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AI(人工知能)とは国のガイドラインと情報通信白書は何と定義しているか、定義が一つに決まらない理由、弱いAI・強いAI・汎用AIの違い、いまのAIにできること・できないこと

執筆:約22分で読めます

AI(人工知能)とは、総務省・経産省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版・2026年3月31日)」の言葉では「人間の思考プロセスと同じような形で動作するコンピュータープログラム、コンピューター上で知的判断を下せるシステム等」を指す。ただし同ガイドラインも総務省の情報通信白書(令和元年版)も、確立した定義はないと書く。この記事は、ガイドラインの「AI」「AIシステム」の定義文、ガイドラインが参考に載せるJIS X 22989:2023とOECDの定義、平成28年版白書が並べた研究者13人・12通りの定義を読み比べ、弱いAI/強いAI、特化型/汎用(AGI)の区別、いまのAIにできること・できないことを出典つきで整理する。AIの基礎講座の第1回。

AI(人工知能)とは──国のガイドラインと情報通信白書は何と定義しているか、定義が一つに決まらない理由、弱いAI・強いAI・汎用AIの違い、いまのAIにできること・できないこと
目次

2026年10月2日・日本時間時点の情報です。 AIの基礎講座の第1回として、「AI(人工知能)とは何か」に国の資料の原文で答える。国のAI事業者ガイドラインの説明では、AIは人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラムや、知的判断を下せるシステムを指す。ただし、確立した定義はない。

3行まとめ

  1. AI(人工知能)とは、人間が頭を使ってするような判断や処理を、コンピューターで行うプログラムやシステムのこと(国の資料の説明を筆者が短くした言い方)。AI事業者ガイドライン(第1.2版・2026年3月31日)は「人間の思考プロセスと同じような形で動作するコンピュータープログラム、コンピューター上で知的判断を下せるシステム等を指す」と書く。
  2. ただし「確立した定義」はない。 ガイドラインは「確立された定義は存在しない」、令和元年版の情報通信白書は「確立した定義はない」と書く。ガイドラインもOECDも具体的な定義は「AI」でなく「AIシステム」に置き、平成28年版の白書は国内の研究者13人による12通りの定義を表で並べている。
  3. 「強いAI/弱いAI」は機械が本当に理解しているかを問う哲学の区別、「特化型/汎用」はこなせる仕事の幅の区別で、筆者は別の軸と読む。 いまのAIにできることとして、ガイドラインは画像認識・翻訳などの自然言語処理・音声認識と、文章や画像を生成する「生成AI」を挙げる。

AI(人工知能)とは何か。国の資料はどう書いているか

AI事業者ガイドライン(第1.2版)の「第1部 AI とは」は、冒頭の段落でこう書く。

AI は未だ確立された定義は存在しないが、「人工」・「知能」とあるように、人間の思考プロセスと同じような形で動作するコンピュータープログラム、コンピューター上で知的判断を下せるシステム等を指す。

かみくだくと、人間が頭を使ってするような判断や処理をコンピューターで行うプログラムやシステムのことだ(言い換えは筆者)。令和元年版の情報通信白書も、確立した定義はないとしたうえで、「あえていえば」人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラム、あるいは人間が知的と感じる情報処理・技術といった広い概念で理解されている、と書く。

ガイドラインは続く用語表で、「AI」をこう定義する。

現時点で確立された定義はなく(統合イノベーション戦略推進会議決定 「人間中心の AI 社会原則」(2019 年 3 月 29 日))、広義の人工知能の外延を厳密に定義することは困難である。本ガイドラインにおける AI は「AI システム(以下に定義)」自体又は機械学習をするソフトウェア若しくはプログラムを含む抽象的な概念とする。

具体的な定義を置くのは「AI システム」の項だ。

活用の過程を通じて様々なレベルの自律性をもって動作し学習する機能を有するソフトウェアを要素として含むシステムとする(機械、ロボット、クラウドシステム等)。

この項には、参考として2つの定義が添えてある。1つ目はJISの定義で、ガイドラインは「参考として JIS X 22989:2023 では ISO/IEC 22989:2022 にもとづき、以下のように定義されている」と前置きして次の文を載せる。

人間が定義した所与の目標の集合に対して、コンテンツ、予測、推奨、意思決定等の出力を生成する工学的システム

2つ目はOECDの定義だ。OECD.AIのページに載る英語の原文は次のとおり。

An AI system is a machine-based system that, for explicit or implicit objectives, infers, from the input it receives, how to generate outputs such as predictions, content, recommendations, or decisions that can influence physical or virtual environments. Different AI systems vary in their levels of autonomy and adaptiveness after deployment.

