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中国がAIの輸出規制案フロンティア級のオープンウェイトも許可制に。今は「届け出ればすぐ出せる」が、政府の判断で止められる形(商務部 公告第48号)

執筆:約12分で読めます

中国の商務部と科技部は2026年10月16日、輸出を禁止・制限する技術のリストにAIなど40項目を足す案(公告2026年第48号)を出した。計算量10の26乗回以上・パラメータ2兆以上・公開ランキングでトップ10のどれかに当たる大規模モデルは「制限」の対象で、新しくオープンソースにすることも輸出として扱われる。商務部は自動許可で「基本的に届け出ればすぐ出せる」と説明しているが、原文に「必ず許可する」とは書かれていない。

中国がAIの輸出規制案──フロンティア級のオープンウェイトも許可制に。今は「届け出ればすぐ出せる」が、政府の判断で止められる形(商務部 公告第48号)
目次

中国の商務部と科技部は2026年10月16日、輸出を禁止・制限する技術のリストに、AIなど40項目を書き足す案「公告2026年第48号」を出した。計算量10の26乗回以上・パラメータ2兆以上・公開ランキングで世界トップ10のどれかに当たる大規模モデルは「制限」の対象になり、新しくオープンソースにすることも技術の輸出として扱われる。商務部は、オープンソース化には自動許可を使い「基本的に届け出ればすぐ出せる」と説明している。今は出せる。ただ、許可の制度に入ったことで、政府の判断でいつでも止められる形になった。動画での解説は YouTube(AI時短ラボ) にある。

3行まとめ

  1. 中国の商務部・科技部が10月16日、技術の輸出規制リストにAI 23項目を含む40項目(禁止14・制限26)を足す案を公表。意見の受付は11月15日まで。発表の日から、該当技術を国外に出す前の登録が必要になった。
  2. 計算量10の26乗回以上・パラメータ2兆以上・公開ランキングでトップ10のどれかに当たる大規模モデルは「制限」。重みだけでなく、コード・設計・学習や推論の技術も入る。今あるモデルでは Kimi K3(2.8兆)がこの大きさに当たる。
  3. オープンソース化は自動許可で「基本的に届け出ればすぐ出せる」(商務部)。公開済みのモデル・論文、APIやアプリでの利用は対象外。ただし原文に「必ず許可する」とは書かれていない。

本記事は、日本時間2026年10月17日未明に確認した商務部の公告・附件1(意見募集稿)・商務部報道官の回答の原文にもとづく。

公告第48号で決まったこと

公告によると、商務部と科技部は「中国禁止出口限制出口技术目录」(輸出を禁止・制限する技術のリスト)を改定し、AI・バイオ医薬・太陽光の技術を足す。報道官の回答によると、このリストは2001年から何度も見直されてきたもので、今回は AI の技術がまとめて加わる。

項目 内容
公表 2026年10月16日(商務部・科技部 公告2026年第48号)
足す項目 40項目(AI 23・バイオ医薬 5・太陽光 12)
内訳 輸出の禁止 14項目・輸出の制限 26項目(報道官の回答)
意見の受付 2026年10月16日〜11月15日
正式な施行 日付は未定
今すぐ始まること 公告に載った技術を国外に出す前の登録(譲渡・使用許諾・支配者の国外移転など)

禁止は国外に出すことができない技術、制限は出す前に許可が要る技術だ。商務部の解説によると、制限の技術は許可証の管理の下に置かれ、許可がなければ輸出できない。

対象になる大規模モデルの3つの基準

附件1の「266504X 人工智能大模型技术」は、次のどれか1つに当たる大規模モデルの中核技術を制限の対象にしている。

(1)计算量≥10^26次浮点运算;(2)参数量≥20,000亿;(3)能力达到全球领先水平。

(訳:①計算量が10の26乗回以上 ②パラメータが2兆以上 ③能力が世界トップレベル)

「中核技術」には、重み(权重参数)・主要なチェックポイント・ソースコード・アーキテクチャの設計・学習の最適化や推論の高速化の技術まで含まれる。③の「世界トップレベル」は注で、輸出の時点で、国内外の主要な評価機関や大規模なプラットフォームが出す、総合性能・専門の能力・世界での呼び出し量・安全性・学習の効率などの公開ランキングで「世界トップ10」に入ることと定義されている。どのランキングを使うかは書かれていない。

大きさの線を、今あるモデルに当てるとこうなる。

モデル パラメータ 重みの公開 出典
Kimi K3(Moonshot AI) 2.8兆 公開済み Hugging Face のモデルカード
Qwen3.8-Max(Alibaba) 2.4兆 10月17日時点で Hugging Face に見当たらない eWeek ほか(報道の数字)
DeepSeek V4-Pro(DeepSeek) 1.6兆 公開済み Hugging Face のモデルカード

