AIの到達点はどこまで来たか──国際数学オリンピックの1年で見る進化速度
2025年の国際数学オリンピックでGoogleとOpenAIのAIが初めて金メダル相当(35/42点)に到達した。その1年後、2026年大会ではHuaweiとRedNote(小紅書)のAIが公式採点で初の満点(42/42点)を記録した。検証できた一次情報から、AIの現在地を確認した。

2026年8月27日時点で確認できた内容を先に書く。2025年7月の国際数学オリンピック(IMO)で、GoogleとOpenAIのAIモデルが初めて金メダル相当のスコアに到達した。その1年後、2026年7月の大会では、HuaweiとXiaohongshu(小紅書、英語名RedNote)のAIモデルが、IMOの公式採点プロセスで史上初めて満点を記録した。この記事は2026年6月7日に公開した動画「AIって結局なに?仕組みから"これからどうなるか"まで、煽らず1から解説」の内容を土台に、公開後に判明した最新の一次情報もあわせて確認したものだ。動画の台本にあった個別の企業事例・ベンチマーク数値の多くは、この記事を書く時点で一次資料に到達できなかったため、確認できた範囲に絞って書き直している。
3行まとめ
- 2025年のIMOで、Google DeepMindの「Gemini Deep Think」が42点満点中35点を獲得し、IMO運営から公式に金メダル水準と認定された(OpenAIも同水準を自己発表したが、こちらは公式採点プロセスを経ていない)
- 2026年のIMO(上海開催、666人が参加)では、HuaweiとXiaohongshuのAIモデルがそれぞれ42点満点を記録。人間の参加者では666人中7人だけが満点だった
- EU AI法は2026年8月2日から対話AI・ディープフェイクの表示義務(Article 50)が予定通り施行された一方、高リスクAIシステムの規制は2026年6月の法改正で2027年12月・2028年8月に延期されている
| 大会 | AIの結果 | 人間の結果 |
|---|---|---|
| IMO 2025 | Google DeepMind(公式認定)・OpenAI(自己発表)が35/42点で金メダル水準 | 満点(42点)は人間の参加者5人のみ |
| IMO 2026(上海) | HuaweiとXiaohongshuのAIが42/42点の満点(公式採点プロセスで史上初) | 666人の参加者中、満点は7人のみ |
数学オリンピックで測る、1年間の変化
国際数学オリンピック(IMO)は1959年から続く、大学進学前の若手数学者を対象にした国際大会だ。各国代表6人が、代数・組合せ論・幾何・数論の難問6問を解く。Google DeepMindの公式ブログによれば、金メダルは成績上位者のうち約8%に与えられる、狭き門の賞だという。
2025年の大会で、Google DeepMindの「Gemini Deep Think」の発展版は、6問中5問を完全に解き、35点を獲得した。DeepMindの公式ブログは、IMOの採点担当者が学生の答案と同じ基準でAIの解答を採点し、公式に金メダル水準と認定したと説明している。IMO会長のGregor Dolinar氏は、この解答について「明快で正確、大半は追いやすいものだった」と述べたという。
同じ時期、OpenAIも自社モデルが同水準のスコアに到達したと発表した。ただしArs Technicaなどの報道によれば、OpenAIの発表はIMOの公式採点プロセスを経たものではなく、発表のタイミングや手法をめぐって議論を呼んだ。同じ「金メダル相当」という表現でも、外部機関による公式認定を経たかどうかという点で、この2社の発表には性格の違いがある。
なお、ここでの「Gemini Deep Think」は非公開の研究版で、2025年7月のIMOに限定投入されたものだ。同じ名前を持つ一般提供版「Gemini 2.5 Pro Deep Think」(2025年8月1日にGoogle AI Ultra加入者向けに提供開始)は、TechTargetの報道によればIMO 2025で60.7%(銅メダル相当)を記録しており、ここで扱う35/42点(金メダル相当)とは別のモデル・別の測定という点に注意してほしい。
1年後、AIは「満点」に到達した
