほかのアプリによって自動的に開かれた、デジタル署名されたアプリが含まれる場合もあります。」
Appleのユーザガイドの説明では、Macの内蔵ファイアウォールは、アプリやサービスごとに受信接続の許可・ブロックを選ぶ作りです。Appleのセキュリティガイド「Apple Platform Security」(英語のPDF・2026年8月版)は、macOSに組み込まれた機能の表に「Application firewall」と「Packet Filter (pf)」を別々に挙げています。名前は上の種類の表の「アプリケーションファイアウォール」と似ていますが、ユーザガイドが説明する働きは、通信の中身を見ることではなく、どのアプリが受信できるかを選ぶことです(筆者の読み)。
設定の場所は、Appleの文書の間で書き方が違います。macOSの版ごとに作られているMacユーザガイドは、macOS 26版も、13・14・15の版も「ネットワーク」>「ファイアウォール」と書きます(2026年10月13日に4つの版を取得)。一方、セキュリティガイドのファイアウォールのページ(公開日の表示は2021年2月18日。2026年8月版のPDFにも同じ文)は、「システム設定」>「プライバシーとセキュリティ」(macOS 13以降)と書きます。この記事の手順は、いまの版のユーザガイドに合わせています。筆者は設定画面そのものは開いていないので、実際の画面での位置は確かめていません。
設定画面を開かずに、ターミナルの1行でMacの状態を読む
設定画面のほかに、ターミナルから状態を表示するだけの方法もあります。macOSには /usr/libexec/ApplicationFirewall/socketfilterfw というコマンドが入っていて、コマンド自身の使い方の表示に、--getglobalstate などの確認用(get)の項目と、変更用(set)の項目が分かれて載っています。筆者は2026年10月13日2時1分に、このMac(macOS 26.6)で確認用の項目だけを実行しました。sudoは使わず、設定は変えていません。
/usr/libexec/ApplicationFirewall/socketfilterfw --getglobalstate
| 確かめられること | 確認用の項目 | 表示の例(筆者のMac・2026年10月13日2時1分) |
|---|---|---|
| ファイアウォールのオン・オフ | --getglobalstate |
Firewall is disabled. (State = 0) |
| 「外部からの接続をすべてブロック」 | --getblockall |
Firewall has block all state set to disabled. |
| 署名付きソフトウェアの自動許可(2項目) | --getallowsigned |
Automatically allow built-in signed software ENABLED. / Automatically allow downloaded signed software ENABLED. |
| ステルスモード | --getstealthmode |
Firewall stealth mode is off |
表示は英語で、disabled・off は無効、ENABLED は有効の意味です。1行目の例は、内蔵ファイアウォールが無効(State = 0)という表示です。左の列の対応は、表示の英語とAppleのヘルプの項目名を照らした筆者の読みです。分かるのはそのMacの内蔵ファイアウォールの、その時刻の状態だけで、ルーターなど、ほかの場所のファイアウォールの状態は分かりません。
ファイアウォールだけでは防ぎきれないもの。公的機関の説明から
ファイアウォールの説明には、守る範囲の限りも書かれています。公的機関の文書から、5つに分けます。
1. 許可された通信の中身。 NISTは、脅威の場所が変わったと書いています。
「Threats have gradually moved from being most prevalent in lower layers of network traffic to the application layer, which has reduced the general effectiveness of firewalls in stopping threats carried through network communications. However, firewalls are still needed to stop the significant threats that continue to work at lower layers of network traffic.」 (訳:脅威は、通信の下位の層から徐々にアプリケーション層へ移り、通信で運ばれる脅威を止めるファイアウォールの全般的な効果は下がった。ただし、下位の層で働き続ける重大な脅威を止めるために、ファイアウォールはなお必要である。)