Kimi K3 と同じ大きさのモデルがこれから出れば、②に当たる。Kimi K3 そのものはすでに重みが公開されているので、後で触れる「公開済みは対象外」に入る。DeepSeek V4-Pro は大きさでは線の下だが、③のランキングしだいで対象になり得る。央視新聞(21世紀経済報道の転載)は、Kimi K3 の総合の知能が発表時の評価で Claude Fable 5 と GPT-5.6 Sol に次ぐと報じていた。①の計算量は、Kimi K3 のモデルカードにも記載がなく、外からはどのモデルが当てはまるか分からない。

このほか、中国の「重要データ」で学習したモデルは制限、「核心データ」で学習したモデルは禁止になる。どのデータが当てはまるかについて、附件1は「データ安全法などの法律で決まる」とだけ書いている。

オープンウェイトはどう扱われるのか

附件1の AI の部の末尾には、次の2文がある。

已通过开源、发表学术论文等方式进入公共领域的技术,不纳入管理范围。 对本类技术开源,以及中国企业在境外自建自营算力中心、赴境外开展芯片流片制造、利用境外资源开展联合研发、参与国际标准制定等情形的技术出口,适用自动许可等便利措施。

(訳:オープンソースや論文の発表などですでに公共の領域に入った技術は、管理の範囲に入れない。この種の技術のオープンソース化や、中国企業の海外での自社データセンター、海外でのチップ製造、海外の資源を使った共同研究、国際標準づくりへの参加などの技術の輸出には、自動許可などの簡単な手続きを使う)

つまり、基準を超えるモデルを新しくオープンソースにすることは、技術の輸出の1つとして扱われる。商務部報道官は、これについて「基本实现"即报即出"」(基本的に、届け出ればすぐ出せる)と説明している。

報道官は、海外への出し方の扱いも分けている。

出し方 扱い(報道官の回答)
すでに公開されたモデル・論文 管理の範囲外
API で使ってもらう・アプリやウェブ・SaaS で提供 大規模モデルの技術の輸出の管理には入らない
端末で動く軽いモデルとして配る(本地端侧轻量化部署) 同上
制限の対象のモデルを海外のサーバーに置いて動かす 技術の輸出に当たる(自社の海外クラウドなら自動許可などを使える)
新しくオープンソースにする 技術の輸出に当たる(自動許可・即报即出)

「届け出ればすぐ出せる」は約束ではない

今の案で、フロンティア級のオープンウェイトの公開が止まるわけではない。ただ、仕組みは変わった。

  • 基準を超えるモデルの公開は、許可の制度の中に入った。附件1は「自動許可などの簡単な手続きを使う」と書いているだけで、必ず許可するとはどこにも書いていない
  • 報道官の言い方も「基本的に」すぐ出せる、である
  • 報道官は、リストの範囲は技術の進み方に合わせて動かしていく(动态调整)と述べている
  • 新しいモデルを出すたびに、先に政府に届け出ることになる。「トップ10」をどのランキングで見るかも書かれていないので、対象に入るかどうかの線引きも政府の解釈しだいだ

ルールを作り直さなくても、手続きの運用を変えれば締められる。今回の案は、オープンウェイトを止めたのではなく、いつでも止められるようにしたものだと読める。

線引きが広い項目──マルウェア・脆弱性・エージェント

大規模モデル以外にも、今の汎用のAIに近い項目がある。

項目 扱い 基準(附件1・どれか1つ)
AIによるマルウェアの自動生成・変異(266402J) 禁止 複数エンジンの検出器に対する攻撃成功率60%以上、主流のウイルス対策ソフト1つに対し85%以上、機械学習のモデルに対し90%以上 など
AIによる脆弱性の発見(266404X) 制限 権威あるテストで75%以上、低〜中程度の不具合を2つ以上つないで攻撃の流れを作り動く検証コードを書く、主要なソフトで未公開の深刻な欠陥を5個以上見つける など
エージェント(266505X) 制限 指示を20段以上の作業に分けて分解精度80%以上・成功率90%以上、200個以上の道具から90%以上正しく選ぶ、60体以上が同時に協力する など

筆者が附件1を読み比べて目に留まったのは、マルウェアの項目の書き方だ。同じ禁止の側の「高性能検出技術」(266401J)や「人工智能体技术」(266502J)は「专门或者主要用于」(専用、または主にその用途)と使い道で範囲を絞っている。一方でマルウェアの項目は「可被用于攻击」(攻撃に使われうる)と書かれていて、目的ではなく、できるかどうかで線を引いている。普通のコーディング用のモデルがこの項目に入るかどうか、成功率をどのテストで測るかは、原文には書かれていない。入ると判断されれば禁止の側なので、オープンソース化の自動許可も使えない。