(訳:ガイドラインの日本語では「AI システムは、明示的又は暗黙的な目的のために推測するマシンベースのシステムである。受け取った入力から、物理環境又は仮想環境に影響を与える可能性のある予測、コンテンツ、推奨、意思決定等の出力を生成する。AI システムが異なれば、導入後の自律性及び適応性のレベルも異なる」)

OECD.AIに載る3人の執筆者の解説記事(2024年3月6日。OECDの公式見解を必ずしも反映しないとの断り書きつき)は、最初から「AI」ではなく、政策づくりの場面でより具体的で扱いやすい「AI System」を定義することにした、と書く。この定義は2023年に各国が改定した、とも書く。ガイドラインが「AI システム」に定義を置くのはこの国際的な書き方に沿っている、と筆者は読むが、ガイドライン自身がそう説明しているわけではない。

ガイドライン・JIS・OECD・白書の定義を並べた表

出どころ(時点) 定義の対象 要点(筆者の要約)
AI事業者ガイドライン(2026年3月) AI 確立された定義はない。「AI システム」や機械学習をするソフトウェア等を含む抽象的な概念として扱う
同上 AI システム 様々なレベルの自律性をもって動作し学習するソフトウェアを含むシステム
JIS X 22989:2023(ガイドラインが引用) AI システムの項に参考として掲載 人間が定めた目標に対し、コンテンツや予測などの出力を生成する工学的システム
OECD(2023年改定) AI system 入力から、予測・コンテンツ・推奨・意思決定などの出力の作り方を推測するマシンベースのシステム
情報通信白書 令和元年版(2019年) AI 確立した定義はない。あえていえば人間の思考プロセスと同じように動くプログラム、人間が知的と感じる情報処理・技術
情報通信白書 平成28年版(2016年) 人工知能(AI) 特定の定義は置かず、「知的な機械、特に、知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」と説明

なぜ定義が一つに決まらないのか

平成28年版の情報通信白書は、人工知能(AI)は「大まかには『知的な機械、特に、知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術』と説明されているものの、その定義は研究者によって異なっている状況にある」と書く。背景として白書が挙げるのは、「そもそも『知性』や『知能』自体の定義がない」ことだ。

同じ節の図表4-2-1-4は、国内の主な研究者による人工知能の定義を表にしている(白書によれば出典は松尾豊『人工知能は人間を超えるか』(KADOKAWA)p.45)。表は13人分で、中島秀之氏と武田英明氏の2人が1つの定義の欄を共有しているため、定義は12通りある。5つを抜き出す。

研究者(表に書かれた所属) 表に書かれた定義
西田豊明(京都大学) 「知能を持つメカ」ないしは「心を持つメカ」である
浅田稔(大阪大学) 知能の定義が明確でないので、人工知能を明確に定義できない
松原仁(公立はこだて未来大学) 究極には人間と区別が付かない人工的な知能のこと
山口高平(慶應義塾大学) 人の知的な振る舞いを模倣・支援・超越するための構成的システム
山川宏(ドワンゴ人工知能研究所) 計算機知能のうちで、人間が直接・間接に設計する場合を人工知能と呼んで良いのではないかと思う

この表は白書の中では画像で、文字のデータがない。上の文言は、筆者が画像を拡大して目で読み取ったものだ。

白書の「知的な機械、特に、…」の説明は、脚注によると人工知能学会のサイトの「人工知能のFAQ」(ジョン・マッカーシー教授のFAQの翻訳)から引いている。このFAQは「人の知能と結び付けることなく知能を明確に定義できますか?」に「まだ無理です.」と答え、人類が知能と呼びたいものがどんな計算的な手続きかを一般的に特徴付けられないから、と理由を書く。

定義の範囲も動いてきた。AI事業者ガイドラインによると、専門家の知識を大量に入力して推論する「エキスパートシステム」もAIとみなす考えがある一方、2000年代以降はディープラーニング等による画像認識・自然言語処理(翻訳等)・音声認識が使われ、特定の分野に特化して予測・提案・決定を行うシステムをAIと指すようになってきた。2021年以降は基盤モデルの台頭で、汎用的なAIの開発が進んでいる。流れはAIの歴史を扱う回で読める。