パケットフィルタは通信の中身を見ません。Windowsの既定は送信を通します。この2点から、通常の通信(Webサイトの閲覧など)に乗ってくる偽サイトや、メールに添付されたファイルは、規則だけでは止まりにくいと考えられます(この推論は筆者の整理)。
2. 内側に入ってしまったもの。 NISTは、ネットワークの境界に置くファイアウォールについて「attacks sent from one internal host to another often do not pass through network firewalls」(訳:内部の機器から別の内部の機器へ送られる攻撃は、ネットワークのファイアウォールを通らないことが多い)と書き、パソコン上のファイアウォールについても「If an attacker compromises a host and gains administrator-level privileges, the attacker can disable or circumvent the host-based firewall.」(訳:攻撃者が機器を乗っ取って管理者権限を得ると、ホスト型ファイアウォールを無効にしたり、迂回したりできる)と注記します。
3. 利用者が自分で開く添付ファイルや、偽サイトへの入力。 総務省の「セキュリティ対策ソフトを活用しよう」は、ファイアウォール機能を有効にする説明のあとで、次のように書いています。
「また、セキュリティ対策ソフトが機能していれば対策が万全ということではありません。対策ソフトのアップデートが間に合わず、マルウェアが対策をすり抜けてしまうことも少なくありません。」
続けて「知らない人からの電子メールやメッセージの添付ファイルを不用意に開かないようにしたり、怪しいホームページはできるだけ閲覧しないようにしたりするなどの注意が必要です」とあります。IPAの「10大脅威 2026」個人編が挙げる10件には、「インターネット上のサービスへの不正ログイン」「フィッシングによる個人情報等の詐取」「サポート詐欺(偽警告)による金銭被害」などがあり、筆者が個人編ハンドブック(PDF・32ページ)の本文テキストを検索したところ「ファイアウォール」という語は1回も出てきませんでした。10件の多くがアカウントや人の操作を狙うもの、というのは筆者の整理で、IPAの表現ではありません。電話を使う詐欺の例は、AI音声クローン詐欺の記事にあります。
4. 古いままの機器と、設定の誤り。 Microsoftは、Windowsの「詳細設定」でルールを誤って変えると「システムの脆弱性が増したり、一部のアプリが動作しなくなったりする可能性があります。」と注意しています。NISTは「Firewall software should be patched as vendors provide updates to address vulnerabilities.」(訳:ファイアウォールのソフトは、脆弱性に対処するためにメーカーが出す更新を、そのつど適用すべきである)と書きます。IPAの「10大脅威 2026」解説書[組織編](2026年3月)は、4位の「システムの脆弱性を悪用した攻撃」で「ネットワーク機器(VPN 機器等)やCMS(プラグインを含む)といったインターネットから直接アクセスできる製品・システムの脆弱性」の危険を書き、8位のリモートワークの項では、従業員に「家庭環境のネットワーク機器の設定の見直しやファームウェアの更新を行う」を挙げています。
5. 対策の1枚にすぎないこと。 IPAの2017年の相談事例は、ランサムウェアのWannaCryptorに感染した家庭のパソコンの共通点を3つ挙げています。
「Windows Updateが長期間未実施であった。」 「ファイアウォール(脚注6)の設定が無効になっていた。」 「ルーターを経由せず、パソコンが直接インターネットに接続されていた。」
(「脚注6」は原文の注番号で、注の内容は前の節に引いたものです。)IPAは、3つをすべて満たす環境では、メールの添付ファイルを開かなくても感染しうると書き、対策もWindows Update・Windowsファイアウォールの有効化・ルーター経由の接続の3つを挙げています。Microsoft Learnも、Windowsファイアウォールを「an additional layer of defense to the defense-in-depth model」(訳:多層防御の考え方に、防御の層を1つ足すもの)と説明します。ファイアウォールは、複数ある守りの1枚、という位置づけです。