2026年7月に上海で開催されたIMO 2026では、状況がさらに進んだ。Tech Xploreが配信した記事(2026年7月23日)によれば、中国のHuaweiとXiaohongshu(小紅書、英語名RedNote)が、それぞれ自社のAIモデルがIMOの問題で100%のスコア、つまり42点満点を記録したと発表した。Xiaohongshuは声明で「これまで、IMOの公式採点プロセスの下で満点を獲得した大規模言語モデルは存在しなかった」とコメントしている。
同記事によれば、2026年の大会には666人の参加者が世界各国からシャンハイに集まり、そのうち満点を取れたのは7人だけだった。Huaweiは自社のAIシステム「Celia」が複数の数学分野で「包括的な問題解決能力」を示したとし、Xiaohongshuは自社モデル「dots-note-3.0」が今回初めてIMOに挑戦したと説明している。技術系企業には、人間の参加者が試験を終えた後に問題が渡され、定められた制限時間内に解答を提出する形式が取られたという。
2025年は「人間の トップ層には届かない金メダル水準」、2026年は「人間のごく一部しか到達できない満点」。この1年の変化は、少なくとも数学オリンピックという1つの指標において、AIの到達点が具体的にどれだけ動いたかを示す一例と言える。
規制のほうはどうなっているか
技術的な到達点が伸びる一方で、AIに関する規制の枠組みも動いている。EU AI法については、EU AI法、8月2日から「AIと対話中です」表示が義務化で詳しく確認している。要点だけ書くと、チャットボットやディープフェイクにAIである旨を表示する義務(Article 50)は2026年8月2日に予定通り施行された一方、リクルーティングや与信審査などに使われる「高リスクAIシステム」への規制は、2026年6月の法改正(通称Digital Omnibus)により2027年12月・2028年8月へと延期されている。「AIの規制が本格化する」という単純な理解では、この延期と施行が同時に起きている現状を捉えきれない。日本の規制動向との違いはAI規制 日本の2026年最新動向で扱っている。
数式やベンチマーク名が並ぶと分かりにくくなりがちだが、そもそもの用語を整理したい場合はAI用語集も参照してほしい。
正直に書く
この記事は、動画の台本にあった多くの具体的な数値やケーススタディを検証できなかったため、大幅に絞った内容になっている。以下は、この記事を書く時点で一次資料に到達できず、本文に含めなかった項目だ。
- GPQA Diamondでのスコア94.6%、2700問ベンチマークでの64.7%という具体的な数値
- Stripeが5000万行のRubyコードベース移行を1日で完了したという事例
- 高性能GPUの納期が36〜52週かかるという数値
- ASKUL・LOHACOのチャットボット事例、三井住友トラストTAソリューションズの年間9200時間削減事例
- 特定のAIモデル同士のベンチマーク比較(SWE-Bench Pro、FrontierCodeでのスコア)、および関係者の発言とされる引用
- Big Tech4社の2024年設備投資額の具体的な数字(2026年の水準については別途確認が必要で、年ごとに大きく変動する数値のため、この記事では扱わなかった)
AIの到達点は、分野やベンチマークによってばらつきが大きく、「AIは全体としてどこまで来たか」を一枚の絵で正確に表すことは難しい。この記事では、検証できた数学オリンピックという1つの指標に絞って、1年間の変化を確認した。他の分野での到達点については、今後の記事で個別に確認していきたい。
出典・参照資料
- 一次資料Advanced version of Gemini with Deep Think officially achieves gold-medal standard at the International Mathematical Olympiad — Google DeepMind公式ブログ ↗
- 二次資料AI catches up with humans to score 100% at top math contest — Tech Xplore(配信記事) ↗
- 二次資料OpenAI jumps gun on International Math Olympiad gold medal announcement — Ars Technica ↗
この記事の解説動画
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