逆向きの動きもある。前出のOECD.AIの解説記事は、光学文字認識(OCR)のように、かつてはAIと広くみなされたのに、教科書的なAIの手法を使っていても、少なくとも一般の人々からはもうAIとみなされなくなった技術がある、と書く。

「弱いAI」と「強いAI」、「特化型」と「汎用」は何が違うか

この2組を「別の軸の区別」と整理するのは筆者の読みで、資料が2組を並べて対比しているわけではない。

弱いAI/強いAI。 スタンフォード哲学百科事典(SEP)の「チャイニーズ・ルーム論」の項は、哲学者ジョン・サールが「Strong AI(強いAI)」と呼ぶ立場をこう説明する。

Strong AI is the view that suitably programmed computers (or the programs themselves) can understand natural language and actually have other mental capabilities similar to the humans whose behavior they mimic.

(訳:強いAIとは、適切にプログラムされたコンピュータ(またはプログラムそのもの)が、自然言語を理解でき、その振る舞いを真似ている人間と同様の、ほかの心的能力を実際に持ちうる、という見方である。)

対になる「weak AI(弱いAI)」について同じ項は、コンピュータが心理学や言語学などで役に立つのは一つには心的能力をシミュレートできるからだ、というずっと控えめな主張で、コンピュータが実際に理解している、あるいは知的であるとは主張しない、と説明する。SEPの説明では、この対は機械が本当に理解や知能を持つのかをめぐる哲学上の立場の区別だ。SEPは百科事典(二次資料)で、筆者はサールの1980年の原論文は読んでいない。

日本語の資料では、人工知能学会のサイトの解説ページ「人工知能研究」が、「AIは,本当に知能のある機械である強いAIと,知能があるようにも見える機械,つまり,人間の知的な活動の一部と同じようなことをする弱いAIとがあります.」と書き、AI研究のほとんどは弱いAIだとしている。

特化型/汎用。 こちらはこなせる仕事の幅の区別だ。前の節で見たとおり、ガイドラインは2000年代以降のAIを「特定の分野に特化し」たシステム、2021年以降の流れを「汎用的な AI の開発」と書き分けている。

Google DeepMindの研究者らの論文「Levels of AGI」(arXiv:2311.02462)は、この幅を汎用性(Generality)と呼び、「the range of tasks for which an AI system reaches a target performance threshold」(AIシステムが目標の性能水準に達するタスクの幅)と説明する。論文はAGIの既存の定義をいくつも比べたうえで、性能の5段階(Emerging・Competent・Expert・Exceptional・Superhuman。ほかに「AIなし」のLevel 0)と、Narrow(狭い)/General(広い)を掛け合わせた表を提案している。AGI(汎用人工知能)の定義も一つに決まっておらず、各社の説明の違いはAGIとは何かを扱った記事にまとめてある。

いまのAIにできること、できないこと

できることとして資料が挙げているもの

  • AI事業者ガイドラインは、2000年代以降に活用されるようになった分野として、ディープラーニング等による「画像認識」「自然言語処理(翻訳等)」「音声認識」を挙げる。さらに、画像・文章等を生成する「生成 AI」が普及しつつあり、近年はAIエージェントやフィジカルAIの社会実装の試みも進んでいるとする。生成AIの定義は「文章、画像、プログラム等を生成できる AI モデルにもとづく AI の総称」だ。生成AIは生成AIとは、AIエージェントはAIエージェントとはで扱う。
  • 令和元年版の白書は、AIブームの中心にある機械学習を、大量のニンジンとジャガイモの写真を入力するとコンピューターが両者を区別するパターンやルールを見つけ、その後はニンジンの写真に「ニンジン」と答えられるようになる、という例で説明している。
  • 平成28年版の白書(2016年)は、身近な例として検索エンジン、Appleの「Siri」、Googleの音声検索や音声入力機能、各社の掃除ロボット、ソフトバンクロボティクスの人型ロボット「Pepper」を挙げ、囲碁AI「アルファ碁」が2016年3月に李九段に4勝1敗で勝ったことも書く。