「FW」が指すもの。ファイアウォールのほかに、メールの FW: とファームウェア
- ファイアウォール(FW)。 この記事の主題で、NTT東日本の用語解説の表記です(定義の節に引用)。
- メールの件名の「FW:」。 Microsoftの Outlook on the web のヘルプは「メッセージを転送すると、件名に FW: というプレフィックスが追加され、受信者に転送メッセージを受信していることを通知します。」と書きます。転送したメールの印です。
- ファームウェア(firmware)。 総務省の用語集は、ファームウェアを「ハードウェアの基本的な制御のために、コンピュータなど機器に組み込まれたソフトウェアのこと」と定義します。ルーターのメーカーのファームウェア更新のページには、URLやファイル名に fw が入る例があります(NEC プラットフォームズのAterm、NETGEAR)。ただし、総務省の用語集のファームウェアの項にも、取得したメーカーのページの文面にも「FW」という略称の説明は無く、FWをファームウェアの略だと書いた公式の資料は、本記事では見つけていません。
ルーターのファイアウォールとファームウェアは別のものです。ファイアウォールは通信の規則、ファームウェアは機器の中で動くソフトそのもので、IPAが挙げるファームウェアの更新は、規則の設定とは別の作業です。
この記事で確かめていないこと
- Windowsの実機。 筆者の手元はMacで、Windowsのパソコンでは操作していません。Windowsの手順は、Microsoftのページの文面に基づきます。
- Macの設定画面とコマンドの表示。 「システム設定」の画面は開いていません。場所の書き方の食い違いは、実機の画面では確かめていません。コマンドの表示は、筆者のMac(macOS 26.6)1台で、無効のときの例だけを見ています。オンのときにどう表示されるかは確かめていません(確かめるには設定を変える必要があるため)。
- ルーター。 自宅や職場のルーターの設定は見ていません。記述は、総務省の用語集、NISTの文書、Atermの2機種のマニュアルに基づきます。ほかのメーカーのファイアウォール機能のマニュアルは見ていません。
- スマートフォンと他社のセキュリティソフト。 iPhone・Androidのファイアウォールと、セキュリティソフトのファイアウォール機能は取得していません。
- NISTの文書の古さ。 SP 800-41 Rev. 1は2009年9月の公開で、例に挙がるOSの扱いは当時のものです。
- 総務省の旧ページ。 旧サイトにあったファイアウォールの仕組みの解説ページのURLを開くと、現在のサイトのトップページが表示され、解説そのものは取得できませんでした(現在のサイトは2024年5月に内容が見直されています)。
ファイアウォールの記事が引いた公式ページと取得した時刻
本文で名指しした資料はすべて、記事冒頭の sources に入れています。取得は2026年10月13日2時2分〜2時28分(日本時間)で、原文・撮影・Macで実行したコマンドの結果は、筆者の作業フォルダに時刻つきで保存しています。ヘルプの画面は更新されるので、操作する前に、最新のMicrosoftとAppleのページを見てください。
この記事でよく聞かれること
- ファイアウォールとは何ですか
- ネットワークの通信を、決めた規則に照らして通す・止めるを判断する仕組みです。総務省の用語集は「外部のネットワークと内部のネットワークを結ぶ箇所に導入することで、外部からの不正な侵入を防ぐことができるシステムのこと。またはシステムが導入された機器。」と書き、NISTは「devices or programs」(機器またはプログラム)と説明します(2026年10月13日取得)。パソコンの中で動くソフトの形と、機器の形があります。
- fwとは何の略ですか
- ネットワークの話ではファイアウォール(FW)を指します。NTT東日本の用語解説は「ファイアウォール(FW)」と書いています。ほかに、Outlook on the web で転送したメールの件名に付く「FW:」があり、Microsoftのヘルプは「件名に FW: というプレフィックスが追加され」ると書きます。ファームウェアの更新ページのURLやファイル名に fw が入る機器メーカーの例もありますが、略称だという説明はそのページにありません(2026年10月13日取得)。
- ファイアウォールはパソコンにもルーターにもありますか