登録が要るかどうかについて、報道官は「出口经营者应自行判断」(輸出する事業者が自分で判断する)としている。

日本で使う人への影響

  • 公開済みのモデルは対象外。手元にあるモデルも、公開済みのモデルをこれからダウンロードするのも、そのまま使える
  • API やアプリで中国のモデルを使うのも、輸出の管理には入らない
  • 影響があり得るのは、これから出るフロンティア級の新しいモデルだ。公開されるかどうか、いつ公開されるかが、中国政府の判断に左右されるようになる

7月の報道からの流れ

ロイターは7月上旬、商務部がアリババ・バイトダンス・Z.ai と、中国の最先端のモデルへの海外からのアクセスを制限することについて話し合っていると報じていた(TheNextWeb などの紹介による)。話し合いにはオープンウェイトのモデルも含まれていたとされる。今回の公告は、その話が初めて正式な文書になったものだ。

商務部報道官は今回の改定について、AIの悪用や、人の制御を離れるリスクに備えるため(确保人工智能始终处于人类控制之下)と説明し、同時にオープンソースは進めていく(鼓励开源开放)とも書いている。

ここからは筆者の見立てになる。AIの性能が上がるほど、出してよいモデルとまずいモデルの差は大きくなる。今はオープンで世界に広めるほうが得なので自動許可にしているが、性能が上がりすぎて危ないと判断した時には、すぐに止められる。今回の案は、その準備と見るのが自然だと考えている。

原文から読み取れなかったこと

  • 正式版で自動許可の扱いが残るか(今は意見募集の段階)
  • 正式に施行されるまでの間、オープンウェイトの公開が「登録」の対象か(公告に挙がっている登録の対象は、譲渡・使用許諾・支配者の国外移転・商務部が指定するもの)
  • 「トップ10」をどのランキングで判定するか、マルウェアの項目の成功率をどのテストで測るか
  • 7月の話し合いは、ロイターの原文ではなく各紙の紹介で確認した

出典と確認した範囲

  • 公告・附件1・報道官の回答は、商務部のサイトの原文を確認した(日本時間10月17日未明)
  • Kimi K3 と DeepSeek V4-Pro のパラメータ数は Hugging Face のモデルカード、Qwen3.8-Max の 2.4兆は報道の数字
  • Kimi K3 の「総合で3番目」は、央視新聞(21世紀経済報道の転載)の報道

11月15日に意見の受付が終わり、正式版が出たら、線引きがどう変わったかをこの記事に追記する。

この記事でよく聞かれること

中国のAI輸出規制案(公告第48号)とは何ですか?
中国の商務部と科技部が2026年10月16日に出した、輸出を禁止・制限する技術のリスト(中国禁止出口限制出口技术目录)を改定する案です。AI 23項目・バイオ医薬 5項目・太陽光 12項目の計40項目を足し、うち14項目を禁止、26項目を制限にするとしています。意見の受付は11月15日までで、正式な施行日はまだ決まっていません。
どんなAIモデルが対象になりますか?
附件1によると、計算量が10の26乗回以上、パラメータが2兆以上、能力が世界トップレベル(公開ランキングのどれかで世界トップ10)のどれか1つに当たる大規模モデルの重み・チェックポイント・ソースコード・設計・学習や推論を速くする技術が「制限」の対象です。中国の重要データで学習したモデルも制限、核心データで学習したモデルは禁止です。
中国のオープンウェイトはもう公開されなくなるのですか?
案の段階では止まりません。附件1は、この種の技術のオープンソース化に自動許可などの簡単な手続きを使うとしていて、商務部は「基本的に届け出ればすぐ出せる(即报即出)」と説明しています。ただし許可の制度に入るため、政府が運用を変えれば止められる形です。原文に「必ず許可する」とは書かれていません。
日本で公開済みの中国モデルを使うのに影響はありますか?
すでにオープンソースや論文で公開された技術は対象外です。商務部は、限制類の大規模モデルをAPIで使ってもらうこと、アプリやウェブ、SaaSで提供すること、端末で動く軽いモデルとして配ることは、技術の輸出の管理に入らないとしています。影響があり得るのは、これから出るフロンティア級の新しいモデルの公開です。
いつから始まりますか?
リストの改定は意見募集の段階です。ただし公告の発表日(2026年10月16日)から正式な施行の日までの間も、公告に載った技術を国外へ譲渡・使用許諾する場合などは、事前に商務部の業務システムで登録が必要になっています。
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出典・参照資料

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