できない、またはまだ確実でないものとして資料が挙げているもの

  • 令和元年版の白書は、深層学習では「AIがどのような根拠により判断を行ったかを人間が理解することが難しい」という点も指摘されている、と書く。
  • ガイドラインは、「自動化バイアス」等のAIに過度に依存するリスクに注意を払うよう求め、個人の権利・利益に重要な影響を及ぼしうる分野でAIを使ってプロファイリングを行う場合は、AIの予測・推奨・判断等の「限界を理解して利用」するよう求める。脚注には、RAG(検索拡張生成)の活用等で「ハルシネーションの抑制」等が期待されている、とある。「期待されている」という書き方で、ハルシネーションがなくなったとは書いていない。
  • DeepMindの論文は、2023年9月の執筆時点(as of this writing in September 2023)の見立てとして、ChatGPTなどの最先端の言語モデルは短い作文や簡単なコーディングなど一部のタスクでは「Competent」の水準だが、数学や事実性が問われるタスクなど大半では「Emerging」の水準にとどまる、と書く。「Competent AGI」の水準は執筆時点で公開されたどのシステムも達成していない、とも書く。筆者が読んだ2025年9月の第5版でも、この見立ての時点は2023年9月のままだ。2026年の到達点はAIはどこまで来たかを扱った記事で見られる。

筆者の観測:定義文を並べて数えてみた

筆者は10月2日11時42分ごろ、AI事業者ガイドライン(第1.2版)のPDF(42ページ)、令和元年版・平成28年版の情報通信白書の該当ページ、OECD.AIの2ページを取得して手元に保存した。ガイドラインはpdftotextで文字列にし、空白と改行を除いた完全一致で数えた。

  • ガイドライン本編で「確立された定義」が出るのは2か所(「第1部 AI とは」の冒頭の段落と、用語表の「AI」の項)。「確立した定義」の表記は0か所だった。
  • 令和元年版の白書のこのページで「確立した定義」は1か所。
  • ガイドライン本編で「AIシステム」は186か所、「人工知能」は6か所。この文書の中心の語は「人工知能」ではなく「AIシステム」だった。
  • 平成28年版の白書の研究者の表は13人・12通りの定義で、12通りの文言に同じものはなかった。これは画像を目で読んで数えている。

定義文の言葉を比べると、ガイドラインの「AI システム」、JIS、OECDの定義は「動作し学習する」「出力を生成する」「推測する」という動作の言葉で書かれ、白書や研究者の定義は「知能」「知的」「人間のような」という言葉で書かれている。前者は何をするシステムかを、後者は何に似ているかを語る形だ。これは筆者の読み取りで、各資料がそう整理しているわけではない。

AIの定義で読めていない資料(JIS規格票・サールの原論文ほか)

  • JIS X 22989:2023の規格票そのものは読んでいない。JISの定義文は、AI事業者ガイドラインが「AI システム」の項に参考として載せた文の引用だ。
  • 「強いAI」「弱いAI」の語は、今回読んだ国の資料(ガイドライン本編、令和元年版・平成28年版の白書の該当ページ)には1回も出てこなかった(空白を除いた完全一致で0回)。ほかの省庁の資料までは探していない。この記事の説明は、SEPと人工知能学会の解説ページによる。人工知能学会のページには、今回取得した範囲では掲載日の記載がなかった。
  • OpenAIの憲章のページはcurlでは403で取得できなかった。AGIの定義はDeepMindの論文の記述にとどめた。

この講座の歩き方

この回は、AIという言葉の意味を押さえる入口にあたる。次の回からは、この順に読める。

  1. AIの歴史(1950年代〜2026年):2度の「冬」を挟んだ76年。
  2. AIはどこまで来たか:国際数学オリンピックの1年で見る進化の速さ。
  3. 生成AIとは:生成AIの公的な定義と、文章・画像・動画・音声・コードの種類。
  4. 機械学習とは:データから規則を見つける3つの型。
  5. ニューラルネットワークとは:ニューラルネットワークの基本の形。

用語はAI用語集、ガイドラインの中身はAI事業者ガイドライン(第1.2版)の記事、LLMはLLMとはで引ける。

AI(人工知能)の定義文を確かめた資料と、取得できなかったページ

2026年10月2日11時42分〜11時50分(日本時間)に取得した。

ガイドラインの引用はPDFを文字列にしたもので、行の折り返しだけを除いた。取得できなかったもの:OpenAIの憲章ページ(403)。定義の改定があれば追記する。

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出典・参照資料

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