- どちらにもあります。Microsoft Learnは、Windowsファイアウォールが「すべてのWindowsエディションで既定で有効」と書き、Appleのセキュリティガイドは「ファイアウォールが組み込まれています」と書きます。総務省の用語集は「ブロードバンドルーターの多くには、ファイアウォール機能など、安全にインターネットを利用できるようにするための機能も装備されています」と書きます。自分のルーターに入っているかは、機種のマニュアルで確かめてください。
- Windowsでファイアウォールがオンか確かめるにはどうしますか
- Microsoftのサポートによると、スタートメニューで「Windows セキュリティ」を検索して開き、「ファイアウォールとネットワーク保護」を選びます。ドメイン・プライベート・パブリックのネットワーク プロファイルから1つを選ぶと、「Microsoft Defender ファイアウォール」の切り替えでオン・オフを変えられます。組織が管理するパソコンでは、ポリシーで変えられないことがあります。
- Macでファイアウォールがオンか確かめるにはどうしますか
- Appleのユーザガイド(macOS 26版)は、アップルメニュー>「システム設定」>サイドバーの「ネットワーク」>「ファイアウォール」と案内しています(下にスクロールが必要な場合あり)。設定画面を開かずに読むだけなら、ターミナルで /usr/libexec/ApplicationFirewall/socketfilterfw --getglobalstate を実行する方法もあります。筆者が2026年10月13日にこのMac(macOS 26.6)でsudoなしで実行すると、状態が「Firewall is disabled. (State = 0)」のような英語で表示されました(disabled は無効の意味)。
- ファイアウォールがあれば、ウイルスや詐欺メールは防げますか
- ファイアウォールだけでは足りません。総務省は、セキュリティ対策ソフトが機能していても対策が十分とは限らず、添付ファイルを不用意に開かないなどの注意が必要と書きます。NISTは、脅威がアプリケーション層へ移り、ファイアウォールが通信で運ばれる脅威を止める全般的な効果が下がったと書いています(2009年公開)。
- Windowsのファイアウォールを切ってもよいですか
- Microsoftは切らないことを勧めています。サポートページは「ブロックされているアプリを使用する必要がある場合は、ファイアウォールを無効にするのではなく、ファイアウォールを経由できるようにします。」と書き、Microsoft Learnも無効にしないよう推奨しています。IPAの2017年の相談事例は、ランサムウェアに感染した家庭のパソコンの共通点として、ファイアウォールが無効だったこと(ほかにWindows Updateの未実施、ルーターを経由しない接続)を挙げています。
出典・参照資料
- 一次資料総務省 国民のためのサイバーセキュリティサイト:用語集(は行)。ファイアウォール・パーソナルファイアウォール・パケット・ファームウェア・フィルタリング・ブロードバンドルーター・ポートの定義(2026年10月13日2時3分取得) ↗
- 一次資料総務省 国民のためのサイバーセキュリティサイト:用語集(あ行)。ウイルス対策ソフト・ウェブアプリケーションファイアウォールの定義(2026年10月13日2時3分取得) ↗
- 一次資料総務省 国民のためのサイバーセキュリティサイト:セキュリティ対策ソフトを活用しよう(2026年10月13日2時3分取得) ↗
- 一次資料総務省 報道資料「国民のためのサイバーセキュリティサイト」が新しくなりました(令和6年5月24日。サイト名の経緯。2026年10月13日2時14分取得) ↗
- 一次資料NIST SP 800-41 Rev. 1 Guidelines on Firewalls and Firewall Policy(PDF・2009年9月。2026年10月13日2時2分取得) ↗
- 一次資料NIST CSRC:SP 800-41 Rev. 1 の公開ページ(公開日 September 2009・要旨。2026年10月13日2時2分取得) ↗
- 一次資料NIST CSRC:出版物検索「800-41」(Rev. 1 が Final・2009年9月28日、初版2002年は Withdrawn。2026年10月13日2時28分取得) ↗
- 一次資料IPA 安心相談窓口だより:WannaCryptorの相談事例から学ぶ一般利用者が注意すべきセキュリティ環境(2017年7月13日公開。2026年10月13日2時6分取得) ↗
- 一次資料IPA 情報セキュリティ10大脅威 2026 解説書[組織編](2026年3月・PDF。2026年10月13日2時6分取得) ↗
- 一次資料IPA 情報セキュリティ10大脅威 2026 個人編ハンドブック[一般利用者向け](PDF。2026年10月13日2時6分取得) ↗
- 一次資料Microsoft サポート:Windows セキュリティ アプリのファイアウォールとネットワーク保護(2026年10月13日2時2分取得・2時13分に撮影) ↗
- 一次資料Microsoft サポート:Windows セキュリティ アプリの概要(2026年10月13日2時5分取得) ↗
- 一次資料Microsoft サポート:Windows ファイアウォール経由でアプリを許可するリスク(2026年10月13日2時4分取得) ↗
- 一次資料Microsoft Learn:Windows Firewall overview(英語版。既定の動作と無効化の推奨。2026年10月13日2時4分取得) ↗
- 一次資料Microsoft Learn:Windows ファイアウォールの概要(日本語版。2026年10月13日2時4分取得) ↗
- 一次資料Microsoft サポート:Outlook on the web でメール メッセージの作成、返信、転送を行う(件名に付く FW:。2026年10月13日2時7分取得) ↗
- 一次資料Apple サポート:ファイアウォールを使用してMacへの接続をブロックする(Macユーザガイド macOS 26 版。2026年10月13日2時5分取得・2時12分に撮影) ↗
- 一次資料Apple サポート:Macの「ファイアウォール」設定を変更する(Macユーザガイド macOS 26 版。2026年10月13日2時5分取得) ↗
- 一次資料Apple サポート:ステルスモードを使用してMacのセキュリティを高める(2026年10月13日2時2分取得) ↗
- 一次資料Apple サポート:macOSのファイアウォールのセキュリティ(Apple Platform Security・公開日の表示 2021年2月18日。2026年10月13日2時2分取得) ↗
- 一次資料Apple Platform Security(英語PDF・August 2026。macOSの組み込み機能の表に Application firewall と Packet Filter (pf)、ファイアウォールの節。2026年10月13日2時27分取得) ↗
- 一次資料Apple サポート:Block connections to your Mac with a firewall(Mac User Guide macOS 26 英語版。2026年10月13日2時26分取得) ↗
- 一次資料Apple サポート:ファイアウォールを使用してMacへの接続をブロックする(Macユーザガイド macOS 13 版。設定の場所の比較。2026年10月13日2時27分取得) ↗
- 一次資料Apple サポート:ファイアウォールを使用してMacへの接続をブロックする(Macユーザガイド macOS 14 版。2026年10月13日2時27分取得) ↗
- 一次資料Apple サポート:ファイアウォールを使用してMacへの接続をブロックする(Macユーザガイド macOS 15 版。2026年10月13日2時27分取得) ↗
- 一次資料Apple Platform Deployment:Firewall device management payload settings(英語。2026年10月13日2時27分取得) ↗
- 一次資料NTT東日本 ビジネス用語解説:ファイアウォール(FW)(2026年10月13日2時7分取得) ↗
- 一次資料NEC プラットフォームズ Aterm WG1200HS4 ユーザーズマニュアル:IPv6ファイアウォール機能(Stateful Packet Inspection)(2026年10月13日2時9分取得) ↗
- 一次資料NEC プラットフォームズ Aterm BL1000HW 機能詳細ガイド:パケットフィルタの設定例(2026年10月13日2時9分取得) ↗
- 一次資料NEC プラットフォームズ Aterm HY01 機能詳細ガイド:メンテナンス-ファームウェア更新(URLに fw が入る例。2026年10月13日2時8分取得) ↗
- 一次資料NETGEAR:R6300 ファームウェアのアップグレード方法(PDFのファイル名が FWdownload_R6300。2026年10月13日2時8分取得) ↗
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